一緒に盛り上がれたらいいな
- __
- 今後は、どんなスタンスで。
- 白神
- 今年は頑張った感じがするので、もっと適当に・・・じゃないですけど、身近な人を楽しませる事が出来ないかな。
- __
- というと。
- 白神
- 結局、誰の為にやっているのか、を考えるんですよ。もっと身近な人の為の表現を考えたい。
- __
- そうしたいのは、何故でしょうか。
- 白神
- ダンス界に向けての活動、みたいな事になってくるとダンスを見る人だけが楽しい、みたいな。それをずっと避けて来ているんです(その人たちも楽しめればいいんですけど)。身近な人(町を歩いている人でもいいですけど)が普通に楽しめればいいなあと思うんです。誰かの為、というのをやってみたいです。為、っていうと犠牲感が出てしまいますけど、その人はもちろん踊っている側も楽しい、そんなものが作りたい。
- __
- 「批評家が唸って見ているけれども子供が笑いながら楽しんでみている作品」?
- 白神
- そうそう、そんな感じ。そういうスタンスはこれからも続けたいです。
- __
- 素晴らしいと思います。これからも楽しみにしております。
KYOTO EXPERIMENT オープンエントリー作品 - Theatre Company shelf『shelf volume 18 [deprived]※
- 矢野
- 今度京都に持ってくる作品というのが[deprived]というタイトルで、東京では(仮)とタイトルにつけて4月に上演したんですが、20人しか入らないギャラリーで、一週間ほど上演したんですね。音響や照明効果に頼らず、同じ空間で、観客と空間を共有して、物語を物語るという作品です。一度徹底的に、演劇に付随する様々な要素を削り落として俳優の“語り”の力だけを使った作品を作りたくて。
- __
- 東京で上演して、いかがでしたか。
- 矢野
- 今回の[deprived]に限らず、僕たちは基本的に、都度、再演に耐え得る強い作品を作るんだ、という気持ちが強くあります。僕は専業の演出家なので、基本的にテキストは他の誰かが書いたものを使う、というやり方を取っています。セットなども極力作らず、音響も薄く、観客の無意識を支えるように入れるか、あるいは最近はもう音響は無くてもいいかな、という感じで。だいたい装置を建て込む、という感覚からはもう10年ぐらい離れていますね。ただ、再演に耐え得る、といってもそれは同じものを正確に再現できるようにする、ということではなくて、つまりどこに持っていっても同じように上演できるパッケージ化された閉じた作品ではない。環境、つまり劇場という建築物の歴史や場所性、ロケーションなど大きな要素まで含めて、それらを含みこんで、その都度ちょっとずつ作り替えて、稽古場で出来るだけ柔らかく且つしなやかなものを作って、それを現場で毎回、アジャストしてから上演するという感じで。俳優には、まあ相当な負担がかかるんですけど、そういう風に劇場というか<場>の魅力を引き出した方が舞台芸術としてもっとずっと楽しいんじゃないかと。お金が掛からない、というのもありますけどね。でも、貧乏ったらしくはしたくなくて。
- __
- そうした上演形態が、shelfのスタイルですね。
- 矢野
- 貧乏ったらしくしたくない、というのはこちらの気構えの問題でもあって、経費をケチってコンパクトにするというよりか、稽古場で相当な時間をかけ、試行錯誤しながら練り込んで来たものを1ステージ20人しか見られないような空間で上演する。それってむしろ、凄く贅沢なことなんじゃないだろうか、と。もちろんそこには懸念もあって、1ステージ20人だと、変な話客席が全て知り合いで埋まってしまうかもしれない。でもそれは何とかして避けよう。出来るだけ当日券を用意するとか、常連客しか入れないような一見さんお断りの飲食店のような雰囲気じゃなくて、誰でも入れるような、そんなオープンな空間を作ろうと。そのように、どうやって自分たちの存在や場所そのものを社会に対して開いていくか? ということについては、これからももっともっと考えていかないといけないと思っています。ただ先にも言ったように、自分たちのやりたいこと、課題、やるべきことが見えて来ているという意味では今は本当にとても充実した毎日を送っています。
- __
- 課題が見えるという事は、少なからず問題に直面していた?
