無は白い顔をしている

__ 
その15周年記念シリーズ2作を両方とも拝見しました。どちらも應典院での上演でしたが、そういえば全て暗幕を吊るのではなく、白幕でしたよね。そういうところの印象が、何故か強くて。全体に、その独特な味付けをしているような気がしたんですよね。
戒田 
ありがとうございます。暗幕ってね、演劇の先人達の偉大な発明やと思うんですよ。あれは「何も無い」という表現なんです。僕たちはそれを借用してる。歴史上初めて暗幕を見たお客さんは「何やあの黒い布?」と思ったんじゃないかと思うんです。
__ 
ああ、そういえばそんな気がしてきました。
戒田 
一方、應典院はベースが白いんです。だから、應典院で「何も無い」のは白色なんじゃないかと思うんですよね。
__ 
應典院での無は白色をしているという事ですね。とても暗示的な観点だと思います。それは「ツキノウタの時に凄く生きたと思うんですよね。冒頭のシーン、音響照明と共にカラフルな幕が捲れ上がっていき、一面が白色になる仕掛けがありました。非常に印象的で見事でした。色とりどりの世界が一瞬でめくれ上がり、白い無になってしまう。
満月動物園第弐拾参夜『ツキノウタ』
公演時期:2015/3/6~3/8。会場:シアトリカル應典院。

タグ: 外の世界と繋がる 一瞬を切り取る 印象に残るシーンを作りたい 世界 会場を使いこなす


満月動物園=アングラ?

__ 
満月動物園の、開園の経緯を教えてください。
戒田 
開園、初めて言われました(笑う)。元々は大学でやっていて、ぼちぼち外部でのプロデュース公演にも参加するようになっていって。けれどもその内、先輩を含め周りが卒業して会社員になっていく訳ですよ。芝居を続けたいけれど続けられるかしら、と不安になる。なら、一つ形にしてみようと。
__ 
ありがとうございます。いつも思うんですが、公演のタイトルが非常に魅力的な付け方ですよね。あんまり、お褒めの言葉としては違和感があるかもしれませんけど。
戒田 
いえいえ、ありがとうございます。
__ 
そして、今の満月動物園。サイトにあるコンセプトの文章には「ファンタジー」「メルヘン」とありますが、それよりもとても、人間の心にどこまでも迫った作り方をしているように思うんです。これは本当にほめ言葉にはならないんですけど、「演歌」に近いんじゃないかなと。
戒田 
ええ。
__ 
最近の二作は主人公が冒頭で自分の死に直面しますよね。そこから、観客が自分自身の世界に入っていってる気がするんですよ。死ぬなんて超個人的なテーマですからね。本編も家族と配偶者についてのお話が中心だし、最後には泣いてしまうぐらい感情移入しているお客さんがいるのは当然だと思うんです。自分の人生もいつか終わっていってしまう、というのを強く感じました。生きていて死んでいく、自分の物語だから。
戒田 
ありがとうございます。的確だと思います。まあ、死ぬというのも含めて、僕自身が無くすという事を恐れていると思うんです。例えば川を欄干から見下ろしている時とか、この眼鏡をもし落としたらもうずっとお別れだなとか思っちゃうんですよね。常日頃からそれを敏感に怖がっている。メガネに対してさえ、そういう意識がふと行ってしまうと怖くなってしまうんですよ。死神シリーズではそういうのがよく出ていると思うんです。劇団の紹介に関して言えば・・・最近の満月動物園は、もはやアングラとは名乗れないかも(笑う)。
__ 
いえ、私にとっては現役というか、最前線のアングラですけどね。
戒田 
あ、そうですか。嬉しいです。それを聞いて、嬉しいと思う自分が新鮮です。

