霧の光景から、あの日が浮かんでくる

__ 
さて、中村さんがATWASのプロジェクトに関わり始めた経緯を教えて頂けないでしょうか。
中村 
私は特に映像やダンスに関わっている訳ではなく、普通にお芝居をしているんです。TAKE IT EASY!という。
__ 
そうですね。
中村 
でもこのところ、映像・造形・衣裳、他にも色々なスタッフの方との出会いが重なって。面白い事が出来る予感がしていたんです。そこでこうした活動を始めました。しばらくしたら自分たちに名前がない事に気がついて、そろそろ名付けたほうがいいんじゃないかという事になって。「ATWAS」と名づけました。
__ 
ATWAS。基本的には演劇に来られるお客さんとは全然別の客層が来るという印象です。というのも、鴨川の会場では見れなかったお客さんが結構文句言ってたりして・・・
中村 
そうですね。劇場に来られる方は、初めての場合でも何となく静かにしてくれるんですが。野外でも「肩車やフラッシュ撮影はおやめください」とアナウンスしているんですけど・・・。見たいという気持ちの表れで、嬉しいんですが。
__ 
野外でのパフォーマンスなんて、偶然出会ったらそれはもう嬉しいでしょう。興奮するでしょう。
中村 
そうですね。遠くからお客さんが走って来られますね。何やってるの!?って。
__ 
終わる前に駆けつけたいですよね。集客力は凄いと思います。
中村 
でもあのパフォーマンス、前から見ないと意味がないんですよ。横からだと全然見えなくて。横からご覧になったお客さんが、「何か光ってるなあ」で満足してしまうのが・・・もう一歩、プロジェクターの真正面に入ってくれれば立体的に見えるのに。
__ 
プロジェクションマッピングとはそこが違いますよね。お客さんには、どう感じて貰えたら理想ですか?
中村 
一応、私達の中ではこういうストーリーで流れを作ってパフォーマンスしているんですけど、とは言っても、お客さんがそれぞれ自分の過去とか大事にしている思いを重ねあわせて見てくださると思うんです。そういう事を思い起こされながら観ていただくと嬉しいです。
__ 
具体的じゃないからこそ、短いからこそ、そうした効果が出ているような気はします。

動く砂像と真利亜さん

__ 
今年は、ATWASの他にはどのような活動をされる予定でしょうか。
中村 
10月に、大野知英ちゃんと一緒に京都のあるお寺で動く砂像を出します。
__ 
そうなんですね!砂像、ずっと気になってたんですよ。どんな感触がするのか全然想像出来なくて。柔らかいのか硬いのか。
中村 
おばちゃんとか、容赦なく触ってきますよ。
__ 
子供とかも触ってきそうですね。
中村 
子供はちょっと怖いみたい。
__ 
ああ、ちょっと迫力を感じるのかもしれませんね。
中村 
でも、楽しい音楽が流れて「一緒に踊ろうよ!」って誘いにいくと仲良くなれるんです。一緒に踊ってくれます。盛り上がりますよ。皆で手をつないで、大きな輪を作って。
__ 
それは想像しただけで面白そうですね。しかし、どういう流れでそれを作る事になったんでしょうか。
中村 
知英ちゃんは鳥取出身で、都会に憧れて田舎を出て仕事をしてきたけれど、振り返ってみたら「鳥取めっちゃいいやん」と。人も優しいし、自然もいいし。衣装家として、鳥取のいいところをアピールする何かが出来ないか。例えば鳥取砂丘をモチーフにした衣裳を作って、楽しんでもらう。
__ 
そこから砂像が生まれたんですね。鳥取砂丘の写真を見ると、やっぱりキレイですよね。それをモチーフにした砂像、とても見たいです。
中村 
砂像の中にも色んなキャラクターがいて。らっきょうの精とか、砂の精とか、悲しい伝説を持つ蛇の精とか、雨乞いのお祭り、しゃんしゃん祭の精とかもいるんです。奇跡みたいなんですけど、パフォーマンス中、クライマックスのシーンになると雪が降ってくるんですよ。なんか、持ってるんじゃないですかね。何かを呼ぶ力を。
__ 
ええっ!?雪が降るんですか。それは、仕掛けではなく?
中村 
そう、演出みたいに。真冬のイベントなんですけど、雪が降るんです。
__ 
そ、それは持ってますね・・・。凄すぎます。いつか拝見します。
中村 
ぜひ。

