当たったら死ぬよね
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- ZTONの稽古はどんな感じで進んでいくんですか?
- 土肥
- 最初に段取りを付けてから細かい所を付けていきます。今回は本当にセリフを覚えるだけじゃなくて、それぞれの種族のディテールを詰めて考えてこないといけないんですよね。例えるなら、河瀬さんの言葉を借りると、ガンダムの一年戦争です。「ストーリーが一本あって、舞台はホワイトベースの内部が主なんだけど、しかしその外にも色々な部隊があって、敵の勢力にも色々な人物やドラマの存在を感じる事が出来るだろう。今回は戦記として、世界が感じられるような作り方をしてこい」と。それは今回の特長ですね。
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- それが肝なんですね。
- 土肥
- そうですね。その世界の空気を立ち上げるために、それぞれの部族の生き方を持っていないと構成出来ないので。今までと何よりも違うのは、借景がないんですよ。日本史という背景があれば大体イメージ出来るので。
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- 完全なオリジナルの世界観なんですね。
- 土肥
- 江戸時代なら米食ってるのかとか想像出来るんですけどね。
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- 今回は、そうした世界観を作る所から始まるんですね。
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- 意気込みを聞かせてください。
- 土肥
- いや~、僕はもういっぱいっぱいで。でも主役なんですよね、天の章、地の章ともに。頑張ります。
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- 殺陣もね。
- 土肥
- 今回は殺陣のアプローチも今までとちょっと異なるんですよ。言ったら「当たったら死ぬ」ものを作ろうとしています。
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- おお!というと。
- 土肥
- 今までは「カッコイイ!早い!やっつけた!決まった!!」ものを作ろうとやってましたけど、当然、刃物が当たったら切れるんですよ。そこを大切に見せようと思ってます。今回は刀の殺陣だけじゃなくて、短刀とか斧とか弓矢とか、バリエーションのある殺陣を作っています。種族ごとに狩りの方法が違うので。そして、それを振るう人たちの思いを大切に描きたいですね。これは、戦国無双じゃないよと。ゲームみたいな殺陣の爽快感というのは、今作ろうとしている「天狼ノ星」ではきっと浮きます。
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- なるほど。大改革ですね。
- 土肥
- 河瀬さんが突き詰めて考えてきたものが、ようやく仕上がりつつあるという感じですね。
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- スピード感があって美しい殺陣。当たったら死ぬという当然の事をやろうとしているのが気になりますね。
- 土肥
- そうなんです。「はい、ここから殺陣ですよ」みたいな事にはしたくないですね。芝居で殺陣を見るとき、技術そのものには実は感動はないんだと思うんです。ドラマがあって、剣を持たないといけない理由が分かって、相手を殺すのでも制圧するのでも、全ての行動にそれなりの理由が体感出来るのが殺陣をやる意味だと思うんです。話に対して浮いている殺陣ショーにはしたくないですね。それはみんなが思っていると思います。
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- 演劇でやっている意味がないからですね。
- 土肥
- そうですね。殺陣だけ出来てもしょうがないですからね。実際の剣術じゃないし。
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- 芝居が始まった瞬間のドラマに共感出来た時、目の前で行われている演技に臨場感が生まれて、ようやく予測から離れる。そこからが面白いと思える。というモデルですね、きっと。
- 土肥
- そうですね。早い、カッコイイだけになってしまうと、きっと物語を見せている意味が無くなってしまう。物語の空気に触れていってほしいです。とか言っていらんギャグとか言っちゃうんですけどね。この間遊戯王カードのネタ言っちゃったり。そういう矛盾も含めて。
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- プリキュアネタとかね。
- 土肥
- あ、狗神エイト※の時ですね!懐かしい!寝坊して「今何時?プリキュアは!?」とかね。「あの役あんなナリでプリキュア見るねんな」って思ってもらえたら嬉しいです。
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- あのネタ、自分で作ったんですか!?
