何も決まってないけれど・・・

__ 
しかし、よう東京に行く決意を固められましたね。
衣笠 
いえ、でもあまりまだ何も決まってなくて。一昨日まで東京に行ってたんです。今までの自分の出演をまとめたDVDと写真と手紙をまとめて、色んな事務所に行ってきました。オーディションをしてない事務所にも行って、「一度でいいのでお話させてください」って、これだけ預かって貰えないでしょうかと。やっぱり厳しいなという手触りで、多分見てもくれへんやろうなと。もちろんオーディションのある事務所さんにも相談させて頂いているんですけど。
__ 
手応えが無かった?
衣笠 
そうなんですよ。
__ 
まあ、受付の人はそうなるでしょうね。いい結果になる事をお祈りしています。

いつも

__ 
いつか、どんな演技が出来たらいいと思われますか?
衣笠 
あんまり、お手本にしている俳優さんとかはいなくて。どんな方を見ても凄いな、この人はこんな演技も出来るんやと思って見ていて。最終的に、この人の芝居は何やってもこんな感じ、というんじゃなくて、色んな役に挑戦していきたいです。そうした中で、自分の引き出しが増えればいいなと思っています。最終的にこうなりたい、というよりかは、どんどん違う方向に進んでいきたいと思っています。こんな役もやれるんや、と思われたいですね。
__ 
ご自身の演技を見てもらった方に、こう思ってもらいたいとかはありますか?
衣笠 
小学校以来会っていなかった友達が舞台を見に来てくれた時、「自分やと分からんかった」って言われた事があります。
__ 
おおー。
衣笠 
それは十何年と会っていなかったから、そりゃ分からんやろうという話で終わったんですけど。今後、色んな人に顔を覚えてもらって、作品を見てもらった後に「君やと思わんかった」と言ってもらえたらなと思います。
__ 
「いつも同じ」と思われたくない。
衣笠 
そうですね、僕は結構、変な役ばかりやりたがるんですよ。

タグ: 「いつも同じ」と思われたくない 覚えてもらう


こういう映画が、自分にはガツンときます

__ 
変な役をやりたい?それはまさに「歪ハイツ」のような?
衣笠 
そうですね、何か、ピュアな恋愛モノというよりは、ドロドロとした作品の方がやりたいのがあって。あと、物凄いアホみたいなコメディもやりたいし。そういう方に興味が行ってますね、いまは。結構、自分で言うと恥ずかしいですけど恋愛とかそっちに行きやすいと言われがちなんですけど、僕自身は全然そっち向きじゃなくて。
__ 
なるほど。
衣笠 
映画とかを見ていて、「こういう役がやりたい」と、ちょっと悩むぐらい思ったりしてますね。
__ 
具体的に、どんな映画ですか?
衣笠 
「クラッシュ」という洋画で、ある交通事故を基点にした群像劇です。事故の当事者や、たまたまそこに居合わせた人たちが事故の前後の過程を描いた作品です。全員普通の人たちなんですけど、どこか変わった性癖があったり家庭事情があったり人種差別があったり。主役という主役はいないんですけど、凄く広い世界を見ている気がして。
__ 
その世界の臨場感がある、そんな感じかな。
衣笠 
そうですね、主役がバッチリ決まっている映画ってその人を主軸に見ているんですけど、クラッシュみたいな映画は誰にも感情移入せずに、一人一人の感情とか思いをちょっとずつつまみ食いしていく感じがしていて。別に、登場人物達の話という感じじゃなくて、こういう世界があるよね、という提示なんですよね。人ってこうだよね、という感じで終わっていくんです。そういう映画が、自分にはガツンときます。

タグ: 恥ずかしいコト 群像劇


質問 松永 渚さんから 衣笠 友裕さんへ

__ 
前々回インタビューさせて頂いた、松永渚さんから質問を頂いてきております。ちなみに衣笠さんは俳優以外にも映画監督と舞台の演出をされるんですよね。
衣笠 
監督は3回生の頃に1度。演出は4年間で3回だけしました。
__ 
そこで「演出家と役者、監督と切り分けられていると思うんですが、ご自身の気持ちの違いがあれば教えてください。」
衣笠 
俳優をする時は出来るだけ下っ端でいこうと思っています。言われた事をやりながら、たまに反発しながら。そうやって演出と戦っていこうと思っていますね。でも監督とか演出をする時は下っ端では出来ないので。出来るだけ人の上に立っているという意識を持っています。大学で舞台をやっている時は、やっぱりプロではないので。出てもらう役者それぞれが、ちゃんと今後の役者としての生活に影響を与えられるような演出をしていかないといけないなと思っていました。
__ 
それは、良い影響?悪い影響?
衣笠 
多分、悪い影響も与えているとは思うんですが(笑う)僕も含め成長途中なんで。後輩の子達が出た時は、その成長を促せて、もっと飛躍出来るように。結局はライバルを育ててる感じになっちゃうんですけど、それぞれの芝居が上手くなっていっているのを見ると嬉しくなりますね。

