ボクシングを観に行こう

___ 
お話を伺っていると、俳優の肉体的なやり取りが見れるんですね。そこには徹底した間合いの感覚による見せ方が生まれるような気がします。「名前を呼ばないと届かない距離」「代名詞で届く距離」「呼びかけ言葉で振り向く距離」「手を伸ばせば届く距離」「いきなり話題を始めてもよい距離」「気配」「視線」「吐息」。それらのルールをいきなり破られたら怖いみたいな。そこの間合いを計算した芝居は、見ていて結構気持ちいいですよね。
イトウ 
ああ、なるほど。
___ 
原理的な感覚ですけど、要所要所でやられると、観客としてはコロっといってしまうんですよね。もちろん遊びも入るとして。ボクシング的な作り方を期待していまいますね。
イトウ 
ああ、ボクシング的なものを作りたいですね。プロレス好きなんですけど、プロレスって距離が絶妙じゃないですか。ああいう事がしたいですね。
___ 
そうですね。そして、予定調和じゃない間合いの戦争が入っているボクシング。
イトウ 
そうか。ボクシングが楽しく見れるのはそこかもしれないですね。
___ 
聞くところによると、札幌の方はさっぱりとした方が多いそうですね。言ってみれば情念が薄い人が多いとか。そうした方々がボクシングを見て、どう感じるのかが楽しみです。
イトウ 
情念、薄いと思います。薄いんじゃないかな。だから、楽しいものが好きですよね。

メッセージ 赤星マサノリさんから イトウワカナさんへ

___ 
前回インタビューさせて頂いた、赤星マサノリさんからメッセージです。「僕にまた一人芝居を書いて下さい」。
イトウ 
あっはっは。赤星くん友達です。「やりましょう!」。
___ 
どんな話を書いてあげたいですか?
イトウ 
どんなのがいいですかね?赤星くん、もう大概の役はやってきてるはずだから。でも、みんなが見たい赤星マサノリは提示したいんですよね。彼はそこを分かっている、いい役者だなあと思います。「見たことがない」「これが見たかった」の両方を成立させたいですよね。何だろう。気持ち悪い役?いまパッと出てきたんですが妊娠させたいかな。子育てもの。
___ 
赤星さんの母親役はちょっと、私の記憶にはないですね。ご本人は大抵の変態的な役どころはやってきているはずですが。
イトウ 
エプロン着せたいですよね。
___ 
理想的イクメンか。意外と、レディコミに出てくるような理想化された男性像はやられてない気がします。
イトウ 
壁ドンしかしない男性とか、客席に向ける角度が固定されている人間とか。ちょっと上目遣いの角度で固定されているから車にすぐはねられるみたいな。そういう扱いをして怒られないかなと思ってたんですけど。実は昔、一人芝居で赤星くんを演出したんですけど。
___ 
拝見しました。よく分からないヒモの役でしたね。
イトウ 
そうですそうです。ありがとうございます。ちょっとフェチっぽい役だったじゃないですか。お客さんから、「全部むき出しで女性に向かい合っていく赤星さんが見れてうれしいです」みたいな感想を頂きましてすごく嬉しかった。よりかっこいい赤星くんを見せたかったので稽古場で演出している間中、「キャーかっこいい!「今みんなキュンとしてます!」的なかけ声を入れてましたね。

おじさん性について

イトウ 
私、おっさんなんですよ。今回のチラシの紹介文で上原日呂さんが書いてくださってますけど、根がおっさんで。
___ 
自分の中のおっさんを、確かに感じているんですね。
イトウ 
よく「子宮で考えたような芝居だ」とか言われるんですけど全っ然そんな事はなくて。意外と理詰めで書いています。理詰めとロマンチック。
___ 
おっさんか。ストリップ小屋のおっさんが私にとってのスタンダードなおっさん像なんですよ。客席に座ってて、飽きてスポーツ新聞を広げているおっさん。でも、決められたところで一斉に拍手する、みたいな。
イトウ 
(笑う)もうアレですよね。スケベなのを見に来たのに、飽きちゃう。それ凄いな、その魅力。お金払って見に来て途中でどうでも良くなる。般若心教の世界だな。
___ 
でも結局、スナックの姉ちゃんに盛り上がるおっさんらという姿がどうしても好きなんですよ。

