無は白い顔をしている

__ 
その15周年記念シリーズ2作を両方とも拝見しました。どちらも應典院での上演でしたが、そういえば全て暗幕を吊るのではなく、白幕でしたよね。そういうところの印象が、何故か強くて。全体に、その独特な味付けをしているような気がしたんですよね。
戒田 
ありがとうございます。暗幕ってね、演劇の先人達の偉大な発明やと思うんですよ。あれは「何も無い」という表現なんです。僕たちはそれを借用してる。歴史上初めて暗幕を見たお客さんは「何やあの黒い布?」と思ったんじゃないかと思うんです。
__ 
ああ、そういえばそんな気がしてきました。
戒田 
一方、應典院はベースが白いんです。だから、應典院で「何も無い」のは白色なんじゃないかと思うんですよね。
__ 
應典院での無は白色をしているという事ですね。とても暗示的な観点だと思います。それは「ツキノウタの時に凄く生きたと思うんですよね。冒頭のシーン、音響照明と共にカラフルな幕が捲れ上がっていき、一面が白色になる仕掛けがありました。非常に印象的で見事でした。色とりどりの世界が一瞬でめくれ上がり、白い無になってしまう。
満月動物園第弐拾参夜『ツキノウタ』
公演時期:2015/3/6~3/8。会場:シアトリカル應典院。

タグ: 外の世界と繋がる 一瞬を切り取る 印象に残るシーンを作りたい 世界 会場を使いこなす


庭のない時代に

__ 
庭の魅力について、少し考えていたのですが・・・庭とは、住宅の設備でありながら同時に外部と接しているんですよね。自然と繋がっている。しかしあくまで管理は人の手で行われ、人と自然の間で揺れ動いている。これはもう、自然を加工する事によって地球を支配してきた人類にとっては、その生存戦略をなぞるような趣味と言えるのかもしれない。逆説的に。
ボブ 
そう、趣味なんです。ただ、実のところ庭って現代では中々見かけ無いんですよね。世の中にたくさんあるようで、それほどでもない。ガーデン用品というのはあるんですが、実際に使った事のある人は多くないと思うんですよ。そういう非日常の空間を、なんとか絞り出せないかなと。THE ROB CARLTONの舞台ではいつも、そういう事を思っていますね。
__ 
庭という、普遍的だが非日常の空間で。

タグ: 外の世界と繋がる


明日、出会うその日までには

__ 
これから、表現を始められる人たちに何か一言。
衣笠 
俳優って、自分が役に入り込んで演技をする分、それを見る人に対して嘘を付いているんですよね。その事を忘れないでほしいと思っています。「おれは俳優だぞ」って偉そうにするんじゃなくて、俳優自身は謙虚にいなくちゃいけないんじゃないかなと思います。自分が仕事をしている上で常に嘘を付いているという自覚を常に持っていたら、楽しんで嘘を付いていいと思うんです。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
衣笠 
やっぱり大学と違って、ものすごい厳しい世界に飛び込もうとしているんですよね。そんなにすぐには売れないですし。1年、5年、もしかしたら10年と物凄い貧乏な時期になると思って。どれだけチャンスを取りに行けるかと思っています。待ってても仕事は来ないので、自分から攻めていかないといけないので。
__ 
そうですね。
衣笠 
大学だったら3・4回になったら自分で監督が出来るしキャスティングもされるんですが、そんなに甘い世界ではないので。大学に来た頃の「この映画に出たる!」っていう勢いがあったんですが、そういう初心を思い出して。でも焦りすぎず攻めて行けたらいいなと思っています。
__ 
ありがとうございます。これからも、関係性を大事にしていってください。
衣笠 
そうですね。向こうの事務所の方にお会いした時も「この世界は出会いが全て」って仰られて。どれだけの人に出会って、どれだけの人に気に入ってもらえるかと。
__ 
リアルな話、「気に入って下さい!」って攻めて来られたら引きますので、遊びというか空白というか、そういう余裕が結構重要だと・・・何でもそうなんですけどね。

タグ: 色んなものを吸収 オーディション キャスティングについて 外の世界と繋がる いつか一緒に


さよならのための怪獣人形劇『パフ』

__ 
劇団しようよでは今年、『パフ』の再演がありましたね。東京、京都でツアー上演でした。その中の西村さんの演技で一番印象的だったのが、怪獣の鳴き声がですね、たまんない可愛さでしたね。「パフー」とかって。
西村 
ありがとうございます。良かったです。あれは何でやる事になったのかな、確か「おもちゃ箱をひっくり返したみたいな作品にしたい」と言われたからかな。内部でも評判が良くて、着信ボイスに出来たらいいねみたいな話になりました。
__ 
素晴らしい。待っています。ご自身ではどんな経験でしたか。
西村 
初演から数えて3回の公演をやってきていて、これだけ長い時間を共にする作品は他になかったんです。作品が変わっていく流れが面白かったというのもあります。作家は苦しんでいて、でもその結果がきちんと出たというのを目の当たりに出来て。嬉しかったです。
__ 
『パフ』は構成がとても面白かったですね。一つの楽曲のような戯曲でした。妄想の世界に逃げてしまった少年が現実の中に戻ってきてしまって、もう一度妄想の世界に旅立って、またもう一度現実と向き直すという。その構成自体が非常に美しくて、まとまっていました。
西村 
ありがとうございます。東京で色んな方に見て頂いて、構成に関するご感想も頂いて。思うのは、やっぱり別の地域の方に見て頂くのはすごく重要なんだなと。
__ 
というと。
西村 
私は元々九州の生まれなんですけど、京都で作った作品を東京に見せに行くと、京都よりもさらに広く、色んな価値観の人と触れ合う事になるんですよ。俳優としても成長出来るし、人生が広がっていくような気がします。
__ 
地方に行くって確かに大事ですよね。全然違う価値観の人に捉え直してもらう。というか、そうじゃなければ先入観がどうしても入ってきてしまうのかもしれない。
西村 
『パフ』では、描いていることのひとつに「災害」があるんですけど、京都と東京の受け止め方の違いはありますね。
__ 
そうですね、かなりバックグラウンドの違う人達ではありますからね。
西村 
はい。面白い事だと思うんです。また色んな作品を、違う土地に持っていけたらと思います。
さよならのための怪獣人形劇『パフ』再演ツアー
公演時期:2014/8/15~18(東京)、2014/9/5~7(京都)。会場:王子小劇場(東京)、KAIKA(京都)。

