ノックか、ヒットか、ホームランか

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
塩原 
正直に言うと、「ナイゲン」以降の予定が決まってないんですよね。それに賭けちゃってて。もちろんコメディを作り続けていくんですが。それから、僕らの作ったものもいつかクラシックになっちゃうんで、常にアップデートしないといけないというのはぼんやりとあります。でも、僕らが今後どうしていくかというビジョンは無いんです。今はこの「ナイゲン」を僕らの手から離して、色んな人達の手でやってもらえるとようになったらと思います。
__ 
モチベーションを保ち続ける。
塩原 
重要ですよね。

ショッピングバッグ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
塩原 
ありがとうございます。京都の思い出として。
__ 
どうぞ。
塩原 
これは。ショッピングバッグ。イチゴ柄。カワイイですね。
__ 
どうですか、使えますか?
塩原 
使います。こういうビビッドな小物好きなんですよ。


映画を撮った夜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。西山さんは最近どんな感じでしょうか。
西山 
一昨日までHauptbahnhofをやって、昨日今日はこっち(大阪)で映画を撮って、明日東京に帰ります。
__ 
弾丸ですね。お忙しい中お時間を頂いて申し訳ありません。
西山 
いえいえ。
__ 
Hauptbahnhof Greis6「Scale」、お疲れさまでした。ご自身にとってはどんな作品でしたでしょうか。
西山 
あんまりやった事ない感じというか。
__ 
確かに、過激な表現もなく、いわゆる誰でも見やすいものでしたね。
西山 
そうですね、ちっちゃい子もお年寄りも来て下さって楽しめるみたいな。お話はすごくハッキリしていて分かるけれども、考えさせられたって。大先輩の武田暁さんが、泣いて笑ったみたいなことを言って下さって、嬉しかったです。
__ 
全体的なタッチが優しかったですね。人や物事の扱い方があって、それぞれが一度集まっては別々の道に分かれていくという、それだけのお話。お話の筋をきっちりと整合立てている訳ではないというのがミソだと思うんですよ。無理矢理繋ぎあわせるのではなくて、気持ちいいくらい省略していたんじゃないか。
西山 
ああ、そうですね。品のある方だなあと思いました、金田一さん。作品外の事ですけど、本当にやった事のない人たちと一緒にやれたのが貴重でした。岡さん、伊丹さん、御厨さん。全然違うところから集まった、年齢もキャリアも技術も重ねた方々が「演劇はチームだからね」と言って下さって、丁寧にやり取りして作り上げていけたのが本当に嬉しかったです。これ以上のものを絶対やらなきゃという水準が常に高い人たちなんです。上演中も、心の預けあいがあって、毎回、ラストがどう終わるかわからないくらい自由度を持って作れる信頼感があって楽しかったです。
__ 
ありがとうございます。「演劇はチームワーク」。そして、心を預けあって本番を作った。
西山 
本当にそうです。有り難かったです。
__ 
私も客席で拝見していて、上演者の間の心のつながりなるものを感じていました。関係性がすべてきっちりと詰まっている訳ではなくて、そこここにズレが可愛らしく存在している。全ての意味で丁度良かったです。
西山 
あと、俳優は東京で稽古していて、スタッフさんは京都で作業していて。それが当初不安だったんですけど、京都で本番の準備を始めたら全然大丈夫で。そういうところ、金田一さんはすごいなと思いました。集まってんなあ、と思いました。
Hauptbahnhof/ハウプトバンホフ(略称Hbf.)
Hauptbahhof(ハウプトバンホフ)は、金田一央紀によって2010年末に結成されたパフォーマンス団体です。読みにくいのと書きにくいので、「Hbf」と呼んでいただいてもかまいません。Hauptbahnhofはドイツ語で「中央駅」という意味。演劇といってもどんなものを見ていいのかわかんないという人たち、演劇とは全く縁のないところにいた人たちや、これまでもこれからも演劇に携わっていく人たちにとって、とりあえず集まって自分の位置を確認したり、自分の活動の拠点にしたりする場所を作ろう、という気概で設立されました。演劇のジャンルを問わずに劇空間のグルーヴを求めて演劇作品を作り続けていきます。(公式サイトより)
Hauptbahnhof Gleis6 Hauptbahnhof presents アトリエ劇研共催公演『スケール Scale』
公演時期:2015/8/28~30。会場:アトリエ劇研。

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2015/春
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西山

