一輪挿

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
鳴海 
ありがとうございます。(開ける)これは・・・花器ですね。
__ 
ビーカー型の一輪挿しですね。
広田 
ステキじゃないですか。
鳴海 
オシャレじゃないですか。ありがとうございます。
油田 
「葉桜」に合うかも。

タグ: プレゼント(インテリア系)


私の観劇思考

__ 
でも、頑張って作った作品が面白くない事ってありますよね。
鳴海 
そうですね。コンディションもありますけど、でも、頑張らなくても上手くいくなんて事はないんですよ。残念ながら頑張っても良いものになるとは限らない。ただ、良いものをつくるためには努力する必要があると信じないといけない、私たちはね。
__ 
そうですね。
鳴海 
私の観劇思考でもあるんですが、もし観た作品が肌に合わなかったとして、その時お客さんが自分にはなぜいまいち面白くなかったんだろうと考えてくれるのなら、それは作品と同時に自分についても考えているんだと思います。それはつまり、他者について考えているんです。自分にはピンとこなかった観劇体験であっても、価値ある劇場体験につなげる回路も私たちは作っていかないといけないんだろうとも思います。「何故面白くなかったのか考えてみませんか」と。肯定も否定もしないですが、その話ができれば2500円は決して無駄じゃないですよ、と。そういう文化の利用の仕方ができると、人生をまちがいなく押し広げることができる。

タグ: 直接感想を聞きたい 観客との関係性


ターニングポイントと半分こへの期待

__ 
第七劇場のやるべき事を教えてください。
油田 
それ、俺も聞きたい(笑う)
鳴海 
私たちの創作のポリシーは、国境を越えられる作品の製作です。三重という場所から国境を越えられる価値のあるものを作り、第七劇場がレジデントカンパニーになっているベルヴィルを、県や市だけではなく、劇場がある美里地域の人たちにも誇りとなって愛される劇場にする。その二つですね。
__ 
素晴らしい。
鳴海 
舞台芸術ってどうしても消えてなくなってしまうものですよね、それがいくらエポックメイキングなものであっても。見ていなければ語りようがない。
__ 
演出はそうした作業ですよね。
鳴海 
でも、いろんな時代でターニングポイントになっている作品はある。私たちも美里で、そうした作品を作る事がミッションのひとつだと考えています。
__ 
ありがとうございます。では、ご自身にとってのターニングポイントになった作品は。
鳴海 
鈴木忠志さんの「カチカチ山」。これは初めて富山県利賀村に行ったときに見た作品で、これはあらゆる意味で衝撃でした。それから、ピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」「春の祭典」の連続上演を韓国で見たんですが、終演後、膝に力が入らなくなった舞台体験でした。その計3つは私にとって大事件でした。
__ 
そうした重大な作品をもし作れるとしたら、それはどんなものだと思われますか?
鳴海 
さっき、油田さんの話にもあったんですが。地方都市だと一人の表現者がいろんな種類の活動をする必要が出てくる場合があるんです。たとえば絵本も純文学も児童文学もラノベも書かないといけない場合があるんです。もちろんそれぞれをそれが得意な人に任せるという方法もあります。いろいろなジャンルが求められる中で、私がある種のピリオドとなる自分の作品を作れるのがどのジャンルなのか、なかなか想像しにくいですね・・・ただ、変な話をしますけど私は50歳で死ぬつもりにしていて、あと15年なんです。一年に一作と考えたらあと15作。その15作で納得した創造活動を送るぞと考えたら、多くのものに触れて、考えて、その時その時で真摯に向い合っていく事でしか為しえないんだろうと思います。当然のことなんですが。
__ 
一回一回の積み上げという事ですね。
鳴海 
私はこれまで、存命していない作家の作品の演出がほとんどだったんですけど、この間のこけら落としで作った「シンデレラ」は油田さんの構成台本でした。油田さんのポップでスピーディーな作風を演出していて、私の中で開いた部分があったんです。これから15年、切って捨てずにやっていって、どの活動に対しても意味を見出して、楽しく苦しみながらやっていければと思います。
__ 
ありがとうございます。それが大きなものであれ小さなものであれ、良いものである事を願っています。
鳴海 
そうですね。それをご覧になったお客さんにとって糧になりたいと思います。作品としてのクオリティが劇場内の半分を占める要素だとすれば、それは私たちの仕事であり、作品を通して、残りの半分を占めるお客さん一人ひとりが自分自身や他者について思いをはせて考えを深めるような時間に貢献できれば、その劇場はとても幸福だと言えると思います。