イントロダクションを誰かに

___ 
「蒸発」。どんな方に見ていただきたいですか?
イトウ 
他人と関わってて、若干飲み込めない事が多い人は面白く見れると思うんです。流せる範囲でのムカつきを日々自覚する人は楽しめるんじゃないかと。人にぶつかられて謝られなかったのを忘れずにいる小さな自分。
___ 
それを解消させる?
イトウ 
とにかく身勝手で自分の都合しか喋らない人しか出てこない作品なんです。思いやりのない、己の正義だけで動いている人達なんですよね。仕事終わりで見に来た人にはおすすめかもしれない。初演の時、平日20時の公演がほとんどが仕事終わりのお客さんで、上演中と終演後はおかしな盛り上がりでした。
___ 
それは、もっともすばらしい上演の形ですね。
イトウ 
それは本当に、そうなりたいんですよね。変な気分になって、普段食べないような果物を買って帰ってしまう。そんな作品が作りたいんです。普段しない事をしてしまう、その入り口みたいな事がしたい。そういう意味で「intro」なんです。観に来てくれた人のその後の時間のイントロダクション。私たちにあまり色はなくて、お客さんのものになりたい。

「無意識でやっちゃうのは怖い」

___ 
キャスティングする時、演出をする時、俳優に何を求めますか?
イトウ 
第一が体型と声質です。私、耳がちょっといいっぽくて。
___ 
あ、聴力が。
イトウ 
いやな声の人とはやりたくないというか。主観ですけど。それから、私たちは長い時間を掛けて作るのを大前提としていて。たくさん寄り道をしたいんですよ。全然立ち止まらなくていいところでわざと立ち止まるみたいな事をしていて。そういうめんどくさい作業につきあってくれる人とじゃないと、と。そういうめんどくさい事が待ってますけどいいですか、と聞いています。
___ 
「立ち止まらなくていい場所で立ち止まる」とは?
イトウ 
役者に、「何でそういう事をしたんですか?」と聞くんです。聞かれた人は「こうです」とか、「全然気が付いていませんでした」と。それに私が「ふーん。分かりました」つって。そしたら、考えるじゃないですか。「ん?」って。役者の考えるポイントを増やしたいんですよね。何となくやっちゃってる事を意識下に置かせたいというか。本番って役者さんのものだと思ってるんですけど、(私の性格でもあるのかもしれないんですけど)無意識でやっちゃってる部分を減らしていきたくて。そうじゃないと私が信用できないのかな。あと、無意識でやっちゃうのは怖い。
___ 
なるほど。
イトウ 
役者の育成も同時にやっていかないといけないという状況もあって、私が今のところたどり着いたのはこういうやり方です。
___ 
イトウさんと役者さん達の、意識と無意識の紐帯の束が出来て、その束の内部でも色んなやりとりが串刺し的に発生していると思うんですけど、そこから生まれる一体感というのがあるのかもしれませんね。
イトウ 
そうですね。そんな光景を見ている他の役者も「あ、そういう事を聞くんだ」ってなって。あと私もいじわるなので、「今の演技、良かったって思いましたよね?」って聞くんですよ。「良いと思ってます」と答えざるを得ない状況になって。
___ 
そうですね。
イトウ 
実際に良い芝居だったとしましょう。「まあその、自分でも良い芝居だったと思います」って答えた時の恥ずかしさ。この恥ずかしさを自覚した時に、何か、その役者さんの皮が一枚剥けたような気がするんですよ。楽しいですね。
___ 
あ、楽しいんですか。
イトウ 
楽しいですね。そういう事が、私には重要なんだと思います。どうしてそうなるのかは分からないですけど。
___ 
たとえば私も今回のインタビューの冒頭で戒田さんの「白=無」発言を出せた時は自分かっこいいなと思いました。いま言ってて確かに恥ずかしさはありますね。こういう時の皮が剥ける感じが、感覚的な橋渡しになっている?
イトウ 
そうですね。つまり、このインタビューでの「かっこいい」についての共通認識が出来ていくじゃないですか。それが恥ずかしくもあるんですけど、そういう一緒の言語や共通認識が出来たのが嬉しいんですね。これが沢山あると、芝居の底にあるものが変わると思うんですよ。なんか、グルーヴ的な事になっていったり。ただただ情報が多いんだな、って予感させたり。この物語だけじゃない、全然違う情報をこの人たちは共有しているんじゃないか。その為の時間を持ちたいですね。別に飲みに行ったりはしないんですけど、稽古場でそういう時間を持ちたいです。
___ 
一体感、という言葉では収まりそうにないですね。それは。
イトウ 
一体感、という言葉は使った事はないですね。みんな身勝手なので。それぞれ勝手でありながら、共有するものが増えていくというのが望ましいですね。
___ 
それは劇団力というものなのかもしれませんね。今回は客演の方が多いようですが。
イトウ 
そうですね。集団力。いつも、チームとして成立させようとしています。
___ 
しかしそれは大変、おっさん的な発想ですね。
イトウ 
そうなんですよ(笑う)。
___ 
おっさんのみならず、日本人の働き手の共通の美徳は仕事で成果を出すよりも「仲間である」事を重視しているらしくて。これは良くも悪くも・・・いや、悪いんですけどね。
イトウ 
ああ、嫌ですね。仕事に対して貢献していくチームじゃないと意味がないので。役者には役者としての仕事で貢献してもらいたいですね。そうそう思い出した。私、みんなには社長って呼ばれてるんですよ。劇団って家族的になっていくじゃないですか。でも私達、感覚的に近いのはお互いが同僚、なんですよね。そういう感覚は続けていきたいな。

