見た事のない生物と暗い空間に閉じ込められる

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MOKK「f」について。一年前にアトリエ劇研で拝見しました。とても面白かったです。私が見たのは松尾恵美さんのバージョンでした。粘液にまみれて這いずりまわってる彼女がとても怪物っぽくて、しかし彼女から突き放されている気持ちもずっとありました。だからか、結構寂しい気持ちがありましたね。
村本 
「f」は、ソロ作品シリーズの2作目として作りました。その前は「Humming」、その前は「LAURA」という24人の群舞作品を作っていました。ダンサーが自分と向き合って根を詰めて作り上げる作品をやりたかったというのがあります。
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なるほど。
村本 
「Humming」は3人のソロで表現される音(歌やハミングや録音)が重なりあい、一つの旋律が生まれる、全体で一つの作品でした。「f」は完全にダンサー一人ずつの作品です。鉄のテーブルに女性が一人横たわっていて、その後45分ずっと観客と空間と向き合っている状況が続く作品です。それに耐えうる女性ダンサーとして、寺杣彩さんと上村なおかさんと松尾恵美さんにお願いしました。
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なるほど。
村本 
お客さんが今ここで見た事のない生物と対面しているという体感、ダンサーも自分が今ここで囲まれて見られていると強制的に実感せざるを得ない状況が「f」だったんです。再演は可能な作品だと思うんですが、一回一回が全部違う作品でした。
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女性性が作品の根幹だったようですが。
村本 
女性そのものに視線を当てた文学作品や演劇はこれまでも多くあったと思うんですが、それはダンスにはあまり無かったんじゃないかなと思います。遺伝子にプログラミングされている行動に、時に女性は動かされている感覚があります。そういう波ってどんなに落ち着いた女性にもあるんですよ。実は、それには理由があるとどこかで読んだ時に納得したんですね。
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理由とは。
村本 
生理前にイライラするのは、身体が「これから子供を宿す」という準備の為に人を遠ざけたり内向的にさせたりするんですよね。身体がアクティブにならないように敢えて抑える。それが女性ホルモンによるものだと詳しく本で知って、すごく衝撃を受けたのと、自分が細胞やホルモン、遺伝子によって行動や情緒まで決められているんだな、と。
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そうした複雑怪奇と同じ空間に同居する45分。
村本 
ところが、「f」のダンサーの意見としては、私の考え方が男性性に近いらしいんですけどね。案外、そうなのかもしれないと思っています。
2012 MOKK -solo- "f"
公演時期:2012/9/11~13(東京)、2012/10/12~13(京都)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、アトリエ劇研(京都)。

タグ: 俳優と遺伝子 ハミング・鼻歌 男性性とは何か


頭が言葉を迎えにいく

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九鬼さんは演劇を続けようかどうかでとても悩んでいるそうですね。
九鬼 
努力クラブに入るかどうかですごく悩んでいるんですよ。旗揚げ公演から関わっていて、入るなら努力クラブなんだろうなと思うんですが。ここに載る時も、所属に努力クラブって書いて欲しい気もしたり。まあ入ってなくても出てますからね。何だか結婚する前に同棲を始めたカップルみたい。入籍するきっかけがなかなか。
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演劇を続けているのは、どういう思いがありますか?
九鬼 
いつか演出をしてみたいから、かな。そのための役者修行が4年くらい続いてますけど。
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いつか、どんな演技が出来たらいいと思いますか?
九鬼 
うーん。声が大きくて頑張ってる役者さんがいたとして、でも台詞が全然頭に入ってこない場合があると思うんです。逆に、小さい声量でも耳が自然と言葉を追う事があって。それは何でだろうと思うんですよ。役者さん本体の力なのかもしれないですけど。お客さんが、無理せず台詞を聞き取れる役者になりたいですね。
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一つの側面として、役作りというのはあるかもしれませんね。俳優として立っている人間の言葉と、彼が演じている役の経験の重みが一致している時にその台詞が言えてる、という。
九鬼 
なるほど。
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その「言えてる」はガラスの仮面でよく出てきますが、主観的な指標なので判断しづらいんですけどね。しかも演技ってそれで価値を持つ訳じゃないし。
九鬼 
そうなんですよね。役者だけが頑張っても、全体の演出がそれを生かせてないと意味がないし。
努力クラブに入ろうか迷っている
後日、入団されたそうです。おめでとうございます。

タグ: 俳優と遺伝子 ガラスの仮面 いつか、こんな演技が出来たら 声が出せるように 役作り=個人を通した視界