Aripe野生時代

__ 
Aripeの結成は、どんな感じでしたか。
伊藤 
ミュージカル好きが集まったので自然と歌とダンスを入れてやろうとしたんですけど、もっと気軽に見てもらおうと思って、当時としては多分あまりみんながやっていなかったカフェ公演を始めました。それが12年前ですね。
__ 
そうなんですよね。当時としては全然聞いたことなかったですよね。
伊藤 
私たちも初めての試みだったんですけど、養成所の1階のカフェで、夜だけの貸し切りで公演してたんです。平台一つ置いたセットで、なおかつやっている事も超アングラな感じでね。
__ 
おお。
伊藤 
台本を誰が書くってなった時に、じゃあ私がって永津が書いて、たまには私が書いて。どちらかが書く事になるんですけど、まあ今思えば私が作演出したものは出来上がりはめちゃくちゃだったんです。いまビデオで見ても、果たしてこれでお客さんがどう思ってくれるんだろうと言うところまで全然考えられていないっていうか・・・変なんですよ。
__ 
変なんですね。
伊藤 
精神的な面に光を当てたりして、やりたい事は出来てたんですけど、変わってたなあと。それでやっぱりちゃんと作家さんに頼もうとなって、GO!GO!マグネグFLOWERモモンガの村田さんやiakuの横山さんに書いてもらう事になって、ああさすがやっぱり上手くまとまっているなあって思いました。
__ 
つまり野生時代だったんですね。
伊藤 
そう。野生時代(笑う)。当時は珍しいカフェ公演という事で本番中もご飯を出してお客様に食べてもらいたいと思ってたんですけど、やっぱり難しいんですよね。見ている間中食器を鳴らしたり出来ないし。めっちゃくちゃな事をやって。それはそれで面白かったですけど。

タグ: ミュージカルの話題 アングラ演劇という価値


コミュニケーションが仕事の結果に与える、いくつかの影響

__ 
最近疑問に思っている事があって。稽古が面白い作品は本番も面白い、みたいな意見を目にしたんです。面白い作品の条件に、稽古での何かはあるのかなと。役者同士のコミュニケーションが上手く行ってたりだとか、役者が演技を提案してこないと始まらないだとか、稽古のし過ぎは良くないだとか。
伊藤 
ああー、全部ありますね。確かに、お芝居の先輩を見ていても思うんですが、コミュニケーションがホンマに大事なんですよ。リリパットアーミーII(セカンド)さんのお芝居に出させてもらった時、大体毎日飲み会があるんですけど、最初は強制的に相手役の役者さんの隣に座らされるんですよ。最近になって、そうするべきなんやという事に気づきました。
__ 
というと。
伊藤 
相手役の方とお話せえへんでも芝居は出来るんですよ多分。成立するのはすると思うんです。でも、もっと良いものを作ろうとしたり、アイデアを出そうと思ったら相手の役者さんと仲良くならないといけないな、と。コミュニケーションをとらなあかん。飲み会という場所は普段とは違うし、私も最初は飲み会なんて何でいかなあかんのと思ってたんですけど、普段は聞けない話も聞けるし、芝居でやりたい事が直接話し合えるんで、そこで面白いプランが出てきて決まったりするんです。そういうのも大事なんですよね。
__ 
コミュニケーション、めっちゃ難しいですよね。でも、一つ考えている事があります。抽象的な腹のさぐり合いじゃなくて、具体的なものを例に取って話すのが円滑なコミュニケーションになるのかもなあ、って。
伊藤 
そうですね。もしくは全然関係ない世間話をしているときも重要なのかなと思います。彼氏どうなんとか。人柄も見えてくるんだと思うんですよ。私達は大抵初対面の方ばっかりの仕事場なので、本当にどうって事のない話から入っていくといいんですよね。
__ 
IN HER THIRTIESの時は共通項があって、話がしやすいんでしょうねきっと。しかもテーマがそのもの女性の30代だし。
伊藤 
ホンマそうでしたね。稽古場の時に延々と、自分達の生き方を持ち寄って話してました。演劇に対しての思いもそれぞれ違ってたのが凄く印象的で、でも心を開いていない人はいなかったと思います。年上の方にもちゃん付けで呼んでも怒られなかったし喋りやすかったです。本当に、みんながコミュニケーションを取ろうという気持ちがあったんだと思います。みんな、心の扉が開いてる!ってのがわかりました。