- 矢野
- 将来的に考えて、何というか、テレビの仕事や、演劇、コミュニケーション教育など教える仕事、レッスンプロっていうんですかね、そういう二次的な仕事でなくちゃんとしたアーティストが、純粋に演劇作品を作ることでそれで対価が支払われるような社会になっていかないと、それはちょっと社会として余裕がないというか、貧しい社会なんじゃないかな、と思うんです。例えば俳優や、スタッフにしても例えば子どもを育てながらも演劇活動が出来るような、そんな世界になっていってほしいんです。まあ、そもそも演劇制作って、ビジネスとしてはすごく成り立ちにくいものなんですけどね。資本主義の、市場原理の中では回っていかない。だけど、や、だからこそ一人一人がただ良い作品を作ればいい、作り続けていれば、というのは違うと思ってて、それはそれでちょっと独りよがりな発想だと思うのです。で、だからそういうところから早く脱して、演劇に関わる一人一人が将来についてのそれぞれ明確なビジョンを持って、これからはそれぞれが一芸術家として文化政策などにも積極的にコミットしていかなければならないと思います。じっくりと作品作りをしている僕らのような存在が、ファストフードのように消費されるんじゃなくて、きちんと評価される。社会のなかに位置づけられる。国家百年の計、じゃないですけど、二年とか三年とかそんな目先の利益じゃない、大局的なビジョンを持って、演出家とか、劇団の代表者という者は活動をしていかなきゃいけない。そんなことをずっと考えていて、いろいろと、作品作りだけじゃなく制作的な面でも試行錯誤をしています。
- ※KYOTO EXPERIMENT オープンエントリー作品 - Theatre Company shelf『shelf volume 18 [deprived]
- 公演時期:2014/10/2~3。会場:ARTZONE。
次の土地の子供鉅人
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- 苦労したシーンはありますか。
- 山西
- 全体的な話になっちゃうんですけど、環境の変化がすごくて。暑かったり寒かったり、雨が降りそうだったり色んな部分が。緊張感が無くなってしまわないようにと思ってました。
- __
- 緊張感という点なら、シーンごとの差はすごいですよね。役を演じる演技と、ツアー演劇のコンダクターの演技。
- 山西
- 僕は劇団員になって初めての公演だったので、単純に演技する上で勉強になった部分が大きくて。でも、またそれとは違う、アドリブのツアーをしているときの演技は別の意味で面白くて。
- __
- 子供鉅人の役者って、ふつうは出来ないような、特殊な経験をしているんだなあと思うんですよ。劇場はもちろん、町家で芝居をするし、ツアー演劇もテント演劇もコントも音楽もイベントもする。演技のスタイルも回によって大幅に違う(それはもちろん、舞台に合わせているという部分は強いけれども)。
- 山西
- そうですね。大事にしている部分は毎回同じで、お客さんを楽しませるというところに尽きていると思います。退屈な時間がないようにというか。
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- クルージング・アドベンチャー3。私は一瞬たりとも退屈しませんでしたね。たとえ船着き場が渋滞していても。お客さんを退屈させない為に次々と新しい展開をし続けているということがあるのかな。その彼らが東京に行く。これまで、大阪という土地と強い結びつきを持っていた彼らが東京に行く。それも新しい展開の始まりでしょうね。
- 山西
- すごく楽しみです。僕は入って間もないけれど、すぐに東京に引っ越しで。そこから時間をあけずに劇場での公演で。
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- 激流に次ぐ激流ですね。環境が変わっても、子供鉅人と言う船をメンバーが強く心に持っている以上大丈夫だと思うんですよ。
- 山西
- ありがとうございます。
はっきりと「何か」で楽しませる
- __
- 田中さんは、枠縁でどんな事がしたいですか?