タグ: 自分を変えた、あの舞台 外の世界と繋がる 遠征公演 王子小劇場 再演の持つ可能性について 人形劇にまつわる話題 妄想


『思っている事をちゃんと言う。そして、自分が今どう思っているのかを確認してあげる』

楠  
取り繕うというのは別に二重人格だとかそういう事じゃなくて。社会での生きやすさのためにやっていることです。取り繕っている私が、ある程度批判されたり嫌われても、別にその私はいいや、嫌われたのはコーティングしてる私だからと思えます。武装しているんですね。本当の私が嫌われるのはとても怖いです。それに本当の私は基本的に嫌な事を考えているので、それを表にだすと無駄な争いを生みます。
__ 
なるほど。
楠  
だから、それをやめようと思いました。難しいですね。思っている事を言う方がよっぽど難しい。
__ 
そうですね。
楠  
次に出演する時間堂さんはマイズナーメソッドを実践されていて、その中のひとつ、リピテーションをWSオーディションでやったんですが、それが私の中ではすごい体験だったんです。今日までも、一日もそのことを思い出さない日はないくらいです。
__ 
というと?
楠  
一対一で向かい合って、自分の目に見えている事、自分が感じている事、相手が思っていると思う事を口に出して、繰り返すんです。
__ 
相手の言葉を復唱するんですね。
楠  
そうでもいいし、自分の言葉を復唱してもいいです。やめたくなったらやめてもいい。そのルールだけ説明されて「さあやりましょう」って始まりました。私、その相手の人とめっちゃやりにくかったんです。正直ハズレを引いたとすら思いました。でも、そんな事口に出せないじゃないですか。
__ 
普通はね。
楠  
モヤモヤしていたら黒澤さんが来てくれていて、深呼吸して、手に力が入っているその手を言葉にしてみてと言われました。それが衝撃でした。「やりにくい。やりたくない」って初めて口に出しました。それから私は、いかに自分が思っている事を口にしていなかったかに気がつきました。ちゃんといろんなこと考えているはずなのに口元に高性能のフィルターがかかっていて、選別された言葉しか出していなかったんですね。
__ 
なるほど。でもそれは誰でもそうですけどね。
楠  
そう、誰でもそうなんですけど。私にはそれがすごくショックだったんです。私はこんなに取り繕っていたんだと。自分の汚さも知りました。ワークの後に感想を言い合う時間があって、よれよれでそのことを伝えたら、黒澤さんは「さっきまでの笑顔のあなたより、それを言う今のあなたの方が魅力的だよ」と言ってくれました。私は特に高校生くらいまでが生きにくくて、大人になるにつれて自分を上手に取り繕えるようになり、ある程度の生きやすさをどんどん獲得していってたんです。でもこの一言で、それを辞めようと思いました。『思っている事をちゃんと言う。そして、自分が今どう思っているのかを確認してあげる』。
__ 
それが、「暗闇から手をのばせ!」と、時間堂のオーディションで得た事なんですね。
楠  
とても幸せなことなのですが、私はいま求めている世界に立てている事にある程度充足しています。twitterに書く事も減りました。私はtwitterが好きで、これまでは実際に口にできないけど考えていることはここに書いていたんです。少しだけ自分のことわかってほしいって願いをこめて、やってたんですけど。それはもう必要ないんですよ。
__ 
ぶっちゃけましたね。
楠  
でも、まだまだだと思います。思った事を言えないこともあるし、やりたい事だってあります。もっと自分に「今はどう?」って聞いて、確認してあげたいです。
時間堂
時間堂は、演劇をつくる団体です。1997年から活動をはじめて、東京を本拠地としています。代表者は黒澤世莉です。(公式サイトより)