タグ: 愛される劇団づくり ファンタジー 観客との関係性 タイトルの秘密 旗揚げ 意外にも・・・


転機の数だけ

__ 
15周年を迎える満月動物園。これまでで転機となった作品はありますでしょうか。
戒田 
転機といえば沢山あって。作風がよく変わるし、お客さんも変わっていくんですよね。死神シリーズを始めてからもお客さん変わったし。
__ 
年齢層が高めなような気はしますね。
戒田 
若い人にも観に来てもらいたいですけどね。来てもらいさえすれば、なにかしら響くと思うんですけど。どうしたらいいんですかね?
__ 
やりたい事をやってる感じが伝わればと思います。本当に、それだけさえあれば・・・難しいとは思いますが。でも、1年を通してシリーズを完結させるというのは大事業ですよね。追求しているのがただ心強いです。

タグ: 実験と作品の価値 焦点を絞った作品づくり


不慮の事故から始まる、他でもないあなたの物語

__ 
最近、戒田さんがお考えになっている創作のヒントについて教えてください。
戒田 
それは自分が知りたいぐらいで・・・自分のスイッチがどこにあるのか、自分も知りたいくらいです。今の連作、観覧車が倒れる事故が始まりという縛りでやってますが、そういう縛りがあった方が書きやすいんですよね、何故か。
__ 
では、観覧車が倒れるというモチーフってどこから出てきたんですか?
戒田 
それをね、忘れてしまったんですよ。あの時の創作ノートがどこかに行ってしまって、15周年が始まる前に1年ぐらい探してたんですけど、出てこなくって。プロデューサーの相内さんに企画を細かく説明出来るぐらい作ったのに。
__ 
相内さんに聞いたらいいんじゃないですか?
戒田 
彼もね、覚えてないみたいで。
__ 
うーん、何でしょうね。人生そのものと輪廻を表している、とかですかね? 観覧車のゴンドラ=人体でもあり、その中に閉じ込められて、誰もが全く同じ道を通るという提喩で、その事故だから早死を表しているんでしょうかね。
戒田 
そういう見方も出来るかも・・・でも、震災を挟んで意味が変わりましたよね。亡くなられた方々にとっては理不尽そのものですから。
__ 
理不尽な死。
戒田 
そうですね、最初に「ツキカゲノモリを書いた時とは、意味合いは変わっていると思います。
__ 
なるほど。では、この作品をご覧になった方に、どう思ってもらいたいとかはありますか?
戒田 
正直に申し上げて、何を持って帰っていただくかはお客さん次第だと思っていまして、物語に感情移入していただきやすいように頑張るだけです。モチーフがモチーフなので、必然的に何かを持って帰って頂けるんですよね。そこを想定するのは放棄したと言ってもいいかなあ、と。
應典院舞台芸術祭 space×drama2009 満月動物園 子の刻『ツキカゲノモリ』
公演時期:2009/7/31~8/2。会場:シアトリカル應典院。

タグ: コンセプチュアルな作品 震災 月についての話題


「ダムで芝居したい」

__ 
ちょっと話題を変えて。ありえない想定として、300億円あったらどんな作品を作りたいですか?
戒田 
ええと・・・ダムで芝居したいかな。
__ 
ああ、いいですね。300億は丁度いいですね。
戒田 
そう、ものすごいお金掛かるらしいですからね。
__ 
1日借りるぐらいならいいですよね。
戒田 
コンクリートの巨大な壁を背景に芝居してみたいですね。決壊させたいな。300億じゃ済まないですね。
__ 
プロジェクションマッピングとかじゃなくて、本物の。
戒田 
役者が流されていって終わり、みたいな。
__ 
カーテンコールは救命ボートで。いつかやってほしいですね。