タグ: 稽古とコミュニケーション能力


何をしたいか考えたら演技だった

__ 
演劇を始めた経緯を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
伊藤 
めっちゃ最初から話していいですか。
__ 
もちろんです。
伊藤 
子供の頃からミュージカルが好きだったんです。おやこ劇場に月一回連れていって貰ったりして。母親も好きだったんでしょうね。(ちなみに、絵の教室にも行ってました。)学校の演劇鑑賞会で劇団四季を観てミュージカルが好きになって、でも高校は演劇部は敬遠してて。宝塚とかは好きで、ずっと見に行ってたりしてたんです。
__ 
なるほど。
伊藤 
高校は進学校だったので大学に進むのが当然だったんですけど、私のいた国際教養科は熱い人が多くて、将来は何になりたいとかを語り合ってたんです。その中で一人の子が「私、みんなに黙ってたんだけど、今まで新聞記者になりたいとか言ってたんだけど、本当は歌手になりたいねん」って。そんなきらびやかな芸能生活を送りたいとか言う人なんて入学時からいてなかったし、でも当時ASAYANが流行ってたのもあるし、私も「ああ、自分のやりたい事をやってもいいんや」ってなって。高校3年ぐらいの時から劇団ひまわりの養成所に入りました。
__ 
なるほど。
伊藤 
じゃあ大学行かなくてもいいや、となって。就職しながら週3のレッスンに通って歌とかダンスとかを習う生活を2年続けていました。
__ 
二十歳ぐらいですね。
伊藤 
その時に永津とも出会いました。でも子供の頃からバレエをやっている子を目の当たりにすると能力の差が歴然で。歌もダンスもいっぺんにしようと思ったら私空回りしてる、ってなってしまって。私は一番、何をしたいか考えたら演技だったんですよ。2年続けていた会社を辞めて演技専攻クラスに入りました。その編入も永津が一緒でした。
__ 
なるほど。
伊藤 
その課程を1年間、修了公演みたいなのもあって。ひまわりの劇団員になって、しばらくしてAripeを結成したんです。

タグ: 演劇研修所 その人に出会ってしまった バレエやってた 二十歳のわたし プロの仕事 ロックな生き方


声のお仕事、細かい作業

__ 
伊藤さんは、去年はナレーションのお仕事も数多くされましたね。
伊藤 
もっと頑張っていけたらいいなと思ってます。私は今事務所には入ってなくて、それでも声を掛けていただいて。ありがたいです。でも、ナレーションってきちんとした声のプロの方の仕事で、私みたいな役者がやってもいいんだろうか、でも役者としての仕事をしているんだからいいんだ、と割り切ってやっているんですけどね。それでももうちょっと勉強せなあかんな、と。
__ 
なるほど。
伊藤 
舞台とは真逆で、凄く細かい事を言われるんですよ。細かい感情の表現の仕方を監督さんが読み切って言われるんですよね。だからと言って同じ事が再現出来る訳じゃないんですけどね。
__ 
声の凄く細かいところ。伊藤さんがキャスティングされたのはどういうところなのかなと想像しているんですけど、もしかしたら、細かい部分まで決めているわけではないから、なのかな。ちょっとこれは失礼な表現かもしれないですけど。
伊藤 
いえ、そうだと思います。MCを本業にされている方とか、聞いていて「ふわぁっ」て感心するんです。私とか、ふらついているから。きっちり出来るプロにはその仕事が振られて。私が出来るのは声を出す時の「感情」に集中する力なのかなと思います。それがまた舞台とやり方が全然違うんですよね。
__ 
面白いですね。
伊藤 
舞台だと私、体が小さいので、その分大きく動こうとしているんですけど、ラジオCMとかTVのナレーションで求められる仕事は意外と素の自分を求められるんです。新しい私を発見しているのかもしれませんね。