音楽と私と

___ 
いつか、こんな作品を作りたいというのはありますか。
イトウ 
本当にひどいものを書きたいという気持ちがあり、一方、お祭り騒ぎの作品を作りたい事もあるし。やってる根幹みたいなものは一つも変わってないんですけど、表現方法があまりにも変わるので「芸風が定まらないintro」と良く言われます。でも最近ちょっと心境の変化があって。見てくれる人の、何だろうな、気持ち良くさせたいな、みたいな事ですかね。今までどちらかというと気分悪くさせたいなと思って書いていたんですかね。でももうちょっと楽しませてあげたいという気持ちが湧いてるんですよ。一緒に楽しい事を。
___ 
ええ。
イトウ 
元々私は音楽が好きでやりたくて、それは今でも変わっていなくて。演劇で音楽をやりたいんですよね。そこは変わってないんですよ。「どういう作品ですか」って聞かれて、「あの曲のリミックス版です」とか「ちょっとハウスっぽいです」とか答えちゃうんです。いまは、人の為に作りたくなっている。
___ 
人のために。
イトウ 
自分の為に作るのは飽きたし、誰か一人のためでもなく、大勢の人に向けた分かりやすいものを作るというものでもなく。体験として、はっきりと傷が付くものが作りたいですね。
___ 
お客さんにとっての事実的な傷になる。
イトウ 
そうですね。誰かにとって「すごく嫌だった」あるいは「とても楽しかった」。どちらでもいいんですけど、その間じゃなくはっきりとしたものになりたい。
___ 
「ところどころ嫌で、ところどころ楽しかった」というのも違って、はっきりとどちらかとした作品。つまり、お客さんへの歩み寄りはしない?
イトウ 
しないですね。
___ 
曖昧さの一切がない作品。という事は共感出来ない?
イトウ 
共感では絶対ないですね。私、共感には一つも興味がないので。だから「蒸発」に関しては全く感情移入出来ない芝居なんですよね。共感出来た人は教えてくださいっていうぐらい、共感を排除してる。演劇って、そういうものだと思ってるんですよ。多くの人が「共感」て言うんですけど、「ホントか!?」って思う。
___ 
その劇場にいる全ての人が孤立していて、その間にある作品に傷付いたり楽しがったりしている。ドライですね。
イトウ 
ドライですね。