タグ: 泡のように消えない記憶 舞台美術 妄想


役者がいてこそ

__ 
いつか、どんな演劇が作りたいですか?
戒田 
緒形拳と芝居したいと思ってたんですが亡くなりましたしね。高倉健も亡くなりましたし。菅原文太も。立て続けでしたね。一気に時代が終わろうとしていますね。でも、やっぱり役者かな。
__ 
役者。
戒田 
劇団員もグイグイ成長していってくれて。世間的に評価が高いというよりも、僕がワクワク出来る方ともっと出会えて、一緒に作品が作れたらなと思います。出不精で、そんな努力をしているかと言われると・・・ですけど。
__ 
でも、役者にこだわっているんですね。
戒田 
役者と一緒に舞台を作るのでなければ、家で小説書いている方が楽ですからね。
__ 
演劇とは作り手にとって効率の最も悪いメディアでありながら、観客からすれば最も効率の良いメディアとも言えると思います。戒田さんは何故、演劇にこだわっているんですか?
戒田 
一番、手になじむからです。若いときに美術部、文芸部、バンドと色々やってみたんですが、一番手になじむのは演劇でした。続ける理由は特に必要ない。
__ 
役者と一緒に作品を作る。出来るだけ、良い作品を作る。
戒田 
そうですね、役者さんと一緒に新しい風景を作りたいです。人が変わればまた違う風景になりますしね。人が変わらなくても、例えば今回主演の上原君とは6年振りなんですけど、もの凄く巧くなってるし。実は劇団員の誰よりも付き合いが長かったりして。どういう経路を辿って成長してきたのかが、稽古を通して見えるような気がして。長い間続けている甲斐があるものだと思いますね。
__ 
つまり、上原さんのこれまでの全てが見れるかもしれない。
戒田 
と、思いますね。

タグ: いつか、あの人と 作家の手つき


質問 亀井伸一郎さんから 戒田 竜治さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、カメハウスの亀井さんからの質問です。「脚本を書いている時の、自分だけの変な癖はありますか?」
戒田 
うーん、特に無いですね。深夜になると筆の進むペースが上がる事ぐらいかな。筆が乗り始めるキッカケが毎公演違っているんですよ。そろそろ、そういうのがルーチン的に決まってきてもいいくらいキャリアは積んでいる筈なんですけどね。

生きている、そして立ち上がる・・・

__ 
戒田さんにとって、魅力的な俳優とは?
戒田 
登場人物の人生をきちんと生きれる俳優。それに尽きますね。文法はアングラでもエンタメでも、静かな芝居でもいいんですけど。脚本を使って人間を表現出来る俳優じゃなければいやだと思っています。そういう人だけ集めているんですけどね。
__ 
台詞の言い方だけ研究している役者は、正直すぐ分かるし、ちょっと注意して観れば役作りの深浅も分かってしまいますからね。誰にでも。
戒田 
最後は俳優自身の人間力だと思うんですよ。舞台に如実に現れるんですよ。「上手にはなったら宜しいがな」とは思いますけどね。でもどういう経験をしてきたかは如実に出てくるんですよね。
__ 
ごく個人的には、観客からの見え方を研究して工夫してくれればもう、良いと思えてしまうんですよね。
戒田 
仰る通りです。
__ 
演劇は、その場に集う事から始まる。であれば、他者の思考の流れくらいは想像して作り上げてほしい。他者の認識に素直になるにはまず自己の素直な気持ちで今の役の気持ちと同調するのが大事で、そこには役者自身の経験や人間力がとても大切ではないかと思っています。
戒田 
ええ。
__ 
満月動物園は個人に陶酔し生死を全うする場所なので、つまり、役者自身による総力戦でもありますよね。尽くされたものを観たいと思っています。
戒田 
役に関しては俳優が専門家であるべきだと思っています。演出ではなく。だって、一人一人の役について演出家がそれを掘り下げていくんなら、何故役者を呼んだんやという話になってしまう。必要な時はやってますけど、でもやっぱり僕とは違う感性で掘り下げてもらいたい。
__ 
必要な時。
戒田 
あまりいい時じゃない(笑う)。
__ 
役の演技について、戒田さんから何も言う事はない?
戒田 
稽古の仕上げの段階では言いますが。序盤ではあくまで、「こういう面があるんじゃない」とか「こうも考えられるよね」という事を提示し続けます。俳優は役の専門家なんだから、全ての可能性を考慮してその中から選択しないとダメだろ、と。人間を描く担当でしょ、と。俳優の中から人間が立ち上がってお客さんの前に寄っていく段階になったら、作品を整えるという意味で指示を出したりしますね。役者の中で登場人物が動き出さないと、物語になりえないので。
__ 
満月動物園は、俳優にとってはやりがいのある環境でしょうね。
戒田 
そこにやりがいを感じてもらえる人が俳優でしょうね。・・・あえて足しておくと、登場人物が生きているというのはあくまで土台で(笑う)。
__ 
それはもちろん。最終的には・・・いや、作品によって違いますけど、向こうの世界に全員で行けたら、まあある程度は成功かな、というぐらいじゃないですか。だからこそ土台作りが重要ですけどね。
戒田 
そうですね。