タグ: 愛される劇団づくり 直接感想を聞きたい 人生の節目 最新作が最高傑作 一回一回を大事にする 有機的に関わりあう 作家としての課題


顔の見える観客

__ 
最近考えている事はありますか?何でも結構です。
鳴海 
去年の11月に私たちの新しい劇場がこけら落としを迎えたんですが、PANみえの芸術監督として、津の人たちがもっと劇場を使って人生を楽しんでもらう為にはどういう風に仕掛けていけばいいのか。その事ばかり考えていますね。もちろん作品の事も考えていますが。
__ 
劇場を使って人生を楽しむ。
鳴海 
それはどういう事かというと、もろもろの地域はリトル・トーキョーになってもしょうがないんですよ。良いところは参考にしつつ、大都市の縮小・劣化コピーではない劇場文化を作った方がいい。人口規模も文化の形も違うんです。津には津の文化の充実の仕方があるはずです。どういうスタイルや仕組みがしっくりくるのかを考えています。
__ 
東京以外の演劇人が必ず考えているテーマと言えるかもしれませんね。東京の人から見ると「京都は時間の停まった町」と思われている、みたいな話を聞いたことがあります。それはそうなのかなとも思うし、反感も覚える。鳴海さんは、東京から三重に越されて、「何かが違う」と感覚された事はありますか?
鳴海 
具体的には、東京にいた頃、公演を観に来たお客さんと触れ合える時間というか密度は相対的には薄かったですね。
__ 
短いんですね。
鳴海 
三重だと、劇場以外にも会う機会や場所があって、比較すれば濃いです。私自身はそう感じます。見に来てくれたお客さんの人生にコミットしているという実感が強い。良い影響か悪い影響かは置いといて。それは私にとってはとても嬉しいです。そうは思わない人もいるでしょうけど、私には性に合っている。フランスやドイツで公演した時も、多くのお客さんが私たちに話しかけてくれたことと重なる部分があります。
__ 
お客さんとコミュニケーションが取れる、それは上演側にとっては嬉しくてしょうがない事ですもんね。
鳴海 
もちろん、何千人のお客さんの目に触れるのもとても大事で難しいことですけど、顔の見える観客の一人ひとりの人生の糧になっているという実感も大切な側面だと感じます。私たちは民間の自由度と機動性を活かして、語り合える場としての劇場とその実感を大事にしたいと思っています。
__ 
そうした関係性を知らない人にとっては「時間が止まっている」と見えるのかもしれない?
鳴海 
それは、どうなんでしょうね。人間の身体のサイズは変わっていないけれども細胞が入れ替わり続けている状態は「時間が止まっている」と呼べるのかもしれないし。それとも、延々と流れている川の水面を見て「時間が止まっている」とも言えるかもしれません。東京は文化の新陳代謝も激しく輪郭が変わりやすいので時間が止まっているとは感じません。その意味では京都の印象はちょっと違うなと思います。
__ 
京都、新しいものが出てこないという実感がありますけどね。
鳴海 
クラシックという意味じゃなくすでにあるものを大事にしているというか。基礎が意識的にも無意識的にもしっかりある印象があります。上辺だけでコロコロ変わっていくんじゃなくて、発展させるにしても、リノベーションするにしても、その基礎の部分がどこかで作用しているように思えます。
__ 
ああ、京都はそういうところあるのかな。でも基本的には、京都で演劇をやっている人は常に反逆的というか、既存の物に対して破壊を試みている印象が強いです。というか、そうあってほしい。でもその根っこには、そういう、根っこへのリスペクトは確実にあるでしょうけれど。