「乃梨子の場合」

__ 
それから、西山さんが主演の映画「乃梨子の場合」も拝見しました。とても面白かったです。不倫の末の殺人、というとても単純なエピソードでしたが、この作品の主眼は「生々しい吐息」に尽きると思うんですよね。殺人シーンもものすごく、こう、適当というか抽象的で。
西山 
ああ、そうですね、あれね。あれは何だったんだろう。
__ 
包丁を取り出して、刺して、気が付いたら死んでいて。その後の死体遺棄からラストまでずっと起伏なく生々しさだけを映している。しかし本来、それ以上のものを求めてはいけないんじゃないか・・・そんな事を思いました。
西山 
ありがとうございます。
__ 
あれは、西山さんの映画なんだなと思いましたね。
西山 
私も、あの映画はお客として本当好きです。演出がキレッキレで。映画を撮る時、私は「何かをやりたい、演じたい」というのはないことが多くて、特に今回の場合はそうでした。演劇は俳優の手渡すものが最終的には全て、て感じありますけど、あの撮影時は起こっている事に対処するのが精一杯、でそれが記録された、ていう感じでした…。
__ 
現場の大変さも画に表れてたんでしょうか。
西山 
私は、映画にしても演劇にしても、その時の事が全部出ちゃうなあというタイプなんですよ。他の出演者との関係性とかも。そういう意味では、旦那役と不倫相手役の俳優さんが、めちゃくちゃ曲者のすごい出来る俳優さんで、私は凄い出来なくて、やってこられる事に対処してたら終わったみたいな。
__ 
なるほど。
西山 
実際大変な状況で撮影してたんですが、何とかそれと被ってくれたら嬉しいです。
__ 
切実さはものすごく伝わりました。そして今、「西山さんはドキュメンタリー俳優なんだなあ」とふと思いました。
西山 
私も、そこは捨てきれない感じです。
__ 
そこはもう、マレビトの会と相性が良いですね。
西山 
そうですね(笑う)。
__ 
象、鯨。の時もね。
西山 
ああ、そうですね。やってましたね。私、プロフィールに劇団主宰だったとかを載せてたら、「君はとてもそうは思えない」と言われて。いや本当、自分でもそうは思えないですけど。
映画「乃梨子の場合」
監督:坂本礼。制作:国映株式会社。2014年/カラー/71分/デジタル
マレビトの会
2003年、舞台芸術の可能性を模索する集団として設立。代表の松田正隆の作・演出により、2004年5月に第1回公演『島式振動器官』を上演する。2007年に発表した『クリプトグラフ』では、カイロ・北京・上海・デリーなどを巡演。2009, 10年に被爆都市である広島・長崎をテーマとした「ヒロシマ―ナガサキ」シリーズ(『声紋都市―父への手紙』、『PARK CITY』、『HIROSHIMA―HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』)を上演。2012年には、前年の3月に発生した震災と原発事故以後のメディアと社会の関係性に焦点を当てた『アンティゴネーへの旅の記録とその上演』を発表した。
「ヒロシマ―ナガサキ」シリーズ以降、集団創作に重きを置くとともに、展覧会形式での上演や、現実の街中での上演、インターネット上のソーシャルメディアを用いた上演など、既存の上演形式にとどまらない、様々な演劇表現の可能性を追求している。
<マレビトの会 活動方針>
・無償で無尽蔵な実験精神をもつこと。
・あらゆる既存の価値観にとらわれず、理解し難い特殊な場所や状況を受け入れ、作品を創作すること。
・わたしたち自身や鑑賞者の立ち位置をゆるがすような「絶対的なもの」へ捧げる作品を創作すること。
・国家や共同体などの中心性を持つ情報管理社会に搾取されることのない周縁性をもつこと。
・誰もが参加可能なゆるやかでささやかな祝祭空間を演劇の場に出現させること。
・演劇における「時間」のことを考えること。
(公式サイトより)
象、鯨。
主に京都で活動する劇団。2008年現在、活動休止中(公式サイトより)