質問 大野 知英さんから 中村 真利亜さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました大野さんから質問を頂いてきております。「長い髪を短くするとしたら、それはどんなタイミングですか?」
中村 
髪の短い役が来た時です。
__ 
今は長いですよね。でも、髪の短い役が来たら切ってしまう?
中村 
まあ、来なかったら切らないですけどね。何かもっと面白い事言ったほうがいいのかな。
__ 
髪を切るとですね、絶対急所である頭部周辺の体温調整が変わりますよね。つまりホメオスタシス全体に影響のある事ですので、気分を切り替えたい時に髪を切るというのは理に適っていると思います。中村さんは、今まで一番短くしたのはどんな時なんですか?
中村 
高校の時、やりたい役が男の人の役だったんです。その時はめっちゃ短かったですよ。ベリーショートで、女子トイレに入ったらびっくりされていました。
__ 
今は、いつから伸ばしているんですか?
中村 
これがね、結構切ってるんですよ。2、3ヶ月に一回切っています。整えるために。

苦手としてきた役も

__ 
いつか、こんな演技が出来るようになりたい、などはありますか?
中村 
そうですね。どうやったって自分になってしまうというか。例えば軽やかな人物は出来ないし。でも、もともと持っている自分と全然違う人が出来るようにはなりたいです。
__ 
それは、性格的にですか?男性は何度も演じてきてますもんね。
中村 
性格的に、あんまり弱々しい人とかは・・・。出来ん事もないですけど、もうちょっと何とかなるやろうと。他の人がやったらもっと、と思ったりします。無い物ねだりだと思いますけど。でも、何かを積み重ねていく事で、「そういうふうに」感じさせたり出来たりするのかもしれない。
__ 
何かを積み重ねる。
中村 
もっと漠然とした話、得意分野ばかりじゃなくて、苦手な役どころとかもさらりと出来るようになると素敵だなと思うんです。
__ 
とても難しいですね。
中村 
とても難しいですね。こうしたことは言葉にするのも難しいですね。

一期一会の・・・

__ 
今、興味のある事や分野はありますか?
中村 
基本的にはめっちゃお芝居をしたいんです。でも、今はお芝居というアプローチなんですけど、光だったり造形物だったり映像だったり衣裳だったり動きだったり、色んなジャンルで面白い事をする人達が集まってきたので、もうちょっときちんとしたい。いま、全部が実験みたいな感じなんですよね。どうしたらお客さんに安定したものを安心して観てもらえるかなと思っています。これまでは役者の事だけやってたんですけど。
__ 
ええ。
中村 
制作じゃないですけど、お客さんの立場に立って今やっている事を考え直してみたいです。
__ 
ATWASには演出がいないと伺ったんですが、それで今までどうやって上演しているのかと思うんですよ。でもプレスリリース上演を拝見して納得しました。今の体制は素敵だと思います。色んな分野の野心的な人が集まって、お客さんも含めた一期一会が実現するんですね。総指揮や演出家という役割がもしいたとしたら、時として邪魔になる事もあるのかなと思います。
中村 
そうですね。それはメンバーも何となくそう感じていると思います。
__ 
でも、ATWASの良さを、どんな会場であっても最大限に引き出すための努力という事なんですね。
中村 
はい。パフォーマンスそのものの質を上げるのは常に必要なんですけど、それ以外の条件のところは毎回違うし、要求も難しくなってくるから。今の現場は間にイベント会社の方が仕切ったりしてくださるんですが、いつもそうとは限らないので。

いつか!