タグ: 『東京』 演劇のない地に演劇を現出 社会の中で演劇の果たすべき役割 町とアートと私の企画 有機的に関わりあう 時間停止都市としての京都


葉桜のゆくえ

__ 
という事は、鳴海さんは「葉桜」自体にはそんなに思い入れはない。
鳴海 
そうなんですが、実は岸田國士に対しては少し苦い思い出があって。昔『驟雨』をナチュラリズムで演出したんですけど、納得いかなかったんです。でも今回のプロジェクトが動き出して、これはと思って。
__ 
ある意味、リベンジ?
鳴海 
そうなんですよ。岸田作品と和解したいです(笑う)先日読み合わせをした時に手応えがあって、この作品、良い形に作れるという実感があります。
__ 
母子二人の話ですね。
鳴海 
お芝居としては45分ぐらいのものになります。ええ、短いんですよ。
__ 
二人芝居を全国で持っていく。三重発信のポータブルな作品は珍しいというか、あまり記憶にないので楽しみです。どんな作品が見れるのか。
油田 
2007年に、三重県文化会館で平田オリザさんが「となりにいても一人」という作品の公演企画が作られたんです。2バージョンのキャストを公募で集めて。全国でそういう企画一斉に行う、という試みだったそうなんです。地方って、割と大きいスケールの公演の企画が通りやすいんですよ。沢山の人数が公募で出て、でも続かない。という。でも「となりにいても一人」はそうではなくて、割と絞り込んだクオリティの高い作品も作れるんだという事が分かったんですよ。平田オリザさんがそれを証明したというのはあります。
__ 
なるほど。
油田 
それからこのしたやみさんと仕事をして、鳴海さんとも出会って。地方から外に向けて、作りこんだ作品を持っていく事に、じりじりと迫っていった感じですね。あとは、実はあんまり大都会に出そうとは思っていないですね。去年は広島・金沢だったし、「人間そっくり」は松山・長崎・宮崎と、関西以西にしか行ってなかったり。演劇シーン的に、東京・大阪は意識していなくて、地域にいる演劇人同士でやっていきましょうというのも、お互い、面白いものが出来るんじゃないかと。逆に、向こうの地域の方が来てくださったりもするし。
__ 
都市部で作られてはいないという事は、集中して作られた作品と言えるのかもしれませんね。付随した情報が多すぎないという意味で。そのクオリティを目の当たりに出来ればと思います。
油田 
鳴海さんがこうやって三重に来ていただいたのもあるし、それは大きいですよね。これからいよいよ、パッケージの大きい作品も作れるかもしれない。4、5年ぐらいすれば三重からも本格的な作品が生まれ続ける土壌が整ってくるかもしれない。この「葉桜」が少人数の作品のモデルになって、段々と大きくなっていって。
__ 
若手に対する良い例になればいいですね。
油田 
本当にそうですね。

タグ: 演劇人同士の繋がり 平田オリザ いつかリベンジしたい


ゆうみさんの所為

__ 
今回、この企画はどのような経緯で始まったのでしょうか。
油田 
pan三重のいいところでも悪いところでもあるんですが、お酒を飲む席で次の企画が決まったりするんですよね。去年のGWに「このしたやみ」さんと一緒に安部公房の「人間そっくり」のリーディングでツアーをやったんです。金沢の打ち上げの時に、少人数で出来る芝居をしたいな、となりまして。岸田の戯曲に「命を弄ぶ男ふたり」という作品があって、あれを山中さんと二口さんでやったら面白いよねと言ってたら酔っぱらったゆうみさんが「葉桜をやりたい」と言い出して。そこに居合わせた鳴海さんを演出にしようと・・・そういう事が多いんですよ、一週間後に企画書が上がってきたりして。
__ 
ゆうみさんのせいなんですね。
全員 
(笑う)
広田 
男二人の芝居、男女二人の芝居はたくさん良いのがあって、それがずるーいと思って。「葉桜」かなとふわっと言ったんです。
油田 
最初は二本立てにしようとも言ってたんですけど、それは鳴海さんの負担が重いだろう、と。女優さんはオーディションで募る事にして。
__ 
居合わせた人たちで企画が始まっていく感、いいですね。久しぶりにそういう感じを思い出しました。
油田 
この少人数だからかえって良かったのかもしれないし。鳴海さんは別の席にいたけど。
鳴海 
私は別の席で飲んでいたんです。
山中 
小さい企画だから、色んな場所に持っていけるんですよね。何かでリクエストを貰ったら、リニューアルして持っていけるし。

タグ: 広田ゆうみさん


川田章子さんの芯

__ 
さて、「葉桜」ですが。ゆうみさんと川田章子さん。この川田さんは三重県の方なんですね。
鳴海 
そうですね、オーディションで。
__ 
ゆうみさん、川田さんはどんな感じですか?
広田 
そうですね、色んな事に染まってない感じがします。これから色んな事が増えていくような。無垢な感じがします。でも喋っていると芯があるんですよね。
__ 
なるほど。
広田 
それが、彼女の俳優としての芯につながって、それが強くなっていけばいいなと思います。先輩としてそう思いますね、あと顔が似ていて親近感が湧く。
鳴海 
目元が似てますよね。

