無限迷路
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか。
- 真壁
- 女性ですね。
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- というと。
- 真壁
- 私の中で決定的に無い部分です。このひと、大人で女性やなっていう人の内側から滲み出る女性らしさ。包容力と言えるものかもしれないんですけど。ミジンコターボの解散公演でお母さん役だったんですけど、全く自分に無い部分なんで。めっちゃ色んな作品を見て参考にしました。お母さんといっしょとかも見てました。
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- なるほど。
- 真壁
- それがスッと演じられるようになるのは、いつなのかな。
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- その役を演じるべき役者、というのはどうしてもあると思っています。解散公演での真壁さんの王妃役は、正直、カジュアルな感じでしたね。
- 真壁
- お姉さん的な感じになりましたね。後悔はないんですけど、そこに関しては、自分としても納得のいっていない部分があります。色んな役をやらせてもらったんですが、上品さは掴めなかったですね。どうしても。元々体育会系でちょっとボーイッシュなところに行ってしまうので、それが違ったらどこに行こう、無限迷路をさ迷う感じ。
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- 上品さ、ね。
- 真壁
- 女の人として生まれたからには、一度くらいはそう思われるような芝居をしたいですね。
ウケを狙う少女
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- いままでの目標とこれからの目標を教えてください。
- 嘉納
- あまり目標とは関係ない生き方をしてきているんですが、何となく、なんか笑いが取れる人になれたらいいなと思っていました。アドリブとかだとそこそこ笑いを取れるんですが、台本とかで笑いを取れるというのはとても難しいですね。いまは、割と自由自在になりたいなあと思っています。
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- 20代の頃から、笑いを取りたかった?
- 嘉納
- 取りたかったですねー。でも、やっぱり若い女の子に笑いを取れって難しい話ですよね。いまぐらいになると周りの目線が違うし、自分のなかでも、こんな感じでいったれ、というのが分かってくるし。
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- なぜ、そのぐらいの女の子が笑えないんでしょうね。
- 嘉納
- 女の子はなるべく、おとなしく、笑われないように育てられるからかも。どちらかというと、被笑わせられ側みたいな。男の子はもっとやんちゃで、笑いを作る側としてやってきている。よっぽど台詞が面白くないと、女の子が笑いを取るのは難しいんですよ。男の人が作る漫才とかコントは見てて面白いんですけど、やはり男の人が作る男の人の面白さなんですよね。
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- それが演劇にも延長してきているわけですね。
- 嘉納
- 男性の作家・演出家さんだから、かもしれませんね。男性が考える女性の面白さは、やっぱり男目線なんですよ。上手い方もいますけど。でも、女性ならではの笑いは、例えばユニット美人さんとか、女性にしか作れない笑いだし。それでモテるという事はないと思うんですけどね。その、モテるというのを、一旦供物として犠牲にしないといけないかもしれませんね。
子供が出来たら・・・
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- 渡辺さんは結婚して、愛知に行くんですよね。
- 渡辺
- はい。
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- 出産は考えていますか?
- 渡辺
- 今回、「四人のショショ」をやるにあたって、妊娠と出産について女性陣で勉強したんですよ。そこで分かったんですが、私は出産したいと思った事がないんですよ。
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- なるほど。
- 渡辺
- 子供が嫌いという訳じゃなくて。その、結婚・妊娠・出産・子育てというのが、世間一般では自然な事だとされているけれども、実は凄く難しい話だと。結婚してなかなか子供が出来ないみたいな話がありますからね。まあ、結婚したんですけどね。
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- 自分が子供を産むとは思ってない?