__ 
中村さんがお芝居を始めたのはいつぐらいからなんでしょうか。
中村 
小学校の頃には演劇部でした。間違って入ってしまったんです。高校の頃は劇団に入っていました。
__ 
あ、そうなんですね。TAKE IT EASY!が高校の頃からだと一方的に思っていたので、高校から始めたんだと思っていました。
中村 
あ、高校の頃は、黒木陽子ちゃんと一緒にお芝居していました。普通に色んなオーディションを受けて、一緒にお芝居を作っていましたよ。同い年で、同じ地域で。夏休みとかに陽子ちゃんの学校に遊びに行ったりしていました。
__ 
え・・・そうなんですね。唐突に人間関係が。私は、黒木さんとは同じ劇団衛星なんですよ。
中村 
そうなんです。震災の時とか、テクイジのメンバーと陽子ちゃんと一緒にお芝居を作りましたよ。
__ 
あ、そうなんですね。知らなかったです。今度聞いてみます。そして、テクイジの次回公演を心待ちにしています。
中村 
それがね、いまのところ何も無いんですよね・・・。
__ 
いつか、楽しみにしています!

相手を輝かせる演技?

__ 
最近の、演技を作る上での気付きは何かありますか?
中村 
新しく何かを気付いたというよりは、結局相手を輝かせる演技が一番、自分をよく見せる方法なのかなと思うんです。ちょっと優等生みたいな答えなんですけど。
__ 
相手を輝かせる。
中村 
そうですね。自分が自分がじゃなくて、こういう言い方でセリフを言う事で、相手役の気持ちが強く出るだとか、ちょっと後ろに下がる事で前の人に光が当たって、場面が見せやすくなったりとか。相手役の人が良くなる状況を作る事で、必然的に私も良く見える。お互いがそれをやるのがベストなのじゃないかな、って。
__ 
役者の間の調整による、良さの追求。一つのシーンに、もの凄くたくさんの、大小様々なボタンがあると。その掛け合わせを意識的に選択し、繋ぎ合わせる。少し違うだけで全然違う。
中村 
ほんのちょっとの事ですけど、別に一つずれていても服は着れるんですけど。でも意思を持ってずらしているのと、ずれてしまっているのとでは全然違うというか。
__ 
確かに、少しズレたら全然違う。今回のウォータープロジェクションみたいですね。
中村 
ウォータープロジェクションは霧や風の加減によって、見えなかったらそれはそれで面白いものだとと割り切っています。でも役者の場合は・・・
__ 
稽古によって完璧に、いつも同じ世界を提供出来る。
中村 
そうですね。役者が二人以上の場合は、自分のちょっとした蛇足にならない程度の思いやりで、相手が素敵に見える事が作品に還元して、作品が素敵に見えるんじゃないかと思っています。それが大事なんだろうなあ、と思います。
__ 
去年の浮遊許可証の「君はあかつきの星」で、中村さんと上原日呂さんとのシーンがあったじゃないですか。最後の方で。あれはとても良いシーンでした。上原さんがとても良かったです。それは、中村さんの心配りとかそういうものがあったのかもしれませんね。
中村 
いえいえ、あの作品はみなさんが良かったんですよ。

湖に浮かぶ霧

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
中村 
お芝居は今後も続けていきたいと思っています。一方、ATWASも色んなところに展開出来ると思うんです。ウォーターアートプロジェクションは、色んなところで上演出来ると思うんです。夏フェスとかに呼んでもらいたいなあと。
__ 
それは楽しいですよね。昼にウォータープロジェクション、出来ませんかね。
中村 
そうですね、映像ナシなら出来ると思いますけど。
__ 
夜の幻想感は凄いですよね。関西のみならず、色んなところであのファンタジーが上演されたら凄いですよね。
中村 
湖とか池の真ん中でやってみたいですね。池をお持ちの方は是非。
__ 
淀川とか、琵琶湖とかに船を浮かべて。
中村 
火とか使いたいですね。

古風なぬりえ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
中村 
あら。いいんですか。
__ 
もちろんです。大したものじゃないんですが。
中村 
何だろう(開ける)。あら可愛い。舞妓さんのぬりえだ。今はぬりえが流行ってるんですよ。
__ 
あ、そうなんですか。こういうのがお好きなのかなと思って古道具屋で買ってきました。
中村 
もったいないから塗るかどうか分からないですが。
__ 
それと、水に浮かべて絵が写るスタンプみたいな奴です。何十年も昔のものだから、使えるかどうか分からないですけど。
中村 
坂本見花ちゃんもこういう、レトロな雑貨が好きなんです。自慢してから使います。ありがとうございました。


劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。先日ご出演の、劇団みゅーじかる.321の「ファーマーズROCK」が終わってしばらく経ちましたね。大変面白かったです。ご自身としてはどんな経験でしたでしょうか。
吉田 
ありがとうございます。ブログとかにも書いているんですけど、ほとんど全員が初めて共演する人でした。演出の青木さんに呼んで頂いた時に、「ミュージカルなんだけど、どう?」って。僕もそんなにミュージカルをやった事はないんですよね。去年の12月にPEOPLE PURPLEさんに出演した「AGAIN!」がミュージカルっぽかっただけで。
__ 
そうだったんですね。
吉田 
西原さんと青木さん以外は全員初対面。途中で別の芝居もあって抜けたりしてたんです。他のメンバーもけして集まりが良かった訳じゃなかったそうで、稽古についてはなかなか大変でしたけど、良い経験でした。
__ 
メンバー同士打ち解けられなかったとか、そういう事はありましたか?
吉田 
いや最初は少し・・・役的にも、あんまり打ち解けちゃいけないのかなと思って。どちらかというと一人で生きていく役でしたし。正直、稽古場でもそういう風にしていたところはあって。「最初はめっちゃ怖かった」って言われましたね。まあそうやろうなと思います。でもまあまあ、本番始まったら別にラフに。ご飯食べにいったり。「喋ったら怖くないんですね」って。
__ 
座組全体の和はFacebookの写真とかからも伝わってきましたね。
吉田 
そうですね。変な一体感がありましたね。若い、青春みたいな空気がありましたね。学生時代のノリが。意外とみんな若くないんですけどね。
__ 
学生時代。
吉田 
青木さんが先生みたいな。
__ 
半年に一度くらい、こういう雰囲気のプロデュース公演があったらいいなあと思いますよね。というのは、プロデュース公演の座組ってある程度、ギスギスしていても良いと思っているんですよ。一種の緊張感が必要というか。でも、「ファーマーズROCK」の場合は、それとは全然別の域にいた気がするんです。
吉田 
そうですね。まあ、だからといってむちゃくちゃ仲良かった訳でもないし、ただその、本番に対する盛り上げへの意識はまとまっていたと思いますね。
__ 
なるほど。ちなみに、7月10日の本番日までの稽古期間は、どのくらいあったのでしょうか。
吉田 
四月から撮影とかをして、本格的に稽古が始まったのは五月からです。ただ、みんなの感覚的には全然時間は無かったです。
__ 
そういう危機感を含めた意識があの大量のキャストの間で一致して、さらにその波が本番のタイミングちょうどぶつかってあの素晴らしい盛り上がりになった、という感覚があります。もちろん役者・ダンサーの能力も高かった。脚本・演出の魅力も。
吉田 
今回、稽古の段階から面白かったんですよね。みんな好き勝手やってて青木さんもそれを許す空気があって。演出家が全てに細かく采配を振るう現場じゃなくて、そしてプロデュース公演やったというのもあって。二回目のメンバーもいたからかもしれませんね。一見統一性がない状況になっとったんですけど、それはそれでええか、みたいな。稽古を見ながらみんな修正していったんでしょうね。
__ 
そうなんですね。みんなが自分の芝居を全体を見て調整して、その仕上がりがとても丁度良いところでまとまっていたところに本番があって、みたいな。メッセージを充分に伝えながらもオシャレにまとまってました。凄いと思います。
吉田 
キャスティングも結構上手く行ってたんじゃないかと思うんですよね。みんなの得意分野も生かせた配役だったかもしれません。
__ 
そうですね。どの役にも見せ場と物語があって。私、一人一人の役を全部覚えてるうえに全員気に入りましたから。
劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」
公演時期:2015/7/10~12。会場:in→dependent theatre 2nd。

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2015/春
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吉田

