それを探している

__ 
去年は淡水の公演にも出演されていましたね。あの時のソロの緊張感がすごく良かったんです。
高木 
ありがとうございます。あそこでやった事自体は即興なんですよね。私以外のパートは群舞だったので、異質感を出せたらいいなと。シュッてナイフを切り込むようなモチベーションで毎回臨んでました。
__ 
切り込むというのは、それはもしかして、目の前にパフォーマンスがあったとしても見てくれない人、へのアプローチという事でしょうか?
高木 
ああ。。。
__ 
「生理的に」「受け付けない」人とか、もしくは見すぎて鈍感になっている人。
高木 
直接のお答えになるかどうか分からないんですけど、私は、自分の身体を手放せたらと思うんです。
__ 
と言うと?
高木 
私はあんまり、こう見せたいというのは無くて。その瞬間、なるようになる事を受け止めて手放すみたいな事なんです。そうすると自分から自分が離れていくような。そこに自分の見たいダンスが隠れているんじゃないかなと思うんです。そもそも自分の中にダンスがあるとは思えなくて、私自身が出会いたいんですね。それを探しているんですけど・・・ただ探す事に没頭すると自我が消えていくのかなって。すいません、ちょっと観念的ですよね。
__ 
いえいえ。振り付けというのがまずあって、それをやろうとする時に管理して運用しようとする。それをあえて手放すようにしたいという事でしょうか。
高木 
そうですね。振り付けは決められているんですけど、そこに自分で隙を作るというか。毎回初めてに出会いたいんです。これはダンサーでも役者でも思ってると思うんですけど。知っている事に、新しく出会いにいく。それはやっていて楽しいし、お客さんにも伝わったらいいなって思います。それが瑞々しいという事に繋がってくるんじゃないかなと思います。
__ 
読書で言う、未読領域を進んでいく同時性なのかなと思うんですよね。そこに立ち会う事が出来る。やり飽きるとかそういうんじゃなくて。まあ、個人的にはそういうのは男性本能の中の開拓精神が見えてくるような気がしている。それはおいといて、瑞々しさの生まれる瞬間に立ち会うのはすごく難しいですよね。
高木 
難しいですよね。でも、そういうものになりたいですよね。
__ 
それには色々なアプローチがあって、そのアプローチをイチから作るのが前衛の仕事と言えるんだろうし。テーマを探すのはもちろんとしても。
高木 
そうですね。

タグ: それを揺らしてはいけない 瑞々しい感覚 前衛は手法から作る人々を指す


拳が震えている

__ 
『ハムレットみたいなもの』、どのシーンが印象的でしたか。
佐々 
勝二さんとのシーンですね。勝二さん演じる友人のお父さんと、酔っぱらっている僕のシーンがあったんですが、個人的に凄く印象的なシーンでした。僕はリアクションこそが演劇だとちょっと思っている事があって。リアクションが成立していないと、たとえどんだけ喋っても相手が無反応だと演劇にならない。もちろんそれが全てではないですけど、リアクションを大事にしてこのシーンはやろうと思っていました。
__ 
あのシーンか。緊張感が凄かったですよね。
佐々 
相手の台詞に対してリアクションしていくから、毎回芝居がちょっとずつ違うんですよね。
__ 
リアクションというのは、相手の言葉を聞いて感情的に反応する。という範囲?
佐々 
それ以前に、「立って聞く」というのがまず出来ていないといけないなと思っています。地に足が着いていて、相手が言ってきた事が嫌だったらこちらの声のトーンやスピードが変わったり。勝二さんが一回、リアクションで僕の事をマジで殴ろうとして手が震えた事があったんですけど、その時僕は内心嬉しくて泣きそうでした。
__ 
素晴らしい。
佐々 
あの瞬間は今でも忘れられないです。あの時はお互い死ぬほどムカつきながらやってたんですけど。あの感じが、芝居で殺しあいしてる感じで。めっちゃ楽しかったです。
__ 
あれは後半の、とても緊張感のあるシーンでしたね。彼は普通の人間で、しかし敏感だったからさらに傷ついていて。悲惨でしたね。
佐々 
ちゃんと全員死にましたしね。

タグ: それを揺らしてはいけない 反応し合う


LAUGH DRAFTのヒミツ

早川 
僕、最近役者の出ずっぱりに興味があって。役者は体力的にきついらしいんですけど、独特の空気と緊張感があって。
__ 
UNIQUE NESS」の時もそうでしたね。
早川 
あそこにいると嘘付けないんですよ。喋ってないのにかなりしんどいらしい。実は「LAUGH DRAFT」も出ずっぱりで、しかも生演奏があるんですよ。全員である方法で音を出すんですが、これが簡単なように見えて難しくて。「UNIQUE NESS」でギターを弾いていただいた福島さんに指導をしていただいています。いま、猛練習中です。

