夢が続いてる
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- 「緑子の部屋」。俳優の方々が強烈だったなあ、って思います。わっしょいハウスの浅井さんは大分昔から知っていますが良かったですね。鳥島さんも印象的でした。そして武井さん演じる女性がですね、自立しているようでありながら本当は足場がない、そんな人間像。頼り無い背中でした。部屋の隅に追いやられて、同棲中の男性に相手にされない彼女は、本当にマッチ棒の折れたみたいな印象を受けましたね。
- 西尾
- 彼女がラストにする夢の話、友達のアヤちゃんがあられもない格好で走っていってビルから飛び降りる話なんですけど、それは実際に武井さんが話してくれた事なんですよ。夢の中だと気づいていて、これは飛び降りるなと予感して。逃げ出したくなったけれども、それでも夢の中で周囲に「あ、逃げた」と思われたくないから「ふんふぅん♪」とか鼻歌みたいなのをしながらその場から避けていって、でも「ああ、あたしは逃げた」という自覚は凄くあったと。
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- なるほど。
- 西尾
- 最初、その話を聞いた時は、「この子はそうなるんだろう、落ちるんだろう」という確信の話だったんですけどね。そのピースを私が物語の流れに組み込んで、「罪悪感を感じた後味の悪さの話」になりました。
見た事のない生物と暗い空間に閉じ込められる
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- MOKK「f」※について。一年前にアトリエ劇研で拝見しました。とても面白かったです。私が見たのは松尾恵美さんのバージョンでした。粘液にまみれて這いずりまわってる彼女がとても怪物っぽくて、しかし彼女から突き放されている気持ちもずっとありました。だからか、結構寂しい気持ちがありましたね。
- 村本
- 「f」は、ソロ作品シリーズの2作目として作りました。その前は「Humming」、その前は「LAURA」という24人の群舞作品を作っていました。ダンサーが自分と向き合って根を詰めて作り上げる作品をやりたかったというのがあります。
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- なるほど。
- 村本
- 「Humming」は3人のソロで表現される音(歌やハミングや録音)が重なりあい、一つの旋律が生まれる、全体で一つの作品でした。「f」は完全にダンサー一人ずつの作品です。鉄のテーブルに女性が一人横たわっていて、その後45分ずっと観客と空間と向き合っている状況が続く作品です。それに耐えうる女性ダンサーとして、寺杣彩さんと上村なおかさんと松尾恵美さんにお願いしました。
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- なるほど。
- 村本
- お客さんが今ここで見た事のない生物と対面しているという体感、ダンサーも自分が今ここで囲まれて見られていると強制的に実感せざるを得ない状況が「f」だったんです。再演は可能な作品だと思うんですが、一回一回が全部違う作品でした。
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- 女性性が作品の根幹だったようですが。
- 村本
- 女性そのものに視線を当てた文学作品や演劇はこれまでも多くあったと思うんですが、それはダンスにはあまり無かったんじゃないかなと思います。遺伝子にプログラミングされている行動に、時に女性は動かされている感覚があります。そういう波ってどんなに落ち着いた女性にもあるんですよ。実は、それには理由があるとどこかで読んだ時に納得したんですね。
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- 理由とは。
- 村本
- 生理前にイライラするのは、身体が「これから子供を宿す」という準備の為に人を遠ざけたり内向的にさせたりするんですよね。身体がアクティブにならないように敢えて抑える。それが女性ホルモンによるものだと詳しく本で知って、すごく衝撃を受けたのと、自分が細胞やホルモン、遺伝子によって行動や情緒まで決められているんだな、と。
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- そうした複雑怪奇と同じ空間に同居する45分。
- 村本
- ところが、「f」のダンサーの意見としては、私の考え方が男性性に近いらしいんですけどね。案外、そうなのかもしれないと思っています。
- ※2012 MOKK -solo- "f"
- 公演時期:2012/9/11~13(東京)、2012/10/12~13(京都)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、アトリエ劇研(京都)。
「しちゃう」
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- 実は私、dracomの祭典・公演はもれうた※、事件母※、弱法師※、この間のたんじょうかいしか拝見出来ていなくて。どれもとても面白かったんですが、やっぱりもれうたの衝撃は凄かったんですよ。
- 筒井
- ありがとうございます。
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- dracomの特徴といえば俳優の身体と台詞のズレだと多くの人が思い浮かべると思うんです。つまり、俳優の台詞を前に録音しておいて、本番時にはスピーカーでそれを流し、意図的にズレを作りだす事で、観客の受容器官は別々に俳優の演技を受け止める事になる。私はあれがとても好きでして。そうした演出を発想されたのはどのような経緯があったのでしょうか。
- 筒井
- 2007年に作品を作るという事で、企画書を書く事になって。その当時、ミュージカルに興味があったんです。好きとは言えないんですが、興味があって。
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- 興味。