タグ: キャスティングについて 声のお仕事、細かい作業


IN HER THIRTIESの思い出 伊藤えりこさん編

__ 
IN HER THIRTIESについて。去年の公演ですが、今後も追跡取材をしようと思っています。まず、ご自身にとってはどんな公演でしたか。
伊藤 
まず、オーディションを受けるかどうかを迷っていて。私オーディションに受かる確率が本当に低くて。仕事を貰うのは大体、声を掛けていただいていたんです。でもプロデューサーの笠原さんから「受けてみたら」って勧めて頂いたので。ワークショップオーディションみたいな形でした。ワイワイやりながらだったのでやりやすかったです。
__ 
伊藤さんは麗らかチームの34歳のコーナーでしたね。
伊藤 
そうですね。全員個性がバラバラの人たちで、結婚もマチマチでした。頂いた台本のボリュームが最初は少なかったんです。これ大丈夫かな?と。でも話し合っていくうちに「女性の30代はまだまだあるで」みたいな感じになって、稽古中はオーディションの延長みたいにたくさん話し合いながらやっていきました。楽しかったですね。稽古期間は1ヶ月弱だったんですけど結束感を感じながら本番を迎えました。公演後も凄い仲良くなったんですよ。一つの舞台を作る時に生まれる自然な結束力ってすごく大事なんですけど、あんなに、30代の人間として結婚とか出産とか演劇を続ける事について話すのは貴重で、もう全部分かる!でした。20代ならあんなに打ち解けられないし、40代だともっと引いて見てしまうかもしれない。30代だからあんなにワイワイやれてたんですよね。
__ 
なるほど。
伊藤 
作品としても変わった試みでしたね。一人の女性を複数人でやるというのは初めてでした。終演後、トークゲストで観てくださったiakuの横山さんが「一人の女性をやっているというより、100人の女性を観ているようだった」って。誰にも通じる事をやっていたんですね。それは上野さんが狙っていた事かもしれない。バラバラなキャスティングだから成立したのかも。それぞれの人が思っているように見えたのかな。
__ 
37大西さん・38片桐さんのコーナーが面白かったですね。
伊藤 
大西さんは元の事務所の先輩なんですけど、ずっと変わらないんですよ。
__ 
若く見えますよね。配置についた瞬間びっくりしました。あの人は15歳若く見えますね。
TOKYO PLAYERS COLLECTION「IN HER THIRTIES」
公演時期:2014/3/27~31。会場:in→dependent theatre 2nd。

タグ: 続ける事が大事 IN HER THIRTIES 迷っています 人生の節目 尊敬している人 インタビュー取材による作品づくり


パリ生まれのアンティークのブローチ

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
伊藤 
そうですね。自分のしたいことをしていこうと思えるようになってきました。したい事をしていくのが大事なんやなと。今まで演劇にだけ力を割いてきたんですけど、もっと色々な事を見てもいいんちゃうかなと思えています。
__ 
今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
伊藤 
可愛いー!ピンバッジ?
__ 
パリのアンティーク雑貨だそうです。
伊藤 
かわいい。お洒落な。去年横山さんにブローチを頂いたんですけど、それも可愛かったんです。


勉強の年、2015

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、伊藤さんはどんな感じでしょうか。今年の事についても伺えていけたらと思います。
伊藤 
そうですね、最近はゆっくりと落ち着いています。今年は、演劇以外にも色々他の事にも目を向けてみようかなと思っています。実は、どこかで踊る機会が持てたらなと思っています。Aripeというユニットを永津真奈と一緒にやってるんですけど、10年以上ジャズダンスを続けていて、それで。
__ 
あ、踊られるんですね。
伊藤 
二人ともミュージカル好きで始めたので。永津も踊れるんですよ。あの長い手足で。
__ 
踊れるイメージが・・・失礼ですが、意外です。
伊藤 
永津はゆっくりしてそうなイメージがあるんですけど、私はちょこちょこ動く感じで。昔のAripeも、歌とかダンスを取り入れてたんです。占いによると今年の私は勉強の年になるらしくて。何か勉強しようと思います。何か・・・ってアレですけど(笑う)。
__ 
なるほど。ネイルされてるんですね。ネイルを習ったらいいんじゃないですか?
伊藤 
あー、なるほど。絵を描くの好きだし、いいかも。
__ 
描かはるんですね。
伊藤 
Aripeのチラシも、最初の方は私が描いてたんですよ。
__ 
あ、そうなんですか!「人の気も知らないで」の絵もですか?
伊藤 
あれはプロの方が。でも、題字は私が描いたんです。ああいう、昔の感じが好きなんですよ、私も永津も。
__ 
レトロな、60年代のにっかつロマンポルノみたいな?めっちゃオシャレですよね。
伊藤 
そうなんですよ、表がフルカラーで、裏がカラー一色みたいな。昔の映画のチラシみたいな感じでできたらなと。
__ 
味がありますね。
伊藤 
味だらけで(笑う)そういうのを考えるのが私たち好きなんですよね。その流れでカラーコーディネート資格とかもいいのかな。英会話もしたいなあ。英語を喋りたいなとずっと思っていたんですよ。英語を生かした配達の仕事とかもあるらしいじゃないですか。
__ 
そんなのがあるんですね。
伊藤 
何か、現地に商品を持っていく仕事らしくて。英語が必須なんですけど現地に飛行機で行って商品を渡してくるみたいな・・・それで時間があまったら観光も出来るだろうし一石二鳥やん、て。
Aripe
女性だけの演劇ユニットAripe。当時としては珍しい、食事もできるカフェ公演を積極的に行う。
iaku 2014全国ツアー「人の気も知らないで」
公演時期:2014年6月~7月。会場:7都市各所(豊岡、福岡、熊本、仙台、札幌、京都、三重)。

