花のように過激に生きる

__ 
前回公演「おしゃれな炎上」での、目玉になり果てた弟を食べて踏みつぶす演技が良かったです。あのシーンがあったから、全体の印象が引き締められたと思うんです。
夢子 
ありがとうございます。アンディさんが生んでくれた役を精一杯やって生きて死にたいですね。アンディさんの書いた台詞って、嘘っぽくなく心から口に出せるんです。その人物として物語の中で生きていられるんですよ。私なんてただの24・女・フリーターで、何もかもうまく行ってないのに、でもそんな役の役者でいると、すごく楽になれるんです。
__ 
嘘をつきたくない。アンディさんのセリフは、自然に出せる気がする。
夢子 
上演時間2時間の夢の間、生きてるという感じを得たいです。「俺ライドオン天使」の時、お客さんの感想ツイートの中に「生きるってこんなに過激だったのか」という表現があって。
__ 
おお・・・。
夢子 
普通に生きている事が既にドラマなんだ、って思って。私、これまで出演した3作品全部で「幸せになりたい」ってセリフを喋ってるんですよ。お金とか安定した生活とかそういう意味じゃなくて。
__ 
夢子さんの演じた人物は全員追い詰められた人生だったと思います。解放されたい、という事だったのかな。
夢子 
全員、それぞれにエグい生き方をしていて。今回の作品は痛みとか愛とか葛藤を描いています。目を逸らさずに幸せを見つめています。ひどい事をする人物にも背景や環境や抱えている痛みがあって、その痛みや負い目がお客さんの中にもあったりしたら、どこか肩の力が抜けると思うんです。そういう所が、がっかりアバターにしかない魅力なんじゃないかと思います。
__ 
がっかりアバターは今まで地獄を描いてきたと思うんですよ。「誰の心の中にも地獄がある」、これは闇金ウシジマくんの評論の一つなんですけど、何故地獄絵図を見ると心が楽になるのか。もしかしたら地獄という情景に心が行く事で、抑圧から解放されるんですね。それが魅力と言えるでしょうね。
がっかりアバター「おしゃれな炎上」
公演時期:2013/12/27~12/29。会場:ウイングフィールド。

タグ: 観客に血を流してもらいたい 舞台に立つまでの葛藤 背景が浮かびあがる 炎上、がっかりアバター 優しい嘘


__ 
いつか、どんなダンスを踊れるようになりたいですか?
北尾 
自分の身体に対するコンプレックスがずっと付きまとっていまして。それを払拭してくれたのがコンテンポラリーダンスだったんです。やっぱり身体が小さいという事は、良い点もあるんですが、身長が大きくて手足も長いダンサーに出来る事が僕には物理的にはムリなので。そういった、ビジュアルだけじゃない、踊るだけで醸し出せる何かや、見ている人の心を揺さぶれる表現、目に見える身体のみじゃなくて、背景に何かが浮かびあがるようなダンスを大舞台で踊りたいと思っています。遠い目標だとは思いますが。集団創作をしている今だからこそ、自分の身体への認識を深めて、磨いていきたいですね。
__ 
今後、この人と一緒に創作してみたいという方はいますか?
北尾 
一番遠い方という意味では、BATIKの黒田育世さん。一ファンとして素晴らしい方だと思います。ただ、自分のダンスの思考としてはかけ離れているなと。でも、いつか出会って、あの人の表現と思想に触れてみたいと思っています。それから、一緒に作品を作ってみたいという意味ではイデビアン・クルーの井出さんという方。大変感触のいい作品を作られるんですよ。ダンス創作ではないですけど、今回初めて楽曲提供してもらって。やっぱり音楽のすり合わせから始めるというのは大変な作業なんだなあと。これまで多く使ってきた民族音楽系のビートの早い音楽を、ダンスと一緒に作っていく事が出来たらなと思っています。まだ、出会ってはいないんですけど。