タグ: 演技は出来てなんぼ 役者の認識(クオリア) 演技を客席の奥まで届ける 俳優自体の人間力 工夫する俳優 役作り=個人の人間力 俳優を通して何かを見る


死神シリーズの正体(?)

__ 
世界における満月動物園の位置付けについて、伺っても宜しいでしょうか。
戒田 
ちょっと前から、演劇業界を引退したって言ってて。プライベートが忙しすぎて。一時期、付き合いが全く無くなってたんです。公演はしてたのに。
__ 
公演しながらプライベートが忙しいって相当忙しいですよね。
戒田 
だから、つい最近まで、自分が満月動物園をどう世界に位置付けて作品作りをするかにまで手が回っていなくて。・・・俳優が、役を、もっと生きるようであって欲しいと思っています。でもそれは他の演出家の下では全く違う意味合いになると思いますし。
__ 
ええ。
戒田 
僕たちの中で、ちょっとずつでも前を向いて進んでいく事で、やりたい事はどんどん増えていくんだろうとは思っています。元々は凄く実験的な事をやってたんですよ。満月動物園と言えば「実験」だったんですよね。
__ 
やっぱり前衛だったんですね。
戒田 
死神シリーズは、そんな実験を繰り返していた僕が、どこまで分かりやすいものを書けるか、という、自分なりの実験、挑戦でもあるんです。
__ 
死神シリーズ。本当は具体的な作品の筈なのに、ものすごく抽象的な感覚があります。そして、演歌の世界に入っていく。改めて言うと、観覧車が倒れるというのもとても象徴的なモチーフと言えるでしょう。不条理さすら覚えるほどの事故と、そこから始まる怒濤の残りの人生。それは観客個人の物語を語る事でもあり、輪廻を暗示する幕切れは、白幕の向こうの世界を黙示することでもある・・・かもしれない。

タグ: 観客に血を流してもらいたい 信頼のおける演出家 実験と作品の価値


あなたに投げかける

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
戒田 
もっとお客さんに届く作品を作りたいですね。第15回公演「ツキノアバラは十五夜という事で、ちょっと特別な意味合いの公演にしたんですよ。この豪華なキャストで。
__ 
ああ、本当だ。凄いですね。
戒田 
その公演頑張って、でも次がショボく見られたら嫌だと思って2本立ての公演にしたんですよ。「トラワレアソビ」と「ツキカゲノモリ」。本公演クラスの2本立てをやったんです。どちらもえらく評判が良くて。僕の作品は的を絞れていないカオスだったんだなという気づきもあったんです。
__ 
なるほど。
戒田 
そのあたりから、お客さんからの反応がビビットに届くようになりました。今更かもしれませんけど、もっとお客さんの心に届いて、反応の返ってくる作品を作りたいなと思っています。
満月動物園第壱拾五夜『ツキノアバラ』
公演時期:2008/10/24~26。会場:in→dependent theatre 2nd。

タグ: カオス・混沌


革製のリボンアクセサリー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってい参りました。つまらないものですが、どうぞ。
戒田 
ありがとうございます。(開ける)あ、かわいい。
__ 
ジャケット等にでも付けて頂ければ。