タグ: オシャレをしよう 一段落ついた 資格を取ろう 意外にも・・・


日本海 第一波「カゾクノカタマリ」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。役者三人のユニット、日本海の勝二さんにお話を伺います。最近はいかがでしょうか?
勝二 
最近ですか、最近はよく忘年会をやっています。日本海の忘年会を2日前にしたんですが、その時来られなかった人も含めて、今日も開催します。
__ 
ありがとうございます。日本海の旗揚げ公演、「カゾクノカタマリ」が終わりましたね。いかがでしたか。
勝二 
色々な苦労がありましたが、色んな反響があって手応えはありました。代表の小嶋くんは経験が無かったので大変だったと思います。劇場を借りたりだとか製作面でだとか。
__ 
大変だったんですね。
勝二 
でも、やって良かったと思います。飲んでる席で出た話からユニットが立ち上がって、結果的には作品に仕上がって。感慨深いです。
日本海
京都で活動する、浦島史生(柳川)、小嶋海平、勝ニ繁という日本海側出身の顔面の濃い役者3人によるユニット。作・演出を固定せず役者による波のような自由なスタイルを目指す。(公式BLOG・こりっちより)
日本海 第一波「カゾクノカタマリ」
公演時期:2014/12/4~8。会場:元・立誠小学校 音楽室。

タグ: 飲み会結成 旗揚げ


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

バラバラなのに共感を呼ぶ、その不思議

__ 
「日本海」、ユニット名の由来が気になりますね。
勝二 
飲んでいる席での話で、3人とも日本海地方出身だったので僕がポロッと言ったら採用されて。旗揚げのタイミング的にも色々丁度良くて、今年何かやろうという事になって。
__ 
脚本演出は勝二さんでしたね。
勝二 
実質的には全員で書いたようなものでした。まあ僕も書いてきたりはしてきたんですけどね、テンケテンケテンケテンケで。
__ 
ご自身としてはいかがでしたか。
勝二 
一応、目標は達成したんじゃないかと思っています。やりたい事はいくつかあって、動員も300超えて。意義はあったのかなと思います。
__ 
立ち上げたてのユニットでそれは素晴らしいですね。
勝二 
僕も色々ユニットの立ち上げに関わってきましたけど、残る作品になったと思います。
__ 
改めて、個人的にも大きい存在の作品でした。俳優の、家族についての実体験を彼自身が語ると、それを見ているお客さんも、自分の家族についてを思い出して心の中で語り始めるみたいな。そういう共有感があったように思います。
勝二 
これまで僕が書いてきた作品も、家族についてがテーマだったりするんです。割と引っかかる部分なんです。少し前、富山の劇作家コンクールにドキドキぼーいずが参加したんです。僕もキャストとして行って、その折に実家に帰ったんですね。すると実家がですね、兄弟家族がそこには居なかったり父も母も昔と比べると小さくなったりしてて・・・ああ、何年かしたらこの家族は居なくなってしまうんだ、それは受け入れないといけないんだと。一方、兄の家族は子供が生まれて、向こうは向こうで始まっている。
__ 
居なくなっていく家族もあれば、生まれていく家族もある。
勝二 
そういう話をしたい、男女5人ずつの10人で芝居を作りたいと小嶋君に話して、それから始まりました。
__ 
なるほど。
勝二 
でも、家族についての作品なのに、年配の役者さんが周りにはいなかったんですね。父親役とか母親役とか祖父母役が出来ない。なので、役者の語りから始まる劇中劇という形で演じるという演出になりました。そうやって家族の始まりから終わりまで描けたらいいなと。稽古でエチュードしたり皆の話しを聞いたりする内に、自分達の中での問題もそれぞれ発見して。
__ 
誰でもそれなりに問題を抱えているんですね。
勝二 
家族問題を他人の口から聞くと大ごとのように聞こえる。でも僕個人にもそういう問題はある。結局、どんな問題でも全部同じ質量を持っているんですよね。個人的には凄く勉強になった作品でした。(とはいえ、役者さんから聞いたものを直接的には使わなかったんですけどね。なんかそれは違うと思って。)
__ 
全く違う体験だけれど、かすってくる。その接点から投影が始まるような。
勝二 
そこまで狙ってはいなかったんですけど、引っかかって欲しいという気持ちでした。結果、お客さんの中にも受け止めて下さった方もいて。本当に嬉しかったですね。