津あけぼの座スクエアクリエーション2 葉桜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
全員 
よろしくお願いします。
__ 
3月の「葉桜」を西陣で上演されるという事で。まずは、最近、どんな感じでしょうか。How are youという意味で。
鳴海 
実は私、去年の4月に三重に引っ越してきてまだ1年経ってないんです。初めての冬と年越しをしたんですけど、地元と景色が似ていて、東京にいた頃には味わえなかった懐かしさがありますね。
__ 
餅は何個食べられました?
鳴海 
私たちが去年新しくオープンさせた劇場がある美里地域で、ちょうど餅つきをイベントとしてやっている団体がありまして。そこにお邪魔して、動けなくなるぐらい餅を食べました。七升ぐらいついていたのかな。実は去年もそこにお邪魔してたんですけど。
__ 
冬は寒いですか?
鳴海 
寒いです。北海道は家の中があったかいから、そこは違いますね。寒いのは東京も同じでしたけど。
津あけぼの座
2006年10月の開館以降、演劇公演・トークカフェ「ZENCAFE」・ワークショップ事業など、客席数50席の小規模空間のメリットを最大限活かして活動をして参りました。2012年3月から、津市栄町に最大150席のスペース「津あけぼの座スクエア」を2つ目の劇場としてオープンいたしました。これまでの津あけぼの座で培った劇場運営のノウハウを活かし、アーティストにも来場いただくお客様にもご満足頂けるよう目指して参ります。人々が交流し、文化芸術を発信し、研究できるスペース。ワークショップやアウトリーチ活動を積極的に推進し、地域に住む方々に還元する劇場。そして、全国にもクオリティの高い文化芸術を発信できるスペースとなるべく運営してまいります。(公式サイトより抜粋)
第七劇場
1999年、演出家鳴海康平と数名の俳優によって創設。作品製作時以外には、日本人独特の身体性を発展させた俳優訓練を恒常的に行いながら、日本の古典芸能である「能」や「歌舞伎」の動きや、舞踏やコンテンポラリーダンスの要素を取り入れた作品を製作。TVや映画などの映像表現、「文学の演劇的発展」などとは異なる演劇独特の表現効果を追求する演劇を目指し作品を製作。また演劇に関する状況を研究・改善するための運動も行う。(公式サイトより)
津あけぼの座スクエアクリエーション2~「葉桜」を上演する~岸田國士「葉桜」~
公演時期・会場:2015/2/28~3/1(三重公演・津あけぼの座スクエア)、2015/3/7~8(京都公演・西陣ファクトリーGarden)。演出・舞台美術:鳴海康平。出演:広田ゆうみ(このしたやみ)、川田章子。

タグ: 日本人の美意識 境界を越える・会いに行く ハウアーユー? 餅は何個? 引っ越し


津あけぼの座スクエアクリエーション2 葉桜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
全員 
よろしくお願いします。
__ 
「葉桜」を3月に京都の西陣で上演されるという事で、今回のインタビュー企画となりました。大変楽しみです。まずは・・・最近、どんな感じでしょうか。How are youという意味で。
油田 
実は今、津あけぼの座がリニューアルのための改修工事をしていまして。3月の頭には終わる予定なんです。これはあけぼの座9年目の改修工事なんですね。元々は学習塾として作られた施設を、本当にやっていいのかなと思いながら工事していたのが9年前で、今の工事はもしかしたら次の10年に向けてのものなんじゃないかと考えると、ふと・・・止めるなら今だなと(笑う)。次の10年も頑張らないといけない。まるで伊勢神宮の遷宮みたいですね。山中さんをはじめ、若い年代に劇場の作り方のあれこれを伝えています。まさに我々にとっての遷宮ですね。
__ 
次の世代への継承ですね。
油田 
もう3つ作ったので、もうこれのリニューアルが最後で4つ目はないだろうと思っていますが。
山中 
あとは遷宮を繰り返すだけでしょうか。
__ 
素晴らしい。次の代への思いはありますか。
油田 
三重はこの4・5年でやっと盛り上がってきたので。私どもは民間の事業ですので、三重県文化会館さんや三重大学さんとの連携も動き出して広がりが出来てきたんですけど、でも、いま一線で活躍している人たちが下がれば、もう多分この盛り上がりは終わる、無くなると思うんですよね。次がいない訳ではないんですけど、次を担う人材が出てこないといけないと思っています。
津あけぼの座
2006年10月の開館以降、演劇公演・トークカフェ「ZENCAFE」・ワークショップ事業など、客席数50席の小規模空間のメリットを最大限活かして活動をして参りました。2012年3月から、津市栄町に最大150席のスペース「津あけぼの座スクエア」を2つ目の劇場としてオープンいたしました。これまでの津あけぼの座で培った劇場運営のノウハウを活かし、アーティストにも来場いただくお客様にもご満足頂けるよう目指して参ります。人々が交流し、文化芸術を発信し、研究できるスペース。ワークショップやアウトリーチ活動を積極的に推進し、地域に住む方々に還元する劇場。そして、全国にもクオリティの高い文化芸術を発信できるスペースとなるべく運営してまいります。(公式サイトより抜粋)
津あけぼの座スクエアクリエーション2~「葉桜」を上演する~岸田國士「葉桜」~
公演時期・会場:2015/2/28~3/1(三重公演・津あけぼの座スクエア)、2015/3/7~8(京都公演・西陣ファクトリーGarden)。演出・舞台美術:鳴海康平。出演:広田ゆうみ(このしたやみ)、川田章子。