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西山

「ドキュメンタリー女優」

__ 
Hauptbahnhofでの西山さんも、「ドキュメンタリー女優」だったような気がします。
西山 
「ドキュメンタリー的な」、というのは、つまり・・・?
__ 
西山さんそのものを見ているみたいな感じ。相手が役者でいる事、自分がお客さんでいる事を忘れているような感覚があるんですよ。ふと、具体的な関係が消えて、どういう関係でもなくなるみたいな。
西山 
そういう感じは常に欲しいところでもありますね。その方が見ていられるというか。普通に喋っていて、次に何を喋るのか分からないこの感じの時の脳味噌を分析して演技するときに再現する。
__ 
え、凄い。
西山 
え、単に好みなんです。
__ 
それを見ているお客さんは、その人の考え方がとてもよく理解できるので、つまりは味方になりますね。
西山 
あー、そういう風に、私の考えている事を分かって欲しさというのは自分の最近の流行ですね。今までは脳味噌の中の事に興味がありすぎて、出てくるかたちにはあまり興味が無かったんです。それだと、当たり前ですけど全然分かってもらえなくて。日常生活でも同じですけど。分かってもらう為の形にするということ、につい最近、興味を持つようになりました。
__ 
役者個人の生き方によって、形も違ってきますよね。
西山 
あと、色んな人の発言やアイデアに対して、昔はものすごくとんがってたんですけど、今は「やってみよ~」と思うようになってきました。
__ 
昔は批評的な目で見ていたのが、今は違う。
西山 
若気の至りで、良かった事もありますけど、その時よりも、社会とか人の考えている事に興味が持てるようになってきました。

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西山

質問 青木 道弘さんから 西山 真来さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、ArtisitUnitイカスケの青木道弘さんから質問を頂いてきております。「年上なら何歳までつき合えますか?」
西山 
うーん・・・70歳ぐらいのめっちゃセクシーな方を想像していました。上限とかはないのかな。でも、付き合ってすぐ死んじゃったらいやだなと。えー。結構、そんな事を抜きで言ったら「上限なし」です。

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西山

脳で悩む

__ 
役者として、今興味あるのは「今思っている事を分析して、再現する」という事?
西山 
あ、ちょっと微妙に違うくて。脳味噌の中の作用を観察はするんですけど、自分と役、それぞれの脳味噌の回路の出会うところを探すのが楽しいですね。
__ 
なるほど。
西山 
二つの回路は絶対違うよなあ、と。例えば「後ろから声を掛けられる演技」の時、自分だったらこのタイミングで振り返るけど、役の人だったらそのタイミングでは振り返らないだろうなあ、とか。
__ 
役の生の認識と、役者の認識のおとしどころ。
西山 
人間の生理とかに興味があって。
__ 
私も実はそこに興味があって。人間の行動ってものすごくたくさんの段階があるじゃないですか。あんまり上品な話でなくて申し訳ないのですが、近くの通学路に「夜道に気を付けよう」みたいな看板があるんですけど、そこに「レイプ」って落書きがされてるんですよ。赤いスプレーで。それを書いた犯人の段階を想像すると楽しくなってくるんですよね。赤いスプレーを選んだ瞬間の彼の身体や認識はどうなっていたのか。その選択肢が浮かぶ瞬前は。看板の前に立ちスプレー缶を握った時、ノズルを押す瞬間の彼は果たして迷っていなかったのか、赤インキが着弾する瞬間の看板と、その時彼のどこが汚れたのか、「レ」のハネを始めた時、終わった時、次の文字に取り掛かる時、終わった時、その場を離れる時・・・どの段階にも分析の余地があり、シーンを切り出す度に想像が始まる。
西山 
へー。
__ 
行動はものすごくたくさんの段階に分かれている。
西山 
かなりそれに近い事を考えていると思います。自分のやった事を見る。私、その人は意外と行動を先にしてしまったんじゃないかと思います。そういう人との分かりあえなさも含めて面白いなあと思いますね。演劇とかだったら、そういう再現を複数人でするから、それぞれ全然違う事を考えていて、もう複雑!ってなる。けど、稽古を進めていくと「あーそうなるよね」って、すっといく瞬間もあるのが不思議。マレビトの会みたいにそれを求めない、「そこにあるだけ」を大事にするところもあるし。
__ 
全てに共通するのはお客さんがいるという事。それぞれの感動があって、中にはとても訳の分からない感動もある。
西山 
お客さんて私、あんまりよく分かってなくて。ちゃんとエンターテイメントするっていうのをこれまでやってこなかったからかもしれないけど・・・映画は「その場でそういう事が本当に起こった」としてやるけど、演劇だと「そういう事が起こったことをお客さんに伝える」ってする。それって全然違う事だなあと思います。Hauptbahnhofの時はそれが凄く上手くいった時がありました。それが大きな収穫だったんですね。それが何なのかというのはまだちょっと分からないですけど。