- 渡辺
- 一緒に暮らしたら何か変わるかもしれませんね。環境によって違うだろうし。子供はめちゃめちゃ好きだし。
- 渡辺
- 今は子供を産まない、という選択肢を、何故自分は取っているのか。なんですよね。
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- 渡辺さんの遺伝子がまだその時期ではないと思っているから、なのかなとはちょっと思います。邪推だな。
- 渡辺
- いいですよ邪推でも。
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- 今は子供を作るべきではない、みたいな。
- 渡辺
- そうなのかな。ゲームで言えば、フラグが立ってないという事なのかも。自分で立ててないのかもしれないですけど。
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- もしそうであれば、環境が変わったらきっと凄く変わるかもしれませんね。
- 渡辺
- どうなるんでしょうね。子供が出来たらもうちょっとしっかりするのかな。あんまり変わらないんじゃないかな。ちょっと楽しみではありますね。
質問 高橋 志保さんから 春野 恵子さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、高橋志保さんから質問を頂いて来ております。「表現活動を続けていくと、同世代の人がどんどん辞めたり変わっていったりします。それでも続けていく中で、持ち続けたいポリシーはありますか?」
- 春野
- この歳で私、浪曲界のぺーぺーなんですよ。どんなに下手くそでも、一生懸命やっていれば何とかなるだろうという・・・ある意味低い志で始めたんです(笑う)。でも、浪曲に出会った時に、「私は、これを一生続ける」という決心で入ったんです。
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- そういうものに出会えるのはとても幸せな事ですよね。
- 春野
- そういうものに出会わないうちは、自分の人生は始まってもいないし、生き始めてもいないんじゃないかって思っていました。何も知らない世界に飛び込むのも無謀だとは思うんですけど、でも、そこまで散々悩んで来ているから。出会えるのも稀ですからね。だから、ずっと続けていこうと決心しました。
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- 素晴らしいと思います。
- 春野
- それに、出来なくて当たり前・一生続けていれば何とかなる、というぐらいから始まっているので。だからこそ、応援して下さるお客様を裏切れないし、人並み以上にお稽古しないといけないんです。・・・幸せな事に、浪曲の世界に入って、「私には違うかも」って思った事が一度たりともないんですよ。
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- それは素晴らしい。しかし、一生のものに出会えるのがまず奇跡ですね。
- 春野
- 母の育て方があるかもしれませんね。母は、「女性らしく結婚しなさい」とか、「子供を産みなさい」とかはあまり言わないんです。自分の一生を賭ける仕事を見つけなさいって言ってくれたんですね。まさか、浪曲師になるとは思わなかったでしょうけど(笑う)。
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- 大変でしょうけど、仕事が楽しいというのはとても幸せですね。
- 春野
- やりがいがありますよね。だから、もう少し上手くなりたいですね(笑う)。私の場合は全然出来ないところから始めたので。お客様も「上手になったね」って仰って下さるんです。最初に比べてこんなに伸びてます!って感じかな(笑う)。
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- お客さんも、そういう成長ってとても嬉しいと思いますよ。次の質問です。「2.表現活動をやめる事について、考える事はありますか?」
- 春野
- 才能ないんだろうなあと考える事はあるんですけど・・・でも、無くてもがむしゃらに努力するタイプなんです。才能ある人だけしかやっちゃいけない訳でもないと思っています。
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- どのようなパフォーマンスを発揮出来るかは、才能とか頭の良さだけじゃないですからね。
- 春野
- 結局は結果を出さないといけないというのはあると思うんです。だけど、私は誰かの評価よりも自己評価を大事にしているんだと思う。どんな風に頑張ったか、どれだけ上の段階に進めたか。誉められても、自分の中でだめだったら「もっと頑張ろう」と思うし。そこに重きを置いてるからこそ、やっていけるんだと思いますね。
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- なるほど。
- 春野
- 簡単に納得できるタイプじゃないし、不器用なんです。でも、だからこそ面白いんだと思うんです。積み重ねていって、変わってきてると思います。ずっと続けていきたいですね。
性別のない感じ
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- BABさんとは、結構久しぶりにお会いするんですけど、以前の少年的な印象は薄くなりましたね。何だかすっかりお母さん的な。
- BAB
- 体型的に少年だったしね。小学校の頃、女の子が自分の事を「僕」って呼ぶ事あるじゃないですか。私がそうでした。私って言うのが何か恥ずかしくて、気持ち悪くて。どうしても、スカートとか履けなかったですね。
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- その抵抗が薄くなったのは。
- BAB
- 大学入ってからですかね。何か、女の子がやってる事が恥ずかしかったんですよね。何でしょうね。でも、性別のない感じというのが居心地がいいですね。
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- 性別がない時代が来るといいですね。
- BAB
- そう思われますか。
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- 個人的に、結構意識するんですよ。特に、女だからこう、みたいな。もう全て植付けなんですけどね。女性からは、面白さが生まれないみたいな思いこみが。そんなの、面白さそのものに男性性を反映してるだけの思いこみに過ぎないんですけど、なかなか脱却出来なくて。
- BAB
- 私は、男性・女性っぽすぎる人が苦手で。きっと、話が合わないからです。だから、身の回りには中性的な人が多いです。
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- 2010年にインタビューさせていただいた、サンプルの松井周さんが、男性らしさと女性らしさの間に引っ張られている人が好きだとか仰ってましたね。
女性らしさ
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- 藤田さんがお芝居を始めたのは、どういうキッカケがあったからなのでしょうか。
- 藤田
- 高校の頃から演劇部だったんですが、宮沢章夫さんが地元にいらして。そこでの共同制作に携わったのが今の原動力だと思います。これからも続けていきたいなって思うようになりました。それから東京に行ってみたり、少しの間就職してみたり。
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- 今後、お芝居に関わる上でどのような力を身につけたいですか?