タグ: 上演中出ずっぱり型演出 それを揺らしてはいけない 生演奏のある作品


起きている町、眠っている港

せん 
ここは実は完全に自由な空間という訳じゃなくて、ハコも小さいし住宅地だからそんなに大きな音も出せないし、あんまりいかがわしいパフォーマンスも近所の目があるのでNG。その中でいかに遊ぶかというのが念頭にあると思いますね
__ 
いかに遊ぶか。
せん 
制限の上でいかに真剣に遊べるか、ですね。青蛾の夜會はそういう、アーティストが何かに挑戦しているのを見る機会でもあるんです。
__ 
緊張感がありますね。私にとってはここク・ビレ邸は結構離れた場所に位置していて、なんだか「千と千尋の神隠し」の隠れ里のようなイメージがあります。知らない町を訪れた時、偶然出くわした祭りのような。そういう中で初めて出会うアーティストの勝負を見られるのは貴重な体験だなと。
せん 
はい。今まで触れてこなかったジャンルに出会ったお客さんが楽しんでくれているのを見ると嬉しいですね。さっきも言いましたが、この辺はすごく元気なご老人が多いんですよね。
__ 
若々しい人が多いという事でしょうか。
せん 
というよりは・・・何か、今の時代の若い人って無気力なところがあると思っていて(それは時代のせいもあるんだと思うんですけど)。比べるのは違うかもしれないけど、今の時代の北加賀屋の老齢の方って凄い丈夫やし、止まれない人種なんじゃないかと思うんです。動いてないと死んでしまうような。元々日本人が持っている労働者としてのDNAを感じます。都会の日本人にはない良さを感じるんです。
__ 
港町の、海を眺め続ける事で培われたロマンの感覚があるのかもしれませんね。
せん 
そうですね。私、そんなに日本万歳って訳じゃないんですけど日本人の感覚とか日本人像が好きで。静かな中に情熱があって、下半身がずっしりしている感じ。それが凄く素敵だなと思います。
__ 
私の父方が農家をしているんですよ。
せん 
あ、いいですね。
__ 
農家は静かにしているものなので、そういう落ち着きは少し分かります。
せん 
まあ関西の方なので口が達者な方は多いですけどね(笑う)。

タグ: ロマンについて 日本人の美意識 それを揺らしてはいけない 続ける事が大事 町とアートと私の企画 単純に、楽しませたい 演劇は勝ち負け?


観客の呼吸を掴む

__ 
実は昔、shelfの作品を拝見した事があります。2009年のC.T.T京都でした。
矢野 
あ、そうなんですか。
__ 
「私たち死んだものが目覚めたら」のワーク・イン・プログレス作品でした。俳優が観客と向き合い、逃げない。そういう非常に緊張感のある作品だったと思います。一体、どのような経緯でそのような姿勢に辿り着いたのでしょうか。
矢野 
小説のような文字表現や、同じハコ型の(芸術)鑑賞施設である美術館や博物館と違う最大の点は、二人以上の多人数がいて、見る人と見られる人があって、そして一定時間をそこで過ごすということなのだと思うのです。であれば、そのことの何がいちばん面白いのかな、と。昔、札幌で学生していた頃、「キューブ」という映画をミニシアターで見たんです。お客さんは少なくって満員で50人ぐらい。みんな固唾を飲んで見ているんですが、それが、つまり呼吸とか皮膚感覚とかを共有する感じが凄く面白くて。緊張を強いられるシーンでは、皆が皆、息を潜めて。劇場って、そういうモノだと思うんです。
__ 
人が集まって、固唾を飲んでいる場所。
矢野 
だから僕はよく俳優に「先ず、観客の呼吸を支配してくれ」と言うんです。それは何も緊張感のあるシーンに限った話でなくて、例えば観客がどっと笑う。そのときに起こっていることというのは観客が全員、笑う直前に同時に息を吸っている間があるんですよ。そして同じタイミングで笑う=息を吐いている。客席で笑いがうねるということはそういうことなんでしょうね。大きな劇場でお客さんが一人しかいない、その状態は果たして面白いのか? 花火会場に行って、一人で花火を見たら楽しいのか? <場>を共有することで人と人との間で生まれる何かが劇場には、ある。それを最大限に引き出したいというのはありますね。だから、芝居の幕開けなんかでも俳優がまず最初の台詞を喋る、その発語のタイミングは基本的に俳優に任せているんですね、今は。昔は秒数で切ってたりもしたんですけど。
__ 
・・・。
矢野 
基本的に観客は、楽しもうとして劇場に来てくれている。だから、一番最初の時間が一番期待が膨らんでいる筈だと。その会場の全員の期待感や想像力がいい按配になったときにスッと言葉を差し出したら、きちんとそこから交流が始まるんじゃないかと思う。発語のタイミングが早過ぎるとお客さんが着いていけなくて戸惑っちゃうし、遅すぎると「まだ?」ってなってしまう。そのキワを攻めたいんですね。だから、その為の、<場>の呼吸を把握するための稽古を相当しています。今度ノルウェーに行くイプセンの「幽霊」、初演は2006年なんですけど、主演の川渕優子の冒頭のセリフが戯曲のト書きなんです。「イプセン 幽霊 三幕の家庭劇。」その発語の「イ」の稽古に2週間近く掛けた事があります。「違う」と言い続けて、周りの俳優が呆れちゃって。「こだわりたいところなのは分かるけど、取り敢えずちょっと先に進めてみようよ」って。当時の僕は、まだ今のような言葉も技術もなかったし、だから何が違うのかきちんと説明出来なかったんですけど、それでもそれは違う、と思ってたんですね。余談ですが、芝居を見に行くとだいたい最初の5分程度で、その芝居が面白いかどうかって分かるんですよ。うーん・・・と思ったのが、後から面白くなる事は殆どないんですよ。
__ 
観客の最初の印象って物凄く正確ですからね。開幕直後の観客の視線は、事件を出来るだけ早く理解するために、必然的に膨大な情報を取り込み、全く意識せずとも細かい部分を評定し、価値を判断しています。疲れも先入観もない、暗転の一瞬だけだけど社会と隔絶してコンテキストから切り離されるし、新しい世界を見るという立場上第六感も備えているんですよね。
矢野 
演出家的には、お客さんが一番期待してくれている瞬間に、期待に沿って、あるいはそれを裏切って、という心のやり取りで相手の心を掴まなければ、後はみんなだいたい引いていくだけなんですよね。
__ 
心を掴む。そこが今日一番話したかったことです。

