わたしの役と相手の気持ち

__ 
呉城さんが演劇を始めたキッカケを教えてください。
呉城 
田中遊さんの劇研アクターズラボが最初です。あれが最初じゃなかったかな。平田秀夫さんのWSとかを週に1回受けてて、公演クラスに行ってて。それを2回ぐらい。
__ 
呉城さんは独特の存在感ですね。良く言われませんか?「春よ行くな」を引きずり過ぎてしまっているのかもしれない。まあいいや。今日聞こうと思ってたんですけど、俳優の仕事ってどういうところから始まると思います?
呉城 
えっ、何そんな。
__ 
例えば、良く言うじゃないですか「相手の気持ちを考えよう」って教訓。これはもの凄く難しい事だと思うんですよ。私は自分にはそういう才能は全く無い事を自覚していて。まあそれはホテルでバイトしていた頃に発覚したんですけど。
呉城 
ああ、サービス業だとよく言われますよね。相手の気持ちを察する。
__ 
でも、相手と同じ場所にいる時に、“自分の”気分には素直になれるじゃないですか。これはつまり、関係を連続していく内に、相手の気分と同調出来る可能性があるという事なんですよきっと。これは共感への道のりと言えるんじゃないか。気持ちに素直になるって、これはもう俳優の仕事の第一歩なんじゃないかなと。でも、その第一歩が分からない。
呉城 
相手の気持ちと同調する方法・・・赤色エレジーの稽古場では佐々木君と役について結構話していて。「この役はこの話が終わった後はどうこうするに違いない」とか。自分の劇団では良く、読みが浅いと言われているんですけど、今は読もうとしています。そういう話をした日の稽古は普段とはちょっと違う気がする。自分でもちょっと楽しいというのはありますね。
__ 
なるほど。
呉城 
役についての話が増えていくと自分も楽しいんですよね。今はまだ、辻崎さんの話はまだ理解しきれていないんですけど、それでもとりあえずやってみる、そういう姿勢です。今の稽古場はそういう人が多いですね。他の人の稽古をちゃんと見とかな、って人ばかりで。私も全体を見て、視野を広げていようとしています。そうしないと失敗するタイプなんで。

タグ: ホテルの話 演技の理解、その可能性 俳優の「素」を生かす 舞台全体を見渡せる感覚 反応し合う 関係性が作品に結実する


心から生まれた振り付け

__ 
白神さんが作りたい、理想の踊りとはどのような。
白神 
私、面白ければそれで良いってすぐ言っちゃうんですけどね。本人が面白ければそれでいいんですよ。そういう感覚が凄くあって。今回の「腹は膝までたれさがる」で演出をして下さった筒井さんは、私たちに自由を与えてくれていて。私たち、作品を外から見てしまうタイプだから。
__ 
振付家ですもんね。
白神 
こうあるべきでしょみたいな見方がありすぎて、筒井さん大変だったんじゃないかな。私が作る時は、何でも私のせいにして好きにやってください、とそう思っています。
__ 
つまり、ありのままを。
白神 
私の振り付けで大事にしているのは、その人が自由になること。その振り付けをやる事によって、その人の良さが引き出せればいいなと思っています。それを、自発的にやれるようになればいいですね。振りが自分の心の中から出てきたような。いま自分が考えた振りと同じ感覚になるような。
__ 
最近、役者と演技の関係について興味があって。自分の演技を理解しているかどうかが結構大きいなと。その理解が責任に繋がって、それがさらに自由な演技になるんじゃないかと思っていて。
白神 
そうですね。何もない中で自由にしていていいですよと言われてもどうしたらいいのか分からないってあるじゃないですか。意外と翼がない。それに翼を与える、という方向性でありたいです。その人に与えてみて、出てきたものを引き出すように。それの繰り返しです。

