自分、ギリ、暗い客席を前にして

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佐々木さんが考える、魅力的な俳優って、つまり面白カッコいいという事?
佐々 
何て言ったらいいんだろうなあ。自分を管理している事でしょうか。
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というと?
佐々 
緊張という事じゃなくて、自分の体を完全にコントロールしていたら、その内自分の周りもコントロール出来るんじゃないかと思っています。自己管理出来ている人、ですね。所作とかも、ナリじゃなくて自分で考えてやっている。福谷が良く言ってるんですが、瞬きがコントロール出来る、汗を調節出来る。自分をちゃんと、管理出来ているかどうか。
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なるほど。
佐々 
美空ひばりも歌っている時、演出に従って自分を管理しているんですよきっと。大竹しのぶも、「泣いて欲しい」と指定された時に「右からですか?左からですか?」という質問が出たって伝説がある。そこまで自分を管理出来たらそれは凄い役者だろうと思うんです。管理出来ていたら、演出に従って自由に色々試せるんですよね。真っ白で立っている訳じゃなくて。
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久々にそういう、禁欲的な考えをする役者に出会いました。
佐々 
感情だけで動く演技ってあんまり好きじゃなくて。熱くなっている演技の最中にも冷静でいたいんですよ。芝居中に何やっていたのか分からん、というのが怖いです。「ハムレットのようなもの」の時はまさにそうだったんですよね。所作一つ一つには拘っていたんですけど、感情を出すという事は大事にしていたので。自分が制御しきれるかギリのところを攻めていて。それはすごくいい経験だったんですけどね。
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それは凄いせめぎあいですね。
佐々 
僕は動きを管理しようとしていたんですが、本間広大は良しとしてくれなくて。だらしない体であってほしい、役者としてちゃんと立たれたら嫌だ、佐々木誠として立って欲しいと言われたんです。
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それは難しいなあ。
佐々 
セリフを喋りながらも頭で考えている別の事を想像させてほしい、みたいなスッゲー高度な事を言われて。それに挑戦した芝居になったと思います。出来てたかどうかは分かりませんけど。

タグ: 頭が真っ白になる 瞬きの数をコントロールする俳優 自分で考えてきたもの、の価値 大竹しのぶ


本当に追い詰められた時

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安達さんが、舞台で好きな瞬間はどんな時ですか?
安達 
自分目立ってるなと思った時ですね。普段は大人しい自分なので。
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これまでで一番、自分が輝いた瞬間はいつですか?
安達 
ピースピットのHYTに出させていただいた時ですね。いい役をもらいまして。
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なるほど。
安達 
大変でしたけどね。壱劇屋の第9回公演の時、私が主役だったんですけどずっとテンパってて。しかも会計・制作・衣装もやってて。
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きついですね。
安達 
飽和した!みたいな。でも、もっと上手くやれたなと思いますけど。
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今まで犯した最大の失敗を教えてください。
安達 
さっき言った第9回公演で、覚えきれない量の長台詞が本番の2日前に来た事ですね。それ以外にもチケット作ったりしなくちゃいけなかったのに。覚えたんですけど、案の定詰まって。パンッと飛んだんですよ。目の前のぶんちゃん(西分さん)が、安達さん台詞飛んだんやわって気づいたらしくて。その時間が永遠に感じましたね。真っ白になるって、これの事なんやと。
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それは観客も気づいていますでしょうね。
安達 
あのときはちょっと程度が強かったですね。その映像はどこかにあるんですけど、それは絶対に流さんどってと言ってます。

タグ: 頭が真っ白になる ピースピット


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沈黙の空間に言葉が卸されて、また沈黙に帰って行く。ちょっと頭に思い浮かべていたら気持ちいいですね。安楽死みたいで。舞台上の光景が目に飛び込んできた時、その空間構造は我々の頭蓋骨と同調したもう一つの言語空間になる訳じゃないですか。役者は観客の物語を代弁するもう一人の自分たちで。彼らが黙る瞬間、脳が活動を止める、つまり死を仮想体験するという訳で、それはとても気持ちいい訳ですね。生と死を行き来しているのかもしれませんね。
市川 
役者を、凄く単純な物にしたいんじゃないかなあと。石とかと同じレベルの。「もうこの人は、喋る事は出来ないんだなあ」と思う瞬間。たまに思うんですけど、セリフを忘れた役者って美しいなあと。ウチの役者でよくセリフを忘れるやつがいるんですが、どうしたらいいのか分からない状況になりますよね。そして、その「セリフを忘れた」は舞台上どころか観客も分かるじゃないですか。
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分かります。
市川 
凄く面白い瞬間だなあって。セリフを忘れさせるって難しいですけどね。あの時の面白さって何だろう。観客って、喋っている俳優を通して、本当は自分も語っているんだと思うんですよ。役者がセリフを忘れた瞬間、お客さんは「あ、他人だったんだ」と気づく瞬間なんじゃないか。一緒に頭が真っ白になる。あの空白は、カタパルト発射されたかのような無防備な瞬間になる。

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あの時代から数歩離れて

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玉一さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
玉一 
高校3年の頃、文化祭で演劇をやろうと誘われたんですよ。水球部・テニス部・書画部の仲良しで集まって。三谷幸喜さんのTVドラマのある一話を演劇化する企画でした。それまで演劇なんてやった事無かったんですけどね。それから大学に入って友達にすすめられてラーメンズのDVDを見たんですが、凄く世界観が独特じゃないですか。いいなあと思って。
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楽しそうですね。
玉一 
で、私も当時自分の世界観を京都精華大で絵で表現してたりしてたんです。でもある時先生に「それじゃ全部は伝わらないよ」と。これじゃダメなんですか?全部伝えないといけないんですか?私は偶然性というものも好きだったんです、偶然生まれた技法だったりとか。でも、やっぱり学校だから。研究して積み重ねないとダメなんですよね。そこの食い違いというかそういうわだかまりもあったものだから、平面の世界で息詰まっていて。抜け出したかったというのはありますね。そういう折にラーメンズとかを見て、自分が作品を描くのではなく、自分が作品の一部になるというのはこれまた面白いなあと。それで劇的集団忘却曲線に飛び込みました。
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大学は教育機関ですからね。評価されますからね。
玉一 
そうですね、総評されるんです。私は作品の一部分が面白い、というのもありなんじゃないかなあと思ってたんですが、そうじゃないんですよね。難しいなあと。パッと思いついたらそれをやるという、面白い方に飛びつくという。集中力がないんですかね。でも演劇って、何ヶ月も同じ作品に向き合うじゃないですか。今日は昨日よりも掘り下げられた、みたいな感触があって・・・
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それは、確実に製作者としての意識が高まっているんじゃないでしょうか。
玉一 
そうかなあー。
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ある程度以上の重さを持っている作品は確かにあって、それはお客さんの心と引き合うんですけど、その時にどれだけ考えられて作られているか、に依っていると思うんですよ。それがお客さんの目の前に現れる時、美しい調和をもって時間とともに奏でられると思うんです。
玉一 
そういう意味では、大分自分は変わってきていると思います。入ってからも変わっているし、周りも変わったし。だから、なんか、昔と全然違いますね。

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