月曜劇団 番外公演『月曜劇団のコントっぽい劇短編集2』

__ 
さて、次に出演されるのは月曜劇団の短編集ですね。吉田さんは出演されるのが今回初めてでしたよね。
吉田 
そうなんですよ。初めてな気は全然しないんですけど。上原さんとは何度も同じ舞台に立ってますから。西川さんや森口さんもよくどこぞでお会いしますし。嬉しいですね。
__ 
とても見たい座組です。意気込みを教えてください。
吉田 
いやあもう頑張るのみですね。コントって言っちゃってる以上は笑って楽しんでいただけたら。まあ正直、脚本が西川さやかさんなので、どうなるか全然分からないですよね。一回目のコント集を拝見したんですけど、あのユルさはすごいですよね。
__ 
ユルさ、曖昧さ。月曜劇団はもう、その曖昧さの演出さえ曖昧ですからね。「『曖昧』なオチ」という着地点が明確にあって、そこへすら曖昧に落ちていくという。
吉田 
さやかさんの作品はそういうところがあって、詳しく聞いたら教えてくれると思うんですけどね。
__ 
そこに日呂さんの演出が加わると。
吉田 
そうですね。一度、本公演に出演してみたいですね。
月曜劇団
2001年3月旗揚げ。主に大阪、神戸など関西を拠点として活動中。現在は上原日呂と西川さやかの二名で構成されている少数精鋭ぽい集団。シュールで明る暗い会話劇をベースに、なんちゃってダンスやコスプレなども取り入れたいざというときに一言でジャンルを説明しづらいお芝居を展開中。(公式サイトより)
番外公演『月曜劇団のコントっぽい劇短編集2』
期間:2015/09/14(月)~2015/09/17(木)
会場:あるかアるか地下1階「Free Studio KONPIRA -金毘羅-」
9月14日(月)20:00
9月15日(火)15:00/18:00/21:20
9月16日(水)15:00/20:00
9月17日(木)15:00/19:00
出演:上原日呂(月曜劇団)、西川さやか(月曜劇団)、森口直美(パプリカン・ポップ)、吉田青弘
【脚本】西川さやか
【演出】月曜劇団
料金/前売 1,800円 当日 2,000円

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2015/春
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吉田

嘘と即興

__ 
吉田さんが役を演じる上で気を付けている事は何ですか?
吉田 
嘘をつかない事ですね。嘘をつく役だったらいいんですけど。「嘘を付いたらバレる」と思ってるんで。
__ 
嘘とは。
吉田 
はっきり言って、お芝居自体嘘じゃないですか。嘘のものを、それを分かっててお客さんは見ている。役者同士の会話演技のやりとりでズレが生じると何か気持ち悪いんですよね。それが狙いではないかぎり。そういう意味で嘘はつかない。
__ 
会話劇での嘘って、すぐに分かりますしね。言えてない台詞は分かるものです。我々観客と役者の間に存在している「台本」というプログラムが念頭にあって、上手く行っていない会話演技を見るとその台本の文字が頭に浮かぶような・・・。そこで興醒めしてしまう。
吉田 
そうですね、一瞬でそうなる。人が人の演技をしている訳ですから、無意識にそういう状態になってしまうんですよね。これが動物を演じているんだったらまたちょっと違うんですよ。そういう場合はわかりやすさを重視して、ズレのないように組む。だからズレは発生しない。人をやる時はそうはいかない。嘘がないようにしたいけど、でも台本に沿って会話をしないといけない。そこが難しいんですよね。
__ 
「嘘をつかない演技」。いろいろなアプローチがあると思います。不自然な息継ぎはやめる、気持ちがもたらす生理的なリズムを考える、であるとか。役者の数だけ方法があるんでしょうね。
吉田 
僕の場合は、もう基本的には即興だと思ってます。即興というのは、相手や外から発されるものを受けて出す訳じゃないですか。というのを、本のある芝居でもやる。僕、たまに台本には載っていない事を言うんですよ。一応確認するんですよ、台本と違う事を言うてもいいかどうか(今までの演出家さんは「やめてくれ」と仰る方はいなかったですけど)。というのは、僕は、台本に無くても言いたい事が出てきたら言うようにしているんです。それが、その場で生きたキャッチボールを言う事だと思うんですよね。そうすると、自然に何かを言えている。

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2015/春
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吉田

