生物の工夫

__ 
今、市原さんは何に興味がありますか?
市原 
動物が、どういう風に環境に自分を適応させてきたかが興味ありますね。
__ 
というと。
市原 
進化する上で、色んな工夫をするじゃないですか。子供の残すためにからだを変化させたり。
__ 
虫とか気持ち悪いですよね。でも、とても機能的で。中でも住まいの害虫のデザインって、シンプルで洗練されててちょうど良く不快で、生き残りやすい形態なんだなあと思います。カマドウマとか。どんな虫が苦手ですか?
市原 
ゴキブリは苦手ですね。ちっちゃい頃から刷り込まれているので。よく食べれるとかいいますけど、絶対無理ですよね。
__ 
色んな特徴がありますけど、上から見た時のあの楕円形のフォルムがね。他の特徴はさしおいても、あの形だけは。

見えない

__ 
作品を作る時に、何を俳優に求めますか?
市原 
体を動かす作品が多いので、動けるというのは求めてるかな。あと、見た事のあるのはやらないでほしいと思います。見た事あるのは、見たことがあるからやりやすいんですよ。安心するし。何だろう。
__ 
コピー?
市原 
コピーなんだけど、ある形というか。TVで見たようなものとかは、そういう表現は・・・
__ 
とてもよく分かります。私も大嫌いです。自分で何も考えていない演技は見てもしょうがないですしね。演技ってコピーしやすいし、表面的には格好良く仕立てる事も出来るけれども、自分で作ったみたいな手垢が見たいなあと思う。
市原 
なんか、演劇なんてやってる訳だから、誰に規制される訳でもないから。安心させなくていいし、別に、誰に受けなくてもいい訳だし。既にある「何々っぽいもの」とかは自分が演劇では観たいと思わない。何か、少しでも新しい表現ができたらと。新しい物はなかなか出てこないと分かっているけど。

質問 藤吉 みわさんから 市原 佐都子さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、劇団ズッキュン娘の藤吉みわさんからです。「作品を作るうえで、自分の根底にある動機は何ですか?」ちなみに藤吉さんは、人生は辛い事ばかりだけどいつか良い日があるという精神だそうです。
市原 
うーん。自分がいま見たいものを作る事ですね。

見たいもの

__ 
いつか、どんな作品が作れるようになりたいですか?
市原 
今は、もう少し大きな箱でやってみたいというのがあります。いまつくっている世界を大きな箱にのせたらどうなるのか見てみたいです。私の演出力とか役者の演技力とかお客さんが入るかどうかという問題はありますが。
__ 
大きな事がやりたいんですね。予算が300億くらいあったらどうしたいですか?
市原 
どうしようかなあ。お金はあった方がいいんですけど、何かしたい時にお金があったらいいなと思います。お金があっても想像力は働かないから。