- 田中
- 自分が好きな芝居がやりたいですね。サワガレは、割と最初の頃からだったと思うんですけど、メンバー間でのやりたい事の合わせ方がわからなくて、それがピークに達して、無くなった形でもあります。だから、やりたい事だけやれる形にはしないといけないなと。
- __
- やりたいこととは?
- 田中
- 今はまだ、ディスコミュニケーションの芝居とか小さい言葉でしか言えないですけど・・・。自分が見ていて楽しいと思えるものにしたいですね。
- __
- 自分が集中出来る環境を創れればいいですね。
- 田中
- 自分の好みを追求したいんですが、その好みもメジャーじゃないかもしれないし。もしかしたら京都のお芝居がそんなに好きじゃないのかもしれない。
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- お客さんに、自分の作品を見てどう思ってもらいたいというのはありますか?
- 田中
- やっぱり凄く楽しんでほしいというのはあります。見て、色んな事を考えるというのは当たりまえなんですけど・・・例えば、全体的にぼんやりとした作品を見て、お客さんが「この芝居を見て、私にはこういう思い出があるからこういう風に感じた」と言われるより、明確な作品を見てもらって「この作品はこういうもので、私はこう思った」と、そういう作品の受け渡しが出来たらいいなと思ってます。
- __
- 何か、考えこんでもらいたいというよりも、はっきりと「何か」で楽しがらせたい。
- 田中
- 京都の演劇って、考える余地がもの凄く広いものが主流だと思うんですが、自分はちょっとそれが苦手で。もうちょい、これはこれだよ、と言いたいし、言って欲しいんです。
(ずっとこんな楽しい事をやっていけたら・・・いいな)
- __
- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- 乾
- 何でしょうね。作品の魅力をきちんと伝えられるようになりたいです。その上で、お芝居が楽しいという思いをずっと持てていたらいいなあ。だんだん、段取りになっていくというのを聞くんです。それはすごく悲しいなぁと思って。ずっと好きでありたい。甘いかなあ。
- __
- 確か、がっかりアバターってバンドもやってると聞いたんですけど。
- 乾
- 音楽はやってないです(笑う)でも、坂本さんが「がっかりアバターはロックバンドです」って言ってはりました。だから劇団って付いてないんですって。
- __
- いや、そうあるべきです。でも、もちろん難しい事です。「勢い」って、実はある種の犠牲の上に成り立つんじゃないか。例えば絵画もロックバンドも、人生の選択肢を捨てた力がそのまま勢いになる場合もある。もちろん、犠牲と勢いのバランスを取るやり方も存在するんですけどね。
- 乾
- 厳しいですね。
- __
- 捧げる奴にしかロックの女神は微笑まない。賭けられる内に賭けるべきだし、そういう人を応援したいです。
- 乾
- 本当に、ずっとこれをやっていけたら最高なんですけどね(笑う)。
そういう女優になりたい
- __
- 川面さんは、お客さんを楽しませたい?
- 川面
- 大きな意味では、そう思っています。
- __
- そのためには何が必要?
- 川面
- 日々の努力ですね。お客さんを楽しませるには、その時持ってるポテンシャルや集中力でどうにかしようとしても無理で。日々の努力や稽古で磨いたものが出るんです。だから毎日きちんと生活していないと。普段怠けて生きているのに、一ヶ月後の本番に向けて努力しても・・・。長い目でお客さんを楽しませる為に自分を磨くという生き方をしないと、面白さや魅力は生まれないし、お客さんはまた見に来てくれない。自分が全部出来ているとは言いませんが、そういう女優になりたいと思います。
- __
- 精神的にも、高いレベルで保ち続ける必要がありますね。
- 川面
- そうですね。でもそれって結構難しくて、そのためには、私には男性が必要なんです。この人の為にキレイでい続けなくちゃならない、そうしていればお仕事もあるし。結局それは恋愛至上主義という訳じゃないのかな、でも繋がっているんです。
芯にあるもの
- __
- 舞台に立っていて、どんな瞬間が好きですか?