質問 高木 貴久恵さんから 衣笠 友裕さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、高木貴久恵さんから質問を頂いてきております。「一番古い記憶を教えて下さい」。
衣笠 
家族旅行で温泉に行った帰り道、転んでペロペロキャンディーを割った事ですね。家の近くまで着いて、歩いていたらこけちゃって。持っていたペロペロキャンディーが全部粉々になったんです。袋から出して間もないのに、全く手を付けてなかったのに。めっちゃ悲しくなっちゃって物凄い泣きました。でも家に帰った後に、母が一個一個洗ってくれて、パズルみたいに一個一個をお皿に並べてはいって渡してくれたんですよね。
__ 
ええっ。
衣笠 
その時、嬉しかったんですけど、ちょっと・・・自分が割ってしまった事でここまで手間を掛けさせてしまった事に悲しくなってしまって。そういう感情で、喜びたいけど喜べないみたいな状態で一つ一つをポリポリ食べたのが一番古い記憶です。
__ 
その、御母上の行動は教育そのものですね。だって、飴は粉々になってしまったけれども、手間を掛ければ戻す事が出来る。とは言っても、完全な元の飴ではない。そういう重大な事を伝えられた教育だったと思うんですよ。最初の記憶になるぐらい。
衣笠 
しかし、そこに僕は罪悪感を覚えてしまったんですよ。
__ 
お母上は、その引け目に気付いてましたよ。
衣笠 
あ、そうなんですかね。
__ 
飴を一つずつ口に運ぶ時、微妙な表情をしていたでしょう。びっくりするぐらい泣き始めた息子と、粉々になった飴、復元してみせたけれども、今度は複雑な表情になってしまって。それはお母上の心に、どのような思いを生じさせたのでしょうか。
衣笠 
何かちょっと、おかんとしても、悲しいじゃないけど、キュッとなる感情があったんじゃないかという気がします。別に新しいのを買えばいいかもしれんし、しょうがないよと諭したらいいかもしれんし、もっと簡単に終わった話かもしれんし。多分、電車の中でずっと大事に持ってたと思うんですよ僕は。帰り道、家の近くになるまで袋を開けなかったぐらい大事に。それが、母親にとっては、僕が大事にしている事が分かったと思うんですね。あともうちょっとで家なのに割れちゃったという事に対して、ちょっと悲しくなったのかなと。
__ 
旅行の帰りのお土産を大事に扱っていた。これは息子の、家族に対する裏表のない愛情表現であると母上は取ったでしょうね。だからこそ、新しい飴を買うという案は旅行の思い出を帳消しにしてしまいかねない。家に着くまでに待ちきれずに封を開けてしまった・・・パンドラの箱ですよね。
衣笠 
そうですね(笑う)
__ 
その悲しさに対して、何かをせずにはいられなかった。すっぱり諦めるという選択肢もあったが、でもあえて修復してあげる事を選んだ。そういう教育を選び取り、息子に見せた。もしかしたら、その時点で息子への放任教育は始まっていたのかもしれない。そうでなければ「自衛隊ええんちゃう」とか言わずに内部進学に行ってくれと言うはず。放任とはつまり、自由と責任という事ですね。
衣笠 
そういえば母は僕のわがままに対しては厳しく、反面、大切なものが失くしたり取られたりしたらすぐに直したり替りを持ってきてくれたんですよ。新しいものを欲しがってもダメって言うんですが。なんか、僕が大切にしているものを同じように大切に扱ってくれたと思います。