タグ: 子供についてのイシュー 名称の由来 飲み会結成 家族という題材


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

断片集の軸にあったもの

__ 
ひとつ、気になるシーンがあったんですよ。出村さん演じる長女が、新しく生まれた兄弟を受け取って、無表情で取り落としてしまうシーン。あの時に他の役者が全員、反応する演技を全くしていなかったんですよ。それがこう、何だかとてもリアルに感じたんです。
勝二 
ありがとうございます。ともすればオムニバス公演に取れてしまう構成の作品だったんですけどね。一応、僕と出村さんの夫婦役をなぞるみたいな軸があって、そのうちの一つのシーンとして。
__ 
ええ。
勝二 
この作品を作るにあたって、僕も家族関係についての資料で勉強したんです。今でこそよく言うようになったんですけど、虐待を受けた人が自分の子供にも虐待をしてしまうコトがあるかもしれないって。実はそれが分かったのは本当につい最近の事で、それが広まった僕らの世代が丁度、次に親になるんです。つまり、僕らがその負の連鎖を止めるべき世代なんですね。それを乗り越えた親の子達が手を取り合って生きていくという軸を作品に出したかった、というのはあったんじゃないかと思います。もちろん、それをはっきり出すというのもどうかと思ってたんですが。
__ 
素晴らしい。さらにそこに断片集としての良さが手伝いましたよね。俳優が自分の体験を語るという体裁があったので、一本の線として見ていました。
勝二 
出村さんの役は、愛情を受けられなかった子供が、自分の子供に対してどう接していいか分からなくなるという伏線があって。ロープの塊を落とした時の音が凄くて、全員自然に見てしまったんですよね。
__ 
そのロープ。赤いロープでしたが、色々な意味を持っているように見えたいい小道具でした。
勝二 
そうなんですよ。あれが来た時に色々な見立てが成立して。
__ 
様々な小道具、劇中劇による断片集仕立て。いやらしくない程度に有機的でバランスが良かったように思いました。
勝二 
ただ、お話として成り立っているのか?が不安な点もあったので、お話として着地させた部分はあります。投げっぱなしにしても良いと仰ってくださるお客さんもいたんですが・・・結婚とか男女とかの対立になぞらえて、綱引きをするシーンをラストに設けたんです。あれも賛否だったんです。
__ 
あの綱引きは大切なシーンだったと思いますけどね。
勝二 
それを僕の役と出村さんの役がやってもいいのか、と。とはいえ、そういう色々な反応が貰えた事が嬉しかったです。これまで練習してきた結果が出たなと思いました。

タグ: 結婚について 子供についてのイシュー 赤色 有機的に関わりあう


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

日本海の未来

__ 
日本海の今後の展望を教えて頂ければと思います。
勝二 
一つあるのは、「カゾクノカタマリ」をどこかに持って行きたいなと。あのスタイルなので、ブラックボックスに小道具を持っていくだけですからね。でも、キャストはあの10人でやりたいです。冗談で言ってたのは、みんなの地元を回れたらいいなと思っています。
__ 
実家公演ですね。
勝二 
ちょっと本当に、再演は考えています。日本海公演は一応、来年は2回ぐらいやれたらいいねと言っていますね。
__ 
楽しみです。
勝二 
今回の作り方はまあ特殊というか、普通に台本があって演出してという形じゃなかったですしね。だからこそ2回目って大事だなと。元々この三人はお笑いから来ているし、振り幅としてコント公演もいいんじゃないかと。またお知らせ出来たらいいなと思います。