タグ: 俳優の「素」を生かす 人を引き出す振付 ダンスと振付


面白がってもらいたいんです

__ 
今後、どんな活動をしたいですか?
横山 
うーん・・・周りに面白がってもらえるような役者になりたいなと思います。人前に何故立つかと言うと、楽しんで貰いたいからだし。何かこいつ、見捨てられないな、何考えてるんやろうみたいな、そういう風に思って貰えるような役者になるのが自分の理想なのかなと思っています。映像も勿論ですけども、舞台にずっと立ち続けれるよう頑張りたいと思います。
__ 
なるほど。「くりかえしへこむ」の時の横山さんの演技で面白かったのが、3人のいじめっこがその父親に復讐されそうになりながら辛くも逃げ出して、でもその内一人がやっぱり殺してもらおうと戻ってくるというシーンの、そのヘラヘラした顔ですね。
横山 
ええっ!めっちゃ嬉しいです。
__ 
ちょっと憑き物が落ちた、みたいなあの表情。
横山 
突拍子もない結論かもしれないけど、彼は本気なんですよね。死んだらそれはそれで解放されるし、復讐する側も楽になるし。思い切って明るく、満足したようにやろうと。
__ 
なるほど。ところで、今後やってみたいジャンルはありますか?
横山 
会話劇ですね。今後というか、これからもですね。ただ、ベタな演技というか、演技らしい演技やキャラと向き合ってみたい気持ちはあります。うまく言えないのですが。大学に入って、前田司郎さんとか、岩井秀人 さんの演技体に凄く憧れていたんですよね。生活感の出し方というか、絶妙なラフさというか。ただ、そこから離れて自分なりの演技のリアリティーを見つけたいと思っています。
月面クロワッサンVol.7「くりかえしへこむ/閻魔旅行」
公演時期:2014/9/26~28。会場:人間座スタジオ。

タグ: 俳優の「素」を生かす 「ベタ」の価値 ヘラヘラ笑う俳優 単純に、楽しませたい


杉原の椅子

__ 
今後、やってみたいことはありますか。
杉原 
何でもいいのでメディアに一回、出てみたいと思います。再現でも何でも。一度もやったことがないので。
__ 
それは何故でしょうか。
杉原 
最初の、メディアに出たいという憧れをまだ引きずっている状態だと思うんですけど。将来を考えるとですね、舞台役者で食べて行くのは非常に厳しいと。メディアに出たら、芽が出るんじゃないかという期待を持ちつつ。
__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
杉原 
自分にしか出来ない人間性が出来たらいいなと思います。誰かの真似じゃなくて、その人だけの個性があったら、個性的な役者になりたいですね。例えば温水洋一って、身体が発している情報が凄いじゃないですか。そんな人間味。おっさんになったらもっといいのかもしれませんね。最終的には、勝新太郎みたいな空気が出たら凄いですよね。格好良いおっさんになりたいです。
__ 
杉原さんである事を辞めなければ、いつかはそうなると思います。けれども、世の中にはたくさんの杉原タイプがいる。杉原オリジナルという椅子に座らなければならない。
杉原 
そうなんですよ。それが出来ればいいんですよね。
__ 
そういうように認知されれば、例えば身体の欠片がスクリーンに映るだけでも杉原さんだと分かるんですよね。
杉原 
そうですよね。