タグ: めっちゃ泣いた・号泣した SeizeTheDay 罪悪感 温泉の話題


明日、出会うその日までには

__ 
これから、表現を始められる人たちに何か一言。
衣笠 
俳優って、自分が役に入り込んで演技をする分、それを見る人に対して嘘を付いているんですよね。その事を忘れないでほしいと思っています。「おれは俳優だぞ」って偉そうにするんじゃなくて、俳優自身は謙虚にいなくちゃいけないんじゃないかなと思います。自分が仕事をしている上で常に嘘を付いているという自覚を常に持っていたら、楽しんで嘘を付いていいと思うんです。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
衣笠 
やっぱり大学と違って、ものすごい厳しい世界に飛び込もうとしているんですよね。そんなにすぐには売れないですし。1年、5年、もしかしたら10年と物凄い貧乏な時期になると思って。どれだけチャンスを取りに行けるかと思っています。待ってても仕事は来ないので、自分から攻めていかないといけないので。
__ 
そうですね。
衣笠 
大学だったら3・4回になったら自分で監督が出来るしキャスティングもされるんですが、そんなに甘い世界ではないので。大学に来た頃の「この映画に出たる!」っていう勢いがあったんですが、そういう初心を思い出して。でも焦りすぎず攻めて行けたらいいなと思っています。
__ 
ありがとうございます。これからも、関係性を大事にしていってください。
衣笠 
そうですね。向こうの事務所の方にお会いした時も「この世界は出会いが全て」って仰られて。どれだけの人に出会って、どれだけの人に気に入ってもらえるかと。
__ 
リアルな話、「気に入って下さい!」って攻めて来られたら引きますので、遊びというか空白というか、そういう余裕が結構重要だと・・・何でもそうなんですけどね。

タグ: 色んなものを吸収 オーディション キャスティングについて 外の世界と繋がる いつか一緒に


フォトアルバム

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
衣笠 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
衣笠 
(開ける)これは・・・
__ 
アルバムです。立てられるようになっています。卒業記念という事で。
衣笠 
嬉しいです。使います!

タグ: プレゼント(インテリア系) プレゼント(文具系)


村川拓也×和田ながら×punto

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願いいたします。最近、高木さんはどんな感じでしょうか。
高木 
よろしくお願い致します。最近は、3月末の公演の稽古の日々です。
__ 
「村川拓也×和田ながら×punto」、高木さんは和田さんの作品、「肩甲骨と鎖骨」に出演されるんですよね。和田さんの作品を過去何度か拝見しましたが、非常にコンセプチュアル・抽象的で、なにより物語自体が存在しない。そして今回の「肩甲骨と鎖骨」。どんな作品になりそうでしょうか。
高木 
現時点で3分の2程度は通せる状態にあるんですが、まだまだ分からないですね。ここからどんなことになるのか。予想がつかないです。
村川拓也×和田ながら×punto
公演時期:2015/3/27~29。会場:punto。上演作品:『終わり』演出:村川拓也 出演:倉田翠、松尾恵美/『肩甲骨と鎖骨』演出:和田ながら 出演:穐月萌、高木貴久恵、田辺泰信 料金:一般:1,500円/高校生以下:無料 ※要予約

タグ: コンセプチュアルな作品 肩甲骨と鎖骨


「肩甲骨と鎖骨」と日々の流れ去ること

__ 
「肩甲骨と鎖骨」、ジョルジュ・ペレックの作品が下敷きにあるそうですね。記録の羅列に興味があると和田さんは仰っていました。それが作品を見る上でのヒントになるのでしょうか。
高木 
一つのキーワードに「記憶」があって。ペレックは著書の中でずっと自分の昔の記憶を書いていたりするんです。稽古場でも、出演者が自分の記憶をひたすら言葉にするというワークを行っています。それは個人的に大切な思い出とかではなく、日々の生活の中で憶えていられないような、忘れていってしまうだろう記憶を思い起こし続ける行為なんです。
__ 
忘れそうなぐらいの記憶を残す。
高木 
でもそれは声になって消えてしまう。ペレックは本に残しましたけど。それを舞台でやる事で何かペレックとは別の見え方が生まれるんじゃないかと思っています。
__ 
そのワークは、ご自身としてどんな体験でしょうか?
高木 
私自身はそれほど自分の記憶には執着してない気がしていて。でもこのワークをしてると、ふとした瞬間、今この状況をせめてあと3日間は憶えていよう、みたいに日々の時間を大事に捉えるようになりました。