タグ: ハウアーユー? アウトリーチ 劇場のリニューアル SeizeTheDay


ゆうみさんの所為

__ 
今回、この企画はどのような経緯で始まったのでしょうか。
油田 
パンみえのいいところでも悪いところでもあるんですが、お酒を呑む席で次の企画が決まったりするんですよね。去年のGWに「このしたやみ」さんと一緒に安部公房の「人間そっくり」のリーディングでツアーをやったんです。金沢の打ち上げの時に、少人数で出来る芝居をしたいな、となりまして。岸田の戯曲に「命を弄ぶ男ふたり」という作品があって、あれを二口さんと山中さんでやったら面白いよねと言ってたら酔っぱらったゆうみさんが「葉桜をやりたい」と言い出して。そこに居合わせた鳴海さんを演出にしようと・・・そういう事が多いんですよ、一週間後に企画書が上がってきたりして。
__ 
ゆうみさんのせいなんですね。
全員 
(笑う)
広田 
男二人の芝居、男女二人の芝居はたくさん良いのがあって、それがずるーいと思って。「葉桜」かなとふわっと言ったんです。
油田 
最初は二本立てにしようとも言ってたんですけど、それは鳴海さんの負担が重いだろう、と。女優さんはオーディションで募る事にして。
__ 
居合わせた人たちで企画が始まっていく感、いいですね。久しぶりにそういう感じを思い出しました。
油田 
この少人数だからかえって良かったのかもしれないし。鳴海さんは別の席にいたけど。
鳴海 
僕は偶然そこに居合わせてて。
山中 
小さい企画だから、色んな場所に持っていけるんですよね。何かでリクエストを貰ったら、リニューアルして持っていけるし。

彼女の俳優としての芯

__ 
「葉桜」のキャストですが、広田ゆうみさんと川田章子さん。この川田さんは三重県の方なんですね。ゆうみさん、川田さんはどんな感じですか?
広田 
そうですね、若い・・・色んな事に染まってない感じがします。これから色んな事が増えていくような。無垢な感じがします。でも喋っていると芯があるんですよね。
__ 
なるほど。
広田 
それが彼女の俳優としての芯につながって、それが強くなっていけばいいなと思います。先輩としてそう思いますね、あと顔が似ていて親近感が湧く。
鳴海 
そういえば目元が似てますよね。
__ 
母娘だからピッタリですね。