タグ: 俳優の「素」を生かす 難しくて、厳しい いつか、こんな演技が出来たら 温水洋一


『思っている事をちゃんと言う。そして、自分が今どう思っているのかを確認してあげる』

楠  
取り繕うというのは別に二重人格だとかそういう事じゃなくて。社会での生きやすさのためにやっていることです。取り繕っている私が、ある程度批判されたり嫌われても、別にその私はいいや、嫌われたのはコーティングしてる私だからと思えます。武装しているんですね。本当の私が嫌われるのはとても怖いです。それに本当の私は基本的に嫌な事を考えているので、それを表にだすと無駄な争いを生みます。
__ 
なるほど。
楠  
だから、それをやめようと思いました。難しいですね。思っている事を言う方がよっぽど難しい。
__ 
そうですね。
楠  
次に出演する時間堂さんはマイズナーメソッドを実践されていて、その中のひとつ、リピテーションをWSオーディションでやったんですが、それが私の中ではすごい体験だったんです。今日までも、一日もそのことを思い出さない日はないくらいです。
__ 
というと?
楠  
一対一で向かい合って、自分の目に見えている事、自分が感じている事、相手が思っていると思う事を口に出して、繰り返すんです。
__ 
相手の言葉を復唱するんですね。
楠  
そうでもいいし、自分の言葉を復唱してもいいです。やめたくなったらやめてもいい。そのルールだけ説明されて「さあやりましょう」って始まりました。私、その相手の人とめっちゃやりにくかったんです。正直ハズレを引いたとすら思いました。でも、そんな事口に出せないじゃないですか。
__ 
普通はね。
楠  
モヤモヤしていたら黒澤さんが来てくれていて、深呼吸して、手に力が入っているその手を言葉にしてみてと言われました。それが衝撃でした。「やりにくい。やりたくない」って初めて口に出しました。それから私は、いかに自分が思っている事を口にしていなかったかに気がつきました。ちゃんといろんなこと考えているはずなのに口元に高性能のフィルターがかかっていて、選別された言葉しか出していなかったんですね。
__ 
なるほど。でもそれは誰でもそうですけどね。
楠  
そう、誰でもそうなんですけど。私にはそれがすごくショックだったんです。私はこんなに取り繕っていたんだと。自分の汚さも知りました。ワークの後に感想を言い合う時間があって、よれよれでそのことを伝えたら、黒澤さんは「さっきまでの笑顔のあなたより、それを言う今のあなたの方が魅力的だよ」と言ってくれました。私は特に高校生くらいまでが生きにくくて、大人になるにつれて自分を上手に取り繕えるようになり、ある程度の生きやすさをどんどん獲得していってたんです。でもこの一言で、それを辞めようと思いました。『思っている事をちゃんと言う。そして、自分が今どう思っているのかを確認してあげる』。
__ 
それが、「暗闇から手をのばせ!」と、時間堂のオーディションで得た事なんですね。
楠  
とても幸せなことなのですが、私はいま求めている世界に立てている事にある程度充足しています。twitterに書く事も減りました。私はtwitterが好きで、これまでは実際に口にできないけど考えていることはここに書いていたんです。少しだけ自分のことわかってほしいって願いをこめて、やってたんですけど。それはもう必要ないんですよ。
__ 
ぶっちゃけましたね。
楠  
でも、まだまだだと思います。思った事を言えないこともあるし、やりたい事だってあります。もっと自分に「今はどう?」って聞いて、確認してあげたいです。
時間堂
時間堂は、演劇をつくる団体です。1997年から活動をはじめて、東京を本拠地としています。代表者は黒澤世莉です。(公式サイトより)

タグ: 俳優の「素」を生かす 外の世界と繋がる もう、辞めたい


vol.381 楠 海緒

フリー・その他。

2014/春
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楠

ラフ!

__ 
大阪俳優市場についてもう少し。真壁さん個人は、どんな事がミジンコターボ時代と違ったのでしょうか。
真壁 
今までは「こうしよう」「ああしよう」というのを決めて稽古場に行ってたんです。つまり堅くなってたんですね。相手がいつもと違った事をしてきても応じれないぐらい。心の部分でも、失敗したくない・怒られたくないという気持ちが強かったんだと思います。でも大阪俳優市場の稽古場に関しては、今この場に任せようという気持ちでいました。
__ 
身構えなかった、という事ですか。
真壁 
ラフな気持ちで「稽古場に行こう」と思えていたんです。以前は思いついたアイデアを全部メモって稽古場で試したりしてたんです。今回は、思いついてもすぐ忘れるようにしました。
__ 
なるほど!
真壁 
今まで堅すぎて、真面目だと言われてたぐらいだったのに。いい意味で気楽になれたのかなと思います。稽古を楽しいと思えたんです。
__ 
素晴らしい。
真壁 
私もビックリですね、まさかこういう風に思えるなんて。
__ 
稽古場で出てくるのに任せる。その場の空気に任せてしまう。
真壁 
ガチガチに緊張した状態で稽古場に来ていたんですが、それって本来の自分じゃないな、って。何でこんな、ヨソ行きの顔になってるんだろう、って。スタイルを変えようと思うようになってたんですね。でも、結構勇気が要りましたね。モノを考えずに稽古場に行くなんて。もちろん何かは考えているんですけどね。今後、それがどうなっていくかは分からないです。でも、もうちょっとラフなスタンスで行って、そこで出てくるものを大事にして、楽しむようになりたいな、と。
__ 
なぜそういうふうに、変わろうと思ったんでしょうか?
真壁 
というのも、やっぱり同じBチームのメンバー達から、気づかされたんです。本当に自由に振る舞えているメンバー達を見たからですね。リーダーなのに悩みすぎている自分と比べたら、あの子たちはなんて自由で思いきり良くやれているんだろう、って。相談しに来てくれた子たちに「もうちょっと元気にやったらいいんじゃないかな」ってアドバイスしたら、「それは自分こそやん」ってなりました。じゃあ自分も、悩んで堅くなっていくスタンスじゃあかん、これを捨てて別のものを得られるチャンスだなと。今の自分にとっていい方向に繋がったと思います。