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西山

やりとりに愛してる

__ 
西山さんが相手役の方と会話を演じる時、どんな事に気を配っていますか?
西山 
うーん。相手役との関係って、すごく細かい目盛りまで見てる人に伝わっちゃうと思うんです。なので・・・。稽古場では、心の柔らかい部分をお互いに渡し合うような作業をすると思うんですけど。相手が柔らかい部分を渡してくれるなあ、そして自分も渡す…。あ、だから、相手の人をめっちゃ好きになっちゃうんですよ。男女問わず。
__ 
なるほど。
西山 
別に、必ずそういう関係になろうとはしていないですけど、いつの間にか。
__ 
「乃梨子の場合」の時は?
西山 
うーん、あの時は余裕もなかったので・・・全部対処するぞ、みたいな。ロケだったら環境から受ける事もあるし。感想を持つ間も無かったような。

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西山

いつかのこと

__ 
いつか、こんな演技が出来るようになりたいとかはありますか。
西山 
いっぱいあるんですけど・・・いまパッと思いついたのだけ言うと。この2、3年で、「この人すげーな」と思う先輩に出会いまくってて。そのお一人が・・・この八月に、喋れない大先輩の俳優さんと映画でご一緒する機会を得て・・・。言葉も大きな動きもないのに、シーンがパンッと始まった瞬間に、「あっ違う人になった」と分かったんです。まとってるオーラが違うというか。すげえなと。
__ 
その人のその瞬間。
西山 
何が起こったのか分からないんですよ。何で?みたいな感じ。そういうのが、演劇っておもしろいなあ、脳味噌って面白いなあと。出来る事がたくさんあるんだなあと思って。
__ 
脳同士が、その持ち主達の意志とは関係なく、形にならない情報を送りまくっててしかもリアルタイムで情報整理を続けて、未来予測もしている。
西山 
そうですよね。不思議ですよね。お芝居にしても、ウソをわざわざ見に行って、何の根拠もない事件を観て。何なんだよ、と思う。
__ 
嘘の状況を楽しんだり、もしかしたら必要とするのかもしれませんね。
西山 
うーん。そうですね。あと、また全然別の話で、俳優ではなくパフォーマーの人の演技に憧れる部分があります。パフォーマーの人の演技は、その人自身がやりたいこととして成立していながら、魅せる演技としても成立している。フィクションの中でそんな演技が出来るようになりたいです。でも、もうちょっとジャンプもしていきたい。

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西山

憧れ

__ 
いつか、一緒に仕事をしたい人や劇団はありますか?
西山 
同世代で、この時代を、どの土地で、どうお金とか精神をつかって生きてくかを作品で示唆してくれた、映画監督の濱口さんとかヒスロムとか空族とか三宅さんとか鈴木さんとか木村さんとか山崎さんとか佐藤零郎とか小沢さんとか荒木さんとか・・・もうほんといっぱい居るんですけど、そういう人たち。でも自分が理想を持って動いてれば出会うべき人には出会うという実感があるので、縁があったら、ガガガガっとやる!て感じです。マレビトの会もわっしょいハウスも鳥公園も必然だったし。人には多すぎもせず少なくもない、キャパってもんがあると思ってるんで。

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西山

景色

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
西山 
続けていって、いく内に見える景色がみたいです。
__ 
ありがとうございます。西山さんならきっと見えると思います。

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西山

キャラメルみたいな携帯用石鹸

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。つまらないものですが。
西山 
ありがとうございます。開けていいですか。
__ 
もちろんです。
西山 
ハッピータイムですね。プレゼントをもらうことなんてないです。(開ける)へー。16個入りという事は、小さい石鹸が入っているという事でしょうか。
__ 
そうですね。
西山 
キャラメルのにおいがする。


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西山

茶屋町サミットだ!