- 川面
- 長く演劇をやっていると、舞台に立つという事が生活の一部になってくるんですよね。ご飯を食べたり、寝たりするのと同じような感じに。毎日稽古に行くのが当たり前で、毎月舞台に立って。私、今年出演した舞台が7本になるんですよ。それも今年が多い訳ではなく、去年もそうだったし、大学に入っていた頃は授業に自主企画、磯川家もあったし。だから、舞台の一瞬にスペシャルなものを感じる事はあんまりないですね。
- __
- なるほど。
- 川面
- だって、自分は絶対芝居をやらなくちゃいけない、舞台も映像も真面目にちゃんとやる、ってやってるから。取り立ててこの瞬間が超ハッピーだぜというのは・・・。
- __
- ない?
- 川面
- うーん、強いて言えば、仲良い人が見に来てくれたりとか。それは芝居というか人と人のつながりですけどね。黙々と、期待に応えるように。
- __
- すごい。
- 川面
- すごいですか。
- __
- この質問に対しては、何かしら好きな瞬間があるって伺いますからね。例えば集中している瞬間とか、冷静になれている、だとか。
- 川面
- 私はやっぱり、やってる最中は基本的にはしんどいですね。緊張するじゃないですか。本番のある日は朝早く起きて劇場に行って、リハーサルして、すぐ本番が始まって、たくさんの人に見られて、その後飲みにいって。超大変じゃないですか!
- __
- ええ。
- 川面
- 基本楽しいですけど、基本しんどい。体力作りもしないといけないからジムにも行ってるんですけど疲れる、そのまま稽古に行って疲れが取れない、やっぱり体力付かないからジムに行って、そういうスパイラルが続いていて。芝居が好きな事に偽りはないんですけど、毎日が楽しいと思ってやってる訳ではないですね。
- __
- ベースは楽しいんですよね。
- 川面
- そうなんですけど、でも、楽しいというだけで舞台に立ってる人はどうなのかなと。俳優がしんどくても楽しくても、お客さんが楽しむ事だけが大切なんですよ。なるべくおこがましくないように、調子に乗らないように。演劇を楽しむ為の道具には、私はしたくないです。だから、「舞台上の役者が楽しくないとお客さんも楽しめないよ」って意見がありますけど、そんな訳ないと思うんですよ。そういう、ダサいものに囲まれて、それが当然となる環境には身を置かないようにしたいですね。真面目にちゃんとやる、という事です。
試した方法があるなら
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- なぜ、いまブレイクダンスを?
- 木皮
- このところ、コンテンポラリーダンスの文脈について考えていて。そこで今やってみたら面白いのが、ブレイクダンスなのではと。もちろんお客さんに楽しんでもらうのが前提なので、ソリッドなコンセプトを追求するよりは、楽しみやすい開けた表現にしたいと思ってます。手法としては新しく開発していきたいと思いますが。
- __
- 素晴らしい。
- 木皮
- 実験結果だけ発表されても困ると思うんですよ。そういう追求をして、それがどう面白いのか共有しないといけないんです。
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- 分かりやすさ、ですね。
- 木皮
- 試した方法があるなら、それを商品として高めたいと最近思うんです。
月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
- __
- 月面クロワッサン「オレンジのハイウェイ」※が終わりましたね。面白かったです。脚本協力という役割だったそうですが、どんな事を。
- 丸山
- ありがとうございます。作家の作道くんが書き始めるぐらいの初期から話し相手になるぐらいの役割ですけどね。面白かったんだったら、それは作道くんが面白かったんだと思います。
- __
- この作品、時間のずらしが大きな構造としてありましたね。その構造自体が人物表現に一役買っているという、ダイナミックな使い方がとても良かったと思います。しかも、あの2ndで、ですね。
- 丸山
- independent theater 2ndさんは大変良い劇場で。またもう一度やれるように京都で頑張ります。
- ※月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
- 公演時期:2013/6/21~24(京都)、2013/7/13~14(大阪)。会場:元・立誠小学校 音楽室(京都)、in→dependent theatre 2nd(大阪)。
俯瞰する
- __
- 今まで、この芝居を機に自分の演技が変わった、というような公演はありますか?