ひとりの手

__ 
もしあれば、最近考えている事を伺いたいなと思っています。
市原 
どうだろうなあ。そんなに面白い事考えてないかなあ。あ、ここ最近思ってた事だけど、人間って一人で生きれるように進化してるじゃないですか。すごい一人でいれるなって思っていて。みんな一人になりたがってるのかなと。下手したら子供も一人で産める。そうなると、一人じゃない状態ってどんな事になるのか、と。
__ 
なるほど。
市原 
玉子物語の中でもあるんですけど、誰かに触られるという事は一人じゃないって事ですよね。その感覚を一人でも得られるように、腕から先の感覚を切り離す能力を人間が身につけたら、その腕で自分を触ったらまるで他人に触られているようになるんじゃないかと。そういう事がもし出来たら最強だなと思って。寂しいなあと思った時に感覚を消した自分の手で感覚の有る自分の頭を撫でて癒す。動物が進化するみたいに、人間もそういう風に進化したらどうなるんだろうと。
__ 
ある漫画に「自然界ではつがいになる個体の方が珍しい。だから、異性に出会えずに死んでいく個体が不完全とは言いがたい」みたいな台詞があります。私は感動しました。一人でもいいんだ、と。孤独を好む個体としては。
市原 
カタツムリとかより全然、人って人に出会うから。人に出会いすぎて孤独になりたい、と思うのかもしれない。
__ 
そして、孤独の能力が進化しまくったら、他人化した手を使ったセルフセラピーが実現すると。確かに最強ですね。
市原 
そうなったらやばいなと思う気持ちを持っていて。誰かと関わりたくないという気持ちって、誰かと関わるのが大変だからじゃないですか。人間って思うようにいかないものだから。それをあえて、演劇もそうですけど、あえてしてる訳ですけど。一人でいる事も大事だけど、一人じゃない事にも価値があって・・・何だろう。そういう力を手に入れられるとなった時、だめだめだめ、と、それが素晴らしいと思えない。でも、そういう能力を持って、自分の頭をよしよし延々してるわけではなくて、人との関わりも持ちつつ傷ついたときに自分をよしよしよしよしして毎日頑張ってる人がいたならその人はなんか偉いなと。でもそれもどうなのかなとか悩みます。そうゆうことをよく考えます。
__ 
孤独を大事にしたい者としては、そういう能力には、いや、ちょっと惹かれるかも。
市原 
逆に、自分で抱え込まない人もいますよね。自分では全く持ち帰らない人。ちょっと傷ついたらすぐ人に言う、みたいな。そういうのは私もあんまり好きじゃなくて。家に持ち帰って消化しなよ、と。Qでもそういう集団でありたくて。まず持ち帰って考えて、その結果を見せてほしい。自分一人で考えることが大事だと思う。別に、話は聞きますし慰めもしますけど。
__ 
それが、役者に求める態度?
市原 
あんまりにも自分で熟成させないのはどうなの、と思います。

頑張れ

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
市原 
どんな感じだろう。どんな感じかな。Qはつくりたいときに集まってそのときのベストを尽くし作品を残していきたい。それが始めたときからの気持ちです。あんまりQのメンバー達に責任は持てない。私にはその力がなく、というか誰でも結局は自分のことには自分で責任持たないと誰も持てないから。二人とも私の作品に出るという事を価値に思ってくれているのは信じています。それに応えていきたくて私は私の作品に関する限りは、責任を持っていい作品にするし、関わって良かったと思えるものにします。それ以外は頑張れって感じで。自分の生活の価値は自分で責任を持ってほしい。自分自身にもそれは言えて。個人的に書く力をもっと付けて、個人的な表現で人に読んでもらえるものをつくりたいです。つくりたい欲求がなくなれば止めるしかないけど、でも長く続けて今のメンバーもいて一緒に変化していきながら作品を残していきたいなって夢はあります。
__ 
ありがとうございます。頑張って下さい。京都公演、とても楽しみです。

熱着アップリケ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
市原 
え、プレゼント貰えるんですか。嬉しい。
__ 
ま、大したもんじゃないです。
市原 
ありがとうございます。(開ける)これは何ですか?あ、Qだ。凄い。どこに付ければいいですかね。
__ 
そうですね、受付とかで。アイロンで付けられるヤツです。多分。


終演後1

__ 
今日はありがとうございました。面白かったです。思ったままを伺っても宜しいでしょうか。
市原 
あ、どうぞ。
__ 
性に対する敬意が無いのかなと思いました。
市原 
ない?
__ 
私にももちろん、「性に対する敬意のなさ」はあるけど、それをここまで表に出されて強調されると、逆に気持ちいいな、って。
市原 
なるほど。
__ 
芝居が始まった瞬間、それが伝わって。
市原 
私はそうは思わなくて。「性=すごく崇高なものとして扱う」、というのが「敬意」では別にないと思うんですね。
__ 
おお・・・なるほど。
市原 
その・・・はい。
__ 
10年くらい前に「エロ可愛い」が流行ったじゃないですか。世の女子高生に。エロという崇高なものを「可愛い」で矮小化するなよ、と思った事があります。
市原 
そこでつかわれているエロって別に崇高じゃないんじゃないですか。俗っぽいというか。
__ 
うん・・・でも、「玉子物語」ではエロを、ちょっと怖い、ネガティブな何かのように扱っているように思えて。
市原 
ネガティブ・・・。
__ 
違うかも。でも、いつの間にかそういう目で役者を見ていて。そのうち、それが楽しくなってきましたけど。
市原 
エロを崇高なものとして扱わないといけなくてそこを外れると冒涜みたいなのになってしまうんですかね。私はそういう枠を取りたいと思っていて。凄く。より、実感を持てて魅力的なものとして見たい。目を背けたくなる事とかをむき出しにやるという事は冒涜になるとは思ってないですね。

