「人格を消費する」

__ 
今回の最初のシーン、戦隊モノから入っていきましたね。もうこれはエンターテイメントであると宣言してくれていたような気がして、それを最後まで裏切らずいてくれて。俳優も全員面白かったです。まず伺いたいんですが、お客さんにどう感じてもらいたいですか?
福谷 
どう感じてもらいたいんかな・・・さっき言った事と矛盾してしまうんですけど、事実ではないと言いながらもやっぱり僕の作家性みたいなものは完全に入っているので、スタート地点は真実だったりもすると思うんですよ。スパイク・ジョーンズが好きなんですが、彼の映画には監督の苦悩が露骨に作品に出てきてるんですよ。僕はそれを見せ物として楽しんでもらいたいんですね。
__ 
苦悩?
福谷 
いじめられている俺を見て笑ってくれ、という気持ちですね。お客さんに対して。
__ 
それはつまり、自分に同調してもらいたいと思っている?自分をネタにして面白がってもらいたい?
福谷 
そうそう、そうですね。
__ 
それを面白いと思うようになったのはどこからですか?
福谷 
うーん、割と昔から、かな。作り込んだものよりも、ハプニングの方が面白いみたいな感覚ってあるじゃないですか。僕らのやっている事はそれではないですけど、僕の想像力なんて乏しいので・・・一番身近にある僕というコンテンツを消費してくれというスタンスですね。
__ 
なるほど。そういう企みに我々は見事に引っかかり、次も楽しみにしてしまうんでしょうね。その性向は、福谷さんにどのようにして備わったのでしょうか。
福谷 
僕、元々お笑い芸人になりたかったんです。小学生から高校までそう思ってたんです。全盛期から今でも好きなのがロンドンハーツなんですが、あれはものすごく人格を消費する笑いで、僕はそうなりたくないから止めた一方で、でもそれがあるんだろうなと思いますね。
__ 
ロンドンハーツ、面白いですよね。あれは普通の雛壇番組とは全然違って、そこにいる人達の関係性を駆使した笑いと、さらに尊厳を蹂躙する事で生まれる快楽。
福谷 
それはもう人気番組ですからね。みんな、それを求めてるんだろうなと。

タグ: 僕を消費してくれ 書いてみたいと思った わたしとわたしの矛盾 新しいエンターテイメント 関係性が作品に結実する 単純に、楽しませたい


壁のむこう

__ 
演劇に関わった事は、宮階さんの人生にどんな影響を及ぼしましたか?
宮階 
むしろ、私が関わった事が演劇に影響を及ぼしたんじゃないですか?
__ 
おお。その通りかもしれませんね。
宮階 
言うたった。でも、本当にそういう気がします。演劇界という訳じゃなくて、私が関わった演劇作品は私の影響を受けていると思います。
__ 
ああ、私もそんな気はしますよ。宮階さんが出てくると、もの凄く危うい感じが増すんですよ。dracomの「弱法師」の時、役者さんたちに並んで宮階さんが出てきた時、何か不穏なものを感じましたね。存在感というより、危険を感じます。何故でしょうか。
宮階 
私は、仕事をまず始める前に「これは何なんだ」と、一つ一つの作業にどんな意味があるのかを確認して紐解く癖があるんです。台本をもらったら一言一句全てのセリフを辞書で調べるんですよ。それは理論的に確認したいという事じゃなくて、毎日使っている言葉でも、必ず、自分の知らない意味があったりするからなんです。そこから、可能性というか、新しい態度を取れると思っていて。
__ 
新しい態度。
宮階 
前提として、私はなりきったり感情を作ったりが出来ないんです。いつも頭の後ろの上空に目があって没頭出来ない、没頭しても、上に目がある事に気が付いてしまう。しかも私が没頭したとしても面白くなる訳じゃないんですよね。その為の時間じゃないし。あくまで、お客さんと作品の為に、その時間と空間でどう遊べるか、という事をずっと思っています。照明とか音響とか小道具とかと同じように私の存在がある。
__ 
並列関係にある。
宮階 
稽古期間で、演出家のアウトを貯めていくんです。この人は何をアウトにするのか?を探るんです。本番ではそれを全て忘れる。アウトを自分の体に覚え込ませて、お客さんの前で誰も知らなかった可能性を引き出すんです。
__ 
仕事の定義を掴んで、没頭を警戒して、行ってはいけないアウトを踏まえて、ご自身も知らない可能性を本番で探ると。
宮階 
だから、本番になったら稽古なんて振り返らないですね。舞台上では客席の壁の向こうを見るようにしています。アホみたいな事を言ってますけど。
__ 
そんな気持ちで舞台に立ってたんですね。
宮階 
でも舞台に出る一歩手前まではこの空間全部死ねみたいな気持ち本気でなっていて。いまこの劇場にテポドンが落ちてきて、死ねっ死ねっって思ってます。本番前のゲネとかは最悪な出来なんですよ。あらゆる失敗が起こるし。でも、本番が一回終わると降参して白旗を上げている状態で。どう思ってもらおうがいいですよ、と思っています。