タグ: 演劇のない地に演劇を現出 遠征公演


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

京都に残る

__ 
勝二さんが演劇を始めた経緯を教えて下さい。
勝二 
中学の頃、それまで取り柄がなかったんですが、文化祭で舞台に立ったら認められた感があって。高校で演劇部に入ったんですが、それが30何人も部員がいる強豪だったんですよ。何となく始めたハズだったのに、熱心にやっている人もいて・・・高校の有志が集まって年度末に公演する劇団もあって、そこに参加していたら面白いなとなってしまって。大学で京都に来たんですけど演劇部が合わない感じがして入らなかったんですけど。
__ 
なるほど。
勝二 
で、ニットキャップシアターの「愛のテール」をアーコンで見たんですけど、それが衝撃で。京都にもこんな演劇がやってたんだ、と。それからごまのはえさんやハラダリャンさんのWSを受けて、しばらく京都に残ろうと思いました。それまでは実家に帰ろうぐらいに思ってたんですけどね。ハラダリャンとも出会って、テンケテンケテンケテンケを旗揚げして活動していました。7回公演までやってましたね。
ニットキャップシアター
京都を拠点に活動する小劇場演劇の劇団。1999年、劇作家・演出家・俳優のごまのはえを代表として旗揚げ。関西を中心に、福岡、名古屋、東京、札幌など日本各地で公演をおこない、2007年には初の海外公演として上海公演を成功させた。一つの作風に安住せず、毎回その時感じていることを素直に表現することを心がけている。代表のごまのはえが描く物語性の強い戯曲を様々な舞台手法を用いて集団で表現する「芸能集団」として自らを鍛え上げてきた。シンプルな中にも奥の深い舞台美術や、照明の美しさ、音作りの質の高さなど、作品を支えるスタッフワークにも定評がある。(公式サイトより)
ニットキャップシアター第13回公演 スロウライフとことこ vol.3「愛のテール」
公演時期:2003年7月12~17日。会場:アートコンプレックス1928。

タグ: 文化祭前夜 その人に出会ってしまった 作家の手つき


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

2014年で出来たこと

__ 
そしていま勝二さんは、ご自身のやりたい演劇が出来ていますか?
勝二 
そうですね、日本海にしてもきちんとした団体として立ち上げられたし、僕自身はフリーの役者として今年は3本も出演出来たし。脚本としても自分の書きたいものを書けているので。
__ 
そう、今年はドキドキぼーいずにも出演されましたね。匿名劇壇の佐々木さんとのインタビューで、勝二さんとのシーンが話に出ました。
勝二 
あれはもう役者としてとても楽しいシーンでしたね。役としては楽しくないんですけど、見ている側は腹立たしいところだったと思いますけど(笑う)それから、トリコ・A・プロデュースに参加出来た事ですね。山口茜さんがやっぱり役者さんを大事にしはる方なので、貴重な経験でした。猛き流星で西部講堂も踏めたし、今年は本当に出会いが多かったなあと。
__ 
今後、やってみたい活動はありますか?日本海はもちろんとして。
勝二 
学生劇団は通ってきていないので、やっぱり下の世代との交流はあまり無くて。もっと、面識の無い方からもお話を頂くようになれればいいですね。自分は会話劇の役者だと思ってたんですけど、案外それだけでもないのか、身体表現的なのも興味があります。日本海でやった実感としては、喋らずとも語れるなという事も分かったし。もしオファーがあるなら是非やりたいし、オーディションも受けたいなと。
ドキドキぼーいず
2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。虚構性の強い演劇を目指し、『リアル過ぎる嘘っぱち』の創作に挑んでいる。生み出されていく衝撃を、時に優しく、時に激しく、作品として観客に提示することで、人間の本質を描き出す。いつまでも青臭い、カワイイ奴らでいたい。(公式サイトより)
匿名劇壇
2011年5月、近畿大学の学生らで結成。旗揚げ公演「HYBRID ITEM」を上演。その後、大阪を中心に9名で活動中。メタフィクションを得意とする。作風はコメディでもコントでもなく、ジョーク。いつでも「なんちゃって」と言える低体温演劇を作る劇団である。2013年、space×drama2013にて優秀劇団に選出。(公式サイトより)
トリコ・A
トリコ・Aは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)
猛き流星
役者の小西啓介が主宰する演劇ユニット。京都を拠点に活動している。2012年、当時小西が所属していた劇団ヘルベチカスタンダードの劇団内ユニットとして発足し、翌々年独立。毎回、新しく人を集めるスタイルで公演を行う。熱くて派手な芝居を志向する。(公式サイトより)