タグ: 俳優の「素」を生かす 外の世界と繋がる もう、辞めたい


vol.381 楠 海緒

フリー・その他。

2014/春
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楠

「どうしてほしい?」

__ 
本番で好きな瞬間はどんな時ですか。
畑中 
楽になれた時。知らん内にやれていた時ですね。カナヅチ女の時、砂場のシーンがあったんですが、ふわふわした抽象的な空間から砂の上に行くシーンがあるんですけど、本当にそう思えた瞬間があったんです。あ、いま地面が砂になった、って。気持ち良かったですね。それは常にやれてないといけないんですけど、きっと。
__ 
そうですね。
畑中 
それと、お客さんがなってほしい状態になった時。息を飲んで欲しい場面でそうなった、と実感したときに「よっしゃ!わーい」ってなります。
__ 
それが分かる。変化が感じ取れる?
畑中 
はい、でも後付けでそう感じているだけかもしれない。ですが、無意識に楽に演技が出来ている回ほどお客さんの呼吸が分かるような・・・お客さんがどうしてほしいのかが分かるような。その精度がもっと上げられたらいいなと思います。
__ 
集中出来たとき、ですね。
畑中 
そうですね。俳優の立場から言うと、見せたいものって役者の内部にあるというよりは外にあるんだろうなって思っています。観客が見たいものを、役者が発するんじゃなくて、役者も見る、んじゃないかなと思っていて。イメージを共有するためには外側のものをお互いが見る、みたいな・・・言語にすると哲学的で宗教的なんですけど(笑う)
__ 
ワクワクしながら、ね。役者がずっと一つの方向に向かっていったら、観客席全体が一つの目になって、実はその目を持つのがいま現在の時代の社会その人で、舞台がどんどん客席と離れながらも劇場ごと別の世界に飛んでいってみたいな状況になったら凄いですよね。
畑中 
どこの劇団のどこの役者さんでも、ずっと、安定したものを提供しようと目指していると思うんですよ。でも、残念ながら偶然にしか起こらないものもあって。たまたま良かった、みたいな。それを意識的に出来たらいいなと思います。
悪い芝居vol.13『カナヅチ女、夜泳ぐ』
公演時期:2012/06/13~20(大阪)、2012/07/10~16(東京)。会場:in→dependent theatre 2nd(大阪)、王子小劇場(東京)。

タグ: 役者の認識(クオリア) 今の作品に集中する 外の世界と繋がる 王子小劇場


これから

__ 
今後、一緒に作品を作りたい人や劇団はありますか?
山野 
予定として既に決まっているんですが、自分の所属する背泳ぎの亀の公演が8月にあって、それ以降は10月にドキドキぼーいずに出演致します。12月にはkatacottsというユニットの戸谷彩さんの演出で菅原陽樹さんという方と2人芝居を造ります。それからこれは完全に僕の願望で大変僭越なお話なんですが、許されるなら悪い芝居の山崎彬さんと御一緒してみたいです。すれ違った瞬間になぜか身震いして、「なんて恐ろしい人なんだ」と思ってしまって。WS行った時も、どこか別の世界に行っているような気がしてしまって。
__ 
凄いですよね、あの人。さて、山野さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
山野 
絶対に辞めないでおきたいです。演劇で食べるってもの凄い難しいと思うんですけどね、このまま定職に就かず、演劇を続けたら後戻りできないぞとたくさんの人から言われるし。でも、辞めてしまうと何も残らないんです。とにかく辞めない事。
__ 
どんな形でもいいから続けていってほしいですね。
山野 
ありがとうございます。それと、俳優以外の分野として劇作・演出・コンテンポラリーダンスと、今年から来年に掛けては手あたり次第、やれる事を思いつく限りやりたいです。勉強する欲が高まっている感じですね。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 外の世界と繋がる 「悪い芝居」の存在


vol.364 山野 博生

フリー・その他。

2014/春
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山野

ウソのない[2]

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
松下 
ずっと、その芝居の世界が広がり続けるような芝居がしたいです。上演時間は2時間だけだけど、その前もあとも世界があって、そこをただ切り取っただけみたいな芝居がしたいです。
__ 
世界がずっと残っていく・・・?お客さんの心に、そしてよくわからないけれどこの宇宙に?
松下 
はい、個人的にですけど。その為には、存在にウソがあったらダメだなあと。架空の物だから、ウソがないようにしたいですね。お客さんに対しては、ピエロみたいな存在でいたいです。世界中の最も底辺でありたい。尊敬されたいとかではなく、「こんな人達でも存在しているんだから、生きよう」って思ってほしいな、って。2年後、全然違う事を言ってるかもしれませんけど。

タグ: 外の世界と繋がる 宇宙の話 一瞬を切り取る いつか、こんな演技が出来たら 世界 X年後のあなた


突然さ

__ 
恋愛についてもうちょっと。去年拝見した「~飛来・着陸・オードブル~」で、ダンスホールで社交ダンスを踊るシークエンスがありました。ダンスが終わってから、全員で集合写真を撮るまでちょっとフリーになる時間があって、あるダンサーの方がすごくナチュラルな流れで別のダンサーとキスしてたんですよ。それはもう自然に。あれは確かに、恋愛の持つ飛翔力を象徴するかのうような・・・
北尾 
(笑う)
__ 
びっくりしたんです。盛り上がって、演出の上で演技としてキスするならともかく、あんまり作品そのものとは関係のない場面でキスが行われる。
北尾 
あの作品は、ざっくばらんに色々なダンスをオードブルの盛り合わせみたいに提示するのを目的にしていたんです。あのシーンに関してはギャグ色を強めたいと、ここでチークを踊り始めたら面白いなあと、さらに歌い出したらいいんじゃないかと。そういうムードを作って、その後にクールな群舞に移行しようと思っていました。キスをしだしたのは福原冠さんです。「練習の時にキスをしたらしい」という噂がスタッフから流れ、確認したところ「いやあ、ちょっと真剣にやらないといけないと思って・・・東京版を超えられないと思って。した」みんな触発されて、瞬間瞬間の積み重ねを大事にする作品だったのに、ちょっと意識がそれたのか。そこからみんなし始めたという事です。僕は黙認しました。
__ 
あのキスは、本筋から離れているからこそ、価値があるのかもしれない。正直に言うと、悔しさを感じました。あの場所にいれたらなあ、と久々に思いましたね。あっさりともの凄い事が実現する場所。そこに着地したダンサーたちがはっきりと存在している。