- 土肥
- はい、河瀬さんは呆れながらも流してくれるんですよ。ダメなときもたくさんありますけど。
- ※狗神エイト
- 公演時期:2009/8/27~30。会場:ART COMPLEX 1928。
何やってんだよ
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- さて、石原正一ショーについて。本公演の最新作は「ハリーポタ子」※でしたね。
- 石原
- このTシャツ、ポタ子なんですよ。これ。
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- あ、可愛いですよね。石原正一作品の特色は70~80年代のキャラクターが多数登場しているという点ですが、どういう理由があるのでしょうか。
- 石原
- 僕が中学高校という一番多感な時期に好きだったテレビとか漫画とか音楽。これらが染み着いているんですね。それをアウトプットするとどうしてもそうなっていくんだと思います。
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- なるほど。
- 石原
- 今の若い子らの面白いもの体験していないので出せないんですよ。まずゲーム世代ではないんです。アーケードゲームはさんざんやったんですけど。もし家庭用ゲームを持ったら、ずっとやり続けて仕事しないんじゃないかな。
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- あの時代に好きだったものを舞台に出す。それは例えばジャンプの表紙が一面に張られた舞台だったり。
- 石原
- そうですね。
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- しかし、分からないネタの時に客席が凍り付く現象がありますよね。
- 石原
- ありますね。
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- 私、あの瞬間が結構好きなんですよ。全然気まずいとかではなく。何でだろう。
- 石原
- 分かります。アンケートにもよく、「分からないところも多かったけど面白かったです」って。それはしゃあない、と思いながら書きます。ガンダムや石ノ森章太郎の世界も、今の子は分からんやろうなと思っても、書くしかないんですよね。飛躍しますけど、タランティーノが自分の好きなものを詰め込んだ映画を作るのと同じで、オマージュとパロディは全力でやるんですよ。ガンダムが分からなくても、その芸が面白ければいいんですよ。そういう開き直りで作っています。
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- ポタ子も、不条理なシーンの方が多いですしね。
- 石原
- 尾崎とコンサートしたりね。
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- あ、出てきてましたね。
- 石原
- 何やってんだよと笑ってくれれば嬉しいですね。
- ※第24回石原正一ショー『ハリーポタ子』
- 公演時期:2011/9/13~20(大阪)。2011/9/23~26(東京)。会場:in→dependent theatre 1st(大阪)。下北沢シアター711(東京)。
キリエ・カルテット
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- 新良さんは、専門学校から、でしたっけ。
- 新良
- いえ違いますよ。大阪芸大。ウチの劇団は、皆芸大です。
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- いつも、稽古は、どんな感じで。
- 新良
- 稽古ですか?ウチは公演の稽古しかしないんですけど、2、3ヶ月前から、土日だけ集まってやるんですけど。もー何だろう、エチュードとかも絶対しないし、台本渡ったら立ち稽古をして、一回やったらそこはもうあまりしないですね。あとはもう、ダンスとか。
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- へえー。すごい。
- 新良
- だから一回休むと、死が待っている感じの。
- __
- 次の公演は確か。
- 新良
- 「キリエカルテット」※が、10月大阪で、11月東京です。
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- あ、行きます。
- 新良
- あ、是非。一週間やってるので。
- __
- 一週間か。
- 新良
- 8月が一番忙しくて。一週目に、ガンダム系のに二つ出るんですよ。で、二週目がVampireKillerで、3週目がガンダム講談の東京公演で。で、土日は全部兎町の稽古が入ってて。
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- 一週間毎ですね。
- 新良
- そうなんですよ、でもほぼ歌だけなので。大変なのはアフロ13が。でもその間に兎町が着々と進んでいるので、私には確実に死が待っているんですけどね。
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- マジですか。
- 新良
- ホントに。恐ろしい。
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- 死ぬとどうなるんですか。
- 新良
- 最悪ですね、もう。演出も出来てないと、何も言ってくれないから、そのまま自分の責任になりますね。相手役の人が聞いておいてくれれば大丈夫なんですけど。でも私が稽古のスケジュール組むんですけどね。一応演出助手なので。
- ※兎町十三番地04公演「キリエカルテット」
- 公演時期:2007年10月16~11月04日。会場:大阪市立芸術創造館。
ニュータイプ
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- 作品の作り方について、お伺いして行きたいと思います。どうやって作ったのか全く分からない振り付けがあるんですが。終着駅(ピリオド)で、T.a.t.uのAll things She Saidに合わせて男子が横に並んだり縦に並んだりする振り付けがあったんですが。
- 池浦
- はい。
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- あの曲中ずっと、中央の男子がこういう振り付け(両手を水平に水かきのように回す)をしながら、始終不安な表情を見せながら持ち上げられたりしていたんですが、あの振りはどうやって作ったんですか?