- 松田
- ありますね。今はもう解散しちゃったんやけど、France_pan※の「家族っぽい時間」※という作品に参加させてもろうた時。それこそ20代ぐらいのメンバーの中に一人混ざってやってたんです。そこで結構、演出というか演技の細かい指示を色々出されたんです。「松田さん、そこ1秒間をとって」とか。
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- 細かい演技の指示があった。
- 松田
- それまでは、そのままのキャラクターを期待されて声を掛けられる事が多く「素」のままでやっていればよかった(笑)。だから、かなり細かく演出を付けられて、ずいぶん戸惑いました。でもその作品が出来上がるプロセスを目の当たりにして、全体の中における自分の果たす役割をきちんと認識することができた。それ以降、役者の立場でありながらも、全体的な作品の仕上がりを見る事は多くなりましたね。
- __
- 「家族っぽい時間」では、作品としての完成度をはっきり認識する事が出来た。
- 松田
- はい。具体的には「台本の読み込み」「セリフの間」「どれくらいの集中力が必要か」そして「稽古の質と量」などについて考えさせられました。それまでは「地でやらしといて面白いから、そのまんまでやらしとけ」みたいな。前田司郎さんの「生きてるものはいないのか」に出演させてもらったときも、そんな感じだったんちゃうかな。
- ※France_pan
- 04年結成。演劇における恥ずかしい境界を壊しつつ護りつつ、覚束無い言葉のコミュニケーションを軸に、真面目と不真面目の中間地点を探り続ける。揺らいじゃった身体性、現代人の悲喜劇性、ペンペケピーな前衛性。作品はポリリズミックに展開。観客の過剰な能動性や批評眼の重要性を各方面に訴えながら、演劇知の可能性を弄ぶ。(公式サイトより)
- ※France_pan 14th「家族っぽい時間」
- 公演時期:2008/12/12~14。会場:AI・HALL。
寄り添う僕ら
- __
- 飛び道具の良さは調和だと思っています。それは、舞台上の人間関係や会話が様々なレベルで非常に調和されて美しくまとまっているという事だけではなく、演劇作品が、そのテーマが持つ重みに対して肉薄しているという印象がありまして。会話がキャッチボール出来ているというか、それが当然の効果を持って演じられているというか。
- 渡辺
- 舞台上で自然に会話のキャッチボールが出来ているんですよね。私も初めて見た時からその印象は変わっていません。そこが驚きなんです。
- __
- やっぱり。
- 渡辺
- 全体的に、奇をてらわないからかも。お客さんをきっちり楽しませるスタンスだし。でも、みんな心の中ではくそっと思っているんじゃないかなと思います。もしかしたらそれがとっても大事なところかも。
- __
- というと?
