いわきに着いて
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- 上皇は、この作品にをご覧になったお客さんにどう思ってもらいたいですか?
- 高間
- 笑ってもらいたいというのはもちろんですけど、福島に観光に行ってもらいたいですね。僕の原発についての考えなんかよりも。まあ大きいのは、今回参加の10数人、僕が企画しなければ、まず福島には行ってなかったでしょうから。実際に見てきたという体験は大きいんです。
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- そうですね。
- 高間
- あの丸山交通公園が、現地で面白い事を言わなくなって泣いてたんですよ。「高間さんここ無理っすわ」って。いわきに着くまではバスの中ではしゃぎまくってたんですけど、富岡に入ると押し黙ってしまってうるってなってましたね。
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- あらすじによると、今回の作品の舞台は滋賀県の高校の修学旅行の行き先を決める政治劇だそうですね。遠く離れた滋賀県から、どんな人達がどんな思いで福島を見るのでしょうか。芝居の結末も気になりますが、そうした意識の問題についても興味が出てきますよね。
不条理が服を着て歩いている
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- 「登場人物の誰にも共感出来ない!」っていいですね。人間は、目の前に何かあればそれが人だろうと動物だろうと物体だろうと感情移入出来る能力を持っていると思うんですけど、それは重力とか質量保存とか精神とかの絶対の法則やシステムに根ざして生きている以上、好むと好まざるに関わらずずっと動いている筈で。それが通用しないジョーカー的な存在が出て来ると、時として開放感を覚えるんだと思うんです。多分、笑ったりする。泣いたりもする。
- 畑中
- ふんふん。
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- そんなキャラクターだらけの作品というのはかなり調子が狂いそうで、愉快そうですね。
- 畑中
- そうですね。共感の話で言うなら、例えば目の前の人がコップの水を飲むのを見て、(ああ喉が乾いているんだな)と自然に分かるという事だと思うんですけど。でも次の行動が、(えっなんでそうしたの!?)という感じです。自分の感覚に変換出来ない、でも、だからこそ見ていられるのかな。
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- なるほど。コップの水にホットコーヒーを混ぜ始めたら困りますよね。そんな不条理さがある?
- 畑中
- でもその人物にしてみればちゃんと理由があるんです。全くの不条理でやってる訳ではない。役に感情移入出来ないけれど、お客さんもその場に参加しているような感覚になるみたいです。見ている人の話によると。それは冒頭の演出のせいもあってか。
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- 悪い芝居の冒頭のシーン!毎回驚きますよね。今回も楽しみです。
- 畑中
- これは本当にお楽しみなんです。舞台を見た瞬間、これは何かあるぞと思ってもらえるんじゃないかと思うんです。
ずっと残ってる、私の中に
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- 私が小刀さんを初めて見たのは「タケミツナリタ」※でしたね。あの幽霊役はとても面白かったです。
- 小刀
- ありがとうございます。でもわたし、普段から幽霊っぽいと言われてしまうので。大熊先輩から。あまり存在感がないというか。だから、作らずにナチュラルにやってましたね。
- __
- 小刀さんが、舞台で好きな瞬間はどんな時ですか?
- 小刀
- 舞台に立っているだけで好きなんですよね。さまよっているだけでも。もちろん、パフォーマンスが上手に出来た時はとても嬉しいです。
- __
- なるほど、それは嬉しいですよね。これまでの壱劇屋で、最も自分が輝いたのは。
- 小刀
- SquareAreaで、走馬燈のように舞台が回る演出の時ですね。お客さんが泣いている音が聞こえたり。あの時は多分、輝いていたと思います。
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- 壱劇屋は工夫が多いですよね。
- 小刀
- うちは段取りが多いんですよ。舞台上でも裏でもバタバタしてます。ダメ出しも、演技よりパフォーマンスに関する事の方が多いので。一度、出とちって小道具を出し忘れた事があって、マイムで何とかしてもらった事もあります。
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- 大変ですね。1年ゆっくりと時間を掛けて一つの作品に集中してみたらどうですか?
- 小刀
- それはやってみたいですね。
- __
- でも、途中で飽きそう?
- 小刀
- 飽きますね、きっと。
うっ
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- いつか、こういうシーンを描きたいというのはありますか?
