質問 大内 卓さんから 森 孝之さんへ

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前回インタビューさせて頂きました、劇団飛び道具の大内卓さんから質問です。「本屋大賞をどう思いますか?」
森  
うーん、どうなんでしょう・・・あまり知らなくて。
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エンドユーザーでも出版社でもなく、本を売る書店員が売りたい本という観点で選ぶ賞らしいです。
森  
つまり、掘り出し物・・・
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みたいですね。村上春樹の「1Q84」とかが10位ですから。ノミネートしているのは誰なんだろう?
森  
話題の本ではないけれど面白い本を知るいいきっかけになるんですね。

タグ: 村上春樹


震撼

藤原 
そもそも僕が演劇に深くコミットするようになったのは、元・快快の篠田千明に呼ばれて「キレなかった14才りたーんず」という企画公演にパンフの編集者として呼ばれたのがきっかけです。こまばアゴラ劇場に毎日貼り付いて、ほぼ全公演をいろんな角度から観つづけたことで、演劇というものの多角的な魅力が見えてきた。なんか、感触をつかんだんですよね、空間の。作り手たちの熱気のぶつかり合いを近くで目撃できたのも大きかった。ただ、観客動員数はすごくあったのに、あの頃の彼ら(6人の演出家たち)は演劇界ではまださほど認められていなくて。「若いやつらが内輪でハッピーなことやって騒いでる」みたいに軽んじられる雰囲気があった。僕はそれらに対して「彼らは彼らなりの若い感性で世界を切り取っていますよ」と証明する必要を感じたんですよね。ただ、そのためには言葉が必要だったし、まずはたくさん舞台を観ないとお話にならなかった。そしたら単純に、いろんな面白い舞台に出くわしていって、気づいたら戻れなくなっていたという(笑)。エンリク・カステーヤさんとの出会いとか衝撃的でしたね・・・・・・。まあこの話は長くなるので今はやめておきます。
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若い才能。認められるべきですね。
藤原 
その過程でマームとジプシーの藤田貴大くんと出会っちゃったのは人生が変わるレベルの大きな出来事でした。『たゆたう、もえる』という作品を、現『シアターガイド』編集長の熊井玲さんに誘われて千秋楽に駆け込みで観に行って、びっくりして。いったいどんな人が作ってるのかと思ったらすっごい線の細い、でもエキゾチックな目をした美青年が現れて、やばいこれはマジで天才に遭遇してしまったと。震撼しましたね。それで家が近かったこともあり、一時期はほぼ毎日くらいのペースで飲んで話してました。村上春樹ふうにいえば、2010年の夏に2人で飲んだビールの量はプール一杯ぶんくらいに相当すると思いますよ(笑)。もちろん演劇の話もしたけど、映画とか小説とかの、あれがヤバイとか凄いとか・・・・・・。彼もやっぱり最初は認められてなかったし、傑出した才能があるからこそ、周囲の反発も凄いものがあったと思います。でも藤田くんはタフだったなー。彼とその仲間たちが、演劇界の空気をずいぶん変えたと思いますね。
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素晴らしい。
藤原 
演劇界にかぎらず、世界は変わりつつあるんだなとひしひし感じてます。震災の前から、戦後日本を支えてきた社会の様々なシステムは斜陽に差し掛かっていた。それが震災で完全に露呈されたと思います。ハリボテだったじゃん!、っていう。逆に言うとこの混乱期は、若い世代にとっては大きなチャンスだとも思う。僕は人生のわりとそれなりの時間を酒場で過ごしてきたので、オッサンに説教されることなんて日常茶飯事だったんですよ。でも震災後、オッサンが自信を喪失したのがハッキリと分かりましたね。むしろ謝られることすらある。こんな日本にして悪かった、とかなんとか・・・・・・。とにかく、いい仕事をする若者がちゃんと認められるのは健全なことだと思う。
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いい仕事をする若手。
藤原 
問題は、僕自身がもはやそれほど若くないということですね(笑)。だから単に若ければいいとも思っていない。大人には大人のやり方ってもんがあると思う。
快快
2004年結成、(2008年4月1日に小指値< koyubichi>から快快に改名)。集団制作という独自のスタイルで作品を発表し続ける、東京を中心に活動する劇団。パフォーミングアーツにおける斬新な表現を開拓し「物語ること」を重視した作風で今日の複雑な都市と人を映し出しながらも、次第に幸福感に包まれゆく人間の性をポップに新しく描いてきた。(公式サイトより)
マームとジプシー
藤田貴大が全作品の脚本と演出を務める演劇団体として2007年設立。同年の『スープも枯れた』にて旗揚げ。作品ごとに出演者とスタッフを集め創作を行っている。08年3月に発表した『ほろほろ』を契機にいくつもの異なったシーンを複雑に交差させ、同時進行に描く手法へと変化。09年11月に発表した『コドモもももも、森んなか』以降の作品では、「記憶」をテーマに作品を創作している。シーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法を特徴とし、そこで生まれる「身体の変化」も丁寧に扱っている。(公式サイトより)