タグ: 外の世界と繋がる 恋愛至上主義


主体が動かされる時

__ 
「TEA×HOUSE」の時、町家の一部屋で上演されていましたね。出演者はもちろん、観客席がお互いの顔が見える状態でした。「ハシ×ワタシ」も挟み舞台でしたし。そうした距離感を意識されているのでしょうか?
山口 
観客席と舞台を出来るだけ分けないやり方が好きなんです。高校卒業後、演劇を学ぶためにイギリスに留学してたくさんの舞台を観に行っていたんですが、気に入った作品のほとんどは舞台と客席が分かれていない形式が多かったんですよ。観客が舞台と同じ高さで知覚し、体験する。私も、自分の作品を通してそのリミットを広げたいと思うようになりました。
__ 
舞台で起こっている事を体験する。
山口 
同じ空間で観劇するという事。それだけがやりたいわけじゃなんですけどね。変な形にすれば巻き込めるとは一概にいえないし。安易には言えないですけど、意識として、どういう形が合っているのかは考えますね。
__ 
では、山口さんは具体的にどんな面白さを大切にしたいと思いますか?
山口 
何かに動かされている人が、踊りでも演劇でも好きですね。表現する力よりも、キャッチする感度が高い演者がいる作品を作りたいです。
__ 
感度が高いとはどういうことでしょうか?
山口 
演者が表現する内容の完璧さを追求するのではなくて、どれだけ主体が外部のものによって大きく動かされるか、です。
__ 
外の世界というのは、何を指していますか?
山口 
例えば、「TEA×HOUSE」ではブリジットという他者の言葉を通訳して演じてもらいましたが、俳優が置かれているその状況、です。英語から日本語に通訳していくことによって、その俳優が元々の話者に浸食されていく。もちろん俳優は俳優のままで、ブリジット・スコットになってしまうという訳じゃない。影響されているという事(つまり演技ですね)を見せたかったんです。「私はブリジットなんだ」って言い聞かせるみたいなのじゃなくて、あくまで通訳として「私はブリジット・スコットです」と口から言った時に、感度が高ければなってしまう。知らぬ間に徐々になってしまった、そんな瞬間が見たいです。
__ 
主体が動かされる時。
山口 
主体が動かされてしまう時、を見たい。普段もそうじゃないですか。こうして喋っている時も動かされている訳であって。演技はその再構築だと思うんです。私はそれを極端にしてみようと思っているんですね。それを、出来れば面白く見せたいですね。
__ 
主体は主体としてあるけれども、それが何かによって反応する。
山口 
取り憑かれる、乗っ取られるというのに近いクオリティを目指しているのかもしれませんね。
__ 
それは何というか、私があまり触れて来なかった領域かもしれません。具体的にそれがどんな面白さを見せてくれるのか未知数なんです。でも、それがそれだと分かったらものすごく興奮させられると思う。突き動かされている主体の向こうに、大きな力を目にするから。
山口 
その通りだと思います。「動かされる主体」は、受動的に動かされるんじゃなくて、そこには必ず完璧な能動性が必要なんですよ。主体が反応して動かされる、その感度ですよね。どれだけそれに対してクリアに反応できるか。それは「この演技が面白い」という邪念ではなく、素直に反応するのが面白いんだと信じてやっていきたいですね。とても難しいんですが、反応する人間が面白いんだという信念です。そうした事象が起こっていて、観客に体験を与える。
__ 
形骸化からは最も遠くあってほしいですね。
山口 
そうですね。そうありたいです。どうしても、「これだ」と思った瞬間にそれでなくなってしまう。型を作って、それを突き進むという芸術もあるんですが、その瞬間に何かを失うんだと思う。

タグ: 外の世界と繋がる 難しくて、厳しい 会話劇研究 「目の前で起こっている」 反応し合う 観客との関係性 留学して表現を学ぶ 海外で出会ったハコ


BRDG vol.2『TEA×HOUSE』

__ 
「TEA×HOUSE」。物語というよりも、取材で得た資料を再構成して作品化しているという事ですが、そうした作品を作っているのはどのような理由があるのでしょうか。
山口 
まず、私は物語が作れないんですよ。自分からはどうしても出てこない。紡げないし、自分よりも大きなものが沢山あるとずっと前から思っていて。紡ぐよりはどう吸収するか、が私の表現だと考えています。舞台に出る時も、自分から表現するというよりも何かに動かされる事が多いですね。外の要素だったりとか、もちろん共演者、環境、お客さんにも動かされるのが好きなんです。受動的な・怠惰な態度ではなくて。作品を製作する時も、世界を解釈をして変換して、つまり通訳してそれを違う言語に出力する。そういう事に興味があります。私は別に作家じゃないと思っています。紡げないので。外と接する作品を作りたいと思っています。
__ 
個人が世界と接する作品。
山口 
個人と他者が、どう接するのか。いい悪いじゃなくて、そこを観察したいですね。
__ 
ありがとうございます。私は最近のテーマとして、情報は読み手の創造性を以って初めてその価値を成立させると思っています。だから、山口さんの仰っている事はそうした観客にはきっと歓迎されるかもしれません。しかし、観客という他者が、舞台上の世界を常に受け止めてくれる訳ではありませんよね。積極的になるかもしれないし、消極的になるかもしれない。むしろ、敵視してくるかもしれない。
山口 
そうなんです。他の人にも、それが美しいと思ってもらえる為の工夫をしないといけないんですよね。やっぱり、お客さんの感想が分かれるんですよ。「全く意味が分からなかった」と、「もの凄く面白かった」と。それは、どちらも当然返ってくる反応で。分からない=面白くないと見なすのは当然じゃないか、って私も思ってしまう時があるんです。だから、もっと作り手として、「これがキレイだよね」と紹介するだけのものじゃなくて、「何故そう思えるのか」が分かる。そんな、もっと面白く見てもらえる仕組みを考えださないといけないと感じています。
__ 
余談ですが・・・「TEA×HOUSE」で、非常にスリリングで面白いと思ったシーンがあります。スコーンが焼けるまでに、若干時間が余りましたよね。その時に舞台上で二人の出演者が暴れまわっているという場面がありました。時間稼ぎだと気付いた瞬間、ものすごく面白かったんですよ。物凄い可愛らしい時間でしたね。チャームポイントだったと思うんですよ。何か、お客さんに渡してあげたゆとりのある時間というか。
山口 
素敵に思って頂けるのは嬉しいですが、そこに甘んじる事無く(笑う)スコーンを焼く間の時間で作品を収めようと決めていたんですが、出演していたブリジットが「焼き時間を短くなんて出来ない」と言ってくれて。だからどうしても。辛かったお客さんもいたかもしれません。
BRDG vol.2『TEA×HOUSE』
公演時期:2013/4/26~28。会場:京都四条大宮滋野宅。

