満月動物園=アングラ?

__ 
満月動物園の、開園の経緯を教えてください。
戒田 
開園、初めて言われました(笑う)。元々は大学でやっていて、ぼちぼち外部でのプロデュース公演にも参加するようになっていって。けれどもその内、先輩を含め周りが卒業して会社員になっていく訳ですよ。芝居を続けたいけれど続けられるかしら、と不安になる。なら、一つ形にしてみようと。
__ 
ありがとうございます。いつも思うんですが、公演のタイトルが非常に魅力的な付け方ですよね。あんまり、お褒めの言葉としては違和感があるかもしれませんけど。
戒田 
いえいえ、ありがとうございます。
__ 
そして、今の満月動物園。サイトにあるコンセプトの文章には「ファンタジー」「メルヘン」とありますが、それよりもとても、人間の心にどこまでも迫った作り方をしているように思うんです。これは本当にほめ言葉にはならないんですけど、「演歌」に近いんじゃないかなと。
戒田 
ええ。
__ 
最近の二作は主人公が冒頭で自分の死に直面しますよね。そこから、観客が自分自身の世界に入っていってる気がするんですよ。死ぬなんて超個人的なテーマですからね。本編も家族と配偶者についてのお話が中心だし、最後には泣いてしまうぐらい感情移入しているお客さんがいるのは当然だと思うんです。自分の人生もいつか終わっていってしまう、というのを強く感じました。生きていて死んでいく、自分の物語だから。
戒田 
ありがとうございます。的確だと思います。まあ、死ぬというのも含めて、僕自身が無くすという事を恐れていると思うんです。例えば川を欄干から見下ろしている時とか、この眼鏡をもし落としたらもうずっとお別れだなとか思っちゃうんですよね。常日頃からそれを敏感に怖がっている。メガネに対してさえ、そういう意識がふと行ってしまうと怖くなってしまうんですよ。死神シリーズではそういうのがよく出ていると思うんです。劇団の紹介に関して言えば・・・最近の満月動物園は、もはやアングラとは名乗れないかも(笑う)。
__ 
いえ、私にとっては現役というか、最前線のアングラですけどね。
戒田 
あ、そうですか。嬉しいです。それを聞いて、嬉しいと思う自分が新鮮です。

タグ: 愛される劇団づくり ファンタジー 観客との関係性 タイトルの秘密 旗揚げ 意外にも・・・


ターニングポイントと半分こへの期待

__ 
第七劇場のやるべき事を教えてください。
油田 
それ、俺も聞きたい(笑う)
鳴海 
私たちの創作のポリシーは、国境を越えられる作品の製作です。三重という場所から国境を越えられる価値のあるものを作り、第七劇場がレジデントカンパニーになっているベルヴィルを、県や市だけではなく、劇場がある美里地域の人たちにも誇りとなって愛される劇場にする。その二つですね。
__ 
素晴らしい。
鳴海 
舞台芸術ってどうしても消えてなくなってしまうものですよね、それがいくらエポックメイキングなものであっても。見ていなければ語りようがない。
__ 
演出はそうした作業ですよね。
鳴海 
でも、いろんな時代でターニングポイントになっている作品はある。私たちも美里で、そうした作品を作る事がミッションのひとつだと考えています。
__ 
ありがとうございます。では、ご自身にとってのターニングポイントになった作品は。
鳴海 
鈴木忠志さんの「カチカチ山」。これは初めて富山県利賀村に行ったときに見た作品で、これはあらゆる意味で衝撃でした。それから、ピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」「春の祭典」の連続上演を韓国で見たんですが、終演後、膝に力が入らなくなった舞台体験でした。その計3つは私にとって大事件でした。
__ 
そうした重大な作品をもし作れるとしたら、それはどんなものだと思われますか?
鳴海 
さっき、油田さんの話にもあったんですが。地方都市だと一人の表現者がいろんな種類の活動をする必要が出てくる場合があるんです。たとえば絵本も純文学も児童文学もラノベも書かないといけない場合があるんです。もちろんそれぞれをそれが得意な人に任せるという方法もあります。いろいろなジャンルが求められる中で、私がある種のピリオドとなる自分の作品を作れるのがどのジャンルなのか、なかなか想像しにくいですね・・・ただ、変な話をしますけど私は50歳で死ぬつもりにしていて、あと15年なんです。一年に一作と考えたらあと15作。その15作で納得した創造活動を送るぞと考えたら、多くのものに触れて、考えて、その時その時で真摯に向い合っていく事でしか為しえないんだろうと思います。当然のことなんですが。
__ 
一回一回の積み上げという事ですね。
鳴海 
私はこれまで、存命していない作家の作品の演出がほとんどだったんですけど、この間のこけら落としで作った「シンデレラ」は油田さんの構成台本でした。油田さんのポップでスピーディーな作風を演出していて、私の中で開いた部分があったんです。これから15年、切って捨てずにやっていって、どの活動に対しても意味を見出して、楽しく苦しみながらやっていければと思います。
__ 
ありがとうございます。それが大きなものであれ小さなものであれ、良いものである事を願っています。
鳴海 
そうですね。それをご覧になったお客さんにとって糧になりたいと思います。作品としてのクオリティが劇場内の半分を占める要素だとすれば、それは私たちの仕事であり、作品を通して、残りの半分を占めるお客さん一人ひとりが自分自身や他者について思いをはせて考えを深めるような時間に貢献できれば、その劇場はとても幸福だと言えると思います。