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。青木さんは最近、どんな感じでしょうか。
青木 
よろしくお願いします。最近は月イチでイベントを継続できるように頑張ってます、あ、来て下さってましたよね。
__ 
ええ、茶屋町サミット。面白かったです。
青木 
ありがとうございます。あれ、意外と内容以外で時間と手間が掛かるんですよ。必要な手続きと書類を毎回教えて頂きながら、迷惑かけながらやってます。
__ 
え、司会だけじゃなく!?
青木 
そうなんです。基本、全部なんですよ。企画から構成からゲストとの打ち合わせまで・・ある意味、泳がせてもらってるのかも知れませんが。勉強になってます。
__ 
もの凄い量の実務があるんですね。そりゃまあ、TV局の1階で実施するイベントですもんね。そしてそのおかげか、毎回楽しいイベントです。茶屋町サミット
青木 
以前から、不特定多数の人に向けたプロモーションの場を作れないかなと思ってまして。まさか、MBSの1Fでやらせてもらえるとは思ってもなかったですが。言ってみるんもんです。勿論、TVに出るのが一番手っ取り早いので、そこは貪欲にいきたいのですが、今の段階でもあそこは知らない人もいっぱい来るので、プロモーションという意味では効果は出始めてます。
__ 
あ、そんなに手が掛かってるんですね。私あれ、社屋の1Fを勝手に使ってるゲリライベントだと思ってました。よく考えればそんな訳ないですよね。
青木 
許可は頂いてます。常に打ち切りと戦ってますよ。それと、来年の2月には武術太極拳の世界選手権のメダリストの方々と、何故か関西小劇場の面々が一緒に芝居をしようというプロジェクトが立ち上がったんです。お相手が凄すぎて、規模も大きいので準備もめちゃくちゃ掛かるんですよ。
__ 
それは凄そうですね!詳しく伺えたらと思います。
ArtistUnitイカスケ
過去に漫才コンビ「ザビエル」として活動していた青木道弘と櫻井心平が、2010年に立ち上げた多角的なエンターテイメントを掲げた演劇主体のユニット。メンバー全員が役者経験をもちながら、それぞれにジャンルの違う得意分野を有するのが特徴。(公式サイトより)
茶屋町サミット
お客巻き込み型の新しいイベント!関西演劇界には、多才なエンターテイナー達が潜んでいます。彼らは芝居以外に漫才、コント、ショートコメディ、ダンス、歌、マジック等、「目の前の観客を楽しませる」ことに特化した才能を持ちながら、劇場という、どちらかというとアンダーグラウンドな場所で演劇活動をしています。本企画では、そんな彼らが、アンダーグラウンドとは対極のメディアが所有するステージ、「ちゃプラステージ」へ集結。テレビ出演、番組ゲットという、大それた夢に挑みます。なんのつてもない彼らが頼るのは、観に来て下さるお客さん一人ひとり。SNS発信による口コミ力を頼りに、MBSの1Fであからさまにライブを行い、MBSに番組枠を直談判することをめざします。MBSには一切話を通していないこの企画。これは、「SNSというツールを活用する事で、新たなスターへの道を切り開く事ができるのか」という、観客を巻き込んだ新たな試みでもあるのです。(公式サイトより)

劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」

__ 
まずは、7月に上演された劇団みゅーじかる321.の「ファーマーズROCK」。青木さんは作・演出でしたね。めちゃくちゃ面白かったです。
青木 
ありがとうございます。
__ 
色んなところから人が集まってきて、一つの作品を作る。そうした公演は私も数限りなく拝見してきましたけど、「ファーマーズROCK」はとてもいい塩梅に仕上がった作品でした。出演者の演技とチームワークがちゃんと出ていて、演劇作品としてもまとまっていて、でも役者の個性がキレイな感じに出ている。脚本もまとまっていて。
青木 
ありがとうございます。やっぱり、プロデューサーさんの意向もありますので、ある程度人を出した上で見せ場を作らないといけない。そんな主役っぽいのを全員に与えたらあかんでと言われるんですが、うまいことそれを逆手にとられへんかなと思って。
__ 
大変ですよね、多人数キャストは。見応えはその分、増えますが・・・
青木 
そこはそこで成立させつつ、自分のやりたい事もある、と。いつもはもう少しストーリーを大事にするんですけど、今回は尺の関係でどこを削ってどこを残すかに気を使ってたんですよ。本音を言うと、本番はめちゃくちゃ不安だったんです。でも出演もしますから、そうは言ってられなくて。
__ 
そうなんですね。でも、お客さんの満足度はとても高かったと思います。この間吉田青弘さんとのインタビューで、稽古場の雰囲気が影響してたんじゃないかなと思ったんです。ガチガチと決めていくような感じではなく、でもユルいという訳でもない。それぞれが自分の個性を引き出す為の稽古をしていたかのような。作品からはそんな雰囲気を感じました。
青木 
実は、僕の今回の仕事はキャスティングの時点で半分終わってるんですね。自分のホンで大事な部分以外は、役者さんに繋いでいってもらうというか。今まで僕の作品はストーリーを褒められる事が多かったんです。でも今回に限ってはそういう形にしてしまうとおそらくコケるんではなかろうか、と。役者さんも忙しい方ばかりですから稽古期間も短いですし。なので、大きな流れを大事に、細かい流れを書き換えて、吉田青弘とか、役者によっては自由にやってました。やっぱり、当時の農民という、あの当時は立場が弱いとされていた人達を生き生きと描くという事もあって、それは関西小劇場の役者達にハマればいいなと思いながら。
__ 
それはもちろん。そして、一人一人、それぞれに魅力と見所のある作品でしたね。私、全員覚えてます。全員好きな人物です。
劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」
公演時期:2015/7/10~12。会場:in→dependent theatre 2nd。

