コップに触る

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この間の「ドメスティック・サイエンス」の時もしたための作品に出演されていましたね。高木さんが朝の身支度や家事を鬼のように繰り返すというパフォーマンスでしが。とても面白かったです。反復が快感になっていくのがとても伝わりました。
高木 
あのシーン、やる事としてはシンプルで。朝起きてから家を出るまで自分が触るもの全てを言葉にするというものでした。その中で、例えばコップに触る、という事について、どこまで自分が貪欲になれるか、というか。コップに初めて触る子供のように、全ての事に初体験であるように。それを凄く大事にしていました。普段当たり前にやっている事を、もう一度フレッシュに体験出来るか、それを心がけて。
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和田さんは物語を作るよりも、印象に残る俳優の身体を作る事に重点を置いているそうですね。どんな姿勢で臨みたいと思われますか。
高木 
あんまり気負わずに。。前回もご一緒させて頂いてるので、そこはもう信頼して。ながらさんが見てみたいもの、私がみてみたいもの、お互い一緒に発見が出来るような形にしていければといいなと思います。
ドメスティックサイエンス
公演時期:2015/1/10~11。会場:元・立誠小学校。

タグ: 例えばこのコップ 反復の生むもの


不条理が服を着て歩いている

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「登場人物の誰にも共感出来ない!」っていいですね。人間は、目の前に何かあればそれが人だろうと動物だろうと物体だろうと感情移入出来る能力を持っていると思うんですけど、それは重力とか質量保存とか精神とかの絶対の法則やシステムに根ざして生きている以上、好むと好まざるに関わらずずっと動いている筈で。それが通用しないジョーカー的な存在が出て来ると、時として開放感を覚えるんだと思うんです。多分、笑ったりする。泣いたりもする。
畑中 
ふんふん。
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そんなキャラクターだらけの作品というのはかなり調子が狂いそうで、愉快そうですね。
畑中 
そうですね。共感の話で言うなら、例えば目の前の人がコップの水を飲むのを見て、(ああ喉が乾いているんだな)と自然に分かるという事だと思うんですけど。でも次の行動が、(えっなんでそうしたの!?)という感じです。自分の感覚に変換出来ない、でも、だからこそ見ていられるのかな。
__ 
なるほど。コップの水にホットコーヒーを混ぜ始めたら困りますよね。そんな不条理さがある?
畑中 
でもその人物にしてみればちゃんと理由があるんです。全くの不条理でやってる訳ではない。役に感情移入出来ないけれど、お客さんもその場に参加しているような感覚になるみたいです。見ている人の話によると。それは冒頭の演出のせいもあってか。
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悪い芝居の冒頭のシーン!毎回驚きますよね。今回も楽しみです。
畑中 
これは本当にお楽しみなんです。舞台を見た瞬間、これは何かあるぞと思ってもらえるんじゃないかと思うんです。

タグ: 泣く観客 例えばこのコップ


- - - - デは - - - -

市川 
僕は存在しないものに興味があって、不在のものに対して意識を向かわせて行きたいんです。存在しないものに言葉が結びついていく動き。役者が不在の何かを思い出す、その時に言葉が生まれる。
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言葉以前のものが言葉になる瞬間を見せたい。
市川 
目の前のコップを取って「これはコップです」というのは凄く簡単。それはコップっていう物とコップっていう言葉が現実的な目の前で結びつきを持つからだと思います。でも、そうじゃないような、舞台上で発された、対象やあてのない言葉ってどこにも結びつかないし、何者もそれをとらえる事が出来ないので、言葉自体が物になる、そういう瞬間があるんじゃないかと思うんです。それは純粋な言葉と呼べるんじゃないか。だから、デはあまり物語を押し進めるみたいな言葉をあまり脚本に書かなくて、誰にも何にも関係ない与太話を喋っているという事が多いんですね。必要ではない、だからロジックに組み込まれない、観客の考えるパズル的な物語の読み解きとも関係ない言葉が、ようやく、物としての言葉として認識されるんじゃないかと思っているんです。

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言葉以外の色々な方法

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これは俳優としての諸江さんに伺いたいのですが、演技するという技術を誰かにかいつまんで説明するとしたら、どんな言葉になりますか?
諸江 
うーん、何ていうんでしょうか。意識する技術だと思うんです。普段何気なくやっている動作を、改めてやらないといけない。例えばコップを持つ時はいつも右手なんですけど、見せる時は左で持った方がいい場合があるんです。そのとき、考えずに自動的にやってくれていた動作に、意識をあえて挟む事になる。無意識を意識して再確認する技術だと思います。誰かに見せるために。
__ 
その説明の中では、無意識とは何でしょうか。
諸江 
体の慣れとかクセ、ですね。もっと言うと、何も考えずにやっている自分を制御する。
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ありがとうございます。子供に説明するとしたら?
諸江 
子供相手にだったら、「言葉を使わずにお客さんとお話する事だよ」と言いますね。
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おお!それはいいですね。
諸江 
言葉でお話してももちろんいいけど、それ以外の色んな方法があるよね、と。例えば拍手というのがあって、目の前の人に言葉じゃなく、手を叩いてメッセージを伝えている。
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もしかしたら、言葉よりも明確に伝わるのかもしれない。