タグ: 俳優の「素」を生かす ガチガチな身体


vol.376 真壁 愛

フリー・その他。

2014/春
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真壁

衝動

__ 
さて、KEXのオープンエントリー参加作品[deprived]。見所を教えて頂けますでしょうか。
矢野 
俳優の身体そのものを、先ずは観て頂きたいです。俳優が言葉を発語する。発語という行為を行うために、その行為を際立たせるために本当にいろいろなものを削ぎ落としているので、そこを観て欲しい。どちらかというと僕らの作っているものは派手で豪華なエンターテインメントではなく、儀式的、様式的というか・・・例えば、歌舞伎ではなくて能楽に近いような、そんなものなんですね。俳優がテキストを発するとき、おそらくそれは目に見えるようなものじゃないんですけど、けっこうな苦労をしていて・・・僕らの作品に限らないと思うんですけど、古典や近代文学のようなテキストを、普通に、何事もなく聞けてしまうようにするのって、けっこう難しいんですよ。誰が何故、何を、何のために喋るのか? について、俳優がちゃんと自分のなかに衝動のようなものを持ってないとすぐ、言葉が上滑りするというか、スカスカになってしまうんです。
__ 
まずは俳優の発語に注目すると、shelfの作品の成立する瞬間が感じられる?
矢野 
いうなれば、西洋的な足し算で見せていくフラワーアレンジメントではなく、余白、間を見せるための生花ですね。ギリギリまで削った、言葉と、身体と、空間。そして何より余白を大事にした作品を作っています。これは余談なんですが、最近いろいろ英語で企画書を書いていて苦労したというか気づかされたんですが、英語では日本語の「削ぎ落とす」って、あまり良い意味を持っていないんですよ。trim outとかかな、とか、いろいろ考えたんですけど、trim outだと確かにクローズアップはしているんですけど、それはあくまで部分に集中させることを念頭に置いた表現なんですよね。僕らは逆に、削ぎ落とした、削がれた方の余白の美しさや、お客さんの想像力を喚起するための間、何もない空間じゃなくて、無いものが在る、内に深く混沌さを孕んだ豊かな空間を作るのだということを最優先に狙っています。とにかく古典をやるにしても、今回のような構成作品を上演するにしても、それを大事にしていますね。

タグ: 俳優の「素」を生かす 揺らぎ、余白 カオス・混沌 役者全員の集中が一致 今の作品に集中する 役者の儀式・ルーティン


「discipline」

金田一 
みんな凄いよなあ。自分の演劇の姿勢を、ちゃんとぶれずに持てているというのが羨ましいのかな。
___ 
持ちたい?
金田一 
ちょっと、そう思う。ロンドンにいた時、「君のdisciplineを見付けなさい」と言われて。
___ 
ディスプリン? ポリシーという事?
金田一 
なんつうのかな、つい出てしまう創作の姿勢というか。それを見つける為にロンドンに留学したんだけど、そんな簡単に見つけられる訳もなくてさ。でも、「お客さんと一緒に楽しめたら面白い」というのは見つけたん。自分が面白いと思うものを明確に持てたら、それで多分、3年は芝居をやっていけると思うなあ。

