マイムとの出会いと、母性について

__ 
黒木さんがマイムを始めた経緯を教えてください。
黒木 
昔から結構、親に連れられて劇場に行ってたんですよ。学校にまわってくるような劇団が多かったんですけど、その流れで高校生の時に芝居のショーケースイベントの手伝いをする事になって。そこで、今は師であるいいむろなおきさんも参加されていて。その時に純粋に感動したんですね。
__ 
おお。
黒木 
それまでに色々見ていたから、身構えていたんですけど、いいむろさんの表現は、何もない舞台なのにとても現実味があって。それがマイムとの出会いでした。そこから別に何かを始めようというのは無かったんですけど。高校の頃は、何故かミュージカルにはまりはじめて。で、音大を目指し始めて。でも高3で目指し始めたものだから中々すぐには受かるはずもなくて、浪人をしたんです。二浪しても受からなくて、三年目に、受験勉強以外もしよう、劇場でバイトしたい、と芸術創造館のホームページを検索してみたら、ど真ん中にいいむろさんの写真と「人は3ヶ月でマイムの舞台にたてるのか?」とありまして。それに応募したのが、マイムをし始めたキッカケですね。今も、日曜日にいいむろさんが開かれているラボセカンドに参加しています。マイムを本格的に学び初めて八年目ですね。
__ 
なるほど。黒木さんは女性マイマーですが、マイムにおける女性男性の違いってありますか?
黒木 
見ている側からの印象の違いはもちろんあると思います。やっぱりわたしはいいむろさんからの影響を大いに受けているので、表現の中に男性的なものはあるかもしれません。でも、作風に関しては女性的だと思います。演劇と同じで、女性作家がいるように。
__ 
黒木さんにとっての女性らしさって?
黒木 
最近、面白いなあと思っているのは母性です。何というか、母にしか出せない何か得体のしれないもの。他にない感じがしていて。
__ 
黒木 
あと、男性と作品を作る時に、母性を求められる事があって。ウソやんと思った事はあります。
__ 
母性を得たいと思いますか?
黒木 
得たいですね。まだ無理な気はしますが。
__ 
あなたの身体はいま、どんな状況にありますか?
黒木 
いま、ですか。今わたし自身は、ちょっと変やけど外から見ています。今、自分自身がどういう視線を送っているかとかどんな体勢にあるのか、とか。外から見ている感覚ですね。子供の頃からそういう見方をしていたんですが、マイムをしてからそういう傾向が強くなりましたね。
__ 
凄いですね。客観的、なんですね。自分には難しい。
黒木 
だから、友達と喋っていても、話題が自分自身の事なのに取りこぼす事もあって。「自分の事やで」って言われたり。ハッと思って自分に戻る事がありますね。

タグ: 親に連れられて劇場 舞台に立つまでの葛藤 瑞々しい感覚 イベントの立ち上げ 母性性 自分の演技を客観的に見る


ママのなまえ

たみお 
自分の時間がコントロール出来ないし、思考回路を全部子供に取られる。でも、可愛いという気持ちが抑えられなくて、これが多分愛なんだろうなと思うんです。何かを作りたいという葛藤は残っていました。でも、ひとりになれない。
___ 
今は折り合いが付いている?
たみお 
今はそうですね。旦那さんには申し訳ないと思いながらも。長女には、「今のママの方が断然いい」と言われるんです。
___ 
ご長女はおいくつになったんですか。
たみお 
四歳です。
___ 
小さいのにそんな分別が!
たみお 
うちの子は凄いんですよ。ってどの親も言うんでしょうけど。「今のママの方がいいよ。でも『たみお』じゃないよね、たみおって変な名前はやめた方がいいと思う」ってすごい真剣に言われました。
___ 
今回は・・・?
たみお 
(笑う)名前を変えようと思ったんですけど、一応たみおにしていました。この間のリーディング公演の時も、私が「たみお」と呼ばれる度に「違う!」って凄い言われました。