- 渡辺
- 主役でも端役でも、表現する時に「自分がどうしたいか」という根幹が関わってくるんですよ。いわゆる「我が(わが)」はあると思うんです。それが、その役の中心点に迫っていたらいいんですけど、集団で作る作品は必ずしもそうじゃない。集団で人々を描くとは何か?それが、七刑人の時にはよく話されていたと思います。
- __
- 飛び道具「七刑人」※。罪人達が死刑に向かう、非常に重厚な演劇作品でしたね。大変面白かったです。
- 渡辺
- 俳優個人がどうしたいか、それは一旦どうでも良くて。その役の中心にどこまで行けるか。もっと言うと、この人達はどこに向かおうとしているのか?が大切なんだ、って。集団で何かをやるのって、そういう事なんだろうと。だから、ワガワガにならないんじゃないかと思います。逆に、ワガワガは簡単に出来るんです。
- __
- 俳優個人を超えた調和を実現する。それはきっと放任する事じゃないんですね。むしろ、個人の可能性をずっと思考し続ける事かもしれない。
- 渡辺
- 「お前の役はこういう性格で、こういう存在なんだ」とかは言われないです。役割としての話はされますけど、具体的にこうあれとかこうしろとかは言われない。「そんなん、ナンセンスや」って。どれだけ物語に寄り添えるかが、飛び道具のお芝居の本質なんじゃないかなと思います。それは優しい所ですよね。この人達、凄いなあと思いますね。新参者の気持ちが続いています。
- __
- そうですね。
- 渡辺
- 人に寄り添うという事については、ここ数年思いますね。藤原さんが言ってたのかな。例えば職場に嫌な人がいたとしても、その人の出来ない事はみんなでフォローするんです。まず、自分の出来る事をやって、その人をフォローして。社会としては排除するのが一番効率的なんですけど、みんなが輝ける場を作るのが、飛び道具で学んだ事でした。
- ※飛び道具「七刑人」
- 公演時期:2012/5/24~27。会場:アトリエ劇研。
沢山のお客さんに見てもらわないと
- __
- 角田さんが男肉の舞台に出て踊っている姿を観るのが好きです。以前の長編「ミートコンプレックス1928」で、角田さんの金太郎姿が目に焼き付いています。他に、「CRAZY GONNA CRAZY」で角田さんを中心に全員が回るダンス。意味不明なんですけど、とにかく衝撃的な光景だと思うんです。
- 角田
- 嬉しいですが、分かって下さる方はあまりいないですね・・・。でも、twitterの感想で「今回の男肉は攻めてた」と書いて下さった時はすごく嬉しいです。
- __
- でも、分からないというお客さんも当然いる。私が男肉を気に入り過ぎているからか、その事実がどうしても受け入れられない部分がありますね。
- 角田
- 僕らの場合は多いんじゃないでしょうか。なぜか女性のお客さんが多いのですが、男性はちょっとそっぽを向いてしまうような。「ただ単に汗だくで一生懸命で踊ってるだけちゃうんか」と言われれば、まあその通りなんですけど・・・。
- __
- 見に来て欲しいお客さんにこそ訴えたい。だからこそ、男肉のチラシの趣味性は素晴らしいと思います。団長が雪山の中に住んでいるチラシとか、素晴らしいじゃないですか。
- 角田
- あれは可愛かったですね。
- __
- そして今は、それほどお客さんを限るチラシではない。
- 角田
- 団員の中でも意見の別れるところで、僕は沢山のお客さんに見てもらわないと、と思っています。楽しませる自信はあるんで。
- __
- なるほど。では、最近の男肉が前後にダンスを持って行っているのは、お客さんを楽しませる方向を重視しているのかもしれないですね。
総合レジャー施設みたい!
- __
- 今まで、目標としてきた事はありますか?
- 四方
- 絶対に、今まで誰も思いつかなかった事がやりたい。そういう目標がありました。物語上のネタとしての面白さよりも、技術とかギミックから作品づくりに入っていました。
- __
- 意外ですね。例えば。
- 四方
- L3の「机上のクローン」という作品では、授業中の生徒の筆談をネタにしたんですね。後ろに机の上を映して、役者は声を出さずに演技するんですよ。似顔絵書いたよーとか言って、ものすごいリアルな、お前これ鉛筆で書いてないだろみたいなものがバンって出てきたりとか。ストーリーは何も考えずに、とりあえずそういう事がやってみたかったんですね。スタアロもある意味そうでしたね。
- __
- 面白そうですね。これからの目標は。
- 四方
- また何か、面白そうな事を思いついたらやろうと思います。うーん、でもお芝居に関わらず、お客さんを楽しませる全般の事がやりたいです。総合的に面白いみたいな。努力クラブの合田さんが2月の公演に来て下さって。「四方さんの公演は総合レジャー施設みたいだ」と嬉しい言葉を下さったんですよ。
- __
- なるほど。
- 四方
- そういう、ずっと楽しい会場の雰囲気が大きかったと思うんです。これからも、そういう楽しい時間を提供出来たらいいですね。
楽しませる事
- __
- 忙しい中でも、変わらないイズムはありますか?