どこまででも行けるから

___ 
これから演劇を始める二十歳に一言。
イトウ 
どこまででも行けるので、ちゃんと帰って来たほうがいい。日常生活とか劇団とかお家とか。

パンクのやり方

___ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
イトウ 
色んな町でやりたいんですよね。けして分かりやすい作品を作っているとは思っていないし、オススメしづらい作品なんですよ。たぶんお客さんも分かってると思うんですけど。去年大阪で初めて上演したときに腹を据えて「人にめっちゃオススメしにくい作品なんですけどオススメしてください」って言ったんですよね。今、作品をご覧になって分かったと思うんですがモヤモヤの残る作品です、それでいいんです、そのままの気持ちで良いので誰かにオススメしてくださいって。そういう言い方は札幌だと出来なかったんですけど、その大阪公演後は札幌でも言うようになりました。個人だけの体験になる作品を作っているので、そのモヤモヤで合っているんです。どの土地でも同じで(もちろん傾向の違いはあります)、一人一人にコンタクトを取っていきたいですね。そういう演劇が作りたくて、どこにでもいくしどこでやっても良いと思うようになりました。だからどんどん出ていきたいですね。いま札幌だと中堅になっちゃってるんですけど、若手も面白いのが出てきたし上には仕事の出来る兄さん姉さんが山ほどいるので、上にも下にも楯突いてやっていきたい。いまだにパンクスの気持ちは持っていきたいなと思っています。それはどの土地に行っても。
___ 
ロックというよりパンク?
イトウ 
初期衝動は大事に持ち続けたままバイエルをやる、みたいな。そういうバランスを持たないとやっていけない。同じ土地でやり続けると疲れてくるので。そして、どんどん訳の分からないものを作りたいですね。「introだよね」と言われるような。腹が据わってきたと思います。
___ 
まだ見ぬお客さんに一言。
イトウ 
訳の分からないスイッチを押すし、押さないかもしれません。ぜひ好きにしてください。勝手にしてもらうのが一番です。

早押しアンサー機

___ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
イトウ 
ありがとうございます。開けていいですか?
___ 
もちろんです。
イトウ 
(開ける)あはは。「早押しアンサー」。これ、めっちゃ嬉しい。これ稽古で使います。ピンポンピンポンってみんな止まるんですよ。うざがられるかなこれ使ったら。わあ、これめっちゃ使える。劇場入っても持っていきます。演出席でピンポン使ったら止める、みたいな。声出さなくてもいいんですよ。苛立ってるのばれない。こりゃいいや。


現代演劇レトロスペクティヴ エイチエムピー・シアターカンパニー 『阿部定の犬』

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、赤星さんはどんな感じでしょうか。
赤星 
よろしくお願いします。いまは「阿部定の犬」の稽古中ですね。
__ 
エイチエムピー・シアターカンパニーの「阿部定の犬」ですよね。意気込みを教えて頂けますでしょうか。
赤星 
今回、歌うんですよ。たくさん。
__ 
あ、そうなんですね。音楽劇ですしね。
赤星 
僕けっこう、人前で歌うのが恥ずかしくて避けてたんですけど、この歳にもなって歌うのが恥ずかしいというのもないかな、と。せっかくだし苦手な事もやろうかなと。そう思いだしたらなんか楽しみになってきて。過去、HEPプロデュースの「真夏の夜の夢」とかで歌ったりもしたんですけど。今回、4曲も歌うんですが初めてですね。
__ 
とても楽しみです。
赤星 
あと最近、この半年くらいたばこをやめて。さらに歯の治療にも行っていて。いままでになく健康な状態なんですよ。凄く気分がいいです。
sunday
2004年、劇団☆世界一団、第1期終了。ふたつのinterludeを経て、sundayに改称。「今面白いと思うことを、遊びながら作る」というメッセージ性の少ないカンパニー。しかしその現代性とファンタジー性が融合した世界観は、ポップでありながら実験的。物語とパフォーマンスの絶妙なバランス、そして実力派の役者たちによる見応えのある演技は、公演回数が少ない割には確固とした評価と動員を得ている。目指すは「世界一おもしろい演劇部」。(公式サイトより)
現代演劇レトロスペクティヴ エイチエムピー・シアターカンパニー 『阿部定の犬』
作:佐藤信
演出:笠井友仁
出演:高安美帆 / 森田祐利栄 / 米沢千草 / 澤田誠 / ごまのはえ(ニットキャップシアター) / 中村彩乃  / 赤星マサノリ(sunday) / あらいらあ / 有北雅彦(かのうとおっさん) / 合田団地(努力クラブ) / 熊谷みずほ / 諏訪いつみ(満月動物園) / 林田あゆみ(A級MissingLink) / 稲葉良子 他
【伊丹公演】
2015年8月6日(木)18:00
7日(金)18:00
8日(土)14:00
9日(日)14:00
【東京公演】
2015年8月19日(水)18:00
20日(木)14:00