タグ: 母になる 舞台に立つまでの葛藤


新しい絶望

__ 
今回の「あくまのとなり。」見所を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
葛原 
個人的には、ハタチの坂本アンディの作品なんじゃないかなと思います。今しか書けない葛藤が書かれている戯曲。今までの作品は、坂本さんの感性で書かれた、自己紹介的な作品だと思うんですよ。今回は彼の深層が書かれている。
__ 
坂本さんが本心を打ち明けている?
葛原 
そうですね。いつもはキチガイ役がいっぱい出てくるじゃないですか。そのキチガイって、基本的には超人的なキチガイなんですよ。前回僕がやらせてもらった役は超然としていて、僕自身、弱くて不安定な人間なので演じるのが難しかったんです。でも、今回はある種の純粋さからくる弱さが全員描かれているので。細井美保さんですら、弱い部分があるんですよ。
__ 
あ、そうなんですか。それは驚きました。
葛原 
細井さんは、今回大分演技の質が違うんです。そこは個人的にはとても楽しみです。
__ 
坂本さん、なぜ今回はそんな書き方になったんでしょうね。
葛原 
もしかしたら、前回公演の「おしゃれな炎上」が、第二回公演の「啓蒙の果て、船降りる」とプロットが似ていたんです。台本を読んだ時、これはリベンジなのかなと思ったんです。
__ 
というと?
葛原 
多分なんですけど、第二回公演の「啓蒙の果て、船降りる」から、前回公演の「おしゃれな炎上」の一連の流れで、アンディはずっと一つのテーマにリベンジし続けて来たんじゃないかと思っています。そしてそのリベンジは、前回でようやく終わったんじゃないかと思います。
__ 
「オシャレな炎上」では、つまり世界が終わった後に何が待ち受けているのかを見たかったんですね。そこを経ての、前回までの公演を準備としての「あくまのとなり。」は、個人の絶望に迫ろうとしている。
がっかりアバター「おしゃれな炎上」
公演時期:2013/12/27~12/29。会場:ウイングフィールド。

タグ: 出来ない!難しい!演技 舞台に立つまでの葛藤 炎上、がっかりアバター いつかリベンジしたい


花のように過激に生きる

__ 
前回公演「おしゃれな炎上」での、目玉になり果てた弟を食べて踏みつぶす演技が良かったです。あのシーンがあったから、全体の印象が引き締められたと思うんです。
夢子 
ありがとうございます。アンディさんが生んでくれた役を精一杯やって生きて死にたいですね。アンディさんの書いた台詞って、嘘っぽくなく心から口に出せるんです。その人物として物語の中で生きていられるんですよ。私なんてただの24・女・フリーターで、何もかもうまく行ってないのに、でもそんな役の役者でいると、すごく楽になれるんです。
__ 
嘘をつきたくない。アンディさんのセリフは、自然に出せる気がする。
夢子 
上演時間2時間の夢の間、生きてるという感じを得たいです。「俺ライドオン天使」の時、お客さんの感想ツイートの中に「生きるってこんなに過激だったのか」という表現があって。
__ 
おお・・・。
夢子 
普通に生きている事が既にドラマなんだ、って思って。私、これまで出演した3作品全部で「幸せになりたい」ってセリフを喋ってるんですよ。お金とか安定した生活とかそういう意味じゃなくて。
__ 
夢子さんの演じた人物は全員追い詰められた人生だったと思います。解放されたい、という事だったのかな。
夢子 
全員、それぞれにエグい生き方をしていて。今回の作品は痛みとか愛とか葛藤を描いています。目を逸らさずに幸せを見つめています。ひどい事をする人物にも背景や環境や抱えている痛みがあって、その痛みや負い目がお客さんの中にもあったりしたら、どこか肩の力が抜けると思うんです。そういう所が、がっかりアバターにしかない魅力なんじゃないかと思います。
__ 
がっかりアバターは今まで地獄を描いてきたと思うんですよ。「誰の心の中にも地獄がある」、これは闇金ウシジマくんの評論の一つなんですけど、何故地獄絵図を見ると心が楽になるのか。もしかしたら地獄という情景に心が行く事で、抑圧から解放されるんですね。それが魅力と言えるでしょうね。
がっかりアバター「おしゃれな炎上」
公演時期:2013/12/27~12/29。会場:ウイングフィールド。