タグ: 色んなものを吸収 外の世界と繋がる わたしの得意分野 ユニークな作品あります 工夫する俳優 「目の前で起こっている」 受け入れる・受け入れられる 世界 その題材を通して描きたい 焦点を絞った作品づくり


正しく生きる

__ 
末山さんがいま演劇を続けているのはどういう理由があるのでしょうか。
末山 
何でしょうね・・・。漠然とした話なんですが、正しく生きたいという気持ちがあって。その正しく生きるという事が自分にとって何なのか?と言われると困るんですが。正しく生きる事を考え続ける為に演劇が必要だと思っています。
__ 
逆に、演劇というフレームでどのような事が見つかりましたか?
末山 
大事な話は面と向かってしないといけない、という事ですかね。それと、自分の身の回りは一つ一つ切り分けて考えないとおかしな事になるよな。という事。演劇を作る上で作品を突き詰めて考えるというのは切り分けるという事と凄く繋がってくると思います。
__ 
脚本を書きたいという動機はどこから始まっていますか?
末山 
前は個人的な恨みつらみの捌け口として書いていたんです。でも、その内に、世の中これじゃいけないだろうと思い始めてきて。人の心の持ちようから、もっと世の中が良くならないものかと。たくさんの人に見られる訳じゃないし、街頭演説する訳でもないんですが、手が届くちょっとの人に、思いが伝わって行ければと思います。

タグ: 外の世界と繋がる 生き方と世の中の為に動く 捌け口として書いていた


川に入る

__ 
その、自分自身に対する主導権を握るためにはどうすればいいんでしょうね。そのためにはある種の境界線を越えないと行けないかもしれない。生死の境だったり、訓練を重ねたり。私はそういう越境を「川に入る」と呼んだ事があります。
古藤 
なるほど。

タグ: 外の世界と繋がる


笑わせる奴が凄い。面白い奴が認められる

__ 
黒川さんが演劇を始めた経緯を伺いたいのですが。
黒川 
一番最初に舞台を好きになったのはイッセー尾形さんです。僕、中学高校と寮生活を送ってまして、その時代は外部とほぼ遮断されていたんです。その時にイッセー尾形さんの本を読んで、凄いなと。TVも全く無かったんですが、文字だけで。
__ 
それだけでも面白いと。
黒川 
映像すら見た事ないのに、この人面白いなと。その後、大学浪人時代に実家に戻ってきて、TVでダウンタウンを見て。もうそれで腹が捩れるぐらい、笑ったんですよ。泣きながら。気が狂うほど。同じコントをビデオで何回も何回も見て。妹が「気がおかしくなったのか」と心配するぐらい。大学入学後に学生劇団に入ったんですけど、やはり自分でやりたいことがやりたかったので、ベトナムを立ち上げました。
__ 
その笑い転げたというのが、強い体験だったんですね。
黒川 
強烈な体験でしたね。根底にあるのはそれですよ。そこから、とにかく笑いを取る事が好きで、それが僕の全てになりました。
__ 
そこから、笑いの作り手に。
黒川 
中学・高校時代で身についたベースもあったんだと思うんです。外と接点がないとやっぱり笑いだけが全てになるんですね。男子校の笑いだから下ネタか暴力しかないんですが、僕は、そこのお笑いも好きだったんですよ。
__ 
というと。
黒川 
笑わせる奴が凄い。面白い奴が認められるというね。他の中高生が経験していない、言えないことばかりでしたね。クソみたいな生活で・・・今みたいにお洒落なことなんて何一つないし、女子もいないからモテるとかないし。えげつない事ならあるけど。
__ 
笑いが絶対的な価値観だった?
黒川 
まあ、笑ったり笑わせたりが楽しかったですね。門限の時間後にどの窓から入ったら面白いかとか、デコピンを限界まで試したり、危険な事もありました。外からは何も持ち込み禁止だったので、身一つでしたね。将棋を紙で作る世界でしたから。そういう経験が今でも続いている部分はありますね。