タグ: アーティストの生活 泡のように消えない記憶


コップに触る

__ 
この間の「ドメスティック・サイエンス」の時もしたための作品に出演されていましたね。高木さんが朝の身支度や家事を鬼のように繰り返すというパフォーマンスでしが。とても面白かったです。反復が快感になっていくのがとても伝わりました。
高木 
あのシーン、やる事としてはシンプルで。朝起きてから家を出るまで自分が触るもの全てを言葉にするというものでした。その中で、例えばコップに触る、という事について、どこまで自分が貪欲になれるか、というか。コップに初めて触る子供のように、全ての事に初体験であるように。それを凄く大事にしていました。普段当たり前にやっている事を、もう一度フレッシュに体験出来るか、それを心がけて。
__ 
和田さんは物語を作るよりも、印象に残る俳優の身体を作る事に重点を置いているそうですね。どんな姿勢で臨みたいと思われますか。
高木 
あんまり気負わずに。。前回もご一緒させて頂いてるので、そこはもう信頼して。ながらさんが見てみたいもの、私がみてみたいもの、お互い一緒に発見が出来るような形にしていければといいなと思います。
ドメスティックサイエンス
公演時期:2015/1/10~11。会場:元・立誠小学校。

タグ: 例えばこのコップ 反復の生むもの


あれから

__ 
高木さんがいま、ダンスをされている経緯を教えて頂ければと存じます。
高木 
ちゃんと始めたのは大学生の時です。造形芸大に入ってからコンテンポラリーダンスに出会って、作品を見たり授業を受けたりしていて。それでdotsの公演に出てみませんかと誘われて、最初は軽い気持ちだったんですけど。それが今に至ります。
__ 
dotsの代表、桑折さんの印象はどうでしたか。
高木 
私自身、大学に入る前からメディア・アートや現代美術が凄く好きで。桑折さんとは、そういうものを面白いと思う感覚が近いなと思いました。すでにこんな風にカッコイイ舞台を作っちゃっている人がいるんだ、って。
__ 
dotsは「カカメ」という、伝説的な公演がありましたよね。とても見たかったです。
高木 
いえいえ、ありがとうございます。ご覧頂きたかったです。
__ 
今は、どんな風にダンスと関わっているんですか?
高木 
最近は色んな振付家や演出家の作品に出演させて頂く事が多いですね。そろそろまた自分の作品を創りたいと思っています。
__ 
とても楽しみです。是非とも参りたいと思います。
dots
京都を活動拠点に作品制作を行っているパフォーミング・アート・ユニット。2001年、桑折現を中心に京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科一期生が集まり結成され、「空間」「映像」「身体」をキーワードに活動開始。2005年より桑折現を中心にプロジェクト単位でメンバーを構成し、作品制作・発表を行っている。(公式サイトより)

タグ: その人に出会ってしまった


それを探している

__ 
去年は淡水の公演にも出演されていましたね。あの時のソロの緊張感がすごく良かったんです。
高木 
ありがとうございます。あそこでやった事自体は即興なんですよね。私以外のパートは群舞だったので、異質感を出せたらいいなと。シュッてナイフを切り込むようなモチベーションで毎回臨んでました。
__ 
切り込むというのは、それはもしかして、目の前にパフォーマンスがあったとしても見てくれない人、へのアプローチという事でしょうか?
高木 
ああ。。。
__ 
「生理的に」「受け付けない」人とか、もしくは見すぎて鈍感になっている人。
高木 
直接のお答えになるかどうか分からないんですけど、私は、自分の身体を手放せたらと思うんです。
__ 
と言うと?
高木 
私はあんまり、こう見せたいというのは無くて。その瞬間、なるようになる事を受け止めて手放すみたいな事なんです。そうすると自分から自分が離れていくような。そこに自分の見たいダンスが隠れているんじゃないかなと思うんです。そもそも自分の中にダンスがあるとは思えなくて、私自身が出会いたいんですね。それを探しているんですけど・・・ただ探す事に没頭すると自我が消えていくのかなって。すいません、ちょっと観念的ですよね。
__ 
いえいえ。振り付けというのがまずあって、それをやろうとする時に管理して運用しようとする。それをあえて手放すようにしたいという事でしょうか。
高木 
そうですね。振り付けは決められているんですけど、そこに自分で隙を作るというか。毎回初めてに出会いたいんです。これはダンサーでも役者でも思ってると思うんですけど。知っている事に、新しく出会いにいく。それはやっていて楽しいし、お客さんにも伝わったらいいなって思います。それが瑞々しいという事に繋がってくるんじゃないかなと思います。
__ 
読書で言う、未読領域を進んでいく同時性なのかなと思うんですよね。そこに立ち会う事が出来る。やり飽きるとかそういうんじゃなくて。まあ、個人的にはそういうのは男性本能の中の開拓精神が見えてくるような気がしている。それはおいといて、瑞々しさの生まれる瞬間に立ち会うのはすごく難しいですよね。
高木 
難しいですよね。でも、そういうものになりたいですよね。
__ 
それには色々なアプローチがあって、そのアプローチをイチから作るのが前衛の仕事と言えるんだろうし。テーマを探すのはもちろんとしても。
高木 
そうですね。