タグ: 観客に血を流してもらいたい 舞台に立つまでの葛藤 背景が浮かびあがる 炎上、がっかりアバター 優しい嘘


「くっ」

九鬼 
最初に演出をした時、お芝居の中で、女の子に性的な意味で負荷の掛かる主張をさせたんですね。学級会という設定でその子に辱めを受けさせたんです。その子以外はドン引きしている状況で。で、その子を結果的に責めることになってしまう役まわりの女優がですね、「くっ」ってその子から目を反らしたんです。みてられない、みたいな顔をして。私は、それは違うと思って。信じられないものを見る目でその子を見なさい、と指導しました。直後の返し稽古で、見られた方の子が泣き出して。それが凄く楽しくて、恥ずかしい台詞を言わせたことだけじゃなくて、彼女が周りの視線によって惨めになって泣かせることができて嬉しかった。後で本人に聞いたら、惨めで仕方がなかったって。
__ 
すばらしい。
九鬼 
そういう出来事が嬉しかったですね。後輩の女の子を泣かせて、ひどいんですけど。
__ 
お芝居の稽古というか、人間性に直近したというのが大きな成果なんでしょうね。
九鬼 
そういうのをもっとやっていきたいなあと。役者が、役者として深く潜ってくれるのは、わかっていて。その結果、惨めな子が可哀想で、「くっ」とやろうと思って、稽古で見せてくる。それに、違和感を感じて、この違和感って何だろう、むしろ逆に視線を逸らさず、見た方がいいんじゃないか。結果惨めさがアップする。なんかそう言う風に作っていけたら。そうした葛藤の全てが最後の最後に決着を見て、ストレスが解放されるというのがいいですね。でもいま努力クラブで全然別の価値観を見させられているので・・・正解っていっぱいあるんでしょうね。価値観は一つだけってわけでもないですから。

タグ: 舞台に立つまでの葛藤 「く」「くっ」 見られている事を意識する


引力

__ 
演劇がそんなに面白かった?
片桐 
面白かったですね。周りには宇宙の研究と全然違うのにねと言われるんですが。今でも宇宙の研究には興味があります。何がどうなっているのか知りたかったんですよ、色んな事を。でも、同じ事を、演劇を通して知りたいんですね。
__ 
片桐さんが知りたい事って、何なんですか?
片桐 
星と星の間の引力があって、万有引力があって。その驚異的な、どういう事なんだろうと思うんですよね。何だろう、と疑問を感じるんですよね。自分や他の人たちがここにいるという事自体、何だろって。人が存在する事の意味が分からないんなら、そもそも何もわからないなと。宇宙の研究はそれを知る手がかりになるんじゃないかと思っていたんですが、それを始めると途方もないんじゃないか。でも、演劇で自分が舞台に立ったら掴めるんじゃないかと。理論的に一つ一つ突き詰めていくよりも、自分には合っているんじゃないかと思ったです。
__ 
実践を選んだという事でしょうか。
片桐 
多分そうだと思います。演劇に出会って、その可能性を発見したのかもしれません。
__ 
片桐さんにとって、演劇をやることは知りたい事に迫る行動なんですね。

タグ: 客席と舞台の共犯関係 舞台に立つまでの葛藤


vol.288 片桐 慎和子

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
片桐

私のネアカが生かせるような

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
榊  
いま結構、キャピキャピして生きてるので。それは残しつつ、ちょっとは大人の魅力も備えたいなと思います(笑う)。演技の幅を広げていろんな舞台に立ちたいという気持ちはあまりなくて。それよりも、私のネアカが生かせるような元気な演技をもっともっとたくさんの方に見ていただいて、たくさんの方に元気になってもらいたいです。
__ 
私としてはなんとしても生き延びてもらいたいですね。
榊  
(笑う)嬉しいです。生き延びます。