終演後2

__ 
私は彼らを性の冒涜者として見てしまったけど、彼らは彼らで楽しい日常を送っていると思った。そうなんですよ。生活感があったような気がする。家賃1万の、安っ!と思ったけど。ナメクジを吸収したり。そんな生活を描きたかった?
市原 
生活というよりも営みというか。人間が生きててする、セックスとかご飯を食べるとか排泄とか。この舞台セットみたいな四角の中に営みをする人間が詰まっているんだと思って・・・。
__ 
四角にヒトが詰まっていて、明かりが付いていて、それがいくつもいくつもあって、夜に遠くから見ると光の海のようになっていて、でもクローズアップすると食べたり生殖したりしていて。その実在感。

終演後3

__ 
そして、出てくる登場人物たちがとてもファニーでした。見応えがありました。一人ひとり面白かったです。市原さんはどいつがお気に入りですか?
市原 
お気に入り・・・全部お気に入りですね。
__ 
私は玉子ちゃんと住人の踊りがとても良かったです。ワッパーの絶叫とか。伝説的な公演でしたね。
市原 
そうですか、ありがとうございます。
__ 
あの、マンションの屋上にいる人達は何だったんですか?
市原 
区切られた狭い中に人をいっぱい入れたいなと思って。鶏ですね。玉子を産む。
__ 
玉子を産むというのがまたグロテスクなのかも。でも、感動的でした。

終演後4

__ 
KAIKAはどうでした。
市原 
来るまでは結構不安だったけど、来てみると意外と大丈夫だったです。劇場の人が親切です。
__ 
奥の引き戸を外して階段を見せるのが上手くいってましたよね。
市原 
良かった良かった。
__ 
最後に、ひとこと何か。
市原 
誰に向けて。
__ 
京都のお客さんに。そして、未来の自分に。
市原 
京都のお客さんに・・・いやあ是非見て欲しいです。なかなか来れないので、見て欲しいです。見てソンはない・・・(笑う)
__ 
未来の自分、25年後ぐらいの。
市原 
未来のわたしに。恥ずかしいな。
__ 
白髪が生え始めてるかな。
市原 
白髪を染めないでほしい。
__ 
それは何故?
市原 
なんか、真っ白にしてお団子にしたいです。
__ 
素晴らしい。可愛らしいおばあちゃんになってほしいですね。