タグ: 俳優の「素」を生かす キャスティングについて


バ/ラ/ン/ス

__ 
永津さんにとって、いい演技とは何ですか?
永津 
何やろなあ・・・毎年コロコロ変わるんですけど、最近思うのは、「舞台の上で生きる」ってよく言いますよね。それが出来るのがいい俳優なんだなと。それが一つの目指す所です。その役でいながら、どれだけ素の状態になれるか。それがきっと大事で、稽古場でそれがすぐ出来てしまう人もいるんですよね。すっと、役の身体に入れるのがいい演技者だと思います。
__ 
具体的にはどんな方が?
永津 
そうですね、劇団赤鬼の橋爪末萌里ちゃんが自然体で、それでいてしっかりと周囲も見ていたりするんですよ。
__ 
ご自身が「舞台の上で生きる」にはどんな事が必要なのでしょうか。
永津 
もうちょっと、楽でいる事が大事なのかなと「グッド・バイ」の時に思いました。集中しようとして緊張感が強くなりすぎたり、周囲に敏感になろうとしていたら失敗したり成功したり。その塩梅・バランスを自分で早く見つけたいですね。
劇団赤鬼
1995年に旗揚げ。クチコミを中心に動員を爆発的に伸ばしたことで関西演劇界に一気にその名を知らしめた。 結成後わずか3年目で当初250人の動員を3000人まで伸ばした実績を持ち、2002年冬ツアーではついに8000人を突破。(公式サイトより)

タグ: 俳優の「素」を生かす 役をつかむ 舞台にいる瞬間 自然体


壁のむこう

__ 
演劇に関わった事は、宮階さんの人生にどんな影響を及ぼしましたか?
宮階 
むしろ、私が関わった事が演劇に影響を及ぼしたんじゃないですか?
__ 
おお。その通りかもしれませんね。
宮階 
言うたった。でも、本当にそういう気がします。演劇界という訳じゃなくて、私が関わった演劇作品は私の影響を受けていると思います。
__ 
ああ、私もそんな気はしますよ。宮階さんが出てくると、もの凄く危うい感じが増すんですよ。dracomの「弱法師」の時、役者さんたちに並んで宮階さんが出てきた時、何か不穏なものを感じましたね。存在感というより、危険を感じます。何故でしょうか。
宮階 
私は、仕事をまず始める前に「これは何なんだ」と、一つ一つの作業にどんな意味があるのかを確認して紐解く癖があるんです。台本をもらったら一言一句全てのセリフを辞書で調べるんですよ。それは理論的に確認したいという事じゃなくて、毎日使っている言葉でも、必ず、自分の知らない意味があったりするからなんです。そこから、可能性というか、新しい態度を取れると思っていて。
__ 
新しい態度。
宮階 
前提として、私はなりきったり感情を作ったりが出来ないんです。いつも頭の後ろの上空に目があって没頭出来ない、没頭しても、上に目がある事に気が付いてしまう。しかも私が没頭したとしても面白くなる訳じゃないんですよね。その為の時間じゃないし。あくまで、お客さんと作品の為に、その時間と空間でどう遊べるか、という事をずっと思っています。照明とか音響とか小道具とかと同じように私の存在がある。
__ 
並列関係にある。
宮階 
稽古期間で、演出家のアウトを貯めていくんです。この人は何をアウトにするのか?を探るんです。本番ではそれを全て忘れる。アウトを自分の体に覚え込ませて、お客さんの前で誰も知らなかった可能性を引き出すんです。
__ 
仕事の定義を掴んで、没頭を警戒して、行ってはいけないアウトを踏まえて、ご自身も知らない可能性を本番で探ると。
宮階 
だから、本番になったら稽古なんて振り返らないですね。舞台上では客席の壁の向こうを見るようにしています。アホみたいな事を言ってますけど。
__ 
そんな気持ちで舞台に立ってたんですね。
宮階 
でも舞台に出る一歩手前まではこの空間全部死ねみたいな気持ち本気でなっていて。いまこの劇場にテポドンが落ちてきて、死ねっ死ねっって思ってます。本番前のゲネとかは最悪な出来なんですよ。あらゆる失敗が起こるし。でも、本番が一回終わると降参して白旗を上げている状態で。どう思ってもらおうがいいですよ、と思っています。