タグ: 舞台に立つまでの葛藤


vol.283 榊 菜津美

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
榊

分解出来ない感情

福原 
今日は散々、妙な事を言って来ましたが・・・演劇をやっているような奴らの、まるで夢みたいなお話を舞台上でやった時に、現実を生きているお客さんには戯言としてしか届かないんじゃないかなとも思っているんです。
__ 
現実人の方が、現実を描ける。そういう事はありかもしれませんね。
福原 
現実を現実として生きている人の方が、そのまま現実味を引き受ける事が出来るだろうし。僕ら演劇人は現実を引きずれないという点で、真実を取りこぼす事もあるかもしれません。そういう葛藤は、あった方が良いのかなと。
__ 
演技そのものと、演劇活動そのものに対して批評を加え続けるというのは凄く正常というか。良いと思います。そして、昼の勤め人は、たぶん、夢を見に来ているというのはあると思いますけどね。
福原 
なるほど。とはいえ、演劇を見に来ているような演劇人に言葉が届くのは当然で(同じような目線ですから)。ちょっと壁を隔てた、普通の人たちには、難しいのかなという予感があります。
__ 
そうした違い関係なく、言葉が届いて、共有出来たらいいんですけどね。情報化が進んで、扇動が難しくなりましたからね。
福原 
映画館でバイトしていたときに、言葉は悪いですけどヤンキーのカップルが「あの映画ヤバかった」とか言っているんですよ。僕は、そういう、一生交わらないかもしれない人たちに向って届けたい。振り向かせたいと思っている。そこも最近、考えています。
__ 
何を届けたいのでしょうか?
福原 
・・・。何と言ったらいいのかな。でも、演劇を見たときに抱く、自分でも知らないような、言葉で分解出来ない感情・感覚かもしれません。もしかしたら、映画館では得られない圧とか。そういうものを渡したいんだと思います。

タグ: 舞台に立つまでの葛藤 演劇人同士の繋がり SeizeTheDay 演劇人が社会において果たすべき役割


人間が見れる

__ 
では、稲森さんは弱男のどういう所が魅力だと思われますか?
稲森 
人間。
__ 
おお。
稲森 
人間が見れる所だと思います。人間像という意味ではなくて。私にとって弱男の舞台は、演じる場所というよりは、現実の地続きなんです。
__ 
地続き。
稲森 
私と向井さんは割と長いことやってるんですね。その二人の感じって、私達にしかたぶん出せないんですよ。舞台上にまで二人の関係性が延長している、という事ではなくて。阿吽の呼吸でもないんですけど、ノリですかね。
__ 
ノリが舞台に持ち込まれている?
稲森 
そうですね。関係性とか言っちゃうと、具体的になってしまうので。
__ 
分かる気がします。クセというか、セッションというか。
稲森 
そうですね。音楽みたいな。
__ 
触れ合いみたいな・・・つまり、関係性みたいな高レベルな層じゃなくて、もっと低レベルな、もっと深い層での接触があるんですね。
稲森 
そうですね。頭で考えたコミュニケーションじゃないんですね。
__ 
そういう関係を舞台で見て、我々自身の、リアルタイムな実生活を却って思い出すという事なのかな。ふれあいの記憶が呼び出されるような。だから、役者が不器用だというのは必要な条件なのかもしれませんね。

タグ: 舞台に立つまでの葛藤 器用さ・不器用さ 内輪ウケの・・・ 地続き 劇団力 関係性が作品に結実する


演劇人

門脇
どうでしたか、観てて。
__
観てて。うーん。ボブだけ観て言うんですが。感動を共有したという意味で感動しました。ええ。全然不満とかはないですよ。
門脇
ええ。
__
いや、まあ、それで食っていけるのか系の話になると、うーんってなっちゃいますね。正直な所、観客としては。どうでも良いというわけではないんですが。「みんなボブ」みたいな作品がこの世に溢れていればそれで文句なんかないです。
門脇
ぶっちゃけ、僕もそう。
__
でも、そういう演劇人の不安ってのはつきまとうものですよね。
門脇
いや。何かね。何だろう。ニットキャップで感じてるのは、ニットってもともとどこを目指してるのか分からないところがあって。でもまあ、プロになるという原則はもともとあると思うんで。これはこの前蓮行さんと話していて思ったんだけど、衛星は小劇場の形を変えようとしてやっていこうとしていて、で自分達で色々企画してやっていってるわけじゃないですか。ニットもそういうことはやっているんだけども、でも本質的にそういう事がやりたい集団ではないなと。で、割と上手くいってる演劇人なんかはTVとかそういう世界に進んで活躍する道もあって。そこがそれぞれ違うなあと。
__
集団の経営の立て方ってそれぞれですからね。
門脇
で、その前の段階では色々不安とか葛藤もあったりして。具体的に叶わない夢とか。でもニットはある程度の段階に来てるから、まあ道があるわけで。
__
そうですね。
門脇
僕はどっちかっていうと、自分達で事業をやっていくのが好きなタイプなんだけれども。

タグ: 舞台に立つまでの葛藤 演劇人同士の繋がり