タグ: プレゼント(衣服・布小物系)


k1k / 波

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。最近、亀井さんはどんな感じでしょう。
亀井 
最近は何か、今までにないくらい忙しいんですよ。フットワークが軽いのをウリにしているんですけど、先月なんかはめちゃくちゃ忙しくて。
__ 
KING AND HEAVYへの出演もありましたしね。
亀井 
役者で呼ばれる事は無いだろうと思ってたんですけど、最近は多くて。芸人さんとお笑いLIVEする事も、最近は多いです。思っていた自分とは違う忙しさなんです。
__ 
忙しいのは素晴らしいですね。
カメハウス
近畿大学文学部芸術学科舞台芸術専攻演技コース出身の代表・亀井を筆頭に旗揚げしたパフォーマンス演劇集団。亀井が作・演出・振付を行い、彼の作り出す世界は多人数が動き回るエンタメ作品から、少人数で構成された繊細な文学的作品まで幅広い。楽曲のPVの様なパフォーマンスが芝居の中に多用されるのが特長で、身体全てを使った独特な表現を追求している。本公演以外にも、チャリティー企画や文化祭、前説など各種イベント及びコンテストや、LINX'Sなどの演劇祭に出演。映像製作にも力を入れている。(公式サイトより)

ka2ak / 「罪ツツミツツ蜜」

__ 
さて、カメハウスの次回公演は「罪ツツミツツ蜜」、五月一日から上演ですね。
亀井 
言いにくいですよね。
__ 
いえ、好きなタイトルです。回文になっていて、日本語としても通っているじゃないですか。今の時点で、どんな作品になりそうでしょうか。
亀井 
いつもはパフォーマンスが多いんですけど、今回は比較的しっかりストーリーを組み立てているんじゃないかと思います。構造は凄くシンプルなんですけどね。章それぞれにテーマがあって、それらを全体で見ると回文形式になっているんです。それを初めに思いついて書き始めました。いつもは章立てすらしないんですけど。
__ 
チラシからすると怪奇ゴシックロリータ的なイメージを感じますが、それがカメハウスのカラーなのでしょうか?
亀井 
基本的に、カラーは無いんですよ。短編と本公演で作風がガラッと変わりますし。そのとき僕が書きたいものを書くというのを信条にしているんです。最近はちょっと柔らかくなってるのかな。このごろ小説をよく読んでいる事もあって、文字にこだわった脚本を書いたりもしています。
__ 
文字にこだわる?
亀井 
脚本家として、例えば「言えちゃう台詞」ってあるんですよね。それを、どこまで言わずにいけるか、にこだわったりしています。例えば普通に「元気ですか?」「元気です」という受け答えがあるとして、「元気です」という台詞を絶対に言わずに「はい元気です」と答えるには?みたいなまわりくどい事を結構やっています。そういう実験ばかりしていると言葉遊びとかリズムにこだわってきてしまって。
__ 
最終的には、台詞を文字に近いように使うようになるとか?
亀井 
それに近いかもしれません。今回、作中にも言葉と認識というのがテーマとして出てくるんです。今ここにカップに入った水があるんですが、これを水と認識するには言葉が必要で、「水」という言葉があるから認識が出来るんじゃないか。今回は怪奇探偵もので、妖怪が絡んでくるんですよ。認識のズレがキーになる。お客さんに認識させる言葉とそのズレを意識しながら書こうとしています。
__ 
舞台上での会話とは、とても複雑な現象ですね。通常の会話とはどこまでも異なっている。俳優によって演じられている、すでに用意された言葉を観客が解釈している、という状況。どうやっても誤解の生まれる状況ですよね。
亀井 
そうですね。誤解は発生するし、むしろ疑ってほしいです。僕の周りでは王道のエンターテイメント=シンプルな伝わり易さがその醍醐味だと考えられていますが、お客さんにはそこを疑ってほしいです。全部嘘なのかもしれない、って。で、今回は回文がテーマなんで、そこを手掛かりにしてほしいですね。意味が分からない言葉が出てきたら逆さまにしてみたり、とか。しかも今回は探偵モノなので、脚本の中にも謎を埋め込んでいます。話自体は簡単なんですけどね。
カメハウス第捌回本公演「罪ツツミツツ蜜」
tsumitsumimi
カメハウスが1年半振りにお送りする怪奇探偵物語!妖怪、怪異、愛、恋、オカルト、宗教、脳髄、記憶― 圧倒的なスケールと、カメハウスコラージュ演出の真骨頂を是非体感しに来てください!