タグ: 道具としての俳優 俳優の「素」を生かす 僕を消費してくれ 死と性と 役者の儀式・ルーティン 今、手が届く距離にかの人がいる事


vol.333 gay makimaki

カウパー団。

2014/春
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gay

こんな事をやっている人がいるのか・・・。

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
玉一 
これは人外だ、みたいな。すごい変な事を言えばそういう感じの。人を超える領域を垣間見たいなあと思いますね。卓越してるというか。夢のような話ですけど、飛び抜けていってみたい。そういう人たちと一緒に、見るに耐えないものをやってみたい。ロマンポップはサービス精神があると思っているので、いまそこまでは行かないですけど、やろうと思ったら行ってはいけないところに行けそうな気はします。そういう期待が、私がこの劇団にいる理由かもしれません。
__ 
いつか、一緒に作品を作りたい人や劇団はありますか?
玉一 
こないだKYOTO EXPERIMENTでフリンジ企画のディレクターだった、「けのび」の羽鳥さんが来ていらっしゃって。向坂さんと仲が良いので何回か手伝いに行かせてもらったりしてたんです。それで初めてけのびの公演を京都で拝見したんですけど、めっちゃくちゃ面白くて。こんな事を言うのはおこがましいかもしれませんけど。
__ 
へえ。
玉一 
はあ~、こんな事をやっている人がいるのか。って思って。私が見たのは「ウィルキンソンと石」という作品で、お客さんにテキストが与えられて、役者さんは順番にテキストをこなしていくんです。何々したら何々する、みたいなのが書かれていて。会場は普通のパブなんですが、貸切ではなかったので普通のお客さんもいて。普通に飲みに来たお客さんと演劇を見に来たお客さんと役者がいる空間は異様な雰囲気になるんです。ああ、これはキチガイの領域だなと。ぜひ一度、やってみたいと。
__ 
それは拝見したいですね。
玉一 
いま、一番気になっている劇団です。