タグ: 『モテ』 外の世界と繋がる 凶暴な役者


憧れ

__ 
宗岡ルリ一人芝居「撲滅ならず今日」。このタイトルの意味を教えて下さい。
宗岡 
いつも死のう死のうと思っているんですけど、死なないし死ねないじゃないですか。四十ぐらいには死ぬと思うんですけど、けど結局は九十まで生きてるんじゃないかなと。私の祖父がまさにその通りで、四十の時に子供を集めて「俺はもう死ぬからお前たち頑張れ」って言ってたのに93まで生きて(笑う)。いつも終わりたい終わりたいと思うのに、毎朝起きて友達と会って可愛いものを買ったり美味しいものを食べたりして、その繰り返しへの悔しさと、絶望じゃないですけど、そういう思いをタイトルに込めています。
__ 
その思いはいつからありましたか?
宗岡 
「何かになりたい」という憧れが強くて。この漫画の主人公たちみたいに。でも、なれないじゃないですか。その悔しさがあって。両親共に教職員で公務員で、朝起きて働いて、「何だかんだでいい家庭よね~」という中で育たせて頂いたんですけど(笑う)それに対する嫌な気持ちや、大分の田舎にいた時はずっと空を眺めていて焦燥感があって、それは今でも続いているんですね。中二病かもしれないけど。
__ 
焦燥感が今でも続いている。私は宗岡さんより11歳上なんですけど、確かにその頃は私も持っていたものかもしれない。宗岡さんのそれは、10年後、私みたいに消えてしまうんだろうか?
宗岡 
それが消えてしまうのも素敵な事かもしれません。この「バナナブレッドのプディング」の主人公のお姉ちゃんが妊娠しているんですけど、お姉ちゃんが夢で赤ちゃんに「お腹の中でさえこんなに孤独だのに、外の世界に出てきたらもっと孤独に決まってる。生まれてきたくない」って言うんです。でもお姉ちゃんが「まあ生まれてきてご覧なさいよ、最高に素晴らしい事が待っている」って。それは焦燥感を忘れた人の言葉で、大人になるという事だと思うんです。この作品はその素晴らしさも教えてくれたんですけど、私はいまはそうなれないと思う。

タグ: 子供についてのイシュー 外の世界と繋がる 孤独と演劇 泡のように消えない記憶 家出についてのイシュー X年後のあなた


vol.284 宗岡 ルリ

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
宗岡

だから僕は、みんな違うという前提に立ち続けたいのかもしれない。

藤原 
ただこういう生き方ってもはやカタギではない。世の中を引っかき回したいとは思うけど、できれば人に迷惑はかけずに生きたい・・・・・・。
__ 
私個人も、やはり迷惑を掛けている人は多かれ少なかれいるんですよ。きっと。婉曲的にでも、恩を返していきたいですね。
藤原 
朝、二日酔いの頭で、幾らかの後悔とともに例えば太宰治のことをぼんやり考えたりします。生まれてきてしまったことへの原罪のようなものってやっぱりあって。ただ、後ろめたさに溺れていくのも甘えだと思う。デカダンス気取りではいられないんです。もはや生きてしまっている以上、開き直りということでもなく、その「存在している」という事実を過不足なく受け止めたい。そうすると、どんな隣人と一緒に生きていくのか、ということは考えざるをえませんね。今は幸いにも一緒に仕事をしようと言ってくれる人もいるので、本当にありがたいです。たぶん他人から受けた恩は、一生かかっても返しきれない。そのぶん、若い子たちに何かプレゼントできれば、と思ってはいるんだけど・・・・・・。
__ 
藤原さんは、13歳から東京に移ったんですよね。
藤原 
中学進学と同時ですね。寮ではなくて、アパートで一人暮らししました。なんでそんなことしたんだろう・・・・・・。未だに謎なんですけど、たぶん高知というそれまでいた世界とか、家とかが、窮屈に感じられて、外の世界で勝負したいって思っちゃったんでしょう。でも想像してた以上にキツかったです。いきなり知らない土地に放り出されたようなものだし。自分で選んだことだけど、まだ子供ですからね・・・・・・。
__ 
ようやるわ、と思います。
藤原 
想像を絶する孤独でしたね。寂しいからテレビ付けっぱなしで寝たりとかしてたんですけど、途中で砂嵐になってむしろ怖いし眠りも浅いから、闇に耐えるしかない。同じ家に人がいるかどうかだけで全然違うんだと痛感しましたね。実際、空き巣に入られそうになったりとか、具体的な危険もあったし、ボロアパートだからヘンな虫とかもいたし、ほんとに夜が恐ろしかった。僕はいわゆる一般的な「反抗期」というものも経験してない。反抗する対象がいないわけだから。その頃からですかね、夜の徘徊癖が出てきたのって。待ってるのが怖いから、自分から夜に向かっていくしかなかったのかも。こう見えても結構不幸な人生を歩んできてるんですよ。それこそ京都にも心中しようと思って旅したことあるし(笑)。自分でもよくここまで死ななかったなと思います。「中学から一人暮らししてえらいね」とか同情されることはしょっちゅうでしたけど、いや誰にもこの孤独は共感出来ないでしょ?、と思ってた。だからよくあるホームドラマ的な家族観は苦手なんです。いや全然違うしって思う。「家族」なんて存在しない。「ある家族」が存在するだけだと思う。すべての体験は固有のものです。簡単に共感とか言われても困っちゃう。だから僕は、みんな違うという前提に立ち続けたいのかもしれない。

タグ: 外の世界と繋がる 出立前夜 孤独と演劇 演劇は勝ち負け?


行くべき時は行こうぜ!