今日だけの内輪が生まれている

__ 
今回の作品を例に取っていただいてもいいんですが、どういう事が出来たらお客さんを楽しませる事が出来るとお考えでしょうか。
青木 
そうですね、うーん、ありきたりですが・・。僕の中でいつも意識しているのは、やっぱり「前のものをどう生かすか」ですかね。僕は笑いを入れたがるんですけど、その「笑い」というものがどこにまた大きくなって帰ってくるかを意識します。やっぱりそこって、一回目で笑いを取ると、それを見てくれたお客さんには少なくとも「内輪」という状態になるんですよ。見てくれたからこそ、分かるもの。で、内輪という状態が出来たら、それを利用して別の笑いに行くのか、逆に感動させる方向にいくのか。そこはジャンルによって違いますけど。そこは構成演出の考え方でもありますけど、次の手に繋げる「内輪の状態」を、いつも意識していますね。「内輪」って、言葉がアレですけど。
__ 
「内輪」。劇場が一体になる、という事を別の角度から言い表したみたいな事ですよね。何でしょうか、途中から入ってきたお客さんは分からない、みたいな・・・?
青木 
まあ、その危険性はありますよね。でも、例えば笑いを起こすと、お客さんからのアクションを頂けますよね。その時の一体感かな。
__ 
舞台があって観客席がいて、舞台の上での人物が起こす事故、への共通認識といったらいいんですかね。
青木 
そう、ですかね。或いは、お客さんのキャラクターへの認識というのでもいいんです。初対面から気心知れる、一歩進むというか。友達同士の関係の中で、特定の友達の特定の言動で笑うが起こる。それが劇場で起こっているという事は、お客さんはそのキャラクターに何かしらの理解をまず持っているという状態。それは、もの凄く言葉は悪いけれども、学校でやる発表会的な雰囲気を作れたという事のかな、と。
__ 
よく分かります。そういう関係性を作るのが大事なんですね。
青木 
そうですね、その状態を作り出すために笑いを使う事が多いです。笑いを取る為だけに笑いを取るってのも良いのですが、僕は元々が漫才師ですので、もう少し、笑いの出し方、活かし方にこだわりたいな、と思ってます。
__ 
モックとしての笑いではなくて、物語に組み込まれている笑い。では、どんな笑いの好みがありますか?
青木 
そうですね、タイプでいくとシチュエーションコメディが基本になっています。この場所で何が起こったのか、を次のシーンの変化によって想像させるのが好みですね。
__ 
そこに役者同士の組み合わせがあって、内輪というものがまた深まっていくように思えるんですよね、私には。
青木 
そういう意味でも、今回の作品はまさにキャスティングを本当に深く考えましたね。スケジュール上、みなさんの稽古参加が凄く遅くなるという事がわかっていたので、そこを踏まえてお願いしたという事もあります。
__ 
ありがとうございます。では、そうした作品を作る上で、どんな事を役者に求めますか?
青木 
求めるというより、そこは役者と一緒に探していくという感じです。自分だったらここでこうやって笑いを取るなあと思って書くんですけど、それを役者さんにやってもらったらどこか無理をしているように見えるというか。そう思えた時はズレが発生しているんですね。僕が脚本を書く時には、その台詞の感情というよりは、結果としての笑いを求めたりするので。そういうズレには、役者さんの個性を生かす方向で。あなたを生かしたいというか。
__ 
そういう意味で探していくんですね。
青木 
とりあえず振り切ってやってもらいます。ふざけるならとことんふざける。滑稽なまでに怒るという演技があったらとことん怒ってもらう。そこを徹底するためにそういうのに長けてるThE2VS2の演出の徳山君に演出助手に入ってもらってます。
__ 
例えば忍者衆が、台詞を喋る前に必ず地面に「しゅたっ」って着地するじゃないですか。
青木 
はい、それも徳山君に演出助手に入ってもらった賜物です。