【公演日程】
日時 2015/5/1~4
5/1(金) 19:30
5/2(土) 14:00 19:00
5/3(日) 14:00 19:00
5/4(月) 13:00 17:00
【会場】シアトリカル應典院
【料金】一般前売¥3,300 一般当日¥3,500 学生¥2,000(※要学生証)

タグ: 意図されたズレ 新しいエンターテイメント タイトルの秘密


kam3mak / その瞬間のこと

__ 
沢山のカラクリが仕込まれている作品のようですね。亀井さんはそういう作品が好きなんですか?
亀井 
というより、隠すのが好きなんですね。本編上には出てこないんですが、細かい設定も全部書いちゃうんですよ。その世界の広がりの中で、ここだけを取り上げる。でも、取り上げられなかった領域がふと香るような、そんな台詞を書くのが好きなんです。
__ 
素晴らしい。
亀井 
それには捕らわれないんですけどね。それだけじゃないですし。
__ 
隠す表現を許すって、たぶん豊かさなのかもしれないなと思うんですよ。経済的な面での豊か/貧困を分けるのってお金と時間があるかどうかだと思うんですが、こと作家におけるそれって、「隠す事が許されるかどうか」のような気がする。表現をやめるとか、精度を低くするであるとか。そういう事が出来るのって、意外と。貧しかったら、そのタイミングを逃さずに全て出そうとするじゃないですか。奥ゆかしさというか、全体のプロデュースの話にも掛かってくるかもしれないですけど。どうでしょう。
亀井 
でもね、僕は初期は全部出してたんですよ。カメハウスは今年で6年なんですけど、初期の作品を今見ると僕のやりたい事がほとんど詰まってるんですよ。しかも、一つの芝居に3つも4つもの作品の要素が詰まってるんです。ごちゃ混ぜになってる。昔はアレ足してコレ足してだったのが、一個で良いと思えてきたんですね。広がっていった世界の、僕の着眼点というか、落とし込みたいところが、本当に細い一点なんですよね。隠すというのはそういう事なのかな。収縮していった、ある一点だった。キャラクターでも、開始一時間経っても中々出てこなくなる、みたいな事になって。でも、濃密なある一点にこの人を出したいから我慢してもらう、贅沢な使い方をしていますね最近は。むしろこの一瞬だけ出るからこそ輝くから。
__ 
それは、作家として成長したと捉えていますか?
亀井 
僕は脚本の他に演出も役者もしているのですが、それぞれの能力が伸びているかというとよく分からないんですが、人間としてはいい生き方をしてこれているのかなと思います。昔よりは考え方が楽になっていると思うんです。昔は稽古場で役者がはしゃいでたり、本番前なのに緊張感が無いと不満に思ってたりしてたんですけど、今は全然そんな事ないですね。対人とやるんであればそれも当たり前ですし。昔は作家として、台詞で遊ばれるとイライラしていたのが、今は遊ばれる台詞を書けて良かった、と思えています。

kame4emak / 歪

__ 
カメハウスに出演される役者に、どんな姿勢を期待しますか?
亀井 
こんな言い方をすると失礼かもしれないんですけど、プロフェッショナルであってほしくないんですよね。カメハウスはそういう場ではなくて、実験したいんです。素人性というか処女性というか、そういう成熟していないもので作品を作り上げたいんです。重要な見せ場では安定した人を置いてるんですけど。でも僕は、方法論が確立した・自分一人で立てる人ばかりでやりたいとは思わないです。僕も仲間も、一人で作り上げる訳じゃないし。そういう不安定なところでできあがっていく、歪なんだけど崩れずに積みあがっている。一瞬だけ凄く綺麗なものが出来上がったらと思うんです。その後は崩れてもいいんです。そういう座組で出来たらいいなと思っていますね。