タグ: 一瞬を切り取る 村上春樹 内輪ウケの・・・ その人に出会ってしまった 丁寧な空気づくり 作家の手つき


「かえるくん、東京を救う」

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さて、この間のウイングフィールドでの「かえるくん、東京を救う」。非常に面白かったです。
豊島 
ありがとうございます。
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あれを見ていて、何かこう全般的に、「正しい方法で演技している」という印象を受けました。丁寧に出された言葉が、こちらに正確に、優しく伝わってくるというか。豊島さんの力もそうですし、そして村上春樹の言葉にもそういう正しさがあったのかなと。
豊島 
そうなんです。凄いんです。村上春樹さんのテキストはやさしい言葉で、なのに、強度があって、深みがある。それがすごいな、と思います・・・ありきたりな言い方しかできなくて恥ずかしいんですけど・・・。配列も無駄がないし。たとえばセリフ忘れで何か一つの言葉を抜かしたり加えたりするときはもちろん、入れる箇所を間違えたりしてもすぐにおかしいなって思うんですよ。それはあたりまえですけれど。でも、その言い間違いによって文章としての精度がぐんと落ちるのがわかるような、かなりパンチのある気持ち悪さです。セリフを間違わずに音に出す時に、気持ちいいというとおかしいかもしれないんですけど・・・。
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分かります。正しく気持ち良く出したセリフが客席に気持ち良く流れ込んでくるというか。
豊島 
そうなんです。何で読んだんだったかな、ある記事に、村上さんは原稿を声に出して確認しているっていうようなことが書いてあったんです。やっぱりそういう作業をされているんだなと思いました。
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だから、朗読劇という形式だったんでしょうか。まあ、実際は本を持って読んでいるシーンはあんまりなかった訳ですが。
豊島 
そうですね、少なめですね。
朗読劇 かえるくん、東京を救う
公演時期:2008年10月22(水)~23(木)。会場:ウイングフィールド。原作:村上春樹。

タグ: 恥ずかしいコト 村上春樹 朗読劇についてのイシュー


vol.105 豊島 由香

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2008/春
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豊島

質問 益山 貴司さん から 豊島 由香さん へ

Q & A
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さて、前回インタビューをさせて頂きました益山さんからですね、豊島さんにご質問を預かってきております。
豊島 
はい。
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「好きな映画は何ですか?」
豊島 
ええ、何だろう。うーん・・・是枝さんの、「誰も知らない」という。
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ええと、柳楽優弥の。
豊島 
あ、そうです。
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あの悲惨な。お母さん役のYOUが絶妙なキャスティングでしたね。
豊島 
そうですね。ダメなんだけど憎めない。
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最初に画面に出てきたとき、あまりにハマっていて笑っちゃいました。YOUには本当に失礼な話なんですが。
豊島 
ええ、あのYOUは、誤解を受けるかもしれませんが、魅力的でした。あの母親はひどいかもしれないけど、彼女なりに背負っているものがあって、自分とは無関係に思えない、あちら側の悪い人、とは思えない。あと、「歩いても歩いても」という映画があるんですけど、面白かったです。特に劇的じゃないんだけども感動しました。人はしんしんと怖くて悲しくて、でも同時に面白いなというのをあらためて感じました。是枝さんはドキュメンタリーを以前よく撮られていて、そこで培われたであろう視点が好きなんだと思います。村上春樹さんに通じると思います。どちらの方の作品も、人を、世界をよく見て、耳を澄ましていて・・・。
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それを再構成して作品に昇華するという感じなんでしょうね。作品性に結び付けるって凄いなと思います。
豊島 
都合良くしていないんですよね。あと、料理のシーンがめちゃくちゃおいしそうですね。枝豆とかがザアって出てきたりとか、食材をかき混ぜたりとか。希林さんって料理好きなんだろうなと思いました。一番好きなシーンですね。

「誰も知らない」
2004年日本。監督:是枝裕和。
「歩いても歩いても」
2008年日本。監督:是枝裕和。

タグ: ドキュメンタリー 村上春樹


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