タグ: 観客の呼吸 それを揺らしてはいけない リアルに相対し戦慄する 事件性のある俳優 見えないぐらい濃い交流 オーガナイザーの企み 舞台が始まる直前の緊張感


わたしと劇団レトルト内閣

__ 
Q本さんが演劇を始めたのはどんな経緯があったのでしょうか。
Q本 
去年のレトルト内閣の「倦怠アバンチュール」のオーディションに突然応募したのが最初です。そこまでの経緯を説明すると、ゲキシネってありますよね。
__ 
ありますね。
Q本 
母が宝塚が好きで、当時はトップスターが天海祐希さんだったんです。天海さんが出演された「薔薇とサムライ」のゲキシネを見たらすっごい面白くて。「そうだ、私って昔ガラスの仮面が好きで演劇部に入りたかったじゃないか」と思い出して。もしかして大阪なら演劇もあるんじゃないか、都会だし、と思って「大阪 小劇場」で検索したらレトルト内閣が結構上に来てて。
__ 
そうですよね、強力なSEO対策してますよね。
Q本 
そうなんですよ。めっちゃしてるんですよ。検索の上位にありますよね。「ここなら大丈夫かも」、って思って。
__ 
警戒心があった?
Q本 
演劇は観たことないけれど、一歩間違えたら変なところに引っかかってしまうんじゃないか。なるべく大丈夫そうだなというところを選ぼうと。その時はちょうど、「猿とドレス」をやってて。ABCホールはキレイそうだし、安心して見に行ったらもの凄く面白くて。演劇に対するイメージが変わりました。
__ 
とりわけカッコいい作品でしたね、「猿とドレス」。
Q本 
その次の「金色夜叉オルタナティブ」も観て、それも面白くて。しばらく後に劇団のtwitterで出演者オーディションを知って、「倦怠アヴァンチュール」に出演した後、「劇団に入りたいです」とお願いしたら入れてもらえました。
__ 
大阪でも屈指の、丁寧で細かくこだわる作品を作りますよね。責任意識を感じるんですよね。それが悪い方向に働く場合もあるけど、独特の緊張感がある。
Q本 
社会人だからかな?ビジネスライクなところがあるかもしれないなってちょっと思います。いい意味で。
レトルト内閣第20回公演「倦怠アヴァンチュール」
公演時期:2013/2/1~3。会場:HEP HALL。
劇団レトルト内閣18回 10周年記念公演第二弾「猿とドレス」
公演時期:2011/9/16~18。会場:ABCホール。
劇団レトルト内閣19回公演「金色夜叉オルタナティブ」
公演時期:2012/6/15~17。会場:HEP HALL。