三重だからこそ作れる作品

__ 
という事は、鳴海さんは「葉桜」自体にはそんなに思い入れはない。
鳴海 
そうなんですが、実は岸田國士に対しては少し苦い思い出があって。昔短編をナチュラリズムで演出したんですけどいまいち面白さが分からなかったんです。でも今回のお話を頂いて、これはと思って。
__ 
ある意味、リベンジ?
鳴海 
そうなんですよ。岸田作品に勝ちたいですね。先日リーディング公演をした時には手応えがあって。この作品、作れるという予感があります。
__ 
母子二人の話ですね。
鳴海 
お芝居としては45分ぐらいのものになります。ええ、短いんですよ。正確な尺はまだ分からないですけど。
__ 
二人芝居を全国で持っていく。三重発信のポータブルな作品は珍しいというか、あまり記憶にないので楽しみです。どんな作品が見れるのか。
油田 
2007年に、三重県文化会館で平田オリザさんが「隣にいても一人・三重編」という作品の公演企画を製作されたんです。2バージョンのキャストを公募で集めて。全国でいろんな地域のバージョンを作って一斉に行う、という試みだったんです。地方で公募型演劇製作って割と大きいスケールの公演企画をやりたがるんですね、沢山の人数を公募集めて上演する、でも続かない、という。でも「隣にいても一人・三重編」はそうではなくて、かなり絞り込んだ少人数のキャストであれば、地方でもクオリティの高い作品が作れるんだという事が分かったんですよ。オリザさんがそれを証明したというのはあります。
__ 
なるほど。
油田 
それからこのしたやみさんと仕事をして、鳴海さんとも出会って。地方から外に向けて、作りこんだ作品を持っていく事に、じりじりと迫っていった感じですね。あとは、実はあんまり大都会に出そうとは思っていないですね。去年は広島・金沢だったし、「人間そっくり」は松山・長崎・宮崎と、関西以西に今年はお邪魔する予定だし。演劇シーン的に、東京・大阪を強く意識するというのではなくて、地域にいる演劇人同士でやっていきましょうというのも、お互い、面白いものが出来るんじゃないかと。逆に、向こうの地域の方が来てくださったりもするし。
__ 
都市部で作られてはいないという事は、集中して作られた作品と言えるのかもしれませんね。付随した情報が多すぎないという意味で。そのクオリティを目の当たりに出来ればと思います。
油田 
鳴海さんがこうやって三重に来ていただいたのもあるし、それは大きいですよね。これからいよいよ、パッケージの大きい作品も作れるかもしれない。4、5年ぐらいすれば三重からも本格的な作品が生まれ続ける土壌が整ってくるかもしれない。この「葉桜」が少人数の作品のモデルになって、段々と大きくなっていって。
__ 
若手に対する良い例になればいいですね。
油田 
本当にそうですね。

タグ: その人に出会ってしまった 今年のわたし


地域の芝居の生き残りの難しさ

__ 
油田さんと京都の繋がりを教えて下さい。
油田 
三重と京都、昔は遠かったんですけど、2008年に新名神が通ってからは僕たちの居る津市からは車で一時間半ぐらいあれば行けるんです。半日の予定で京都の芝居を見に行けるんですよ普通に。はじめてこのしたやみさんが三重に来た時に、パンフレットに「新名神のおかげで三重と京都は近くなった。たまには公共工事も良い事をする」って書いた記憶があります。
__ 
なるほど。
油田 
このしたやみさん、田中遊さん、柳沼さん、田辺さん、京都の方にたくさん来て下さって。今度、トリコ・Aさんも来てくださるし、はしぐちさんのコンブリ団も。一個ずつ京都の方と付き合いを作っていってますね。京都に来るのは楽しみです。受け入れをし合える関係ですね。僕らもイサンで公演出来たんですよ。
__ 
ええ。
油田 
今度は、逆に京都に、地域で芝居をうつ事の大事さを示せたらなと。地域でのお芝居って、頑張らないと孤立して無くなってしまうんですよ。頑張っている人へ地域の理解がないと終わってしまうんですよね。それはもちろん、クオリティの高いものを作らないといけないですけど。
__ 
地域における芝居の生き残りの難しさ。
油田 
そこにはただ芝居を打つだけでなく、社会性・公共性が必要だと思うんですよ、絶対に。それは公共ホールがやってきた事ではあるけれど、僕ら民間やNPOも真剣に「演劇や社会・公共にとって有益なモノなんだ」と訴えてやらないといけない筈なんですよ。三重の場合は、まずお客さんに劇場に来てもらうところから始めないといけなかった。とにかくその仕組みとか、演劇はハードルの高いものではないし、終わってからああでもないこうでもないと語り合う楽しみのある、それを言い合って楽しむものなんですよ、という事。クオリティを上げて敷居を下げるという戦いかなと思っています。そこを頑張らないとね。