劇団ズッキュン娘 第8回公演「2番目でもいいの」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
藤吉 
よろしくお願いします。すみません、ちょっと声が枯れてて。
__ 
いえいえ。昨日まで本番だったんですもんね。
藤吉 
ありがとうございました。見に来てくださって。
__ 
お疲れのところ申し訳ありません。昨日まで公演の、劇団ズッキュン娘「2番目でもいいの」。凄いタイトルですね。
藤吉 
そうなんです(笑う)再演なんですけど、タイトル通り不倫の話です。私が演じる愛人の主人公と、阿部みさとさん演じる、不倫をされている奥さんの話。ちなみに、男性は一切出てこないんです。
__ 
あ、そうでしたね。
藤吉 
そうなんです。劇団ズッキュン娘の公演には、男の人は登場しないんです。
__ 
「2番目でもいいの」。大変面白かったです。この作品にはですね、女性の生き方の厳しさが大きなテーマなのかなと思ったんですよ。今回はその辺りも伺えたらと思います。
劇団ズッキュン娘
藤吉みわが届ける、エンターテイメント。ダサくて可愛い“ダサかわ”集団、ズッキュン娘。今後も、公演は女性のみで行う予定。「欠落していても、間違っていても、そのままの君で全然大丈夫!」0か100かでしか生きられない不器用過ぎる人間たちを完全に“肯定”し、底知れぬパワーを解き放つ。キャッチコピーは「純度100!不純度100!右手に愛、左手に包丁持って 全力スマイル!」人間は表裏一体。“純情という仮面を被った君は、鋭い刃物を隠し持つ”人間の清らかな部分と醜い部分を描きながらも、全体的にはポップでキャッチーな作品へと仕上げていく。そして、人の心に突き刺さるメッセージを込めた極上エンターテイメント劇を目指している。(公式サイトより)
劇団ズッキュン娘第8回公演『2番目でもいいの♥』
脚本:藤吉みわ。演出:滝井サトル。公演時期:2015年8月14日(金)~16(日)。会場:南大塚ホール。

不倫堂々

__ 
まず伺いたいのですが、藤吉さんにとって今回の作品はどのような経験でしたでしょうか。
藤吉 
そうですね。初演の時はこの作品がどのように映るか分からなかったのですが、意外と反響がありまして。それがありがたいことに、今回の再演に繋がりました。改めてこの作品を読み直しますと、結構大変な物語だなあと思いました。
__ 
藤吉さん演じる主人公が、不倫を堂々としているのがまず凄かったですよね。
藤吉 
不倫は基本的には世の中からは悪とされていて、けれど堂々としている。というのが一つ面白いところだったのかな、と。
__ 
不倫とは、あえて説明すると、一般的には結婚している男女が配偶者に黙って他に恋人関係を作ってしまう事ですね。作中、主人公はもちろん、浮気される奥さんも苦しんでいましたね。この作品をご覧になったお客さんに、どう思ってもらいたかったですか?
藤吉 
私の演じたマチコという主人公が不倫をして、その正妻のヒトミと対峙し、でも最後には何故か仲良くなってしまう、という話なんですね。もし自分がそのシチュエーションに置かれたら、ヒトミとそこまで仲良くなれるのかというと難しいところです。でも、舞台なので飛躍出来たんですね。ありえないけど、もし二人が仲良くなったら面白いかな、と。また、ハッピーエンドになってほしいという願望は、根本的にあります。
__ 
ありえないハッピーエンドになってほしい。
藤吉 
不倫が泥沼になって、相手を罵りあって、裁判をして、とかそういう事ではなく。それと、私は不幸な事を別の見方で切り取ったら、もしかしたら面白くなるんじゃないか、そんな事をよく考えるのかもしれません。
__ 
なるほど。
藤吉 
作品の捉え方は、お客さんに委ねてしまうのですが、根本的には「明日も頑張って生きていこう」と思ってもらいたいです。人生は基本的には辛い出来事の繰り返しだと思うんですけど、観終わって、何らかの活力になれば良いなと思っています。