タグ: 今年のわたし 反応し合う トリコ・A


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

質問 白神 ももこさんから 勝二 繁さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、モモンガ・コンプレックスの白神ももこさんから質問です。「しょうもない失敗を教えて下さい」
勝二 
しょうもない失敗・・・パッと出てこないなあ、こういうのがすぐ返せるようになりたい。聞き間違いとか意味を間違える事が多いですね。小学校の頃、TVから「ガンセイ疲労」という言葉が聞こえてきて。Cancerの方のがんだと思ってしまって、医学の進歩はここまで来たのかと思った事かな。

vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

引き出しをお互いに開ける

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
勝二 
すごく抽象的なんですけど、自分が光る事によって相手役がもの凄く光るようになったらいいなあと。やっぱり自分一人では出来ないなあという事を、もう長いあいだ痛感していて。芝居を始めた最初の方はああしてやろうこうしてやろうみたいなのがあったんですけど、そういう風に自分で考えてきたものは9割面白くなくて。現場に入って相手とやる事によって生まれるものがホントなんだなと。相手を引き出せる役者に魅力を感じています。そういう事をやるには自分がまず光らないといけないような気もしていて、そこから引き出しの開け合いみたいになれば。そういう事が出来たら物凄い楽しいと思っています。
__ 
匿名劇壇の松原さんとの話の中でも近い事が話されたと思います。会話劇で、自分演技が上手くなったと錯覚するほど転がしてくれる人、というのが凄い人だ、みたいな話しになりました。でも、「引き出しの開け合い」とはまさに理想ですね。
勝二 
そうですね、自分から開けてしまうと失敗するんですよね。俺こんなんあるぜ、みたいなんじゃなくて。
__ 
そして、お客さんにも開けられるかもしれませんしね。
勝二 
そうですね、同じく演出家にも言える事かもしれません。

タグ: 引き出し合う いつか、こんな演技が出来たら 自分で考えてきたもの、の価値


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

手ぶらでいこう

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
勝二 
手ぶらで攻めます(笑う)自分は何というか、手ぶらの感覚が好きなので。準備して事に臨むと却ってガチガチになってしまったりとかがあるので、フットワークの軽さとか気軽さを持ったスタンスでいけたらいいんじゃないかと思っています。日本海にしても。(笑う)何て言い方だろう。
__ 
今後とも楽しみです。
勝二 
ありがとうございます。

タグ: 境界を越える・会いに行く ガチガチな身体


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

PARAFOIL KITE

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
勝二 
ありがとうございます。
__ 
大したものじゃないし、お住まいによっては使いにくいかもしれないんですが。
勝二 
(開ける)?
__ 
凧です。
勝二 
ああ、御所で上げる、みたいな。
__ 
御所はですね、凧揚げは禁止されているんですよ。
勝二 
あ、そうなんですか。
__ 
鴨川もムリなんです。市内で上げるのは難しいんですよ。桂川の公園だと上げられるらしいんですが。
勝二 
京都なのに上げられないんですね。実家に帰ってやります。
__ 
大したものじゃなくて申し訳ありません。
勝二 
いえいえ。ありがとうございます。

タグ: プレゼント(ゲーム系)