嘘と自然

__ 
その、役の上で感じている事と、役者が感じている事が一致している上での即興という意味ですか?
吉田 
そうですね。相手役がいるとしたら、その相手に対して感じている事。それは事前に想定してはいけない。
__ 
「それは事前に想定してはいけない」・・・それはとても難しいですね。
吉田 
難しいですね。野球だって、ストレート来ると思って変化球が来たら空振りしますから。変化球も打てるようになっておかなければ、いいバッターにはなれない。
__ 
そういう風に考えるようになったのはいつからですか?
吉田 
だいたい20代前半ですね。そのぐらいの時期の役者って誰かに教わる事が多いもんなんですよね。「嘘をつくな」はさんざん言われましたし、その為の方法論をWSとかで教わったりして。僕はどっちかというと頭で考える方なんですが、「頭で考えすぎや」って言われて。それは結局、自分の中で答えを出して思い込んでいたんですよ。結局人の話を聞いていない、対応出来ていない、自分の筋道通りにしかいけなくて、ズレている事にも気付けていない。頭でっかちの芝居しか出来ていないと言われていたんです。そういう時に、即興のつもりでやったら割と上手いこといった経験があって。
__ 
いま、ようやく理解した事があるんですけど。「嘘をつかない」っていう指摘は、「嘘をついてしまっている」という失敗を指摘しているんですね。一般常識的・道徳にもとる、騙す嘘という訳じゃなくて。ああ、なるほど。上手くいってないから、「嘘になっている」。
吉田 
失敗かどうかは難しいですけど・・・でも、一瞬醒めるのが「嘘」なんじゃないかな。僕も、日常会話だって、突き詰めると嘘なんじゃないかって。社会的な言葉を選んで、関係を成り立たせるために繕っている。台本の役同士の演技だって、そういう意味での嘘で作られている。
__ 
そうですね。
吉田 
恋愛劇でいきなり「好き」だなんて言わないですしね。そこからはドラマは生まれにくい。
__ 
物語の上での嘘が戯曲に書かれていて、役者の演技の上での嘘が発生しうる。
吉田 
お芝居自体も嘘ですしね。海が舞台上にある訳じゃないのに、頭の中で補完して見ている。
__ 
観客も演者側も演劇という嘘に取り組んでいる。お客さんも、その上では嘘を自分に課している。
吉田 
本自体もそうですね。紙に載っている文字から意味を見出そうとしている。人間は、そういう事がしたいんでしょうね、きっと。

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2015/春
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吉田

境界を越える

__ 
吉田さんがお芝居を始めたのはどんな経緯があったんでしょうか。
吉田 
大学1年の時です。18でした。映画がすごく好きで始めました。その時は演劇には興味が無かったんですよ。映画に出たり撮るのも好きで、WSで勉強をしていました。ある日、仲間に誘われて舞台に行ったのが初めてです。こういう世界があるんやな、と。TVに出てないのに面白い人たちがいっぱいいるなと思って。
__ 
なるほど。ところで伺いたいのですが、大阪小劇場での成功って何でしょうか。というのは、まあやっぱり色んな地域の方にインタビューをするようになって、大阪や京都それぞれの小劇場の良いところや悪いところがはっきり見えてきてですね。これまで活動してきた吉田さんからみて、どういう事がそれぞれの場所での成功なのかなというところからも考えたいなと思いまして。
吉田 
いやー、成功なんて無い気がするというか。地元のヒーローとして長く楽しくやるというのは一つの方法としてあると思うんですけどね。別に、大阪という場所にそれほどこだわる必要もないと思います。やってる身からすると、大阪京都東京と、枠を決める事で、井の中の蛙というか、井を自分で作ってしまっている感があると思うんですね。もちろん、京都と大阪の演劇は全然違いますけど、別に地域によってのカテゴリを設けても。
__ 
ああ、なるほど・・・。そう思うと私は、それぞれのエリアの「良くなさ」を追求しようとしていました。例えば、大阪のお客さんの「とりあえず盛り上がる」というサービス精神、とかね。
吉田 
まあ、高いところからみたらそういう観点になるかもしれませんね。やる側からすれば、あまり関係はないと思っています。大阪のお客さんの盛り上がりについては、確かに。でも、反応をちゃんと返してくれる、あったかい客席はありがたいですよね。
__ 
暖かいときの盛り上がりはとても楽しいですよね。あれは本当に、世界遺産に登録した方が良いと思うぐらい。