タグ: この座組は凄い 混成軍的な座組 作家として不安はない


質問 村角ダイチさんから 亀井 伸一郎さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、THE ROB CARLTONの村角ダイチさんから質問です。「役者として、出来ない事はあるんでしょうか?もしあるのであれば、その対応方法を教えて下さい」。
亀井 
僕は実生活では出来ない事は沢山あるんですけど、舞台で出来ない事はない、ですね。それにまだ出会ってないだけかもしれませんけど、ムリです、っていう事はないです。この間、KING AND HEAVYの時も体を絞ろうと思って。10キロ痩せようと。結局9キロで止まっちゃったんですが。そういう挑戦が結構好きなんです。役者として、無茶ぶりされるのが結構好きかもしれません。男だし、脱げと言われれば脱ぎますね。
__ 
ありがとうございます。次です。満腹満さんからの質問ですが、「女性への接し方・扱い方を教えて下さい」。ROB CARLTONは女優が出演した事がないので、もしその機会があれば・・・との事でした。
亀井 
ええと、まず僕が男性か女性かというと女性寄りなんですよ。母親が、女の子が欲しかったらしくて。幼少期の僕にスカートを履かせたりして、僕も男の子的なものには興味を示さなかったらしくて。ままごと遊びをしていたんですね。そういう訳で僕は女性の方が普通に喋れるんですよね。
__ 
つまり、接し方もなにもないと。
亀井 
もう、女性みたいなもんなんで(笑う)

kameh5hemak / ガラスのように不透明

__ 
カメハウスで描く一点とはどこから来るのでしょうか?最近のトレンドでも結構です。
亀井 
僕はその、絵が見えるんですよ。メインの見せたい一枚絵がドーンと浮かんで、そこに行き着く為に話を作るんですけど。最近は絵という言い方をやめて、これは情景と呼ぶべきだなと思っていま。それを舞台上で再現するために演劇を作るんですけど、絶対に違う情景が繰り出されるんですよね。前まではお客さんの含まれない情景だったんですが、最近は、劇場が持っている全ての情景が作用し合っていって広がって、全く違う情景が浮かぶような感じになっていて。それはお客さんによっても違う情景だし、やっている間にもどんどん変わっていくんです。
__ 
情景がまず見える。それが結びつき合い反応し合う。そんな、情景の応酬が見れるかもしれない?
亀井 
以前までは情景というものが不明確だったんです。ワーっと出てくるのに。でも今回は、回文で話を作るという事で対照的なイメージの絵がわーって出てきて。でも僕も全部分かって書いてる訳ではなく、見えるものをそのまま書いているんです。台詞とか構成はちゃんと考えているんですけど、自分が書きたいと思ったものを、潜在意識を信じて書いているんです。何故これを書きたいと思ったのか、それを後付けで考えてはいるんですけど、今、何故これなのかは僕も全く分かっていないです。
__ 
そこに触れたお客さんが、もしかしたら想像できるかもしれませんね。
亀井 
お客さん自身の持つ情景にコネクトして、何か刺激になって、新しく見えるものがあればいいなと思いますね。
__ 
そうですね。
亀井 
今回については、誰が見ている世界も違っていて、その差異が妖怪を生み出している、という説を言っている奴がいて、それは脳の誤作動で、見たくないものを変換して妖怪として生み出していると。それを美化し過ぎて違うものが見えている、みたいな。お客さんにとっても、例えば恋をしてウキウキしている気分の時に恋愛モノをみたら素晴らしい気持ちになったり。身内を無くした時に悲しい物語を見たときには入り込んでしまったり、とか。そういうケースは個々にあると思うんですが、今回は認識がテーマなので、お客さん毎に違う情景がいっぱい重なって、何かその、役者の情景も動いていくだろうし、相互作用で、今まで見た事のない空間が出来たらなと思いますね。
__ 
京極夏彦の「姑獲鳥の夏」のトリックも、脳がその死体を見ようとしなかった、というものでしたね。脳の最大の役割ってやっぱり、絶対急所である精神を保ち続ける為のセーフティーネットだと思うんですけど、外界から保守するというのはもちろん閉鎖を意味する訳じゃなくて、その刺激を個人に最適化するように多層的に解釈させて、何なら遊びを持たせながら精神に届けていると思うんですよね。生活の要素として社会性が重要になると言葉という強力なツールが生まれて、概念の共有が出来るようになった。前述のセーフティーネットは、発生の順序はさておき言葉と共に進化してきていて、他者のそれと誤解を許しながら混合する時、それはあたかも儀式のようになるのかもしれない。
亀井 
そうかもしれませんね。