タグ: 背景が浮かびあがる


劇団ZTON「天狼ノ星」を終えて

__ 
天狼ノ星を終えて。ZTONの傑作として記憶に新しいですね。大変面白かったです。私の考え方だと、傑作って作品だけではきっと成立しなくて、客席も含めた劇場が置かれている時代背景がかなり影響していると思うんです。そうして初めて演劇は必然性を持って現在の我々の前に現出しうるのではないか。天狼ノ星は、多文化共生社会の到来と東アジアとの国際関係に悩む現代日本を背景に、他国の国民とこれから向き合うであろう世代の横顔を、ループ状の物語構成を借りた演劇作品として鮮やかに表現されていました。もちろん芝居としても非常に完成度が高く、素晴らしい演劇になりました。為房さんは、一人の役者として、どのような経験でしたか?
為房 
ありがとうございます。お芝居を作るにあたって何が一番大事かって、話が一番大事だと思っていたんです。僕が何かお芝居やパフォーマンスを見る時、やっぱりお話を見るんですね。脚本家が書いたものの起承転結がきちんと魅せられるか。そこに徹するあまり、自分が演技をする時も「色がない」「安定感が凄いよね」「もっと余分な事をすればいいのに」と言われる事があって。
__ 
そんな事を言われますか。
為房 
安定はしているけどね、って。でも今回に関して言えば、早い段階で稽古が回ってこなくなって。つまり殺陣指導をはじめ稽古を見る時間や、自分自身のプラスアルファを考える機会が多かったんですね。さらに、団員の平均年齢があがるにつれ、僕が、絶対的に話を魅せる側に回らないといけないと自覚したんです。地の章では割と、一本の柱としての役なので、もっと我を張らなくてはならないと。今までは誰がメインなのかによって、そこに意識を集中させるために考えて、それはもちろん大切なんですけど、その中でも我を持つようになったというのが個人としては大きい変化でした。
__ 
話を律する立場を意識するようになった。
為房 
そうなるのが遅すぎると言われそうですけど。ホントに極端な事を言うと、話が壊れてもいいから僕が目立てばいいかなというぐらいの気持ちになった、というのが大きいですね。

タグ: 傑作の定義 背景が浮かびあがる 自分の演技を客観的に見る 世界がズル剥け 役者に求めるもの 殺陣の話題 劇団ZTON、参る


×

__ 
西原さんが舞台に立っていて、嬉しいのはどんな時ですか?
西原 
なんか空気が繋がった時ですね。舞台と客席の。客席に沢山の人がいて、一方通行じゃなくて、うわぁぁんってなった時。見えないんですけど「現れてる」と感じた時、です。
__ 
分かると思います。でも、そうなれている回はまれですよね。
西原 
演じている側が勝手に思っている場合もあるという事ですね。
__ 
いや、空気が繋がっていると感じた場合はどちらの側も分かっていると思いますよ。
西原 
うーん・・・
__ 
色んなジャンルの舞台がありますが、一律して確率は低いんじゃないかなと思います。前衛演劇の舞台でも空気が繋がる事はあるし、分かりやすいエンタメ芝居でも会場の空気が繋がる事は多くないと思います。
西原 
なるほど。
__ 
今までで、西原さんが「繋がった」と思った最たる時は?
西原 
「私の未来」の時、私が舞台上でハルくんの事を思っている時、お客さん達が想像しているハルくんを感じたんです。いくつもいくつも、ぽぽぽぽって、お客さんの側から感じて。私がそう思っているだけなんですけど、無限なんだなあって。私の想像力が受け取った人の想像力も喚起して、表現って無限なんだなあって。
__ 
想像力はそれぞれ無限ですよね。それが掛け合わさせる瞬間、その広がりを感じたという事ですね。
西原 
その時に、とても嬉しいんです。
__ 
一人芝居「私の未来」。最後の歌が本当に狂おしいというか、情念がこもっているんですよね。そこに到る背景が演劇で示されているから、尚更聞き惚れました。
西原 
歌うのっていつも難しくって。歌うのにはマイクが必要なんですけど、マイクってめっちゃ現実じゃないですか。戒田さんの脚本で、マイクが持てるシチュエーションになったから持てたんです。歌いたいだけになったら嫌やから・・・演出として言われたのは、「涙を湛えた笑顔で、プロ意識を持った一人の歌手という役として、一生懸命歌えばそういう風には見えないから大丈夫」って。

タグ: 役者の認識(クオリア) 背景が浮かびあがる 一生懸命を描く 見えないぐらい濃い交流 舞台にいる瞬間 前衛は手法から作る人々を指す


vol.290 西原 希蓉美

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2013/春
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西原