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吉田

質問 ナツメクニオさんから 吉田 青弘さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、劇団ショウダウンのナツメクニオさんからです。「将来どうなりたいですか?」
吉田 
いい死に方をしたいですね。精神的な意味で言えば、後悔を残さないように満足して死にたい。もし幽霊になるとしたら、死ぬときの心残りがやっぱり強く出るんじゃないかなと。

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2015/春
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吉田

「道」

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか。
吉田 
究極は、立っているだけで感動させるというか。それだけで見ている人の心を揺らせるような。
__ 
それは、戯曲の演技の上で?それとも、役者そのものの力とか?
吉田 
両方ですかね。そのお話の色んなものを踏まえた上で、そして、役者が舞台に出てきた時の力も。僕は実は、言葉はあんまり重視していなくて。立っているだけで伝わるものは伝わると思っています。それでこう、ぶわっと感じさせられたらいいな、と。割と、身体を動かす事はずっとやってきたので、身体そのもので何かを感じさせる事にこだわりがありますね。
__ 
それは鍛えられる事でしょうか?
吉田 
出来ると思います。
__ 
どうやってでしょうか。
吉田 
表面的なところで言うと姿勢。その人の仕事の仕方や生き方が結構出るんですよね。剣道とか柔道とか華道とか、「道」とつくものは結局のところ、そこに行き着くんですよね。
__ 
どんな姿勢であるべきか。
吉田 
呼吸もそうですし、精神的な居方も。見る方の意識もそれで変わってくるんですよね。そこに気を付けて生きる。と同時に、ちゃんと生きる事ですよね。お芝居していると実生活がちゃんと出来ない人が多いですけど、ちゃんとするだけで見えてくる世界が広がると思うんですよ。
__ 
歯医者にちゃんと行くとか、ハローワークに行く事とか・・・
吉田 
ちゃんと仕事する事、とかですね。演技に出ると思うんですよ(まあ、リアルの経験が無くてもそういう雰囲気が出せてしまう人もいるんですけどね)。
__ 
芝居をやった事のない人が参加するWS公演とか、面白いですよね。
吉田 
そうですよね。積み重ねてきたものがあるから。けれど、同じ事を継続してやろうとするとそれは役者の領域になると思います。

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吉田

磨き続ける

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
吉田 
そうですね、確かに年齢的にもそろそろ攻めないといけないですよね。僕、所属もしていないしいい年齢にもなったんで。でも結局自分を磨き続けるしかないんちゃうかなと思いますよね。その上で、求められているところで努力すれば認めてもらえますし。それは、その後に繋がっていく事だと思っています。
__ 
磨き続けるという事ですね。
吉田 
そうですね。80歳になっても続けているようであればいいなあと思います。

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吉田

カイワレダイコンの種と試験管立て

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持っていまいりました。どうぞ。
吉田 
ありがとうございます。(開ける)おっ、カイワレ。と、試験管。
__ 
水だけで育つそうです。10日で食べられるそうです。毎日の食卓に。
吉田 
おおー。カイワレって大根になるんですかね?
__ 
どうなんでしょうね。カイワレ大根と言うてますが、私の予感だとそれは大根にはならないような気がしますね。
吉田 
あー。そうですかね。
__ 
大根にならないようにDNA操作をされているんじゃないですかね。
吉田 
このカイワレの状態から根が出て大根になっていくんですかね。
__ 
「大きい根」ですから、そうでしょうね。
吉田 
ネギとタマネギも、タマネギから出た芽がネギになるんですかね?
__ 
なると思います。が、豆苗と同じで、美味しさという意味ではあやしいと思いますが。
吉田 
ああ、そうか。確かにあれは何か違うかな。


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2015/春
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吉田