- 池浦
- あれはガンダムに乗ってるんですよ。ニュータイプとして戦ってくれと言われて。最終的にやられちゃうんですけど。ずっと脅えているのは、敵が物凄いいっぱいいるから脅えてるんですよ。
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- そうだったんですか、あー。
- 池浦
- 何故ガンダムに乗ったのかは僕も分からないんですけどね。
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- 終着駅(ピリオド)はダンスレビューの構成でしたね。
- 池浦
- シルクドソレイユをパクったんですけどね。男肉 du Soleilは、それの一発限りのパクりみたいな感じで。前に、友達からシルクドソレイユのDVDを借りて見たんですけど、話がめっちゃ下らないんですよ。少女が自分探しの旅に出たりとか。でもそこに訳の分からないものが出てきたりするんですよ。で結果完結しちゃうんですけどね。何て素晴らしいんだろうと。何の関係もない中国軍とか、すごい技とかが出てきて。どーでもいいなーと。
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- ええ。
- 池浦
- でも、為しえていると。こういう事がしたいなと思って。話自体はどうでもいいんですけど、最終的に底抜けのハッピーエンドになるという。で、作り始めたんですね。前回のは只のお話になっちゃったんですが、アートコンプレックスでやった作品のテイストとうまい事融合出来たらなと思っていまして。終着駅(ピリオド)も、僕らがやりたかった事ではあるんですけど、やり切れていなかったんですね。
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- 全然ですか。
- 池浦
- 全然ブチ上がってはいなかったんで。質量ともに。アングラも色んなフォーンマンスもバラバラに入り混じったお祭りで、最後に話が完結した、みたいな。一個一個の質が弱っちいなと。次回は、自分達にとっては勝負どころですね。
ガンダム
- 塩山
- そうですね、人より睡眠欲がつよいですね。
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- ははあ。
- 塩山
- 瞬間に記憶がとぶんですよ。バイトでレンタルビデオを棚に返しにいくんですけど、ディズニーのコーナーに行った時に、よいしょって直したその瞬間に乞うパッと気が飛んで。ディズニーランドにいるんですよ。
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- 夢を見るのは凄いですね。
- 塩山
- ガンダムの棚ではガンダムの夢を見るんですよ。
- __
- ははは。
- 塩山
- ガンダム好きなんですよ~。「ネタやろ」って言われますけどねー。
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- ああ、明かにネタですもんね。
- 塩山
- 寝てて稽古に遅刻したこともあって。「よし、稽古にいかな・・・クーっ」、その時はホントの熟睡してしまって。起きたの8時くらいだったんですよ。4時から稽古だったのに。で携帯にめっちゃ着信入ってて。で「もしもし~~」ってかけたら大丈夫!?」って心配されて。事故に遭ったって思われてたらしくて。あとでめちゃくちゃ怒られましたね。
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- 遅刻は人類の敵ですからね。わかりますよ。恐怖ですよね。
- 塩山
- 恐怖ですよね。
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- 昼から本番がある日に遅刻したことがあって。10時集合なのに家で起きたのが10という事があって。「あわわわわ」ってよく漫画であるじゃないですか。ホントに人はああなるんですね。
- 塩山
- なりますね。
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- 全員に土下座して回ったんですよ。
- 塩山
- きつ。
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- なんか、遅刻の、人に与える恐怖はぬえのようなものですよね。モンスターですよね。
- 塩山
- 怖いですよね。でなんかもう、それだったら逆に「ゴメンゴメンッ」っていった方が多分うまく回るんだろうなってのが最近あって。こう「スイマセンスイマセン」っていっても、あんまり周りの人はきにしなかったりとか。
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- ああ。
- 塩山
- 人によりますけど。でも開き直った方がいい場合もありますよね。
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- なるほど。
- 塩山
- でも本番とかはホントに。夢見るね。
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- 見ますね。遅刻した夢とかみますよね。まあ、現場によりけりですけどね。
- 塩山
- てか場の空気に読めなきゃだめですよね。
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- ああもう、食事中にする話じゃないですよね。
- 塩山
- 起きた時、一瞬で胃が痛くなりますよね。
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- どんな言い訳があるだろうかとか考えますよね。
- ※一瓶200円するビール
- 輸入食材店で購入したもの。明らかに国産のものとは味が違うので、よくテーブルに出していた。
- ※お屠蘇
- みりんで作る場合もある。