憎めない人々

__ 
ちょっと話題を変えて、劇団ズッキュン娘でやりたい事を伺えればと思います。紹介文では「ダサくて可愛い“ダサかわ”集団」とありましたが、「2番目」では確かに前半部のダサさがとても見やすく表現されていて面白かったです。そして後半はドラマを見せる事に成功していて見応えがありました。そうした作り方には、どのようにして辿り着いたのでしょうか。
藤吉 
やっぱり自分から遠いところが作品に出る訳ではなくて。自分自身を投影するところがあるんですよね。元々コメディというか、明るいポップな部分があって、それを全面に出していくと、こうした作品になるのかな。自分独特の昔からある、人に楽しんでもらいたい、和ませたい、根っからのサービス精神が子供の頃からあったみたいです。笑いがそ得意な訳じゃないですけど、前半はお客様の心がつかみやすいように導入部分で笑わせて、物語にすっと入っていけるように。スポンジのような気持ちになって、本質が深いところにまで染み込んでいければと思います。
__ 
子供の頃から、人を笑わせようという気持ちがあった?
藤吉 
それは両親譲りかもしれません。父はとても温厚な人で、怒ったりしないんです。そういう父親が笑わせてくるのに影響を受けているのかなと思います。じゃりン子チエって知ってます?父が凄く好きなんです。
__ 
もちろんです。もちろん好きですよ。
藤吉 
一緒に見ていたらじゃりン子チエを好きになっていて。笑いの中に、人情とか、泣いちゃうようなエッセンスも含まれていて。寅さんみたいなベタなものも好きな人だったので、私も自ずと取り込んでいたところがあるのかもしれません。
__ 
いいですよね、じゃりン子チエ。
藤吉 
チエちゃんはお父さんのテツが働かないから、自分でホルモン屋を経営してるんですよね。
__ 
そうそう。ネコも仕事するし、あり得ない世界ですよね。
藤吉 
あり得なさすぎる設定ですけど、面白くて感情移入出来て、心情表現がしっかりとあって、深い部分を突いてくる台詞も結構ある。そういうところが物語には必要なのかなと。
__ 
西成を舞台にした人情モノというと、釜ヶ崎のカマやんもオススメです。関西弁の日雇い労働者で、情けないんですが憎めないんですよ。ズキュンとくるでしょう。
藤吉 
ズキュンときますね。ダメなんだけど憎めない人が好きなんですよ。私もダメダメ人間ですが。
__ 
いえいえ。
藤吉 
そういう人にはやっぱりその人だけの魅力が備わってる。そんな人を舞台上にも登場させたいなという気持ちがあります。今回の正妻のヒトミさんもそう。不幸の渦中に放り込まれるけど、不倫相手のマチコを許して、マチコと旦那との間に子供が生まれるのも許しちゃう。わたし、ちょっと浮き世離れしているようなキャラクターが好きなんですよね。

性と性質

__ 
よく、「女は愛嬌」と言いますよね。「愛嬌」を身につけるのはもの凄く難しい。半年訓練したところで、よく観察したらすぐ見破られる。と言って、持って生まれたものではけしてなく、むしろ幼少時からどのように他者とか外界と接してきたかがとても重要な要素として「愛嬌」を形成するものだと思う。
藤吉 
そうですね。
__ 
今泊まっているゲストハウスにいる台湾の女の子がですね、そういうのが天才的に上手いんですよ。すぐ男の子と仲良くなれるんです。べつに女の子とも喋りますけど、男の子に取り入る能力がとても高いんですよ。ナチュラルな可愛さを持っている。私も昨晩遅く、話掛けられたんです。「リモコンの使い方を教えてください」みたいな事で。日本のTVのリモコンだから言葉と使い方を教えてあげないといけないし、細かいものだから顔と顔とが近くなり、親近感が増す。共有スペースのものだから自然に「今日はもう寝るの?」みたいな話になる。あれは素晴らしいカマトトでした。
藤吉 
そういう方、いらっしゃいますよね。
__ 
彼女にとって、男に媚を売るというのはどういう事なんだろうなと。
藤吉 
私も今27歳で、色んな人と関わって来ましたが、そういう方もいらっしゃいましたね。でも、モテたいオーラが如実に出ると男女問わず引いてしまうかな、と。
__ 
ええ。引きました。
藤吉 
でも上手な人って気付かれず、しれっとやるんですよね?。
__ 
凄い。
藤吉 
全員ではないですけど、女の人はしたたかだなと思いますよね。・・・あと、ここぞと言う時、女性は物怖じしないんだろうなあと思うんです。きっと女の人は、立ち向かっていく強さみたいな物を持っているんだろうなと常々思うんです。
__ 
立ち向かう。その時に目標を見定める判断力があるんでしょうね。危機的な状況に置かれてもその場にすぐ適応出来る、みたいな。うーん、敵を判断する能力に長けている?
藤吉 
それから、一般的に女子って群れる生き物だと言いますよね。確かにその通りだと思いますが、逆に群れるのが好きではない人もいるんですよね。私も昔は群れたがった一人なんですけど。でも、女の人は共通の敵がいると群の結束力が上がるんですよね。そういう底知れない力や陰湿さもある。裏で団結するようなところが女の人の怖さでもある。私はそういう女の部分が苦手で・・・ズッキュン娘は女性しか出ない劇団なので、自分の立ち振る舞いもカラっとしたいなとは思っています。