- 山本
- お客さんがドッカンドッカン笑うんだけど、それが最後には涙に変わって、でもラストに一転してホラーに変わって、恐怖で終わるというのが書いてみたいですね。ゾッとして終わるんです。理想なんですけど。
- __
- 落語で最後にぞっとするセリフで終わる名作がありますよね。
- 山本
- 昔の人が言ってたんですけど、ホラーが一番難しいらしいんですよね。笑わせたり泣かせたりするのは簡単だが、って。僕は中々、そこまでたどりついてないんですが。それを書いてみたいですね。
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- 「にくなしの、サラダよ」は途中までホラーで、でも最後はハートフルになりました。
- 山本
- 全く問題自体は解決していないんですけど、意識を変えるでこれから新しく展開出来るという事が言いたかったんですね。
- __
- そういえば、夫婦間の対立がテーマでしたね。「桃の花を飾る」※もそうだった。山本さんにとってはそれがテーマなのでしょうか。
- 山本
- 僕は夫婦という関係性を持っていないので、やはり想像によるんですが。でも、誰にでもある子供時代がその人を形成してるんですよね。やっぱり家族があるんですよね。家族環境にある対立を描きたいと思うんです。
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- 家庭環境の違い。
- 山本
- ストレートな愛情表現に、うってなるんです。何故父母は、無償の愛をあんなに私に注いでくれるのだろうかと思って。それが、「にくなしの、サラダよ」は子どもたちが求めていた母親像が勝手に暴走して、みたいな事を考えていたんです。でも本当に恐ろしい思いをしているのは男性なんじゃないか。無償の愛に対する恐れが、実はあるんじゃないかと。
- ※コトリ会議 演劇公演9回め「桃の花を飾る」
- 公演時期:2011/9/2~4。会場:シアトリカル應典院。
カーテンコール
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- 舞台に立っていて、どんな瞬間が好きですか?
- 小沢
- カーテンコールの時です。
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- なるほど! 昨日拝見した「エゴサーチ」のカーテンコールは、全員、何だか潔い感じがしましたが。
- 小沢
- 本当ですか。でも、そんな感じになったのは最近だと思います。それも覚悟が付いたからじゃないかな。2時間の舞台を確実に面白いものにする。そういう意思を皆で確認するところから始まるんです。舞台が終わった時に、お客さんと一緒になって作り上げた結果がカーテンコールなので。感謝を込めたあの瞬間ですね。
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- 私は初めて虚構の劇団という集団を拝見したのですが、大変強い集団力を感じました。ラストの流れるようなシーン展開は、全ての演技が整理されていて、全員で一つのセリフを喋っているぐらいの、キレイで見事な演劇だったんですよ。
- 小沢
- 嬉しいです。
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- お客さんが、笑っているんだけど同時にすすり泣いているような人もいて。
- 小沢
- 鴻上さんの作品の特長だと思うんですよ。人を救えるくらい大事な言葉をエネルギーを、鴻上さんの作品は持っていると思います。
そのまま出てきた言葉
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- いまここで、ロロと範宙遊泳がウケているのはいったいどういう事件なんだろうかと考えています。
- 坂本
- 今、ウケているのかはちょっとよく分からないけど・・・。それぞれの魅力という意味で言うと、三浦くんの書く言葉って本当に当たり前の言葉なんですよ。対家族だったり、対友達だったり。でも誰でも感じる気持ちが台詞になったとき、恥ずかしくなるぐらい胸キュンだったりするので、珍しいのかな。それを狙って計算で書くのではなく、素直に生み出せてしまうのが。
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- 結果的に、それを正直に受け取って感動出来るのが大きな事件なのかなとは思います。
- 坂本
- 高校生を遙か昔に過ぎ去ったお客さんのその頃の気持ちを、呼び水のようにして呼び出す・・・みたいなことがおこるのかな?一時期、恋愛ってこんなにきれいなもんじゃないだろって思ったりもしましたけど・・・でもそれは三浦直之が楽しませたり感動させたりしたくて捏造したものではけっしてなくて、そのまま出てきた言葉だから。
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- ロロ。呼び水になるんですね。それはきっと、彼らが普遍性を持っているからかもしれないですね。ビートルズ的な。そこに立ち会えさせてくれるんですね。範宙遊泳はいかがでしょうか。
- 坂本
- 範宙遊泳を見たのは、山本くんがものすごく渇いていた時期だったんです。
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- というと。
- 坂本
- 私的に蜷川さんのシェイクスピア悲劇とか寺山修司とかを観た時と似た感覚で、客席で大泣きしてたんです。最近、多幸感に溢れた作品が多いと思うんですが、範宙は冷めた目線で、すごくヒリヒリ渇いていて。でも笑えるし、奥の方にハッピーも同居しているような気がしていて。それはちょっと珍しいなと思いますね。範宙らしさというか。
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- なるほど。「ガニメデからの刺客」※を拝見したときに、それは感じました。もう一度、じっくり拝見したいです。
- ※KYOTO EXPERIMENT 2011 フリンジ GroundP★参加 範宙遊泳「郷土物語宣言第三弾「ガニメデからの刺客」」
- 公演時期:2011/10/11~13。会場:元・立誠小学校。
客演では踏み込めないところ
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- 突劇金魚の7月の短編公演、キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」※面白かったです。その内の一つ、「夏の残骸」に出演されていましたね。この作品、10月に伊丹AI・HALLで長編として上演される※のですが、それも楽しみです。山田さんは謎の男役でしたね。