ノーを言う前に

__ 
諸江さんは高嶺格さんの作品にも出演されるそうですね。
諸江 
そうなんです。元々高嶺さんは厳密にはダンサーではないので、で、集まってくる人もダンサーがメインではないんですね。こっちからどんどん提案していくんですよ。これやったら面白いんじゃないかって。みんなで大笑いしながら。しんどかったのは、30分間ずっと同じ動きをし続けるというものでした。結局使わなかったんですけど、たとえばカップを持ち上げるという行為をずっと繰り返すとか。
__ 
そんなダンスがあるんですか。ちょっと見たいです。
諸江 
それはお客さんに見せられないので使わなかったんですけど、そこから発生する何かを掴むんです。それらを高嶺さんが編集して、作品としてまとめるんですね。一枚のアルバムを作る、みたいなイメージです。
__ 
他には、どんな提案を。
諸江 
原始的な、こんな事してみたいよね、みたいなのをやってました。全然下らないんですけど、楽しいんです。芝居のエチュードもしたし。作品を作る上で、全裸になる事も提案して、全員裸になったことがありました。もちろん裸はタブーなんですけど、作品として必要であれば裸になる事は納得出来る、そんなメンバーでした。
__ 
なるほど。
諸江 
高嶺さんの作品には、世間一般ではタブーとされているものをモチーフにした作品がありまして。そういうのを学生の時に見てきて、ああ、自分の中にも、確かにタブー意識というものがあるなと。何も知らずに見たら拒否感しかないが、作品内で語られる背景を知ったらそんな事は言えない。拒否するのは後にしよう、という。一度試してみて、それでもダメだったらノーと言おう、と。そういうスタンスが学生の時に身について、今でも続いています。
__ 
外の物を受け容れる前に拒否してしまうのではなく、ですね。

タグ: コンセプチュアルな作品 背景が浮かびあがる はじまりのエチュード 受け入れる・受け入れられる


vol.287 諸江 翔大朗

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2013/春
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諸江

線路の上の安心

__ 
「エダニク」という作品。上演も含め非常に評価されていますね。私はまだ戯曲しか読んでいないのですが、大変面白かったです。今年はツアーをされるんですよね。福岡、三重、東京、京都の4都市。舞台は屠畜工場での休憩所。コメディを通して、働く男達の横顔を描くという作品ですが、横山さんが屠畜工場をシチュエーションに選んだのはどのような理由があったのでしょうか。
横山 
屠場については、場所として選んだんです。そこで働く男三人のそれぞれの社会的立場から、何か熱量のあるものを描きたいというのがそもそもの最初です。屠畜そのものに突き動かされた訳ではなくて、もちろん調べていくと非常に深い問題に出会ったんですが。
__ 
働く男を描く、場所を求めていたら屠場に当たったと。
横山 
だからある意味、最初は不純な動機ではあったんです。もちろん、歴史的な背景であるとか、被差別部落の関係も知っていたので、かなり覚悟をもって取材して研究しないといけないとは分かっていましたが。別の場所を選んでもこうした作品を描いていたと思いますが、この場所でなければこれだけの熱量のある作品は書けなかったと思います。
__ 
「目頭を押さえた」でも、男の仕事を描かれていましたね。横山さんは、仕事する人間を描きたいのですか?
横山 
やっぱり、大人を描く時に、仕事というのはその人の存在を支えてくれているものなんですね。だから無職という状態を恐れるんじゃないか。何かに所属出来ている事の安心って、あると思うんですよ。
__ 
ありますね。
横山 
人の厚みを描こうと思ったら仕事を描く必要があるんですね。無職ならば、その事も含めて。そこをどう設定するかは、人物を描く時に考えるところではありますね。
__ 
そこに所属しているというのは確かに安心感があるんですよね。公務員ならばなおさらかもしれない。
横山 
その時間に、そこにいていいと認められているんですね。他者に認識されていなければ人は立っていられないと思うんです。社会的にも認められている立場なので。会社員でもアルバイトでも同じで、未来、スケジュールを立てられて、他人が自分を必要とされている時間ですから。僕も会社で働いていた頃に比べれば、一人の自由な時間はあるんですけど、急に襲ってくる不安というのはあるんですよね。
__ 
難しいですよね、会社で働く生き方も、自分で働かく生き方も。
横山 
普段、多くの人は働くという事に対してそんな事は考えていないと思うんです。仕事や会社、人間関係への不満。でも、それが人の厚みを作っていると思います。ある登場人物が事件に出会って、どういう反応を示して、ぶつかり合うのか。
ABCホールプロデュース公演 第3弾 目頭を押さえた
公演時期:2012/7/20~23。会場:ABCホール。