vol.397 勝二 繁

フリー・その他。

2015/春
この人のインタビューページへ
勝二

KAC Performing Arts Program きたまり×白神ももこ×筒井潤 『腹は膝までたれさがる』

__ 
今日は、「腹は膝までたれさがる」の本番をさきほど終えられたばかりの白神さんにお話を伺います。よろしくお願いします。最近の白神さんはどんな感じでしょうか。
白神 
よろしくお願いします。この間までFESTIVAL TOKYOでダンス作品の振付をやっていたのですが、この一ヶ月間は京都に滞在して、ダンサーとして集中できて、良い機会だったなと思います。充実してますね。
__ 
すばらしい。
白神 
東京で自分のカンパニーの作品の製作をしているんですが、打ち合わせやら何やらと色々付いてきて、毎日踊れるってあんまり無いんですよね。京都でも色々ありますけど、自分の身体にじっくりと向き合える日々だったと思います。体調がいいです。
__ 
その滞在期間は、書斎みたいな感覚だったのかもしれませんね。自分の仕事に没頭出来るみたいな。
白神 
そうですね、煩わしいことが無くて。作家さんが旅館に缶詰めになるような感じもあります。いま宿泊しているところも色々な人がいて、吸収する事も多いですね。
__ 
創造環境としての京都。終電が無いとかの点がまず有利ですよね。
白神 
狭いですから、自転車で行き来できますしね。きたまりさん筒井さんとじっくり話したり、時間を多めにとって取材に行ったり。一人の時間も持てたし。
モモンガ・コンプレックス
2005年に活動開始。現実世界から踊りが炙り出されてくるような、人間らしさがにじみ出るユーモラスを味としたパフォーマンスを得意とする、ダンス・パフォーマンス的グループ。世界のはじっこにある些細な存在やできごとも価値ある愛すべき存在として捉え、ちょっとおかしな人たちが、ゆるーく微妙に笑える空間を作り出したりしている。倉庫や体育館などで転々と公演していたが、2008年4月~2011年3月は埼玉県富士見市民文化会館キラリ☆ふじみを拠点に活動するキラリンク☆カンパニーとして活動。同劇場での公演のほか、小学生や高校生を対象としたワークショップ、中学校の卒業式・市役所・地域のお祭りでのパフォーマンスなどをおこなう。(公式サイトより)(公式サイトより)
KAC Performing Arts Program きたまり×白神ももこ×筒井潤 『腹は膝までたれさがる』
公演時期:2014/12/12~14(京都)、2015/1/16~18(横浜)。会場:京都芸術センター 講堂(京都)、のげシャーレ(横浜にぎわい座 地下2階)(横浜)。

タグ: 色んなものを吸収 今の作品に集中する きたまり 創造環境としての京都 筒井潤


光の中に軽く舞う

__ 
腹は膝までたれさがる」。大変面白かったです。老いをテーマにした作品でしたね。根底にあるのは、老いは自分に何をもたらすのか?という問いだったように思います。後半、お二人が軽く舞うようなシーンがあったんですが、あれは、自分が完成していく瞬間を描いていたように思います。とても印象に残りました。
白神 
はい。ありがとうございます。
__ 
何となく思ってたんですが、白神さんのダンスって、自分自身に向けて踊っているような感覚がどこかにあるような気がしていて。そういう前印象も手伝って、完成に向けて自由自在に漂う老人みたいな絵が完璧に美しかったんです。自分の完了を見つめる為だけの、神聖で侵されざる時間。白神さんはこの作品に関わって、どんな印象を持たれていますか?
白神 
そうですね、まだ終わった訳ではないんですが・・・全てを分かってやっている訳じゃなくて。消化出来ていない部分もあるんです。探りながら、今日はこうやってみようかな、みたいな。お客さんの感想を聞いて「ああそういう感想を持たれるんだ」とも思います。色んな感想を受け止めつつ、でも影響されすぎないように作品を理解していけたらなと思います。でも、仰っていただいたように、自由になっていっていけたらいいんじゃないかなと。
__ 
自由になっていく?

タグ: 自由自在になる


死、自由、恍惚の日々

白神 
年を取るって「自由が利かなくなっていく」というイメージが強いんですけど。
__ 
そうですね。
白神 
でも精神はすごく自由なんじゃないかなと思っていて。
__ 
老いるとは、子供に帰っていくという事だ、みたいな言い方がありますね。
白神 
子供時代の自由って、親に与えられた枠の中での自由なんですよね。それが大人になると社会の中での選択的な自由というものになると。完全な自由じゃないし、それは苦痛を伴いうるんですね。
__ 
思い当たります。
白神 
それがお年寄りになると、どう見られてもいいじゃないか、みたいな自由が出てきて。本当に子供みたいな感じ。もちろん、自由になれないお年寄りの方もいるんですけどね。アフタートークで筒井さんが言っていた、「可愛い老人という姿を強要される」、そうならないと面倒を見て貰えないというのもあったりで。結局、人間は死ぬまで本当には自由じゃない。
__ 
確かにそうですね。老人と自由の関係。
白神 
死んだらようやく何者でもない自由な存在になれる。それに一番近い存在だなあと。自分の中ではそう思ってます。だから、過去にあった事も無かった事に出来るし。
__ 
そう、思い出を勝手に解釈してしまえるんですよね。
白神 
そうですね、楽というか自由なんじゃないかなと。そんな事を考えながらやってました。
__ 
言ってみれば、幸せな時間なのかもしれませんね。