茶屋町の内輪

__ 
茶屋町サミットの「内輪」について。当初思っていたよりも遙かに、いわゆる内輪ウケ感が無いんですよ。あえて会場外には仰々しいチラシやポスターが貼ってある訳ではない、誰でも入っていけるゲリライベントというまとめ方になっている。雰囲気的にも、言葉は悪いですがダラダラやっている感触がある。見事な場所作りだと思います。
青木 
ありがとうございます。
__ 
でも、少し見ていると全く飽きさせない作りになっている。ユルいように見えて、結構ギチギチに作ってますよね。司会が繋いで繋いで、1秒程度も間が空いていない。
青木 
「内輪」って言葉は僕がふっと出してしまった言葉なんですけれども、でも劇場に来るのが初めての人ばかりでも、ふと輪が出来ているみたいな。僕も、この2・3年でこの方法論でもいいのかなと思うようになっていて。
__ 
話がそれますけど・・・茶屋町サミットって、よく知らん奴らが勝手にマイペースでやってる感があり、しかし実際は司会が息も付かせないペースで進行している。
青木 
そうですよね、逃がさないという気持ちはありますし。単純に時間が長いですし。4時間半。ぶっ続けに観れる時間じゃないですが、ぶっ続けでも観たいと思わせたいし、通りすがりの人を一人でも多く繋ぎ止めたい。まあ、とにかく必死です。
__ 
しかも毎月1回。もう感覚としてはいつもの面々がレギュラーで当然のようにやってるぐらいの受けとめ方なのに、実際は凄く大変。
青木 
はい。構成や進め方にはもちろん手が掛かってます。ただ、僕としての理想は、今をファーストシーズンとして。僕らがあそこで一番にやって、欲を言うと、次の世代の子たちが不特定多数の人にアピール出来る場を残したいなとも思っています。僕もいい歳なので。
__ 
次代に。
青木 
やっぱりあの場所は良い場所だと思います。業界人の方にも観て頂けるわけですし。演劇関係者は実はそんなに多くなくて。
__ 
貴重な場ですよね。
青木 
そうですね。出来るだけ長く続けて、何とか結果を出したいです。番組枠を取るぞ、という目標も、何とかして・・・
__ 
1万ツイートあればMBS上層部に直談判出来るんですもんね。
青木 
非公式ですが。でも、達成して直談判してみたいです。MBSの社員さん方も見に来てくださってるようです。
__ 
そりゃあ1階でイベントがあれば気になるでしょうね。
青木 
おかげさまで、わりと、関西小劇場もやるじゃないか、と思ってくださってるようで・・・。変な話、関西小劇場の役者さんって、フリーでやってる方多いじゃないですか。これまで僕も、素晴らしい役者が金銭的な事情で辞めていくのを見てきているので。あと1日あれば辞めずに済んだのに、という事もありうる世界なので。なんとか、直接メディアや制作会社さんとやりとりする、そんなスタイルが確立したら、それはそれで新たな可能性も少しは広がるのかなと。この際、自分を生け贄にしてでもって思ってます。
__ 
いいですね。そういう、企んでいるような様子がまた魅力的に思えるんですよね。

質問 新良 エツ子さんから 青木 道弘さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました新良エツ子さんから質問です。「貧乳派ですか巨乳派ですか?」
青木 
新良さんには申し訳ないんですけど、僕は貧乳派なんですよ。何ですかね、僕は巨乳にトラウマがあって・・・。

作り方の変遷

__ 
作品を作る上でお客さんと共有する事を大事にする。そう思われるようになったのはどのような経緯があるのでしょうか。
青木 
僕は漫才をやっていて、当時いた事務所が潰れて、相方は東京へ。僕は大阪でそれぞれやってみようとなったんですね。M1で決勝まで残れれば良かったんですけど。さて、どうしようと思ってたんですが、売れるという目標よりも、まず飯を食おうと思って、だったらまず必要とされる人になろうと。そこから僕はたまたま演劇というものに出会って作るようになって。それが僕が30歳ぐらいだったんですね。
__ 
なるほど。
青木 
当初、僕は演劇ってもっと凛としているものだと思ってたんですよ。作品を上手くやろうだとか、ちょっと哲学を入れてみようとか、当初は笑いも入れていなかったんですね。見せよう見せようみたいな。そういう作品を3年くらい続けて、事務所劇団とかの作演を任されてたんですけど、ある公演で初めてダブルコールを頂いたんですよ。その時をキッカケにもう一度、さてどうしようと思って。で、演劇の作り方について自分でもう一度考える事にしたんです。事務所の作演も辞めて、再びフリーになった時に、窪木さんの芝居に出まして・・・
__ 
窪木さん!?
青木 
あ、窪木さんです。まだギアを始める前、BLACK CHAMBERがある時代の。_BIRTHDAYCAKEの_「歯車のアルカ」、ですね。窪木さんの芝居の作り方、言葉はアレですけど、ふわふわ作るなあこの人、と。でも何か、僕が思う「見せてはいけないところ」を見せてるんですよね。それ以降も色んな演出家さんの下で芝居させてもらい、色々影響を受けて、4・5年前にイカスケを作って、シチュエーションコメディを作ろうと。
__ 
窪木さん、知り合いです・・・。昔出演した芝居で、ソロのダンスを振り付けして頂いた事があります。インタビューもしました。
青木 
そうなんですね!
__ 
窪木さんのように、アバウトに作ってしまってもいいんだ、と。
青木 
アバウトというと言い過ぎですが、でも、見せよう見せようとしていたんですが、そうでなくてもいい。僕は雅楽をやってるんですが、漫才とは正反対の、形式の世界なんですよね。演劇も、例えば暗転を明るい中でやる見せ転も美しく見せないといけないみたいな。芝居を始めた頃にお世話になった方々も、きっちり作る方々で。一方窪木さんはもっと、歩み寄る作り方。固くなっていた頭をほぐしてもらったみたいな感じですね。
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歩み寄る。
青木 
僕の場合ですけど、自分という人間が一生懸命背伸びして作ると頭打ちが来ると。たまたまダブルコールをもらったとしても、それ以上の事、それ以上の事ってどんどん視野が狭くなる感覚に陥る。