タグ: 道具としての俳優 俳優の「素」を生かす 僕を消費してくれ 死と性と 役者の儀式・ルーティン 今、手が届く距離にかの人がいる事


vol.333 gay makimaki

カウパー団。

2014/春
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gay

騙されやすい僕ら

__ 
OSI基本参照モデルでいう、第八層が確実に存在していると。そしてそれは、実は5層目くらいに位置しているかもしれない?
廣瀬 
何でしょうね。多分、記号化出来ない部分を大事にしたいなと思っているんです。それと、僕自身が記号に騙されやすい人間なんです。それをちょっと克服したいから演劇をしているのかもしれません。自分のファースト・インプレッションに流されやすい、一面的になりやすい。
__ 
そこは誰でもそうかもしれませんが。
廣瀬 
僕の場合はちょっとその傾向が強いので。自虐的ですけど。演劇でだいぶ克服してきたんですよ。今でも言い淀んだりどもったりはあるんですけど、演劇を始めるまでは更にひどくて。コミュニケーションがすごく苦手だったんですよね。

タグ: 俳優の「素」を生かす 動物と俳優 言葉以前のものを手がかりに


トリコ・Aプロデュース演劇公演2013「つきのないよる」

__ 
トリコ・A「つきのないよる」。思い出す度に鳥肌が立つんですが、ひとえに丹下さんが怖かったですね。
丹下 
怖かったですかー?
__ 
怖かったですね。
丹下 
私がやった役の「さくら」はお話の中で4人と付き合ってたんですが、作・演出の山口茜さんから、「全員にいい顔をしてください」と言われていました。嘘を付かないで下さいと。私も付いているつもりはなかったんですよ。
__ 
あ、正直者だったんですか!
丹下 
はい。相手を悲しませたくないから、NOとは言えない人間というか。目の前のこの人を傷付けないための嘘。そういう形でやってくださいと言われたんです。
__ 
でも毒殺するんですよね?
丹下 
毒殺ではなく、男性に飲ませていたのは睡眠薬入りの飲み物なんです。眠らせた後、練炭による一酸化炭素中毒にさせて殺してしまいます。そのへんになってくると難しいところで、もうみんなに知られて来てしまって、本命の彼もいるし、これ以上ごちゃごちゃしたくなくて・・・という形なんです。これは実際の事件を元にしているんですが、資料としての取材本が凄く面白くて。茜さんの台本にも少しずつ事実が設定として出てくるんです。やってる側としては客観的には見れないので、どうだったのかは分からないんですが・・・。
__ 
私としては、山口さんの作品は境界が曖昧で、お話なのか設定なのか、単なるギャグなのか暗喩なのか分からない演技もある。ただ、全体を貫くその腑に落ちなさが、凄くロマンチックになるんですよね。
丹下 
やってる側もどこかすっきりしない部分は残るんですが、これは明確にしない方がいいんだろうなというイメージはありましたね。
__ 
消化出来ないものを扱っている。
丹下 
実はトリコ・Aさんを見たことがなくて、しかも共演者も初めての方ばかりで。緊張しました。
トリコ・A
トリコ・Aは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)
トリコ・Aプロデュース演劇公演2013「つきのないよる」
公演時期:2013/7/26~30(大阪)2013/10(金沢)。会場:インディペンデントシアター1st(大阪)、シアターアンゲルス(金沢[リーディング公演])。

タグ: ロマンについて 俳優の「素」を生かす 衝撃を受けた作品 殺す 役づくりの成功 曖昧さへの礼賛


vol.317 丹下 真寿美

フリー・その他。

2013/春
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丹下

いくつかの到達点

__ 
いつか、こういう演技がしたいというものはありますか?
森  
一人芝居で、セリフを一言も発さずにマイムだけで全てを伝えられるような役者になりたいですね。そういうのが出来たら、役者としての一つの到達点だと思います。
__ 
到達点。
森  
年齢が上の方と共演させて頂くと、やっぱり引っ張って頂くみたいな事はあるんですよ。自分がやらなきゃならないのですが、その時に一人芝居のように、自分で表現内容を決められるような経験があれば全然違うと思うんです。
__ 
その一人芝居、例えばどんなお話になるでしょうか。
森  
日常の一コマを切り取って、その沈黙の空間に緊張感があふれていて、僕のイメージが強く伝わるような。そんなものが作れればと。
__ 
なるほど。頑張って下さい。
森  
森個人としては、殺陣だけの芝居に出たいです!
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
森  
京都といえばZTONみたいにのし上がって行ければと。その一端を担えればと思います。その為には、まず個人的なスキルアップをしないといけないし、次回公演も成功させないと。
__ 
ZTONは京都でもかなりの異色劇団ですからね。