- 藤田
- 母方の叔母が、すごく自立した女性なんですよ。服飾関係の仕事に就いていて、子育ても両立していて。
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- ああ、女性らしさですね。
- 藤田
- はい。そういう女性になりたいなと憧れますね。女性らしい女性というか。舞台上で、一人の女性としての役が板に付くようになったらと思います。
面白いということって
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- 私が最初に見たトリコ・Aの作品は、「肉付きの面 現代版―絵―」※でした。それからは断続的に拝見しています。凄く好きなんですよ。
- 山口
- そんなー。ありがとうございます。そう仰って頂けるだけで。
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- いえいえ。ぜひ伺い事があるんです。私はトリコ・Aの作品を拝見する度に、「男性らしく・女性らしく」という意味でのジェンダーを強く意識するんですが・・・
- 山口
- それはもうちょっと詳しく聞きたいです。
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- 私が勝手に思っているだけの事かもしれませんが、何だか演劇で受ける面白さの根元って、いわゆる男性的な攻撃的発想からくる事が多いんじゃないかなと思うんです。これはもちろん、実際の性とはあまり関係なく、文化的な役割としての男性性で。一方トリコ・Aの作品は豊かなイメージがあって、それが女性性的な印象があります。たぶん、論理的にユーモアを作り出していくんじゃなく。
- 山口
- ええ。
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- だから、最初に反発が自分の中に立ち上がる事もあるんです。ラストに近づくにつれて、良さに転化していくんですけど。面白さを定義づけて構築する余裕よりも、良さを生み出す力強さを感じる。
- 山口
- 私は自分の作品を、女性的なものと言うよりは、未熟だなあと思っています。その未熟さの事を女性的であると言うならば、私はその女性的な部分を良いとは思わない。それに、私が常々感じる面白さは、その男性性的な面白さなんですよ。・・・昨日、子守歌代わりに「笑の大学」のDVDを見たんですけど、めっちゃ面白かったんです。ああいうのを見ると私にはとても真似出来ないと思うんですが、でもこういうレベルにまで行きたいとも思うし。
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- はい。
- 山口
- 未熟であるが故の訳が分からなさには、安住したくないです。
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- いや、感性に訴えかける作品と、「せりふのないガラスの動物園」※のように構成の強い作品もあって、何か意識されてるんじゃないかなと思っていました。あれは、本当に「男性性的な」面白さがあったと思う。
- 山口
- えー。ホンマですか。無意識ですね。明確に分けてないです。
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- そうなんですね。意外です。「ガラスの動物園」は本当に面白かったです。最初は脚本のシーンをダンスで表現したコンピレーションかとかと思わせておいて、徐々に物語りが姿を現して、最後は会話劇が展開するのはゾクゾクしました。
- 山口
- ありがとうございます。そう仰って頂けて。頑張ります。
質問 宮川 サキさんから松井 周 さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた、sundayの宮川サキさんからご質問を頂いてきております。1.生まれ変わったら何になりたいですか?
- 松井
- 中性的な人になってみたいですね。男性でも女性でもない人と言うのに憧れていてですね。両性具有というのとはちょっと違うんですけど。
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- というと。
- 松井
- 男性らしさ・女性らしさから離れてみたいんですよ。
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- いしいひさいちの「ののちゃん」で、あのクールな女の先生が「男らしさ・女らしさ」を「あいまいな部分を抱えておく事の出来ない度胸のない人間が飛びつく言葉」だと言い切っているコマがtwitpicで話題になっていました。
- 松井
- いいですね、それ。やっぱいしいひさいち凄いな。僕はどっちにも引っ張られている状態の人が好きで。身動きとれないけど、安定している。自分が偏見をもっているかもしれないけど。
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- 2.最後の晩餐。何を注文して誰とどう過ごしたいですか?
- 松井
- あー・・・僕は納豆が好きなので、納豆とご飯と味噌汁と、あとは家族と過ごしたいですね。
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- どんな納豆ですか?
- 松井
- ひきわりも好きですし、藁納豆も。冷蔵庫に納豆が六個以上納豆がないと不安なんですよね。毎食食べています。
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- 最後の晩餐として、たとえば、納豆のグレードをあげますか?それともいつも食べている納豆ですか?
- 松井
- いつも食べているものですね。
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- 素晴らしい。最後だから高いものを食べる、それもありだと思いますけど。
- 松井
- 死に備えた時、ニュートラルでいられない事自体に恐怖すると思うんですよね。死に怯えるかもしれないのに、ちょっと頑張っちゃったものを用意するのは、それはそれであるかもしれませんが。僕は、最後の日だからといって乱されたくはないですね。