kameho6ohemak / 抱いてあげる

亀井 
僕はあまり、全てに重要視をしていないというか。役者を大事に扱わないし、自分も大事にしない。脚本も演出にも大事にしないんです。全て僕の中では大事なんですけど、大事なものほど大事には扱わないんです。自分の芝居も、自分も。そういう風にしていくと、可能性がどんどん広がっていくんです。この台本のこのセリフに固執する、それは凄く大事だから求めて行く、何ヶ月もの稽古で求め続ける、けれども、それにはすがらないんです。
__ 
というと。
亀井 
一日前、一時間前にふっと、もっと凄いものが出来る可能性があるからです。それこそ脳の認識ですよね、これはこうだという勝手な固定観念で見てしまうと、本当は違うものなのに別の物に見えてしまう。見えない状態というのが脳の中で起こってしまう。僕は出来るだけのめりこめりながらも、全てを大事にしないように大事にしないようにやっています。

kamehou7uohemak / 存在

__ 
もし300億円あったら、どんな作品が作りたいですか?
亀井 
一度やりたいと思っているのは、僕が生まれたぐらい頃の、日本がまだまだガーって発展している最中の時代が好きで。そういうものというか街を作ってみたいですね。好きに破壊してもいいし、好きに作って良い。舞台セットが街、みたいな。お客さんはその中を歩きまわって、ところどころに起こっている事件を見てもらう、みたいな。
__ 
ああ、それは面白そう。それはもう劇場じゃないかもしれないですけどね。
亀井 
劇場も好きなんですけど、早く劇場を出たいなと思うんですよね。
__ 
劇場を出たい?
亀井 
劇場の、何もないフラットな状態は凄く魅力的なんですけど、フラットではない土地が発するもので作れるものもあると思うんですよね。本当に、色んな土地で色んな作品をやってみたいです。それをするといかんせんお金が掛かるので出来ないですけど。
__ 
街頭劇、野外劇。そんな感じですか?
亀井 
そうですね、それもありますけど、人がまったく寄り付かない所でやりたい欲もあります。誰が来るんだ、って話ですけど。
__ 
いいですね。誰もいない地下鉄の駅とか、沢とかでやってるのを見たいですね。

タグ: 300億あったら 土地の力


kamehous8suohemak / 疵痕

亀井 
今回の作品は、凄くコラージュ的な手法を多用しているんです。スタッフにわがままを言ってまして、絵描の人を読んできて、パネル一枚一枚に何か描いて舞台上をコラージュしてほしい、とか、美術さんに出ハケや動線を考えない、美術作品を作って欲しい、とか言ってるんですよ。音響さんにも、全部、僕が範疇を越えたところをお任せしているんです。今回はそういうのが、新しい実験かなと。逆に、スタッフの皆さんはどうしたいのか。それを繋ぎ合わせるという事をしています。美術プランが出来上がったら、また演出も変わると思います。照明の当て方、音響の設置、どんどん変わっていくんですよ。そういう変化がとても楽しみです。
__ 
とても楽しみです。見るのにかなり、精神的な体力を使いそうですね。
亀井 
多分、見終わったらぐったりすると思いますよ。

タグ: 作家の手つき