タグ: 俳優の「素」を生かす 揺らぎ、余白 一瞬を切り取る いつか、こんな演技が出来たら パントマイムの話題 今後の攻め方


わたしの登竜門

__ 
九鬼さんが俳優として参加した作品、努力クラブ弱男ユニット「夕凪アナキズム」を拝見しました。どれも大変面白かったです。演劇を始めたのはどのような経緯があったのでしょうか。
九鬼 
高校演劇から始めて、龍谷大学時代に劇団未踏座に入りました。でも、未踏座時代に得た事を全然生かせてないんですよね。
__ 
というと。
九鬼 
未踏座から努力クラブの旗揚げにひょいっと呼ばれて、だから大学時代と隔絶していると思います。後輩に見に来てって言えないですね。
__ 
大学時代はどのような作品を。
九鬼 
皆やりたいものを持ち寄ってだったので、色々でした。団員の創作脚本だったり、古城十忍とか、鴻上尚史とか、キャラメルボックスとか、ですかね。あと、三回生の時に初めて演出をさせてもらったんです。漫画原作の、「鈴木先生」っていう。
__ 
あ、ドラマ化された?
九鬼 
そうなんですよ。ドラマ化されて映画化されたので・・・
__ 
凄いですね。始めて実写化したのは我々だと。
九鬼 
いえそこまではおこがましくて言えないんですけど(笑)。今でも原作者の方とは交流があります。
__ 
おお・・・
九鬼 
先生、優しい人なんですよ。私は六巻の内容をメインに舞台用に再構成しました。でも長編ですから、四巻からの伏線が六巻で昇華されたりしていて。なんとか、そこの辻褄が合うように、何人かのキャラクターを一人の人物にまとめたり、メインキャラクターを思い切ってカットしたり。今思うとかなり乱暴なことをしてしまいました。原作者の方に本番をご覧頂けて、「自分も六巻だけを読み切りで描くならば、こういうやり方をしたかもしれないね」と言ってもらったんですよ。先生、優しいからお世辞かもしれないですけど。それが凄くありがたかったです。
__ 
パロディというか、茶化しましたか?
九鬼 
茶化したつもりはないですね。その時なりに、真剣だったかも。未踏座時代は、卒業してからも演劇を続けようという気持ちは無かったんです。未踏座の活動でストレスがたまると漫画を買って発散するような日々で。だから、普通に、働いて、みたいな、そういう生き方をしようとしていたんですけど、「鈴木先生」をやって、こんなに楽しい思いが出来るなら、またしたいなって。でも、学生劇団時代、最後の最後で私は卒業公演には出られなかったんですよ。悔しかったです。
__ 
悔しかった。
九鬼 
卒業公演は演出補に回りました。演出補って難しいですね。私の話なんて聞いてくれない役者もいましたし。役者落ちした人の話なんて聞かないですもんね。役者に、「それは違うんじゃないの」って逆ダメ出しされたりしましたね。今思うと、落ちた理由もなんとなく想像つくっていうか、納得できるんですけど。あの時はただただ、後輩に対して恥ずかしかった。卒業公演で役に立つって、卒業しても続けててもいい最低条件みたいなものじゃないですかね。いつか演出をする為の修行として、役者がしたいなと思っていた所に合田君が声を掛けてくれて。それ以降、努力クラブには旗揚げから参加しています。舞台上で緊張したり、集中できてなかったりすることを、むしろ良いって言ってくれる、大事な劇団です。
「夕凪アナキズム」
公演時期:2013/1/25~28。会場:元・立誠小学校 音楽室。
未踏座
龍谷大学の公認サークル劇団。
「鈴木先生」
漫画作品を原作に未踏座にて演劇化。原作者の方による当時の観劇感想はこちら