藤原 
ここ数年、大事だと思っているのが「循環」という思想なんです。「金は天下の回りもの」という言葉があるけど、資本主義のシステムって、お金が循環しないと意味がないでしょう? それと、人が移動すること。移動によって、国境も含めたいろんな境界が揺らいでいく。僕は場が停滞しないように、循環するように、引っ掻き回すのが自分の役割だと思ってます。一種の道化ですよね。
__ 
というと。
藤原 
これは批判ではないので誤解しないで欲しいのですが、アカデミックな劇評家タイプだと、「研究」という側面がベースにあるから、どっちかと言うとどっしり構えた文章を書くことが多いと思うんです。
__ 
構えた批評。
藤原 
いやそれ自体は悪いことじゃないですよ。一時的な流行に左右されないで、きちっとした研究成果を積み重ねていくことで後の世に大きな貢献を果たすかもしれない。その仕事はおそらくは重要なものを含みます。ただ、僕はそういう堅実なタイプではない。むしろもっと戦略的に、現実世界の様々な価値の境界を撹乱したい。そこに命賭けてるんですよ。どこにも所属しない、というストレンジャーだからこそ見えてくるものがあると思うから。アウェイの感覚をキープするのは結構つらいんですけどね・・・・・・。例えば北九州の枝光という小さな町に行って、そこで見聞きしたことを人に話したり記事に書いたりする。そこにひっかかりを感じた人が実際に枝光に足を運んだりする。何かと出会う。循環が起こる。それらの予期せぬ出会いが生まれていく可能性は閉ざしたくないと思っているし、そういう循環を促すような回路というか抜け道をほうぼうに生み出していく。四次元殺法的な感じで(笑)。でもそれが「メディア」の役割だと思ってるし、時代の過渡期にはそういう道化的な人物もそれなりの役目を果たしうると思う。今は引きこもりのフリをしてますけどね。
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身軽さ、ですね。
藤原 
でも例えば「越境」っていうと聞こえはいいけど、失敗例もいろいろ見てきてはいるので、あんまり楽観視してないです。とはいえ、あの手この手で動いていく。偶然の出会いもできるだけ受け入れる。まだ出会っていない他者の存在を常に感じる。これはもう自分の手の範囲の及ばない、アンコントローラブルな領域です。ごく素朴に言えば、世界は未知の驚異に満ちているということです。これは雑誌「エクス・ポ」などを通してここ数年お仕事させていただいてきた批評家の佐々木敦さんの思想の影響もやはり受けているのかもしれません。というか僕の中にもともとあったそういう部分を佐々木さんに引き摺り出された気はしています。ただ、未知の世界を目の前にした時に、そこでの道化的振る舞いに関して、自分自身、正体がよく分からなくなってくる。きっといろんな誤解も受けてると思うけど、長い目で見たら自分の行動はそれなりに一貫しているような気もしています。表に見せていることは氷山の一角にすぎなくて、水面下で動いていることのほうがはるかに多いんですけど。twitterもある種の煙幕ですよね。忍術みたいなものです(笑)。
__ 
大切なのは、対話という事でしょうか。
藤原 
対話もそのひとつ、ですね。日本は表向きは単一民族国家だと未だに信じられていて、「私もあなたも同じだよね」という同調を迫る文化。それだと今後の世界に対応していくのは無理なんじゃないですか? すぐ傍にいる隣人が、自分とまったく異なるバックボーンを持った他者かもしれない、という前提で今後はコミュニケーションしていかないと、様々なイシューに対応できないと思う。
__ 
なるほど。
藤原 
まあ、「和を尊ぶ」とか「阿吽の呼吸」みたいな日本式の文化の魅力もあるとは思ってます。だけど異なる他者との交渉力はきっと必要になる。解り合えない、という前提で何をするか。守りたいものがあるのなら、時には喧嘩だってしないといけないかもしれない。あるいは水面下で交渉し、あるいは正々堂々と議論する。行くべき時は行こうぜっていう。そこは今回の岩城京子さんのブログキャンプとか、あと武蔵野美術大学の「mauleaf」という学内広報誌も編集してるんですけど、そういう若い子たちに接する機会を通して、彼ら、というか女の子が多いので「彼女たち」でもいいんですけど、その視界にどんどん異物を放り込んでいきたい。みんな知識や刺激に対して貪欲だなってことも思うから、とにかく全力で球を投げ続けるっていう。

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未来コーナーに続く

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軽やかさというものをウォーリーさんは確実に持っている。それはsundayやオリジナルテンポのような、驚くほど面白い仕組を世界に出現させている。その原点は。
木下 
ワクワクする事を考えるのが好きだったんですよ。面白いテレビを「見て見て」と呼ぶのが好きだったし。
木下 
でもいま考えたら、台所から来てくれなかったのが良かったかもしれませんね。そこで甘やかして付き合ってたら、僕がそのぐらいの範囲で満足していたかもしれない。
__ 
路上みたいな未知の空間にも気付けなかったかもしれませんしね。我々はまだまだ、想像が追いつかない未知を必要としているんだと思うんです。
木下 
その中で僕らは、独特なポジションを作って行かないといけないとは思うんです。誰もまだ作れていないけれども、作れるはずなんですよ。それは僕が想像するに、ある一人の天才によって実現するんじゃないか。僕らは、頑張ってその一人の天才を押し上げないと行けないんですよ。僕はそれを押し上げる役目だと思っています。天才が来る土壌を作りたいと考えています。
__ 
若い世代の為の土壌作り。それはきっと、民族博物館の未来のコーナーの為に、現在が通過点だと認識しないと出来ない作業ですね。
木下 
昔、元・売込隊ビームの横山くんとそういう事を話したんですよ。僕がフェスティバルのディレクターをしていたりして「儲かってるんちゃいますか?」「そんなわけあるかいな」「いや、ウォーリーさんがそんな事を言ったら駄目ですよ、下の人達は目標が欲しいんです。儲かってください」って。儲けたいですね。それを若い世代に分配したい。そういう事が出来るといいなあと思っています。
横山拓也
劇作家。演出家。俳優。