タグ: それを揺らしてはいけない 瑞々しい感覚 前衛は手法から作る人々を指す


質問 松永 渚さんから 高木 貴久恵さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、松永渚さんから質問を頂いてきております。「自分だけの、毎日必ずしている習慣はありますか?」
高木 
結構している人はいるかもしれませんけど、お風呂の中で読書。一時間ぐらい入るんですけど、ゆっくり浸かってその日の疲れを全部取るようにしています。
__ 
最近印象に残ったのは?
高木 
あ、それこそペレックを読んでいます。それと、志村ふくみさんのエッセイを最近読んで。日本語が美しくて素敵な本でした。

手放す、探す

__ 
瑞々しいという事は、ある特定のダンサーが非常に輝いている時であると。つまり価値を持っている瞬間なんじゃないかと思う。わりかしヘビーな質問です。ある振付があったとして、それに固執する。しかしそれが全体に良くない影響を与える場合もある。だから全体の構成、編集がある。
高木 
ええ。
__ 
ダンスに出演される時はどのような姿勢で全体の構成や編集に臨むべきだと思われますか?
高木 
人の作品に出演する時はあまり自分のこだわりは持たないようにしています。それこそ、手放すというか。そうして新しいものを探すというか。それが、クリエーションの面白さだと思いますね。
__ 
なるほど。
高木 
自分の作品を作る時は、結構話し合います。こうしたら面白くなるかもしれないというものを、一緒に色々試していくという事をしますね。
__ 
何をやるか、という事を話し合う。
高木 
そういう風にしてきたと思います。

タグ: 人を引き出す振付 瑞々しい感覚


いつか瑞々しく

__ 
ダンス・ファンファーレでの高嶋さんとの対談を拝読しました。その時からは変わっているかもしれないんですけど、高木さんがダンスを踊る理由というのは?
高木 
確かにあの時とはまた少し違ってきていて。段々自分に対してストイックじゃなくなってきた。それは自分にとってはポジティブな変化で。動く事を純粋に楽しむという事をやりたいなと思っているんです。自分の中にある澱みたいなのは消えないんでしょうけど、そうじゃない部分を拾い上げられるようになってきたんじゃないかと思います。瞬間、瞬間、自分にオープンになれるという事を楽しむようでありたい。
__ 
突然ですが、私は高校演劇をやっていてですね。役者でした。
高木 
えー!
__ 
夏にですね、静岡の高校の演劇部が集まって東京のプロの劇団と一緒に作品を作るんですよ。そこで自分、ウケました。
高木 
へー!
__ 
多分、そこには違った意味での瑞々しさがあったと思う。内輪イベントとは違う、同世代・演劇部、という共通項の連帯感があって、そこで「本番」という共有する創作物があったからだろうと思うんです。我々はあそこへは二度と行けない。しかし、手放された瑞々しいその振り付けは我々をもう一度遠い夏に連れて行く事も出来るだろう。ただし観客にも相応の姿勢が求められるんでしょうが。
高木 
うーん。
__ 
指先から星が出る的な、ジャニーズがやってるみたいな。
高木 
そうですね。
__ 
この間見た、jazz Danceの時のしげやん(北村茂美)みたいな。
高木 
私は拝見出来なかったんですけど、分かります。居方みたいなもの、ね。
__ 
あれは凄いですよね。
高木 
そう、何がどうなってるのか分からないけど。
__ 
あれこそ、トレーニング出来ない能力なのかもしれない。
高木 
そうですね、うんうん。
interview 高木喜久恵作品 ねほりはほり
高嶋慈→高木貴久恵 インタビュー。