- 山田
- ありがとうございます。僕の役も、掘り下げたりすると思います。
- __
- あの部屋の中に割ってはいる役どころでした。では、意気込みを教えて頂けますでしょうか。
- 山田
- そうですね。劇団員になって稽古の仕方とかも色々話し合えるようになったので、今は新しい方法を試して、変更してを繰り返してます。今まで以上に濃厚な仕上がりになると思います。
- __
- 演技の作り方について、最近気になる事があります。表現の程度についてです。昨日、金曜ロードショーで「ソルト」って映画を見たんですけど、そこですごく難しい演技があったんですよ。
- 山田
- ええ。アンジェリーナ・ジョリーの。
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- はい。ロシアの女スパイが潜入先で作った旦那を誘拐されて、それで昔の仲間のアジトに入って、直後に旦那を殺されるんですけど。そこで顔色を変えずに仲間の信用を経る。そうして生まれた油断をついて全員を殺害してアジトを去るんですね。そこで、シーンの最後に旦那の死体を見るんですよ、死体に駆け寄る訳でもなく、昔をちょっと思い出して、でも泣く訳でもない。「やや顔をしかめる」。それだけなんですね。
- 山田
- はい。
- __
- そこが最大の見せ場だと思うんですが、表現をその程度に留めたのは誰なのか。
- 山田
- まず、誰が演技プランを考えるのかといわれると、俳優が自分のやりたいことを提示して、それが演出家の想像を越えれば採用になると思うんですが、そうでなければ演出家のプランに流れていくんだと思います。僕の場合は、演出家によって好みもやり方も違うので、やりたいことをやりながら、演出家がどういうアプローチが好みなのか探ります。でもまあ、たいしてできる事もないので、一生懸命やるしかないです。
- ※キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」
- 公演時期:2012/7/2~4。会場:in→dependent theatre 1st。
- ※突劇金魚 第13回公演「夏の残骸」
- 公演時期:2012/10/12~15。会場:AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)。
僕と東京のお客さんと
- 石原
- アゴラ劇場で上演出来たのは大きかったですね。NMSはどの作品もまるで違うので、それを東京で見てもらうのは凄く楽しみでした。ショーケースではないですが、関西ではこういう人たちがいるんだと形で示せたんじゃないかなと思います。お客さんの反応でも、大阪にこういう人がいるんだとか、知っている人の新しい側面が見れたとか、そういう声を頂いて。
- __
- そう、客演の人の別の表情。確かにそれは石原正一ショーの特長ですよね。ワクワクします。
- 石原
- それは正一ショーのルーツですね。僕が知った、面白いものを広めるというか。
- __
- NMS東京公演は、私も拝見しました。めちゃくちゃウケてましたね。妙な言い方ですが、「ああ、面白く見てくれるんだ」と嬉しくなりました。
- 石原
- 僕、東京でやるの好きなんですよ。劇団時代に何回か東京公演は行っていて、正一ショーでも三回行ったんですが、お客さんがしっかり見てくれるんですね。
- __
- シーンをしっかり見てくれるんですよね。笑いに対して固いという印象を私も持っていましたが、それは少し違う。大阪のお客さんと明確に違う部分があるとすれば、それは目の前で演技している俳優との付き合い方の違いかもしれない。
- 石原
- そうなんですよ。お客さんが10人ぐらいしかいない回もあったんですけど、上演中やアンケートでの反応が、思ったよりもリアルなんですね。僕らがちゃんと笑かしたり泣かしたりしたら、感動してくれる。お客さんの空気が変わるんです。贅沢でしたね。それを大阪でも凱旋公演出来て・・・、この旅は贅沢でしたね。
- __
- 贅沢な旅。
- 石原
- だから、一番楽しかったのは僕だったんです。
「戦う」
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- さきほど、「戦う」という表現を使われましたね。兵頭さんにとって、「戦う」というのはどういう感覚を指していますか?
- 兵頭
- 作品を作るという事自体が、私にとっては戦いなんです。
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- というと。
- 兵頭
- 悔しいんですが、どうしても出来ない事が出てくるんですね。自分の限界を思い知るんです。その場で泣いてやりたくなるくらいに悔しい。自分より上手に表現する人がいたら、やっぱり悔しいと思う。出来るようになるまで頑張るんです。お芝居には点数は無いんですが、やっている本人たちが一番分かるんです。この人が舞台に出てきただけで持って行かれた!って思ったり。
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- なるほど。
- 兵頭
- それから、いまギアの現場に参加していて、やっぱり周りの出演者がすごく戦闘力が高いんですよ。
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- そりゃあそうですよね。日本のトップが集まってる訳ですから。
- 兵頭
- 人を惹きつける力が強いという事ではなくて、戦い方を知っているんですよね。苦しい戦いも、楽しんで戦う事も。違うジャンル同士が、リハーサルで調整しながら戦っているんですよ。私は演じる事は出来るけど、頭で回る事は出来ないし、バトンを操る事も出来ないし、何かを隠す事も、見えない壁を作る事も出来ない。だから、守っていてもつまらないんですね。だからみんなと仲良くするポジションで、劇場ごと元気にしていきたいです。
- __
- 私は何回かギアを拝見しているんですが、兵頭さん演じるあの人形は引きこまれますよね。4月から無期限上演ですね。
- 兵頭
- そうですね。とりあえず3ヶ月上演はするんですが、私たちは今後1年、2年、10年と代替わりしていくのを夢見ています。もちろん、お客様の応援が絶対必要なんですけど、京都のお客さんに元気を与えられたらいいな。
- __
- 頑張って下さいませ。