「すっぴん」

__ 
月一の「すっぴん」。即興演劇のイベントなんですよね。惜しくもまだ拝見出来ていないのですが、とても面白そうですよね。
赤星 
ありがとうございます。また7月の22日にあります。
__ 
出来れば参ります!まず伺いたいんですが、会場はどんな感じになるのでしょうか。
赤星 
基本は結構、温かい空気になりますね。そもそもこれの始まりは、坂口さんとずっと二人芝居をしていて、で坂口っちゃんが「エチュードをやりたい」と言い出して。でもただのエチュードはやりたくないと。だったら音響とか照明を自分たちで操りながら即興演劇が出来たら楽しいなという事になって。実は僕、即興は結構苦手なんですよね。でもまあやってみようかなと。
__ 
そうなんですね。
赤星 
もう、一年近くやっていてルールも出来てきて。お客さんからアイデアを二つくらい頂いて、それを組み合わせたタイトルの即興劇をやるんですよ。
__ 
ええ!それは凄い。
赤星 
でもそれだけではちょっと難しかったんです。お客さんから「場所とかが最初に分かった方が見やすいです」って意見が出て、それも取り入れるようになって。5分で終わるようにしよう、とか、最後のセリフを決めよう、とか。お客さんもそういう、ルールが出来ていくのを楽しんでくれてるのかな、と。
__ 
私もインプロショーを拝見することがあるんですけど、色んなやり方があるんですよね。最初のシーンの設定を決めたりとか、何人かの組に分かれるとか。でも、タイトルを決めるというのは凄く新鮮ですね。即興劇にタイトルを付けて臨むとは。
赤星 
最近、お客さんが何かタイトルを考えてきてて。二つ繋げるってのを知ってるから、「○○と君と」みたいなタイトルを用意してきてくださるんですよ。
赤星マサノリ×坂口修一即興芝居「すっぴん」
赤星マサノリ×坂口修一が二人で挑むデッド・オア・ライブの即興ジェットコースター!「すっぴん」ホンなし!演出なし!スタッフもなし!舞台には役者が二人だけ!音響や照明操作も演技中に二人でやります!赤星マサノリと坂口修一がすべてをさらけ出して挑む即興芝居。
【日時】2015年3月31日(火)、4月29日(水)、5月26日(火)、6月23日(火)、7月21日(火)、8月25日(火)、9月29日(火) 20時開演

次は一人芝居かも?

__ 
今年も半分過ぎましたね。下半期はどのような活動をされますでしょうか。
赤星 
新しいことがしたいというのがずっとあって。で、この数年映像を作ってるので、映像を使った一人芝居がしたいなと思ってるんです。それを持って全国を回れるような作品を作りたいんですけど、まだ上手くはいってないです。
__ 
映像と一人芝居を組み合わせたもの?
赤星 
そうですね、全部自分で映像も音も照明も操作しながら(まあ今「すっぴん」でやってる事なんですけど)。最近、透過スクリーンみたいなのがあるらしくて、その実験もやってみたいな、と。
__ 
「透過スクリーン」。なんだか新技術っぽい響きがありますね。
赤星 
ビニールハウスのビニールがスクリーンになるらしくて。
__ 
そこに映像を投影するんですね。光を当てなかったらそこは透明になる。
赤星 
ちょっと、そういうのを使ってやってみたいんですよ。
__ 
もし安かったら、それを破って出てくるみたいな。
赤星 
そうそう。
__ 
お話を伺っていると、一人でやる、という事にこだわりがあるんでしょうか?
赤星 
いや、僕は結局周りの人にお願いしていく感じになっていってしまうので、そういうこだわりはないんです。協力してくださる方には感謝ばかりですね。
__ 
失礼しました。
赤星 
いえいえ。sundayという劇団の一人としてなんですけど、sundayはそれぞれみんな何か一人でやってるんですよ。たとえば平林さんは音楽やってるし、サキさんは一人芝居やってるし。それがみんな、もう一度集まったらきっと凄い事が出来るんじゃないかと思うんですよね。だから僕も、というのはあります。