タグ: 背景が浮かびあがる 今年のわたし 社会人俳優についての考察


引き込む世界

___ 
和知での公演、色々な所に可能性が広がっていくといいですね。
川那辺 
そうですね。現地の人たちに「何やこいつらは」って思われてると思うんです、すでに。変な踊りや変なチンドン屋くらいには認識してくれてる感じがします(笑)それをなんとなくちょっとでも受け入れてもらえればいいなと思います。私たちは面白いと思ってやってますけど、それを「面白いでしょう?」とすると押し付けがましいというか。そういう事は凄く起こりやすいと思うんですよね、無意識に。
___ 
そうかもしれませんね。全然違う土地で作品を上演するとき、やっぱりそこは気になりますよね。お客さんのレベルというものについて、嫌でも考えなくてはならないと思うんですよ。表現に対するとき、文化的な素地が前提として必ず必要だとも言えるし、逆に、強度のある表現であれば、どれほど文化的背景が異なっていても理解は出来るはずだ、という見方も出来る。
川那辺 
やっぱり後者を目指したいです、よね。未知の作品に触れたとしても、その世界に引き込まれるものであれば、面白いと思うんですよね。たとえ、全然芝居を見たことがない人でも。
___ 
たとえば、初めての町を気に入るように。
川那辺 
絶対、誰にでもある感覚だと思うんです。でも、その創作過程で、演出家が自分のやりたいことを突き抜けるまでやらないと意味がないと思っています。

タグ: 背景が浮かびあがる


たわごえについて


__ 
さて、正直者の会について少し伺っていければと思います。最近は戯声(たわごえ)シリーズが展開中ですね。
田中 
こないだ上演した「設計‐発掘」が2作目ですね。
__ 
「戯声」。表現手法としてだけではなく、そのものテーマとしても非常に興味深いですよね。改めてですが概要について伺えないでしょうか。
田中 
思いっきりかいつまむと、いわゆるキャラクターとストーリーがある演劇というよりは、アカペラライブぐらいのイメージです。でもアカペラ歌手ほど僕らは音感とか歌唱力がない。代わりに、俳優として言葉を使った表現が出来るし、そこから、身体の後ろに広がっている背景とか、その人がどう思っているかとかは表現出来る。演劇的な素材を使っているライブ、というイメージです。
__ 
情景が豊かにイメージ出来る点が「戯声」の大きな可能性だと勝手ながら考えています。一作目「スナップ/スコップ」で、砂浜とコップという二つの情景が重なっていって、そこから具体的なイメージが、一気にバアッて拡散するのがとても刺激的でした。いくつもの、映画的に美しいシーンが言葉で表現され、それらが同時に重なるように扱われているようで。混乱すると同時に鳥肌が立ちました。前衛的というのは、こういう事なんだろうなって。
田中 
やり始めると可能性ばっかりで。縛りがないので、地図が書けないんですよ。上手く行ったときも何が良かったのかを分析しないといけない。その分析を積み上げないと方法にならないから。
__ 
それも難しいでしょうね。・・・。実際は私は、演劇作品が演劇としての価値を得るには、まず観客席と舞台が一緒になった状態を持つ必要があると思っているんですよ。これは本当に使い古された表現ですけど、軽く思っている以上におおごとではないかと。
田中 
同じ事を言ってるかどうか自信はないけど、理想的には魔術であったりとか、祝祭であったりとか。語られる事の理解だけで終わるのではなく、語られた内容だったり理解する事だったりが力を持つようにはしたいなと常に思っています。
__ 
分かります。劇場が、舞台作品だったり芸術の発表会場を越えて、群衆がデマゴギーに扇動されてしまうような一瞬のような。
田中 
そういう事が出来たら素敵やね。
「スナッ プ/スコップ」
公演時期:2011/7/8~7/10。会場:西陣ファクトリーGarden。
「設計‐発掘」
公演時期:2010/11(京都)、2010/12(三重)。会場:西陣ファクトリーGarden(京都)、津あけぼの座(三重)。

タグ: 背景が浮かびあがる 観客との関係性 津あけぼの座


自分の役とは、自分の体とおそらくは少し離れたところに

__ 
俳優として、ご自身に足りない部分は。
古野 
何もかも勘でやってきてしまっている部分ですね。体を動かすパフォーマンスとなると、勘だけではどうにもならないので、そろそろワンステップ上にいかないといけないなと。悩んで悩み尽くさないと、自分の拡大にはつながらないと思っています。
__ 
拡大。
古野 
自分の役とは、自分の体とおそらくは少し離れたところにあるものなんですよ。空間か、別の単位かは分からないですけど、そこに少しでも近づくにはどうすればいいのか。そういう事を今まで勘でやっていた。それだけじゃ、いろんな役をこなせないなと思います。だから、楽をしない事ですね。
__ 
拡大するためには?
古野 
たとえば時代物をやるときに、その時代の背景をひと通り勉強する事は簡単なんですよ。でも、その密度は実はお客さんには簡単に分かられてしまうものだと思うんです。知識じゃダメなんじゃないかなと。理解こそが、鮮明に、事細かに現れてしまう。
__ 
ええ。
古野 
三重県で「スナップ/スコップ」をやらせてもらったんですけど、その打ち上げの席で言われたんです。「豊島さんの言葉は絵になって頭に入ってくるけど、あなたの言葉は文章でしか伝わってこない」。今のままではお客さんに考える間を与えてしまうんですね。単純な「海」なんて言葉にしても。
__ 
ええ。
古野 
いま海にいるのか、それは何歳の時に行った海なのか、海に行っている未来の自分を想像しているのか、天気は、海に何があって、と事細かに。自分が漠然と、ぽんと考えただけの想像力では勝負出来ないなと。
__ 
なるほど。
古野 
ドットを細かく。って田中さんに言われた事なんですけど。
豊島由香さん
京都を中心に活躍する女優。