- 筒井
- もれうたの前の2年間に2本、ミュージカル作品の祭典を作っていたんです。歌って踊って、でも歌はとてもへんてこりんなメロディで、アレンジもスカスカで。でも、いずれは静かなミュージカルを作れるようになりたいと思っていました。演劇計画2007参加に向けて企画書に書いたタイトルは「もれうた」で、公園で鼻歌を歌っている人、それだけで作品を作れないだろうかと思っていました。
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- わかります。面白そうですね。
- 筒井
- でも、格式高い作品にしちゃおうと。(この「しちゃう」という言い方をよくするんです)その格式高さがおかしみになるんじゃないかと思うんです。鼻歌で歌われているのはオペラの歌曲で、歌詞が映像で出てきて、鼻歌を歌っている人がいて、それだけの作品。でもそれだけの作品だったら多くのお客さんは寝てしまうだろうと思って。だからセリフのテキストを書きました。が、すると客の意識はそちらの方にばかり向いてしまう。僕は鼻歌の方にフューチャーしたかったから、どうしようと思って。だから、会話のセリフを録音して、それをちっちゃいボリュームで流せば鼻歌の方が勝つ。そのコンセプトまでは稽古場に持っていくまでに出来たんです。練習して、俳優が身体だけで演じられるようになった。
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- なるほど。
- 筒井
- しかし、それだと俳優がセリフを覚えない手抜きという事になってないか。努力の跡が見えないといけないという言い方をする人もいるんですよ。僕はそういう評価の仕方は好きじゃないんですけど、でもまぁ、努力の跡を示すために、俳優たちがセリフを覚えている事を示すために思いついたのが、事前に録音しておいて、俳優が身体だけで演技した後に遅れてセリフが聞こえてくるという演出をしたんです。これなら、俳優はちゃんとセリフを覚えていると示せる・・・そういうつまらない発想からだったんです。まあ、それを実際試してみたら、過去に体験した事のない感覚があったんです。これは面白いなと。
- ※dracom 祭典2007 『 もれうた 』
- 公演時期:2007/9/8~9(京都)、2007/9/29~30(伊丹)。会場:京都芸術センター(京都)、AI・HALL(伊丹)。
- ※dracom 祭典2010 『事件母(JIKEN ? BO)』
- 公演時期:2010/10/14~17(京都)、2010/11/18~21(東京)。会場:京都芸術センター(京都)、THEATER GREEN BOX in BOX THEATER(東京)。
- ※dracom 祭典2012 『弱法師』
- 公演時期:2012/9/7~9。会場:京都芸術センター。
タイトル
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- で。タイトルがまだ決定してないんですよ。
- 奥田
- ああ、対談の?
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- はい。てか、コーナー自体の名前が。で、お願いがあるんですけど、タイトルを決めてください。
- 奥田
- えっタイトルすか? マジすか。
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- 是非はい。なんかもー、考えつかなくて、この際もう。できれば是非。人に委ねたいっていうか。
- 奥田
- あ・・・・・・わたしの中でいまはやってるのがあるんですけど、えと、「ピタゴラス イッチ」ってしってます?
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- ああ、♪ピタ?ゴラ?スイッチってアレですね?NHK教育の。
- 奥田
- の中で、「いつもここから」って芸人がやってる「アルゴリズム体操」あれがすきなんですけど。
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- あ、はいしってます。
- 奥田
- アレの中から取ったらどうかな。
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- ああ・・・・・・
- 奥田
- 甥っ子がいるんですけど、一歳半の。その子がすごいその体操が好きなんですよ。それやってる時がもうめっちゃかわいくて。
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- ああ、可愛いですねそれは。
- 奥田
- ・・・・・・「頭を下げれば大丈夫」っつうのはダメですかね?
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- え?
- 奥田
- 「アルゴリズム」の歌詞なんですけど。そこをその子がやるのがめっちゃかわいいんですよ。
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- はい。
- 奥田
- いや、よく口ずさんで自転車に乗ってるんですけど・・・・・・色んな人がそうなったらいいんじゃないかなあって思って。「下げる」って言うのは謝るという意味も含めそうですけどね・・・・・・
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- ではそれで。※いやピッタリですよ。なんか色んな人に頭を下げまくってるんで、丁度いいですね。
- 奥田
- いやでも、名付け親になるのはうれしいですね。
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- ありがとうございます、ホント。
- 奥田
- いつか高橋君が他のにしてたらああー私のこと忘れたんだなあーっておもうかもしれない。
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- いやいやいや。
- ※名付け親
- この時タイトルが決まる。