もっと深い意味での役者の立ち位置

__ 
今回からしばらく、役者の実質的な仕事について考えていければと思いまして。たとえば、先日の、メイシアターで上演された「やぶのなか」のモノローグバージョン。この作品の演出で、人物は全員、嘘によって己の真実を隠そうとしていたように思うんです。個人的な解釈かもしれませんが。赤星さんはどんな役作りをされたのでしょうか。
赤星 
よく、役者の人が「嘘の芝居をするのは嫌だ」という考え方に行くじゃないですか。僕も嫌だったんですけど、最近は変わってきて。だって、絶対嘘じゃないですか、演技って。
__ 
そうですね。
赤星 
どんだけ真実に迫ってやろうが。だからそこは開き直って、もう、「こんなもんだよ」という気持ちでやっています。
__ 
「こんなもんだよ」。
赤星 
嘘とかホンマとか。もちろん役者としての演出からの注文は真摯に受け止めてやっていくんですけど。アウトプットの出し方で、これを真実にしようと思ってはやってない。「こんなもんだよ」、という気持ちでやっています。最低限の嘘は付かないんですけど。
__ 
誠実な考え方ですね。
赤星 
嘘をついてもいいんじゃないかと。だってしょうがないですもんね、嘘なんだから。どれだけ真実にひっぱってこようが、それが逆に嘘っぽく見えるような気がして。あれちゃいますか。力抜きたいと思ってるのかもしれないです。逆に聞きたいんですが、「やぶのなか」の時はそういう風に見えたんですか?
__ 
そうなんですよ、お互いに目を合わさないようにするというルールが、人物同士の距離が主なテーマなのかと予感させてくれたんですよね。それから役者自身のメタ的な紹介とかもあったり、真実からどこまでも遠ざかっていく感覚がものすごくあって。喋れば喋るだけ。真実が確定しない状態の心地よさが味わえたんですよ。
赤星 
そういう作品だったからか、いま余計に思うんですけど、僕はやっぱりゲームが好きなんですね。演技するよりも、ゲーム感覚で芝居をしている感覚があるんです。木下さんの作品だと特に。「やぶのなか」はルールとして、何をやってもいいというのがありまして。もちろんある程度話し合って作ったんですけど、その遊びによって真実が隠されていったのかもしれませんね。
__ 
遊びの感覚があるんですね。
赤星 
坂口さんと芝居やる時は、役柄があって、その上でさらに、どういう風にするのかという、お互いのコミュニケーションがあって。それが凄く楽しい。そこまで行くのが結構大変で、何回か公演しないとそこまで行けないんですが、そういうやり取りが出来るようになっているんです、今。

__ 
今後、何か新しい趣味を一つ始めるとしたら?
赤星 
旅行。あんまり行かないので。あと、大型バイクの免許を取ろうと思ってます。

質問 吉見 拓哉さんから 赤星 マサノリさんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、吉見拓哉さんから質問です。「俳優は、意識と無意識、どれぐらいのバランスの時が一番うまくいきますか?」
赤星 
意識・・・常に色んな事を意識してるんですけど。時々、無意識の境地に行くときは気持ちいいなと思います。でも、そこに行く事は意識していない。行けたらいいなと思っているぐらい。気が付いたら、ああなんかなりきってるというか、変なところに入ったわ、という事はあります。
__ 
それにはどんな条件が必要なんでしょうね。
赤星 
意識したらそこにはきっと行けないんですよ。やってる内にそうなるんですよ。
__ 
観客がそういう没頭している感覚になるのは結構難しいんですよね。冒頭に、琴線に引っかかるような事があれば違うのかも。
赤星 
でも、役者としてはですけど、そういう無意識になるのがいいのかどうかは分からへんし。お客さんにとっては勝手にして、みたいな感覚かも分からへんですね。

空飛びたい

__ 
いつか、こんな演技が出来るようになりたい、とかはありますか?
赤星 
空飛びたい。吊ったりとか。あと、大劇場でも小劇場でも、雰囲気が伝わるような演技が出来るようになりたいです。
__ 
それは既にそうなってると思うんですが・・・
赤星 
いやいや。この間「PLUTO」で柄本明さんの演技を見たんですが、凄くて。声を聞いているだけでもうっとりするような。すばらしいな、ああいう感じになりたいなと思ってます。

トートバッグ

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
赤星 
焦らず、じっくり色々考えながら行きたいですね。
__ 
ありがとうございます。今後も応援しております。頑張って下さいませ。今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
赤星 
ありがとうございます。これ、毎回?
__ 
はい、一応。
赤星 
(開ける)え、凄い。ありがとうございます。使わせて頂きます。