演劇の凄さで泣く

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お芝居を始めた頃に見た、衝撃を受けた経験を教えてください。
青木 
始める前に見たものでも良ければ。実は僕は今でも演劇があまり好きではなくて、だから演劇の良さや凄さがより分かると思ってるんですが・・・
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ええ。
青木 
東京の親戚に会いに行った時、たまたま、野田秀樹さんの「赤鬼」を見せられて。その最後のシーンで赤鬼が台詞をぶわーっと捲し立てるんですけど、その時意味が分からないけど涙が出て止まらなかったんです。それが、僕の演劇に対する畏敬の始まりだったかもしれないです。あれが印象的ですね。
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そうなんですね。何故、その時泣いたのか・・・。
青木 
何故なんでしょうね。もう十何年も前ですけど、迫力ですかね。言葉じゃない何かで伝えて来るものが伝わったのかもしれないですね。演劇の凄さというものを知った日かもしれません。いずれ伝えたいと思いますね。

外の世界を目指す

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いつか、どんな芝居を作りたいですか?
青木 
その影響かもですが、どうせなら海外で上演出来る芝居を作りたいですね。自分の中ではもう東京を目指すというのじゃなくて、漠然としてますけど、海外で通用する作品を作りたいと思っていますね。
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自分の作品の価値を問いたい。
青木 
僕はどちらかというと、口で先に言っちゃうタイプなんですよ。一番最初に作演をやったのも仕事が欲しかったからで、「出来ます」って言っちゃってからウンウン悩み続けて。来年の武術太極拳の企画も、プロデューサーさんに「出来ます、海外に持っていけるものを作ります」と。そうしたらプロデューサーさんが「東京でウケたらマカオに持っていくから」って。
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先に目標を言葉にしてしまって、それから・・・
青木 
どっちかというと、目標がないと動けないタイプかもしれません。
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ユニークさを求める関西小劇場の独特の文化が、海外でどう受け止められるのか楽しみです。
青木 
そうですね、それをどうにかして創りたいです。これから苦悩します。その、武術太極拳の方々はもう本当に凄くて、分野の第一人者なんですね。国際的にも通じる金メダリスト相手で、でも僕らも負けたくはないですね。いい意味で、圧倒的な差。僕としたら、最後まで「海外いくぞ」という気持ちです。今回はあえて、同じぐらいの年齢の小劇場の役者さんたちを連れていこうと思います。
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おお!
青木 
もう、海外や武術太極拳の方の目線で見たら関西小劇場の人たちなんてベテランも若手も一緒なんですよね、きっと。どうせなら勢いを持って。もしダメだったとしても失うものなんか無いんで。やってみたいなと思います。もし失敗しても、また地道にやっていけばいいんで。
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いや、大丈夫だと思いますよ。世の中は常にジャイアントキリングの物語を求めてる訳じゃないですか。
青木 
そうですよね。そして僕は、そんなに演劇を好きじゃなくて良かったなと思ってます。酔い知れてしまうと良くなくて。自分を動かしたいというか、とりあえず、毎日、自分の演出感や思考さえ疑ってます。あまり才能がない僕が創作に向いている唯一の点だと思います。