タグ: 道具としての俳優 俳優の「素」を生かす オーディション 自分を変えた、あの舞台 人脈を繋げる 伝説的な公演 学生劇団と私


ウソをつきたくないのかも

__ 
一番面白かったのは、回想シーンに入る前に上原さんが「ハッ!!」と客席に叫ぶネタでした。「言われてはっとする」というテキストの演技を過剰、むしろ客席に向いて叫ぶという、もの凄く思い切りのよいネタだと思いました。
上原 
あれはもうキッカケというアピールですね。音響さんにタイミングを教えるという(笑う)
__ 
何というか、ポイントを押さえながら爆発的な何かも出来る感じですが、例えば失敗する事はありますか?
上原 
よくありますよ。シーンにまるまる出てこなかったり、セリフが全く出てこなかったり、小道具壊したり、リアルに役者を殴ったり。
__ 
そんな事があるんですか!
上原 
小道具の棒で相手の尻を刺してしまって、痔を悪化させてしまった事もあります。手加減が出来ないというか・・・何でしょうね。行ける所までの実感がないとだめなんでしょうね。
__ 
納得出来ないとだめ。
上原 
ウソをつきたくないのかもしれないです。お芝居という大きなウソをつくのに、小さなウソをついたらあかんって。小さなウソをつくと、大きなウソは成立しなくなる。
__ 
小さなウソとは。例えば、言えないセリフを言えてしまう事だったり?
上原 
気持ちがないのに段取り通りにやってしまったり。あれ? って思うと、お客さんも分かるんです。すると崩れてしまうんですね。殺陣だったら、切れないという約束ごとがあるから成立するんですが。芝居の部分でそういうのがあるとちょっと嫌やなと。
__ 
見てるこちらも、それはすぐ分かると思いますけどね。
上原 
だから、小さなウソはなるべくつかないようにしたいです。いやー、上手くなりたいですね。

タグ: 俳優の「素」を生かす 生きている実感 とんでもない失敗をしてしまった


構造

村松 
最近は、演じている素の自分をさらけ出そうという意識があります。演じていると、どうしてもカッコ良くしてしまうんですね。
__ 
ええ。
村松 
何故そうなるかというと、人に見てもらうからとか、後で自分で映像を見るから、とかなんですけどね。でも、そうするよりはありのままでやってみる方が面白いのかもなと。大崎が僕に振っている役を越えてカッコ付けると、これは笑えないなと。
__ 
周りの反応からそれが分かった?
村松 
それもそうだし、その前に、自分の演技が相手に対してどのような反応を起こすのかをもっと知りたいんですよ。テンプレート化された反応ではなく、本当の所はどうなんだろうという。周囲に気を遣える、本当にこの人はどう思うんだろうという想像が出来るようになりたいですね。
__ 
どういうやり方をすればよりリアルに見える、というアプローチの他に、他人への影響を洞察するという事ですね。
村松 
それが出来れば、舞台で、素の自分で生きる事がもっと出来ると思っています。感覚的な事なので言葉にしにくいんですけど。
__ 
例えばボケに対するツッコミをやる時に、どんな想像をするのでしょうか。
村松 
なんでツッコミが存在するかというと、一つにはボケを制裁する為の攻撃というのがあるんですよね。その時、どんな形でもいいのであれば成立させるのはあまり難しくないんです。でも、お客さんを含めた「周囲」を納得させる為には、何も考えずに叩いてしまってはダメだと思うんです。
__ 
というと。
村松 
普段の生活でも、誰かを注意する時はその人の今後の立場を考えるじゃないですか。会議の時に軽く叱ったり、隅でこそっと注意したりとか。後でどうなるかという事を考えながら叱っていると思うんですよ。その関係を面白く、例えば立体的に成立させるには論理だけでもセンスだけでもいけない。
__ 
関係を考える時の反射的な思考が必要という事ですよね。でも、本当に感覚と結びついているから、舞台でしか実現出来ない表現なんですよね。
村松 
それを繊細に作りこんでいく作品90分やるので、やっぱり集中力と体力が必要なんですよね。いや、どんな演劇も大変だと思うんですけど。

タグ: 俳優の「素」を生かす 繊細な俳優 言葉以前のものを手がかりに