美人のなりかたち

__ 
そうした女性のダークサイドと対立するのが「美人」だと考えています。立ち振る舞いの美しさ、という意味での「美人」ですね。
藤吉 
顔が抜群にいいとかスタイルが良いとかじゃなくても魅力的な人って数多くいますよね。その人の内面が行動に出るという事だと思います。
__ 
内面を磨く。
藤吉 
表面的な美しさって必ず衰えるものだと思うので。でもその人の生き方や物事に取り組む姿勢は、その人の顔や行動や雰囲気全体に醸し出されるものですよね。
__ 
種によって異なる、動物の形態みたいなものなんじゃないかなと思うんです。人間の場合は人間関係がフィールドなので、その人の性格が顔というインターフェイスに表れるのが自然なのかもしれません。何故かは置いといて。それを判断する人間の脳の精度と教育もまたよく出来ているなあと思う。
藤吉 
反面、人間って分からない部分が沢山ありますよね。陽気で面白いなぁと思っていた人もやっぱり、陰の部分を持っていますし。過去の経験があってこそ今の明るさがあるんだろうなあ、と。また年齢の若い割にとても落ち着いている人を見ると、何故そんなに落ち着きを持つようになったのか興味が沸くんですよね。人間って多面的で、話してみなければ分からないようなその人だけの成り立ちがありますよね。
__ 
そこに興味がある?
藤吉 
そういう探求心があるのかもしれません。もちろん、そうした自分の歴史を話したくない人もいますので、無理矢理ほじくり出そうとは思っていませんが、勝手に私の中で考えたりする事はあります。
__ 
その人の形成史ですよね。

質問 百花 亜希さんから 藤吉 みわさんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、百花亜希さんから質問をいただいてきております。「俳優として一番必要なものはなんだと思いますか?」
藤吉 
そうだなあ・・・今回再演する上で思ったんですけど、新鮮さを保つ事だと思うんですね。稽古を繰り返していくと、「次こういう演技が来るな」とか、「こういう気持ちになっておかなきゃいけない」とか、そういう余計な事ばかり考えてしまって新鮮な気持ちで舞台に存在していない事はありました。そのような事もあって公演期間中に心掛けている事があるんですけど、私は自分の出番がギリギリに迫ってから舞台袖にスタンバイしています。出番の1分前位になって袖に行きます。舞台に立つ前には余計な事を考えず、まっさらな気持ちで望もうと思っています。
__ 
その時に生きる。
藤吉 
まさにそうですね。もちろん台詞があるので決められた事を喋らないといけないんですけど、その瞬間に存在するのが大切なのかなと、今回の再演では特に思いましたね。
__ 
それは、台詞を聞いている時ももちろんそうですよね。
藤吉 
そうですね。受けるのが上手な女優さんって凄いなあと、いつも思います。
__ 
素晴らしい。自分のリアクションをプログラミングしていかないって凄く勇気のいる事なんだろうなあと思います。失敗すると怖いですしね。
藤吉 
そうですね・・・ちょっと言葉は悪いけど、まぁ間違っても何とかなるだろう、という気持ちですね。