タグ: 社会、その大きなからくり 地方における演劇の厳しさ


あけぼの座の創客

油田 
東京を見ていると、クオリティを上げたら敷居も上げていい、みたいなことができるのかなと。それでもお客さんは入るんですよ、人口規模がはるかに大きいから。僕らはそれが出来ない。クオリティは上げるけど敷居は極力上げない。それは、アーティストには厳しい事を言っていると思いますね。逆に言うと、それをやっていかないと、どの町でも演劇は生き残らないんじゃないかと僕は思います。演劇はあってもなくてもいいものどころか、なくてもなくてもいいものになってしまうんじゃないか。
__ 
見てもらう為のハードルを越えてもらわなければならない難しさ。初めての人にも、見てもらえれば面白さは分かるんですけどね。
油田 
去年の津あけぼの座はありがたい事に稼働率が高くて。トークライブイベントも行うようになったんです。そのライブで、ここで演劇が行われている事を知るお客さんもいました。創客について、地味にでも取り組むようにしたいですね。
__ 
隠岐出身のプロデューサー、沢大洋さんが、故郷に演劇を京都から持って行って、それで大好評だったと言ってたんですよ。演劇の無い町に演劇を持っていくというのは非常に有益だと思っています。
油田 
生活の中に、演劇の入る余地を確保してもらいたい。組み込んでもらいたいですね。おかげさまで、三重はほぼ隔週で現代劇が見れるようになったんです。ウチか、三重県文化会館さんかで。そういう環境は出来つつあるので、そこからいかにお客さんに来てもらえるようになるかですよね。演劇を見たことない人への開拓をもっとしていかないといけない。一回見てもらえれば分かるんですけどね。そこまでがまた難しい。
__ 
個人的な時間の使い方のうち、一人っきりでの消費から共有して消費するように転換出来るか。魅力を知ってもらえればいいですね。

タグ: 演劇のない地に演劇を現出


でも、次も来て下さい、きっと

__ 
逆に、観客に何か期待する事、欲望する事はありますか?
油田 
演劇は多様性のあるメディアだと思うんですよね。作品が違えば何もかも違うし、俳優が一人違うだけでもかなり変わる。見ている人のコンディションでも違う。テンションの低い日に見たらやっぱり面白く無い事もありますしね(笑う)。
__ 
年齢層によっても感想って違いますしね。
油田 
それでも、いつ何時でもあなたを受け入れる場所として僕らはある。つまんなくても次絶対来てください、と。
__ 
なるほど。
油田 
いや面白い作品を呼んでるんですよ。でも、あるじゃないですか。あれっ?みたいな事。特に新作とかは。でも僕らは小屋側の人間なので、言い訳は出来ないじゃないですか。でも、次も来て下さい、と。
__ 
でも、頑張って作った作品が面白くない事ってありますよね。
鳴海 
そうですね。まあさっき油田さんのおっしゃったコンディションもありますけど、でも、頑張らなくても上手くいくなんて事はないんですよ。残念ながら頑張っても良いものになるとは限らない。ただ、良いものをつくるためには努力する必要があると信じないといけない、私たちはね。
__ 
そうですね。
鳴海 
私の観劇思考でもあるんですが、もし観た作品が肌に合わなかったとして、その時お客さんが自分にはなぜいまいち面白くなかったんだろうと考えてくれるのなら、それは作品と同時に自分についても考えているんだと思います。それはつまり、他者について考えているんです。自分にはピンとこなかった観劇体験であっても、価値ある劇場体験につなげる回路も私たちは作っていかないといけないんだろうとも思います。「何故面白くなかったのか考えてみませんか」と。肯定も否定もしないですが、その話ができれば2500円は決して無駄じゃないですよ、と。そういう文化の利用の仕方ができると、人生をまちがいなく押し広げることができる。

タグ: 「多様性と受容」への批判 直接感想を聞きたい 訳の分からないボールの話 社会の中で演劇の果たすべき役割


質問 呉城 久美さんから 油田 晃さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、悪い芝居の呉城久美さんから質問を頂いてきております。「三重で、秘密にしておきたいぐらいオススメのお店のヒントを教えて下さい」。
山中 
ヒント?それ、みんな大体同じ店を思いついたと思います。
油田 
ははは。生レバーのとこじゃないですか?“TRQ”。
山中 
やっぱそうですよね。
油田 
ほとんど答え言っちゃったよ。焼き鳥屋さんなんですけど、あけぼの座から近いんです。ちょっと高いんですけど、鳥の焼き肉みたいに焼けるお店なんです。で、鳥のレバーは牛じゃないのでセーフなんですよ。それが美味しいんですよ。来る演劇人に、必ずオススメするんですが絶対に写真は撮るな、と。
山中 
鳥のレバーだけはダメ。
広田 
合法生レバー。
山中 
あと、最近生酎を頼むと沖縄のシークワーサーがボコボコ入って出てきた。