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vol.163 古野 陽大

フリー・その他。

2011/春
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古野

ボール

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橋本さんは、今度どのように攻めていかれますか? 
橋本 
まず、攻められるような体力を身につけなければいけない気がする。具体的な意味でも抽象的な意味でも。やっぱり新しい物を考えたり、人と付き合って仕事したりする時にはスタミナがなければいけない。それから、抽象的な意味で知識のストックが足りていないなと思っている。勉強したいな。
__ 
勉強ですか。座学という意味での? 
橋本 
色々かな。とにかく、今世の中で何がどのような背景を持って起こっているのかを知らなければ、色々な作品を作る、あるいは見る目が養えないと思っていて。
__ 
自分達の置かれている世の中の状況を知らなければ創作なんて出来っこない、という事ですか? 
橋本 
うん。創作活動って、球を外に向かって投げる事だと思うんだけど、どこに向かって投げるのかを見定められていないと、その球の投げ方が分からない。強いのか、早いのか、軽いのか、駄目なのかの判断すら付けられない。野球だと、ストレートはどんな状況でもストレートかもしれないけれど、表現活動は状況が違えばストレートだと思って投げていたものが実はそうでなかったという事もありえるんじゃないかと思うんですよ。

タグ: 背景が浮かびあがる 生き方と世の中の為に動く 今後の攻め方


vol.86 橋本 裕介

橋本制作事務所。

2006年以前
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橋本

道標

__
今後、齋藤さんはどんな感じで。
齋藤
どんな感じ(笑う)。やっぱり、高校からの夢が海外放浪とかだったので。海外と繋がる仕事がしたくって。今回の台湾の人との共同制作のような仕事を続けたいですね。ただ、それには今の僕の力が色々足りなくて。まずは、英語力を。
__
英語力。
齋藤
もっと高めないとなと思って。だから、留学とかしたいなと考えてます。最近。
__
留学ですか。
齋藤
日本語でも海外で通じる芝居が出来るとか言ってて足りないのは英語力です、とか矛盾したような事を言ってるような気もするけど、言葉ってやっぱり特殊なもので。人間として、お互いの気持ちを確かめ合ったりするには言葉はそんなに要らないんですよ。そこから先、もっと深く知り合おうと思ったら言葉以上の物が要求されるんですよ。その人の生きてきた文化背景とか、住んでいる国の情勢とか、そういうものを知らないと。となると、言葉って曖昧なものなんですね。でも僕は、「そこから先」に行こうとしているから。まずは言葉を覚えて、その国の情勢なり文化的違いを覚えて仕事していかないと、やっぱりどこかで行き違いというか溝が出来てしまって。凄い作品を作ろうと思ったら、その溝が邪魔になったりしますし。
__
ええ。
齋藤
あと、制作的には、制作として自立出来るような形を作らなければならないと思ってます。
__
というのは。
齋藤
制作というのは、劇場に就職するぐらいしか生きる道がないようなイメージがあって。本当にそうなのかと。制作の人が劇場に居ついてしまうと、劇団から離れるんですね。その反対のケースもあります。その状況はあんまり良くはないだろうと思ったり。制作の人って、30歳前になったら決まって辞めていくんですよ、この世界を。
__
なるほど。
齋藤
それが、何か切ないですね。あまりにも明るい未来が見えにくいので。若い子はもっと現実的になってきているので、下手すると最後にはいなくなっちゃうんですね。制作者が。
__
まあ、普段は勤めていて、経済的な余裕が劇団員にある劇団もあるとは思うのですが。制作一本で生きていく人がいたら、その人が道標ですよね。
齋藤
うーん。僕は、社会人しながら芝居をする人は素敵だと思うし、そういう人がこれから増えていったらいいなあと思うけど。
__
はい。
齋藤
制作だけで食っていけるという人がいれば、目指す人も出てくるだろうし。やっぱり、そこには夢がないとね。

タグ: 背景が浮かびあがる 社会、その大きなからくり