「女」

__ 
「女」という厳しい生き方について。選択の機会なく「女」という役割を担わされ、言ってしまうと出産だとか魅力だとかの価値を勝手に期待され、実は男以上に泣いたり弱ったりが許されない性別だと思うんですよ。甘える事は許されるかもしれないが、あえて道を踏み外す事への抵抗は男以上だ。大嵐の中、重いカートを引きずって歩くようなものだと思う。気が付いたらカートはどんどん重くなっていく。それどころか知らぬ内にカートが無くなってたりして。
藤吉 
そうですね。
__ 
そこで、これから女性を始める人に一言。
藤吉 
女性を始める。そうですね、でも生まれた時には既に、自分が女性なんだ・男性なんだという意識は備わっていると思うんです。現代は、女性の生き方は固定されなくなっていると思うんですね。男女共に結婚年齢が上がり、女性も仕事をするというのが当たり前になって、子供を持たない事を選択する女性も増えていったり。女の人の生き方って、昔と全然違いますよね。
__ 
女が、ようやく個人としてあれる時代になったと言えるのかもしれない。
藤吉 
私個人はいずれ結婚をして子供を持つというのが理想ではありますが、それを望んでいない人もいらっしゃると思いますし。自分が一番、悔いのない生き方をすれば良いと思います。どうしたって後悔をして生きていくのが人間だと思いますので、いつも模索しながら生きていけば良いんじゃないのかな。

ズッキュン娘のこれから!

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?次回の宣伝ですとか。
藤吉 
10月に5団体が集結するハロウィン企画がありまして、ズッキュン娘も出演します。その企画は20分のオムニバスですね。11月には何度も再演している「グッバイ、マザー」という作品を上演する予定です。本公演は来年の春・2016年の4月にに吉祥寺シアターで新作をやろうと思っています。
__ 
素晴らしい。
藤吉 
ぜひ、チェックしていただけると嬉しいです。
__ 
ありがとうございます。では、姿勢としてはどんな感じで。
藤吉 
そうですね。私は大衆的でありたいと常に思っています。頭の良い作品は書けないですし、芸術的なものをやろうという気持ちもなくて。ポピュラーでお茶の間的なものがやりたいと思っています。演劇を見たことのない、抵抗がある人も見やすい作品をこれからも続けたいな、と思います。それから、女の人にももうちょっと見ていただきたいなと思いますね。
__ 
そうですね。
藤吉 
たくさんの方に見ていただけるように、客層を広げていきたいな、と。
__ 
群れない・媚びないというのは大切ですよね。それは女性にとっては強い憧れであり、同時に嫉妬の対象となる敵でもある。そして、どうしても惹き付ける。そんな存在であってほしいと思います。
藤吉 
ありがとうございました。

肉まんポーチ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
藤吉 
ありがとうございます。お忙しいのにご用意していただいて。
__ 
どうぞ。
藤吉 
(開ける)HONGKONGて書いてある。凄い。可愛い。ありがとうございます。


DULL-COLORED POP vol.16「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、百花さんはどんな感じでしょうか。
百花 
最近は、二つの作品の稽古を同時に進めています。15 minutes madeで上演する「全肯定少女ゆめあ」と、「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」ですね。
__ 
どちらも拝見します。まず「ゆめあ」はどんなお話なんでしょうか。
百花 
ゆめあという小学校一年生の女の子が、世界を救えるのかみたいな話です。
__ 
魔法少女ものですね。
百花 
そうですね。15分にまとめるには尺が足りないと、今試行錯誤しています。
__ 
楽しみです。そして、「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」は再演ですね。全国各地で上演予定とか。
百花 
そうなんです。15 minutes madeの本番が終わった翌日に東京での公演の本番が始まるんですよ。
__ 
ヤバイですね。
百花 
えへへ。ダルカラはいつもこんな感じです。ヤクザみたいな。
__ 
百花さんは、自分たちDULL-COLORED POPの事をどんな風に捉えていますか?
百花 
うーん。大人になりきれない大人達、ですね。人間的にやっかいな人が集まっている気がします。みんな性格や気質が違うし、みんな一物を持っている人が集まっています。でも悪い人はいないです。だからやってこれたのかもしれません。
DULL-COLORED POP
2005年11月、明治大学文学部演劇学専攻および明治大学脱法サークル「騒動舎」を母体に、『東京都第七ゴミ処理施設場ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で旗揚げ。主宰・谷賢一を中心にゆるやかにメンバーを入れ替えながら活動する演劇ユニット。重厚な悲劇からくだらないコメディ、ロック・ミュージカルや翻訳劇まで手掛け、演劇の可能性を隅々まで追求する欲張り劇団。人間性の最も暗くグロテスクな一面を、物語性に立脚したあくまでポップな言葉とスタイルで描きたい。(公式サイトより)
15 minutes made vol.13
公演時期:2015/8/19~25。会場:王子小劇場。
DULL-COLORED POP vol.16「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」(再演)
【キャスト】
東谷英人 大原研二 塚越健一 中村梨那 堀奈津美 百花亜希(以上DULL-COLORED POP) 渡邊りょう(悪い芝居)ほか
【作・演出・美術】
谷賢一(DULL-COLORED POP)