人脈だけは引き継げない、けれども

__ 
後進に何を引き継ぎたいですか?
油田 
人脈の事かな。悩みなんですよ。人脈って人と人が出会う事でしか生まれないと思うんですよ。引き継げない。特に我々みたいな民間の補助金もなかなかないような劇場の者は、お互いの人的なやり取りをするしかないし、そうやって生まれた財産だからこそ引き継げないと思うんですよね。
__ 
そうですね。
油田 
3、4年ぐらいは何とかなるかもしれないですけど、続かないとダメになるのかなと。でも、「この人達は演劇がバカが付くほど好きなんだ」というのはなんとか伝えられると思っています。残せるのはそれだけかもしれない。この分野には舗装された道はないので、自分達で切り開いていって貰うしか無いんですよね。公共劇場さんだって、熱意のある担当さんが異動しただけで勢いがなくなるとかしょっちゅうあるじゃないですか。
__ 
つまり、先輩の背中を見せる事ですね。
油田 
人脈という道は、閉じたらそこで終わってしまうんだからそこはもう諦めて。若手には、会ってこい、一緒に公演を打ってみたらどうだ、みたいに言って。で、ちょっとお膳立てはしておいて。そういう風に築いていくしかないんですよね。そうじゃないとまた僕らの世代が出て行く事になってしまう。
__ 
中心人物が居なくなっても新しいところに人脈を求めていくようであってほしいですね。
鳴海 
新しい関係性の中ではベクトルは絶対に違ってくるはずなので、そこに対して上の人間がちょっかいを掛けてはいけないと思うんですよ。その人脈の中でしか人は呼べない訳だから。それは世の成り行きだぐらいに思ってないといけないし、それが若いやつがやりやすい環境なんじゃないかなと。

タグ: 人脈を繋げる 後輩たちへ


よくぞはじめてくれた

__ 
これから、お芝居を始める人に一言。
油田 
挫ける事の方が多いと思いますけど、とにかく向き合ってやっていってほしいです。やっている事自体が素晴らしい。よくぞはじめてくれた、と思っています。めげずにやって欲しいです。
__ 
鳴海さんはいかがでしょうか。
鳴海 
可能な限り、沢山の作品を見て、沢山の勉強をして。自分の言葉で考えるようにしてほしいです。

勝負

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?サッカーのように、どういう風にボールを蹴っていくか、みたいな意味で。
油田 
勝たなあかんので。いや、アーティストの方って勝ち負けじゃないと仰る方もいらっしゃるんですけど、僕は結構勝ち負けだと思っていて、勝ってナンボだと思っていて欲しい。そういうぐらいの個性を持っていてほしいです。「そういう所では勝負していません」と言ってしまう気持ちは分かるんですけど、そういう風に反論してくる人ほど実は負けを認めたくないんですよね。
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なるほど。
油田 
攻めるんだったら勝たなあかん。いま津あけぼの座は上昇気流に乗っているような雰囲気はありますけど、まあいかに手堅く、出来るところからやっていけるかどうかですよね。そういう時期に入ったのかなと。
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手堅く?
油田 
最初の時期は、まあちょっとやってみまひょかみたいな感じだったんですけどね。失敗してもいいや、みたいな。その内に実績が出来てきて、次は勝つ為にどんな用意が出来るか、という事を考えないと。
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劇場として勝つ、とはどういう事だとお考えですか?
油田 
お客さんが沢山はいる事、高い評価を得る事、という条件ですよね。最初に言いましたが、地方の芝居は本当に厳しいんです。経済どうこうの話しじゃなくて。つまらない作品に対しては、地方の方が都会よりもはるかに風当たりが強いんですよ。でも、面白いものに対しては熱狂して迎えるんですよね。だからこそ劇場の人間がバックアップして、勝てると思ったものは信じて、離れていてもこっちに引っ張ってきて。そういう英断を続けて、たまに怒られますけど(笑う)。
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ありがとうございます。

タグ: 演劇は勝ち負け?


ペーパーウェイト

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
油田 
凄い嬉しいです。自分が貰える立場になるとは思ってなかったので。
鳴海 
あ、ありがとうございます。
油田 
オシャレですね(開ける)あ、ペーパーウェイトだ。ちょうど僕、こういうの欲しかったんですよ。メモ用紙を沢山書いてて、それが机の上で散乱しがちだったので。

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