投げ出す唄い方

__ 
吉見さんと言えばあの独特な唄い方。どうしてあの唄い方になったんですか?
吉見 
やっぱりしゃがれてる印象がありますかね?僕はあんまり酒飲めないので、にせもののしゃがれ声なのですが。高校生の時ミッシェル・ガン・エレファントが好きで、チバユウスケさんの唄い方を真似してたらこんな感じに。なので、出しといてほったらかすみたいな歌い方になりまして……。それもそれとして、なんと言うか、広がりのある唄い方も出来へんかなとかも思ってて、僕はこういう放り出すような唄い方、ロックの人はみんなそうしてはるんちゃうかと思うんですけど。なので、これしかしたないみたいなとこもあって。特徴や武器として、褒められもするんですけど、けなされる部分でもあると言うか。個人的には、高橋さんが最初に吉見を目撃した「茶摘み」の頃に比べたら、大分変わってると思ってるんですけど。ふわっと歌うとこも出したり、投げ出すのを多少意識するようになったり……。

ふりをする

__ 
あの唄い方を、例えばバリエーションの一つにしてしまうと、何か違うような気もしますね。ああいう唄い方も出来ますよ的な器用貧乏。そういうのにはなってほしくはないですね。
吉見 
そうですね、それは思うとこありますわ。ブッキングライブやと、一人につき30分ほど時間が貰えるんですけど、その間ずっと似たような印象が続くとダレやすいんちゃうか思って。まあ30分で客の集中を途切れさせないミュージシャンはそういないんですけど。逆に、似たような印象の30分で、何もかも持っていく凄まじい人もいるんですが……。なので、なんというか「器用貧乏」の範囲までいかない、似たような印象の範囲内で、ずっと、おらぼけえみたいなテンションでいくだけじゃない、空気を匂わすような事もできたらなあと。
__ 
わかります。この間のライブはそうですね。
吉見 
なんというかまあ、あえて言うてしまうんですけど、頭悪いフリを選んでしてるみたいなのがかっこええんちゃうかと思うんすわ。ここで投げ出さないように歌うとか、大量の言葉を全部は拾いきれんよう唄うとかを、ガッとやってて、なんも考えてなさそうでも実は……みたいな。まあ大体そんな余裕ないんですけど。演劇はコンセプチュアルな部分が多いもんやと思うんですけど、ライブはそういう考え方とは良くも悪くも離れてて。武道館とかで単独ライブしてはるような人はまた違うかもしれませんけど、ライブハウスのブッキングで30分演奏する人は仕事帰りに出演して、事前の準備なんか何もせんとやりはる人も多くて。それでもめっちゃええ人もいますし。直前のアクシデントがライブ自体の印象を変えるみたいな事も。こないだ見に来てくれはった時、僕本番直前ステージでビールこぼしてたん見てはったと思うんですけど(笑)それとかその前の、京都の二条nanoでライブしたときなんですけど、ブッキングしてもろた、京都の詩人のchoriさんに、「choriさんおれめっちゃ緊張してますわ!」つってステージからブッカーに心情を吐露するっちゅう割と言うたあかんこと言うたんすわ(笑)
__ 
それはいいですね。
吉見 
そうすると、良きにしろ悪きにしろ(笑)空気がわりかしやらかい感じになったような……。演劇やったらこういう事ありえへんやないですか。ライブやったら、パフォーマンスじゃないですけど、これでちょっと「吉見あほやなあ」とか思ってもらえたりすれば……。わりと小難しいこと歌いがちなので、出来るだけ、インテリっぽさを……。多分おれ、言うて割とインテリっぽいとこあって(笑)この間も塚本にあるエレバティと言うライブハウスで「仏教ナイト」っちゅう、あの、仏教について喋る座談会みたいなイベントで、メインで喋ってたんですけど。どういう教えがあって、キリスト教とどういう違いがあるのかとか。おれめっちゃインテリやないかと何ひけらかしとんねんと(笑)でも実際このイベントやったのも、生きるの辛くて切羽詰まって仏教いって詳しくなったので……。リア充やったらミュージシャンなんかしてないすわ。演劇とか歌聴いて、セリフやら歌詞に「ええやん」思って「おれもそうしよう」みたいな感じで、仏陀の言うてたことをどう日常に照らし合わせれるかとか。仏教の成立の歴史とかにはあんま興味なくて……。