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狙う

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今後、目標にしていきたい事はありますか?
3号 
やっぱり、社会的に認められたいですね。今まで割りと自分の事だけで精一杯だったんですけど。最近、地底人が社会派だと言われてきて。それは何故かというと、僕の方向が自意識から外の世界に向いてきているらしいです。それを見ているお客さんが、僕らの芝居を鏡のようにして自分自身を見てくれる。そういうふうに、せっかく、芝居が外に向いてきているので。
__ 
ええ。
3号 
何かもっと、社会貢献じゃないですけど・・・なんていうのかな。機能したいですよね。個人でやって、内輪で「いい芝居だったね」じゃなくて。これは僕の好きな押井守監督が言ってたんですけど、やっぱり社会から反響を得たいんですよね。影響を与えるのはきっと難しいですけど。
__ 
単純に見てもらいたいというだけじゃなくて?
3号 
社会の地続きで芝居していたいと思うんです。そこだけに自己完結しているんじゃなくて。そういう環境は、まだ京都にはないんじゃないかなと。劇場に来る人は来るけど、知らない人は多分、ずっと触れないままだと思うんですね。
__ 
お客さんがいないという事はないんですけど、少ないのは悔しいですよね。ユニークな劇団や作品がたくさんあるのに。
3号 
それには、割と閉じられた演劇を作っている人が多い、分かる人には分かるみたいなのが多いからかもしれないなと。僕はもちろんそういう芝居は好きなんですけど、間口が広い芝居を作りたいですね。地底人は割りとその辺を狙ってこれまでやってきたんです。何かちょっとおかしな事をやっていながら、ちゃんとお客さんに分かるような。
__ 
分かります。
3号 
そういう事を成立させてやっているのが、僕の知る限りsundayしかないんじゃないかと思うんです。凄く演劇的な事をやっているのに、間口が広いんですよね。ちなみにウォーリー木下さんには、今回のチラシにメッセージを頂きまして。すごく励みになって。
__ 
sunday。私も好きです。小劇場がベースにありながら、不特定多数向けというか、とにかく見やすいんですよね。
3号 
sundayは凄いですよ。作り手が見ても凄い事をやっているのにも関わらず、ポピュラリティを持っているって。普通ああいう事をしたら、一般のお客さんはよくわからない事になると思うのに。その辺りはピンク地底人は狙って行きたいですね。
sunday
大阪を拠点に活動する劇団。第二期・劇団☆世界一団。作・演出はウォーリー木下氏。

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外に出ること

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ええと、川那辺さんは、いつから演劇を始められたんでしょうか。
川那辺 
アトリエ劇研の芝居工房からです。最初は自分も舞台に立つ側だったんですよ。ちなみに、同期に京都ロマンポップがいました。最近再会してびっくりしました。
___ 
あの沢大洋さんが。
川那辺 
はい。その後、コンテンポラリーダンスにも興味が湧いて、イギリスに語学留学したんです。半年だったんですけどそのままダンス学校に編入しようと思っていたんです。
___ 
イギリスのどこですか?
川那辺 
ロンドンです。生活の中に芸術が生きている街なんですよね。人々の生活にゆとりがあるように思えたのは、例えば美術館が無料だったり、毎晩普通に劇場に足を運んだりだったのかなと。そういう芸術が人に近い環境を日本でも作りたいと思ったことが、制作を目指したキッカケなんです。それで帰国後JCDNトリコ・Aのインターンをさせてもらいました。
___ 
最初に関わった作品は。
川那辺 
「他人(初期化する場合)」の再演でした。すごくしんどかったんですよ。まだ社会に出たこともないひよっこが、いきなり外部と関わる立場になって。でも、当時Afro13のプロデュースだった齋藤努さんに出会ったんです。「他人・・・」の際にコーディネーターをしてくださっていました。
___ 
おお。
川那辺 
それで、大学4回生の時に「就職するかどうしようか迷っているんです」って相談させて頂いたんですね。そうしたら、「せっかく、新卒という枠組みがあるんだったら、一度は普通に就職してみてもいいんじゃない」って。いきなり制作の世界に飛び込むのではなくて、外を見て、芝居をもっと客観的に見られるようにしたい。
___ 
一度、離れてみたかったんですね。
川那辺 
それで、東京の百貨店に就職をしたんです。
___ 
どうでしたか。
川那辺 
後悔した事と同じくらい勉強できた事が多かったです。やっぱり舞台の仕事が好きだったって入ってすぐに気付いて。でも、やっぱり少しは続けなくちゃって思って3年はがんばりました。その時に自分が出来る事の限界が分かったんです。「あー私ってめっちゃ小さいなぁ」って。
京都ロマンポップ
2005年、当時立命館大学生であった向坂達矢(現・代表)、よりふじゆき(脚本家)を中心として旗揚げ。以後一年に2~3本のペースで公演。ポップな新劇というスタイルを取り、芸術的・哲学的テーマを基調とした演劇を製作する。
沢大洋
俳優。京都ロマンポップ。2011年2月に開催された京都学生演劇祭の企画など、役者を越えた活動にも尽力する。
JCDN
NPO法人ジャパンコンテンポラリーダンスネットワーク。コンテンポラリー系のアーティストの公演活動を支援しているNPO。
齋藤努
プロデューサー。コーディネーター。

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