タグ: トレーニング出来ない素養(愛嬌、セクシー等など) 瑞々しい感覚 内輪ウケの・・・ イベントの立ち上げ


ただダンスになりたい

__ 
観客に何を希望しますか?
高木 
難しい。うーん。出会う、という事じゃないでしょうか。それを、あんまり当たり前の事と思いたくない。それは舞台にいても、客席にいても同じですね。
__ 
見て貰ったお客さんに、何を思ってもらいたいですか?
高木 
楽しんで見て頂きたいというのが一番です。けど、分からないんですよね、正直に言うと、やればやる程分からなくなります。自分がいいと思うものを差し出したいし、それを一緒に楽しんでくださいという気持ちなんですが。でも、観客って、自分が思っているより信用出来ない部分がある・・・(笑)。だから、あまり考えないようにしている。また時間が経てば違う考えになるかもしれません。
__ 
なるほどね。
高木 
人の作品に出演する時はある程度無責任にならないと、と思ってるんです。自分の作品となるとバランスが難しい。
__ 
お客さんが作品を見る時の、その無理解を恐れている?
高木 
そういう訳じゃないんです。最初はやっぱり、「良かった」と言われたら嬉しいし「良くなかった」と聞けば落ち込んでたし。でも段々と、そういう風に思わなくなってきて。褒められて嬉しくなる訳ではなく、ダメだったと言われたら「合わなかったんだな」と。それが良い事かどうかは分からないんですが。それも含めて、考え方が変わってきてるのかなと思います。
__ 
純粋に動きを楽しむ時も、そんな事を思うのでしょうか。
高木 
それはまたちょっと違うかもしれないですね。そういう思いで踊っている時は、ただダンスになりたい、っていうか。だからいまはそういう方向ですね。

タグ: 単純に、楽しませたい


飛び込める人

__ 
面白いダンサーって、何だと思われますか?
高木 
繰り返しになるかもしれないですけど、自分を手放せる人。もしかしたら、自分を裏切れる人。
__ 
パフォーマンスで、見ている人の思惑や予想や視覚に飛び込める人。
高木 
そうですね、飛び込むというのはしっくりしましたね。観客としても裏切られたいですね。
__ 
いつか、どんなダンスが出来たらいいと思われますか?
高木 
観た人に、ダンスとしか呼べないと言われるようなもの。先日、ちょっと実験的な音楽のライブに行っったんですけど、分かりやすさはひとつもない時間の中で、だけども、これはどうしようもなく音楽だとしか言いようのない、すごく不思議な経験をしました。初めての音楽体験というような。
__ 
なるほど。
高木 
私自身、決してキレイに踊れるダンサーではありません。でも、ちょっとでもそういうものに近づきたい。
__ 
そういう表現技法を創りたい?
高木 
もうちょっと感覚的なものだと思います。これはもう、愛としか呼べない、祈りとしか呼べない、それと同じように、ダンスとしか呼べない。私もいくつかそういうものに出会ってきたから。でも、分からないんですよね。感覚が伝わるかどうか分からないんですけど・・・でも多分、信じているんだと思います。

タグ: 実験と作品の価値


観客

高木 
以前は舞台に立つ時、観客を通して向こう側の絶対的な何かに届いてほしい、みたいなことがあったんです。とても小さい存在である自分を俯瞰でみているという実感があったんです。いまは、もう少し観客との距離感を近くありたいなと思っていて。客席に絡んでいく事もあるし、普段誰かと喋っている時のように舞台で振る舞いたい。
__ 
エンターテイメントに近くなった?
高木 
そう言えるのかもしれませんね。コンタクトを大切にするように変わってきたと思います。とは言っても、そう思えるようになってからまだ作品は作ってないんですけど・・・
__ 
新作、楽しみにしてます。

タグ: 新しいエンターテイメント 俳優を通して何かを見る


楽しんで、裏切っていく

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
高木 
いまとあまり変わらないですけど、楽しむという事ですね。自分の身体を楽しんで、どんどん裏切って、という事を目標に頑張って行きたいと思います。

ブルーナのランチボックス

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
高木 
凄い。嬉しい。見てもいいですか?
__ 
もちろんです。
高木 
何だろう、これ。お弁当箱?かわいー、私、ちょうど欲しかったんですよ。もう早速、明日から使わせていただきます。
__ 
ブルーナの、牛の奴です。防水性はないのでお気を付け下さい。
高木 
本当に嬉しい。ありがとうございます。大切にします。