タグ: 僕を消費してくれ お客さんに元気になってもらいたい いつか、こんな演技が出来たら 私の好きなあの劇団 心を揺さぶる 元気が有り余っている


すこしずつすこしずつ好きになっていく

__ 
小沢さんが演劇を始められた経緯を教えて下さい。
小沢 
僕の姉は画家なんですが、姉の友達の関係である舞台のチラシデザインをしていたんですね。僕はそれまで、映画に興味があってワークショップだったりオーディションを受けていたんです。でも中々上手くいかなくて。そこに姉が「こういうのがあるよ」と教えてくれたのが「阪神タイガーウッズ」という名前の、いまはもう無き京都の劇団のワークショップだったんです。そこの主宰である方に興味を持ってもらえて。エチュードをやったりしたんですが、今までそういう事をしたことが無かったので新鮮だったんですよね。皆で何かでっち上げたり、お話にしたり。自分以外の人物になるという事がこんなに楽しいのかと。
__ 
なるほど。
小沢 
当時はガラスの仮面の北島マヤみたいな天才になりたかったですね。あんなに深く、そしてたくさんの他人の人生を生きる事が出来たらと。当時、自分の事が嫌いでコンプレックスをずっと抱いていたんです。少しでも現実逃避出来たらという気持ちもありました。自分とは違う人間になりたかった。それでもコンプレックスや嫌いな部分は拭いきれなくて、だから今でも基本的には、なぜ役者をやっているか、と聞かれたら、小沢道成という人間を魅力的にしていきたい、と答えると思います。
__ 
ご自身を魅力的にしていく?
小沢 
一年に4~5本舞台で役をやらせてもらっているんですが、色んな役の人生を味わえるんですね。舞台が一本終わると、確かに自分が何か変わっているんです。強くなったり弱くなったり、嘘をつくのが上手くなってたり下手になってたり。人とコミュニケーションを取るのが昔から下手だったんですが、役者を続けていて、少しは好きになっているんですよ。という事は小沢道成という人間が少しは魅力的になっていて、いろんな要素を吸収している。もしかしたら、悪いものを吸収しまくるかもしれないですが、それはそれで楽しみです(笑)最終的にはお爺ちゃんになった時に、いい人生だったと思いながら死んでいけたらいいかなと。
__ 
初めてお会いするタイプの方です。
小沢 
そうなんですか。
__ 
役者の生き方としては珍しいような、いや、それこそが最高の理由のような。
小沢 
「人を楽しませたい」という気持ちが前提にあるんですが、突き詰めていくとそういう理由になっていきますね。

タグ: 目を引く役者とは 役をつかむ 僕を消費してくれ 北島マヤ とにかく出演していこう 自分で考えてきたもの、の価値 新人の不安


火曜日のシュウイチ

__ 
役作りとご自身のプロデュースを同じ次元で考えておられるように思うのですが、それは、どのようなところから生まれた考え方なのでしょうか。
坂口 
所属していた劇団、T∀NTRYTHMの解散がきっかけですね。劇団がなくなってから、客演というかたちだけで舞台に関わるようになりました。そうなって初めて、劇団のありがたみがわかったんです。客演先では、成長は求められない。自分の培って来た地力で勝負です。これはある意味、消費だと思うんです。フリーになって2年目ぐらいに、劇団が僕に栄養を与えてくれていた事に気付きました。消費して、スカスカになってる自分がいたんです。だから、フリーでやっていくなら自分で自分に栄養を与える場を作らないといけない。そう思って、一人芝居の公演等を企画するようになりました。
__ 
なるほど。
坂口 
以前、一年間毎週公演を行った火曜日のシュウイチも、色んな方に栄養を頂いた公演でした。
__ 
あれは凄かったですね。
坂口 
一年通して「お前はこうだぞ」と言われ続けた公演でした。台本も演出も毎月変わって、しかも毎週火曜日にそれをこなさないといけない。
__ 
しかも別の作品の客演も減らさない。凄い事をされていましたね。あのシリーズの後に、平日夜の公演が意識に定着したように思います。大きな影響を与えていると存じます。今更ですが、お疲れ様でした。