【東京公演】
2015年8月26日~30日 @王子スタジオ1
【大阪公演】
2015年9月1日~2日@in→dependent theatre 2nd
【岡山公演】
2015年9月4日~6日@天神山文化プラザ、蔭凉寺

だから、知らない事ばっかり

__ 
百花さんがお芝居を始めたキッカケを教えてください。
百花 
私は学生演劇も何もやっていなくて、始めたのは大人になってからなんです。普通に働いていて、ある日突然、昔舞台を見た事を思い出したんです。そこに出ている女優さんに「いいなあ」って思ったんですが、それが大人になってからよみがえって。あの頃思ってた、役者みたいのを今からでもやれるかなと。そこで突然会社を辞めて、素人でも大丈夫みたいなオーディションを受けたんです。当時、それこそ演劇をやってる人なら誰でも知ってる鴻上さんの事とかも全く知らずに。
__ 
それは凄いですね。
百花 
知り合いの人が、鴻上さんは演劇界では知らない人のいない凄い人だと言ってて。それで受けてみたのがKOKAMI@networkで。
__ 
それから駆け足で来ましたね。DULL-COLORED POPまで。
百花 
ダルカラも入るとは思ってなかったですね。
__ 
でも、社会人から演劇を始めるどころか脱サラして演劇を始めるって、もはや理想的ですよね。
百花 
そうですかね。私の理想は子役から始まって、大学でも演劇を専攻して知識を深める、みたいなのが理想だったんですよ。経験も知識も身につけていく。私はもう、現場ばっかりで知らない事が多すぎて。
__ 
今でも、知らない事ばっかり?
百花 
はい。もっと若い頃からやってればとよく思うんです。でもそれを言ってもしょうがないので。

ねこちゃん達が来る

__ 
「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」。大阪では開演前に、お客さんを盛り上げるみたいなコーナーがありましたが、そこに難航していた印象があります(私だけかもしれませんが)。ただ、案外大阪のお客さんはそこは厳しい。うーん、当事者に何年も前の事を言っても、とは思うんですが・・・
百花 
いえいえ、全然。
__ 
大阪のお客さんは上手に乗せてあげないといけない。あるいは、押していくより引いていく方がいいのかもしれない。あの時のねこちゃん達は真面目にピエロを演じていたような気がするんです。笑いを取るとき、モーターショーで例えるなら車線からはみ出さないハンドリングをしていたんじゃないか。大阪でのそれは観客席に全力で突っ込むんですよ。いやこれは本当にそういう事をお客さんが望んでいるような気がする。
百花 
何となく伝わりました。それは技量のなさだったと思います。自分も、初演を思い出すとまだまだだったなと思います。その辺り、今回はまた初演よりはパワーアップしていきたいなと思います。
__ 
失敗していてもいいと思うんですよ。失敗を面白がれる余裕が大阪の観客席にはある。東京での失敗は、そのままスベる事を意味しているんじゃないかなあと思う。あくまで丁寧さを大切にする姿勢がある。
百花 
何となく分かります。今回は、頑張りたいですね。