トリップとメディテーション

__ 
例えば、色即是空と空即是色の違いとか?
吉見 
ああ、一緒や思います。二つとも般若心経の言葉やったと思うんですけど、伝えるニュアンスがちょっとちゃうだけなんです。二つを並べる事で伝わる幅をひろげようとしてる感じかと。何もかもが幻で、空は色から出来ていて、色も空から出来ている。人間の認識は不確かなものやし、ぜんぶ諸行無常やし。例えば、(煙草の箱を持って)このタバコもいつか空になったらゴミになって焼却場かどっかで燃やされたりするやないですか。そんな感じでどんなもんも一定ではない。そんな不確かなもんにお前らは左右されとるんやぞ、と。なんか悩んでたりで夜寝られへんとしても、その悩みも確かなもんじゃないと思うだけで楽になれる場面があるんじゃないかと。まあそんなん言うてもしんどいですけど。
__ 
私もです。
吉見 
まあそんで……他の人に尽くす、ちゅうのが仏教の基本やったりするんですけど、自分の利益を考えずに、他人の利益を考える事によってあなたの人生は良くなるよ、みたいなんが。でも僕はロックンロールなので、それがどうしても綺麗事やないかと思ってたんすわ。あの、自意識過剰で、人前でましてや一人で自分の曲を演奏するような、自己承認欲求の病気みたいなやつにはどうしても綺麗事やと。それがそんな、ロックンロールとしても腑に落ちたとこがあって……長くなりますがよろしいでしょうか。
__ 
もちろん大丈夫です。
吉見 
因果応報ってあるじゃないですか。悪い事をしたら巡り巡って自分に帰ってくるっていう。その日腹立つ事あってバイト先で後輩に八つ当たりして、その後輩が彼女にあたってその彼女が……みたいなのがずっと続いて最終また自分に、と言うやつですわ。だから良いことしたら、その逆の事が起こるんじゃないか。んなこたわかっとるけどでけへんと(笑)じゃあどないしたらええか言うたら……人間って、だいたいみんな個別に分かれてるもんやと思ってるんですよ(バラバラの円を描く)。でも実際はこう、円と円の一部が重なり合ってるイメージと言うか……まあそこまでは言われんでもわかっとる人もいはると思うんですけど……でも仏陀はさらに向こうまでいってて(大きな円を一つ描く)全部が一つやと認識せえつっとるんすわ。
__ 
関係は繋がっている。
吉見 
一神教では神様と人間との間に圧倒的な非対称──明確な線引きがされとるんです。あの、カムイって言葉あるやないですか。カムヰヤッセンさんのカムイ。そのカムイは元は神様って意味と同時に熊って意味もあったらしくて。ほんでそんな、熊なんかちょっと山行ったらおれら(人間)と同じように魚とって食うとるやないすか。それぐらいの距離感やった。けど一神教は、モーセの十戒っ!みたいにこう上から……神様の言うことは絶対みたいな、はっきりとした線が人間と神様の間に引かれとる思うんです。その線とはまたちゃうかもしれませんが……僕ら個人個人に引く線。こちら側をつくって向こう側とを分けること。そう言う境目みたいなんを無しにしょうやっちゅうのが仏教の基本的な考えやと思ってて。……こう、ライブハウスでこんな話してたら自然と、トリップと瞑想(メディテーション)の違いみたいな話になって。どっちも気持ち良くなるとか楽になる方法として一緒やん!って割と言われて(笑)でも、トリップと戦争や人殺しは、割と似てるんちゃうかと思うんです。トリップは自分の責任を放棄する、忘我やと思ってて。戦争やったら国に言われたから言うて人殺すし、大体の殺人は「あいつが悪い」っつって人のせいにしとる。自分のせいや思ったら大体人殺せないじゃないですか。ほんで瞑想は「今自分が何をしとるか集中して観察する」ことらしいんですけど、それやった先で自他の区別がない境地に行く。ほんだら人殺すもクソも、その対象と自分に区別がないんやったら、自分殺すみたいなもんやったりするやないですか。まあ、その先言う「自他の区別がない境地」っちゅうのがわかんないので綺麗事や思ってたんですけど(笑)