タグ: 拍手についてのイシュー 例えばこのコップ SeizeTheDay


vol.287 諸江 翔大朗

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2013/春
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諸江

方法

岩田
彼女は遊劇体の野外劇で大暴れしていた人なんですけど、ああいう事をやっている人が会話劇をやったらどういう事になるんだという趣旨で始めたのが魚船だったそうです。だから、稽古は内面を深く探るというものだったので。とりあえず私も訓練がてら、とりあえず出してくれと。
__
なるほど。
岩田
最初は野外劇でしてたのをそのまま持ってきていたので、本当に筋肉を鍛えるというトレーニングでしたね。発声練習も、喉を枯れるまで出すみたいな感じだったんです。魚船をやっていく元々の趣旨は、会話劇をどうやるかという事なので、一緒に勉強をさせてもらったというか。山口さんがワークショップを受けにいったりとか、演出方法を学びにいったりとか。色々拾ってきて。私は私で、石田陽介君というダンサーのカンパニーに出させて貰ったりして。で、体と心が・・・どうやって繋がっていったらいいのかとか、勉強していますね。やっと、説明が出来るようになったところですね。納得して人に言えるようになったというか。
__
それは、例えばどういう事なんでしょうか。
岩田
無意識の行動って、面白いじゃないですか。それをどういう風に演技にするかとか。すごく楽しいですね。
__
それが、作品になったりもするわけですね。
岩田
そうですね。壁ノ花団の第二回公演の時は、言葉と体を分けた演技を行いましたね。水沼さんの演出が、「わざと棒読みでやってくれ」というものだったので。それはそれで面白かったですね。色んな実験をしたり。
__
なるほど。
岩田
(コップを手に取る)これから他のものに興味が移った時に、どういう人格が見えるか、またはどういう人格だからこういう興味の移り方をするんだ、みたいな事ではなく、役の「コップを持つ」という行動で、これを持ったらどういう人間になるかという・・・何とか分かりますかね。
__
ええと、形から、じゃなくて先に与えられたシークエンスから内部を再構築、みたいな。
岩田
あ、そうです。ご名答。色々、持つ物があったんです。じゃがいもとか電話とか。興味をどういうふうに振るか、とか、足が悪い事をどういう風に思っているかとか。そういう事を色々。面白かったですね。
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なるほど。
岩田
でもそれだけじゃ、自己満足かなと。で、この間の芝居では、物語というか設定をきちんと語れる役を内部からも外からも考えてやったんですけど。
__
内部とは、どういう事でしょうか?
岩田
単に、感情ですね。例えば(コップを持つ)この、コップを持つというのは感情があるから触っているとは限りませんよね。ただ単に触っているだけかもしれない。そういう、行動から考える中身ですね。後は役としての関係性とか、台本上の役柄とか。そういう事をうわーってやって、大変でした(笑う)。本当に一年掛かりました。けど、面白かったです。やっとスタートに立ったって感じです。
__
素晴らしい。それを私は見れなかったという訳ですね。
岩田
でもね、本当に実験的というか、初の試みだったんですよ。一つの役に対して、山口さんと話す事なんて無かったんですよ。「この役はこうだよね」とか。一切。それはどうなんだ、っていう抵抗があったんですよ。演出が求めているだけのものではなく、こちらからも提示したいし。時間掛けてそれをすり合わせていくのが良いと思っているんですけど。今回は役についての話をし、だから物凄い大変だったんですよ。
__
すり合わせですか。
岩田
でも、彼女の演出自体も、「この役はこう思っているからこうやってくれ」という事は一切言わないし、そこは彼女の好きな所なんですけど。単純に、「低い声で言ってくれ」とか、「間を詰めてやってくれ」とか、そういう事なんですね。「上を向いてくれ」とか、「ちょっと焦ってみて」とか。
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そういう、方向性だけのチューニングというか、私の見方かもしれませんが、そう難しくはないですね。
岩田
そうですね、だから自分の持って来たものとは大きくぶれないですね。演出と考えている事が、刷り上っていく。
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へえー。面白いですね。
岩田
面白いですよ。
遊劇体
1983年12月、京都大学演劇部を母体として団体結成。1984年7月キタモトマサヤの作・演出で野外劇を上演、旗揚げ。1990年までは京大西部講堂でのみ公演活動。91年より現主宰キタモトマサヤが実質上の主宰となり、野外劇場での公演のほか小劇場にも進出し公演活動を行う。(公式サイトより)

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vol.54 岩田 由紀

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岩田