タグ: それを揺らしてはいけない レトルト内閣のウワサ


次の瞬間には笑い合っている関係

坂本 
今回は音楽家の方にも入って頂いたんです。ノイズ系の音楽を製作されている、石上和也さんという方です。劇中に登場する重要な音として「遠い星から聞こえてくる赤ちゃんの声」がありましたが、それは宇宙船に乗っている二人にはどうにも出来ないものです。物語を決定づけてしまう要因が、手の届かないところにある。その距離感。本来なら喜ばしい出来事であるはずの「赤ちゃんの生存」によってシェリーは死ななければならない、その残酷さも音に託しました。
__ 
確かに、複雑な感情でしたね。
坂本 
ここは、最後まで完成形が見えなかった。音楽の石上さん曰く、私とSun!!ちゃんとサカイさんの間にはいつ喧嘩するのか分からない緊張感があったそうです。でも、次の瞬間にはすぐ笑い合っている、そんな雰囲気だったみたいです。

タグ: 残酷な演劇 それを揺らしてはいけない


人に舐められても簡単に人を舐めるな

___ 
演劇を抜きにして何か趣味はありますか?
佐々木 
これはレトルト内閣のQ本かよさんに言え、言ってこいと言われたんですけど、最近私エロ格言にハマっていて、私はどんな役でもエロ格言を通して役作りをしているんです。
___ 
大阪BABYLONの時は。
佐々木 
「人に舐められても簡単に人を舐めるな」という。
___ 
分かります。相手とは簡単に対等にはならないという事?
佐々木 
何でしょう。「安売りするな」って事ですかね、媚びへつらうな、という。そしてエロくない意味では、人様をそう簡単に見下してはいけない、という・・・。それと、妄想も趣味です。
___ 
その割に、「小娘にエロスが分かってたまるか」と言われてしまった。
佐々木 
そうですね。エロとエロスは違うらしいです。
___ 
それは、エロスはもっと大事なものだ、ということ?
佐々木 
眼帯のQ」で、脱力して倒れ込むという振り付けがあったんですよ。演出家が、「倒れる時に腕がプルプル揺れるのはエロで、『それを揺らしてはいけない』という姿にエロスがある」と言われました。
___ 
肉を制御するのがエロス。本来はコントロール出来ない身体(の一部)。それはどうしても揺れてしまうんだけど、それを揺らさないという注意。
佐々木 
そうだと思います。そういう風にして美しさを追求したかったと。
かのうとおっさんvol.17『大阪BABYLON』
公演時期:2012/8/24~25。会場:in→dependent theatre 1st。

タグ: それを揺らしてはいけない


vol.315 佐々木 ヤス子

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
佐々木

明日への狂気

__ 
黒川さんの作られた作品で私が最も笑ったのは、ベトナムからの笑い声公演「チェーンデスマッチ」の「パン屋のパン子ちゃん」でした。戯曲もネタも、俳優の演技力も素晴らしいものでしたが、一つの演技が何度も繰り返され、次第に熱狂へと高まっていくという。
黒川 
あれは僕の中でもダントツ上の部類にはいる、ちょっと狂気じみてましたね。役者も冴え冴えで、これは凄いなと思いました。
__ 
死を覚悟しました。
黒川 
いつも言っている事ですが、笑わせる為に手段を選ばないんですよ。映像でも文字でもいいんです。人を笑わせる為なら。そのための引き出しはたくさん持っておきたいですね。「パン屋のパン子ちゃん」は、それら全ての中でも、中々・・・行ききったなという作品でした。
__ 
たくさんの引き出しを置いておきたい。
黒川 
そうですね。その為に常にアンテナを張るようにしています。「これ面白いな」と思った、TV、新聞、映画、本、自分や他人が言ったことは頭の中に置いています。メモにも書いて、あとで読み返したり。あとは自分の中でいくつかやってはいけないというルールがある、ぐらいですね。
__ 
それに触れると、人を傷付けたりする?
黒川 
多少はありますね。ただ、笑いを作っている以上、誰かを傷付けたりすることはあります。手段は選ばないのですが、たとえ誰かを傷つけることになっても行ききらない笑いはダメ。よく「毒のある笑い」と言われるんですが、それも笑わせるための手段です。あとは、真似というのはあります。ただの真似ではなく、面白いと思ったものをどう真似られるか、超えられるか。僕はダウンタウンやナンシー関に影響を受けてるんですけど、そういう人たちにどこまで迫れるか。そして、どこまで脱する事が出来るか。
ベトナムからの笑い声
丸井重樹氏を代表とする劇団。手段としての笑いではなく、目的としての笑いを追及する。2011年末をもって無期限活動停止。
ベトナムからの笑い声第28回公演『チェーンデスマッチ』
公演時期:2010/12/3~5。会場:スペース・イサン。

タグ: それを揺らしてはいけない ユニークな作品あります 手段を選ばない演劇人 反復の生むもの