- 竜崎
- 「楽しませる事」やろうなあと思います。お客さんに楽しんで帰ってもらう事が一番だなって。この間大掃除してたら、「いたずら王子バートラム」※の映像が出てきたんですよ。半年経ったので客観的に見れたんですが、これ楽しいなあって。
- __
- 私も拝見しましたが、楽しい公演でした。
- 竜崎
- 秋にショートショートを東京で演るって決まった時、どうやったら受け入れられるのかなって色々考えたりしました。けど、蓋開けてみれば案外楽しんでもらえて。それが嬉しくて。ミジンコターボは、楽しませるのが一番なんやろうなと思いました。
- __
- ショートショート、「儂が燃えて死ぬまでの噺(大炎上)」※「スーパーソニックジェット赤子(大往生)」※でしたね。東京公演はいかがでしたか?
- 竜崎
- 大阪と変わらず笑ってもらえたのが一番嬉しかった。ただ、東京の方の方が素直にお話を見てくれはるなあと。大阪はネタで笑ってくれて、東京だとストーリーで笑ってくれるんですね。
- __
- 動きが面白いとかではなく、話の流れなんですかね。
- 竜崎
- きちんとお話を聞いてくれて、笑ってくれるんです。ネタで笑ってもらう時も勿論うれしいんですが、そういう時は役者冥利に尽きるなあって、嬉しいかったです。
- __
- 同じ日本でもこんなに違うんですよね。デス電所の東京公演を見た時、大阪だったらここは絶対笑うだろうという所ではあまり反応がなく、話の流れが面白い時にこそ笑うみたいな。
- 竜崎
- まあでも、笑いも含め反応が貰えるんだなって安心しました。大きな収穫だなと思います。
- __
- それについては、ちょっと考えている事があって。実は、今日のインタビューの前にミジンコターボの事を考え直していたんです。やっぱり、「観たら必ず好きになる劇団」なんじゃないかなと思ったんです。東京のお客さんも、ミジンコターボを単純に好きになったのではないかと。
- 竜崎
- わぁ。それはめっちゃ嬉しいです。
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- 難しい作品は批評する事で何倍も広がりを持ったり、楽しい作品はエンターテイメント性が優れていて力強い説得力を持ったり、でも、それはどこまで行っても、ときめきのような、恋心を掻き立てるような要素にはならないんじゃないかと思っていて。ミジンコはそうした力を持っているんじゃないかなと、この間のショートショートの時に思ったんですよ。
- 竜崎
- お客さんの心が動いてくれてはるという事ですよね。片岡の台本はホンマにサービス精神が旺盛で、お客さんを楽しませる作品なんです。笑かして、感動させて。お客さんも好きになりやすいんかなと思います。
- ※ミジンコターボ09「いたずら王子バートラム」
- 公演時期:2011/5/20~23。会場:HEP HALL。
- ※ミジンコターボショートショートVol.7「儂が燃えて死ぬまでの噺(大炎上)」
- 公演時期:2011/10/26~11/06。会場:in→dependent theatre 1st(大阪)。王子小劇場(東京)。
- ※ミジンコターボショートショートVol.8「スーパーソニックジェット赤子(大往生)」
- 公演時期:2011/10/26~11/06。会場:in→dependent theatre 1st(大阪)。王子小劇場(東京)。