劇団ショウダウン「パイドパイパー」

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、ナツメさんはどんな感じでしょうか。
ナツメ 
最近はですね、次回公演「パイドパイパー」の台本に追われています。もう終わりが見えていて、大団円になりつつあるんですけど。最初は勢いに任せて書いていたんですが、最後の方で伏線がちゃんと回収されているかも見ながら、という作業ですね。止め時が分からない部分でもあります。あっさり終わらせてももったいないし、かと言って長すぎても退屈になるので。同時に、稽古も正念場を迎えつつあります。
___ 
劇団ショウダウン「パイドパイパー」。この作品は、ハーメルンの笛吹き男の伝記を元にした作品なんですね。
ナツメ 
そうですね。この事件については実際に結論が出ている訳ではないのですが、そこに着目して当時の時代状況も元に荒唐無稽な作品に仕上げたという形ですね。
劇団ショウダウン
作演出ナツメクニオを中心し、2001年5月に京都にて旗揚げ。既成の劇団という枠にとらわれず、いろいろな物を貪欲に吸収しながら、「頭のいらないエンターティメント」をテーマに大衆娯楽の王道を追及し表現しています。特に近年のナツメクニオが取り組む実在の歴史をもとに したシリーズが人気。今までに切り裂きジャック、乗組員が忽然と消えたマリーセレスト号の事件など現代も様々な憶測が飛び交う物語を作家ナツメクニオが大胆解釈した歴史エンターテインメント として上演、好評を博しています。(公式サイトより)
『パイドパイパー』

時は13世紀、西暦1284年
とあるヨーロッパの街で笛を吹いた一人の笛吹芸人。
子供たちを集め、どこかへ消えた伝説のトリックスター。
目的も、正体もわからぬまま、物語だけが残され、
そしてそのミッシングリンクは千年後の未来に甦る。
歴史の陰にその姿を見せる謎の笛吹。
戦争の中で、平和の中で、王宮で、死の間際で、
そして生誕の傍らで何かを探し求める彼ら、彼女らは、
いつしかこう呼ばれていた、
笛を吹く者、『パイドパイパー』と。

さらに東京公演のみにて
パイドパイパーの舞台裏で進行する
もうひとつの奇跡の物語を
林遊眠の一人芝居でスピンオフ!!

林遊眠一人芝居、
最新作『千年のセピラ』 こちらもお見逃しなく。

大阪公演
2015年8月1日(土)~2日(日) 
HEP HALL
※『千年のセピラ』は東京公演のみの上演です。

東京公演 (東京公演のみ2作品を上演!)
2015年9月4日~6日
あうるすぽっと

これは、ハーメルンの事件の謎から生まれる・・・

ナツメ 
ハーメルンの笛吹き男。ドイツに伝わる、実際に起こったとされる事件。街に巣食う大量のネズミが笛吹き芸人によって退治されて、けれど街の人が報酬を支払わなかったために、笛吹き男がその街の子供を全員連れ去ってしまったというお話ですね。「パイドパイパー」の前半ではその謎が見所になります。
___ 
そもそも、これは史実かどうか定かではないんですよね。
ナツメ 
そうですね、当時の文献が今では残っていないという事情もあって。ただ、実際に子供が行方不明になった事件はあったそうです。大人もいなくなっただとか、全員少年十字軍に徴収されただとか、ペストがあっただとか。ただ、百人以上の人がいなくなった事件は確かにあったそうです。
___ 
なるほど。
ナツメ 
ハーメルンの事件は1284年なんですが、1260年にハーメルンの北の方で紛争があったそうなんです。そこでハーメルンの警備隊の人たちがそこで全滅してしまって、それが人さらい事件に繋がったんじゃないか、みたいなウワサもあるんですね。当時のイスラムの国々との関係だとか。詳しいお客さんにはニヤリと笑って頂けるようになっていると思います。
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どんな公演になりそうでしょうか。
ナツメ 
あえて言えば、いつも通りだと思います。出演者と場所が違うだけで、そこに掛ける労力は一緒なんですね。一人芝居も同じですね。とにかく、2時間の枠の中でご覧頂いたお客さんが、驚いたり面白いと思っていただいたらそれで成功なので。
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ありがとうございます。現在、稽古はどんな感じでしょう。
ナツメ 
台本を書きながら、全体のシーンを中心に作っていっています。今回、21人もキャストがいるんですが、どの方もそれぞれ面白いし、武器を持っている人だと思うんです。どんな人がいるのか、お客さんに見に来てもらえたらなと。