タグ: 愛される劇団づくり 直接感想を聞きたい 人生の節目 最新作が最高傑作 一回一回を大事にする 有機的に関わりあう 作家としての課題


もっと愛してもらえるように

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大熊 
京都にも公演で行きますし、2014年度までにやる公演が、6月のも含めると6回決まってるんですよ。
__ 
それは凄いですね。
大熊 
ちょっと大丈夫かなと。自主公演もあるし、そんなにやって大丈夫なのかなと。今年度は攻めすぎですね。
__ 
今後、作って行きたい作品としては。
大熊 
エンターテイメントとアートの、中間の娯楽を作って行きたいです。中間というと安いですけど。どんな人でも楽しく面白く見られる大衆性を持ち、アートを意識するお客さんにも訴えられる。あと、劇団をもっと愛してもらえるような運営が出来ればと思います。

タグ: 愛される劇団づくり 分かりやすい面白さと芸術的な面白さの中間 私の劇団について 今後の攻め方


質問 池田 智哉さんから長尾 かおる さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせて頂きました、東京の劇団ギリギリエリンギの池田さんから質問を頂いてきております。「東京の演劇に対して、どんなイメージを持っていますか?」
長尾 
新しければ価値だと思っているんでしょう?と思ってます。
__ 
なるほど。
長尾 
関西圏で芝居を見て来て長いんですが、新しかろうが古かろうが、良ければいいんだと。面白ければいいんだとされているんですよね。吉本新喜劇のカンカンヘッドとか、分かっているけど面白い。
__ 
愛されているし、実際面白いですしね。
長尾 
ベタなんですけど、秀逸なんですよね。その証拠に、面白くないものは消えて行っている訳ですから。でも東京の芝居っていうのは逆で、「新しければいいんでしょう?」っていう感覚が強くて、面白さそのものよりも「あれは前にどこかがやった」とか「これはまだ誰もやってない」とかで判断されているところが凄くあると思うんですよね。
__ 
なるほど。
長尾 
私はそういう風潮に凄く疑問を感じるんですよね。前に誰かがやっていても面白ければ別にいいじゃないかと。新しさが持つ良さも当然あると思うんですが、それが稚拙だったり駄目だったりすればマイナスになってしまう。
__ 
劇団としてはどうなんでしょうね。
長尾 
新しさを求める観客が多いから、その要望に答えるというのもあるでしょうね。その逆かもしれませんけど。

劇団ギリギリエリンギ
主宰・池田智哉による一人劇団。2004年結成。

タグ: 愛される劇団づくり 「ベタ」の価値


vol.129 長尾 かおる

フリー・その他。

2009/春
この人のインタビューページへ
長尾