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vol.200 坂口 修一

フリー・その他。

2012/春
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坂口

インクの一滴

__ 
東京から京都に移ったのはどういう。
大庭 
僕も三浦も青年団にいて、独立するときに誘われたんですよね。京都を拠点にして劇団を旗揚げするから、来ないかって。その時に、年齢的なこともあって、芝居をこれから続けていても良いものか、出来るのかと色々考えていたんですよ。
__ 
ええ。
大庭 
三浦の芝居は好きだったし、このあたりで思い切って、賭をしようと思ったんですね。青年団にいてもちょっとした安定はあるんですけど。ここで、いっちょやってみるかと。京都行ってダメだったら辞めっか、みたいなね。オリザさんにすみませんって言って出てきました。「まあ3年で戻ってくるだろ」とか「ダメだったら戻ってきてもいいよ」とか言われましたけど(笑う)
__ 
よくそんな、決断をされましたね。
大庭 
東京から京都に来た大きな理由は、さっきの賭の話と同時に、ただただ自分の存在や演劇の公演が消費される状況が怖かった。・・・東京で芝居を見に行くと、もうタウンページのようにぶ厚いチラシの束が渡される訳ですよね。そしてそのほとんどは1回きりの公演。
__ 
ありますね。
大庭 
あれを見るとね、なんかもう、簡単に消費されるんだなあと。僕が参加している公演のチラシなんてこの束の中の一枚にすぎず、プリントされた名前なんてインクの一滴程度なんですよね。マクドナルドのハンバーガーみたいに無碍に消費される存在、それはやっぱり嫌だなと思って。単純に自己顕示欲が強いってだけなのかも知れないですけど。みんなと一緒がいいって始めたのに矛盾してますね。(笑)とにかく再演される様な芝居をつくっていきたかったんです。
__ 
東京のチラシ束はすごいですよね。
大庭 
京都にくるとチラシ束が薄くてほっとしたというか(笑う)。もちろんこれはある意味、演劇界の辛い状況でもあるんですけどね。
__ 
そうそう、私も東京にはここ数年、休暇をとって芝居を見に行ってるんですよ。最初は、その回転率の早さというのがもしかしたら俳優の演技にある種の薄さをもたらしているかと思えば、単に思いこみでした。
大庭 
なるほど。
__ 
それでも、やっぱり京都における俳優の身体のミステリアスな雰囲気って特殊で。京都にいてないと染み着かない感じなのかなと。地域びいきな感覚なのかもしれませんが。これって、どういう事かなあって。
大庭 
僕らはどうですか?その、東京の俳優っぽいですか?
__ 
全然感じないですね。なんか、京都の人たちなんだってバイアスが掛かっちゃってるかもしれませんね。矛盾しているような気がしますけども。京都の水と時間で生活していると、そういう雰囲気になっちゃうかもしれませんね。
大庭 
京都はやっぱり、変ですよね。閉塞していると言えば言える。でも、抜けてるという感じは与えてくれる。囲まれているけど、息苦しさは感じない。鴨川もあるし。
__ 
鴨川?
大庭 
鴨川があるから逃してくれるというか。あの川がないと、苦しいような気がします。
__ 
街の中にある、自然との境界であり自然そのものというか。ふっと橋をわたると、ドキドキする気がしますね。川の中に足を浸してみたり。結構気持ちがいいですよね。
大庭 
亀がいるじゃないですか、飛び石の。いつか近づこうと思っているんですけど、行かないんだよなあ(笑う)。今度こそ行こう。
__ 
その亀を踏みに行かなくてもいい雰囲気があるかもしれませんね。

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語るための演劇

柳沼 
演劇でどうかなるってぜんぜんイメージ出来なくって。劇作家だったら他に書き下ろしたりとか、大学の先生になったりとか。俳優だったらテレビに出たりとか。・・・どれにもあまり興味持てないんですよね。
__ 
自分達の世界をもっと多くの人に見てもらいたいというのが、そんな人達の根本的な動機だと思いますが・・・。
柳沼 
それを否定するつもりはないですが、違うやり方もあるんじゃないかと思うんですよね。小劇場はまだニーズを掘り出せていないだけで、必要とする人たちはたくさんいるんじゃないかと思うんですよね。嫌いな人はもちろんいるとしても。
__ 
というのは。
柳沼 
現代の生活で違和感を覚えている人は沢山いるわけでしょう、不満を抱える人が。
__ 
マスメディアの娯楽消費だけでは満ち足りていない筈の人々がいる。
柳沼 
演劇、特に小劇場演劇がそもそも社会に対するアンチテーゼから始まっているわけですから、そういう人たちにどんどん演劇という媒体を使って、生でお客さんに見せて訴えてほしいと思っています。確かにマスメディアやインターネットに比べて、観ている人は少ないけれど、これらが情報の共有であるのに対して、演劇は時間と空間、それと感覚を共有できる希有な場所です。この媒体を使って、今まで演劇を知らない人にどうやって関わってもらうかを考えています。
__ 
具体的に、どのような人々が。
柳沼 
特に興味があるのは、団塊の世代より上の方々ですね。そのあたりの方の話しを聴きたいし、舞台の上で語ってほしいと思っています。年表と年表の隙間にいるはずの、メディアで語られないささやかな個人が、個人の目線で戦争や高度成長などについて語るんです。テレビや映画のネタにはならない題材と、それらでは実現できないやり方で、過去を切り取っていきたいと思っています。

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