質問 杉原 公輔さんから 松原 由希子さんへ

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前回インタビューさせていただきました、杉原さんから質問を頂いてきております。「良い役者とは」。
松原 
難しいなあ。相手役の方自身が(演技巧くなったな自分)と思えるような演技が出来る人かな。
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というと?
松原 
相手役に気持ちよく芝居させてあげられる役者が良いんだと思います。
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会話劇を例にすると?
松原 
相手役Bが怒るという芝居をしなければならない時、B自身が「怒る」に持っていくのではなく、気づいたら怒っていたみたいな。それが良い役者というか。Aの役者がコントロールしているという事なんですけど。相手が出したい音をこっちが引き出す、みたいな。
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相手役が、怒っている事に気づかないぐらいスムーズに怒れる。そんなコントロール力。
松原 
という事はAの役者は、凄く怒らせる言い方が出来たという事ですよね。現象を生める役者が上手いなあと思います。
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会話のキャッチボールの筋書きを把握して、逃さない人と言えるのかもしれませんね。
松原 
会話劇が凄く上手な人と演技した時って、自分もなんか上手になったような気がしてしまうんですよ。向こうが返してくれるし、自分が動きたいように動けるし、みたいな。
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つまり、向こうがこっちの演技を理解してくれている、という事なのかな。
松原 
ゴール決めた人より、そこまでの道のりを的確なパスでアシストした人が、私は魅力的に見えるし重要に感じます。その人が蹴りやすい足元に、蹴りやすいタイミングでボールを出してあげれば、あとはもう相手役が思いっきり足を振り上げるだけでキチンとゴールできる。
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そのシーンが必要としている内容とその為の文法を前もって理解している事が前提ですね。細かいレベルで言えば、その会話で出すべき答えにたどり着く道筋を内外から検証している事。もっと細かく言うと、会話ってものすごく微細な要素に分解出来るんですけど(例えば目の瞬きの角度とか目を閉じるテンポも表現の要素のパーツだし、相手のそれらへの注目/無視も重要な情報だし)。意外にそれはお客さんに響いていくんですよね。それらのやり取りが呼吸を劇場に呼び込んで、共感が生まれて、重なり合いが出来て。
松原 
うんうん。
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それはめっちゃ難しいですね。
松原 
難しいですけど、それが出来ている人を見ると上手だなと思います。

タグ: 会話のキャッチボール 引き出し合う 会話劇研究


難しいセリフの話

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LINX'Sでの匿名劇壇の作品「ハイパーフィクション」を見ました。面白かったです。まさにメタフィクション作品でしたね。元劇団員達が関係性の迷路に落ちてしまうお話。
吉本 
ありがとうございます。
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どんな事が大変でしたか。
吉本 
松原さんとの掛け合いのシーンが難しくて難しくて。会話をしつつ、でもただの会話じゃなくて、やっぱり見世物なので、本心でセリフを言うんですけどここは聞かせる、みたいな。ここは相手のセリフを聞いて。会話するって本当に難しいですよね。
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会話劇、難しいですよね。
吉本 
相手のセリフが聞けていないとか、自分のタイミングでセリフが言えなくて気持ち悪くなっちゃったりとか。
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普通の会話でありながらそれが面白いというのは難しいですよね。多分、吉本さんにしか出来ない会話劇があるんでしょうね、きっと。

タグ: 会話劇研究 見世物


会話劇に興味あり

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いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
白井 
そうですね、今こうしているような会話を見せる芝居がしてみたいです。このテーブルを囲んでいるだけの関係性だけで見せられるような。
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素晴らしい。会話劇。
白井 
会話劇といっても、面白くない会話劇というのはやっぱりあるんですよね。「これが面白い会話劇だろう」と思って作られた芝居が、本質を掴んでなくて面白くなかった、という事はあるので。それはエンタメでも同じなんですけど。
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そういう、集中した空間ですね。

タグ: 役者全員の集中が一致 いつか、こんな演技が出来たら 会話劇研究 関係性が作品に結実する


つぐみ荘の日々

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さて、是常さんが次に出演されるこまち日和wake.4「つぐみ荘のブルース」宮川サキさんが初めて、一人芝居以外の作品を作られるという事で。とても楽しみです。
是常 
今回、同じシーンでもキャストが入れ替わるんですよ。固定のシーンもあるんですけど、回ごとに同じシーンでもキャストが違うんですね。
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へえ!
是常 
台本もその分だけあって、本当に毎公演、違うんです。同じシーンを、人がやっているのを見るんですよ。ベースの台本は変わらないのに、全然違うシーンに見えるんですよ。
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それはキャストシャッフルとは違うんですね。その特定のシーンに出てくる人物が違う。
是常 
そうなんです。しかも、サキさんは役者に「そのシェアハウスに住んでいる人の人柄が見たい」と言ってて。だから役作りをしないで欲しいと。ウソをつかないで、そのままでいいからもっと魅力的に、って。私そのものが立ってはいるけれど、私自身じゃなくて。
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その役としてリアルであり、でも、役作りという役者の作業はしないでおく?
是常 
台詞で言っても、この作品では浮くと仰ってて。例えば「あ、そうなんや」という相づちの台詞があるとして、それが「人物その人が本当にそう思って言葉に出した相づち」または「その人がほとんど無意識で口をついて出た言葉」でなければ浮く、と思ってて欲しい、と。そうなると、やってて分かるんですよ。あそこにいると、その人そのものじゃないけれど、こういう人なんだ、こういう癖をもつ人なんだ、というのが分かってしまうんです。凄く変な感じです。自分を少しだけ逸脱しているかのような。役者としては、これは初めての体験かもしれない。
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人柄が見えるようにする、という事なのかな。自然な演技ってありますよね。サキさんが作品から除けておきたい「役作り」は、悪い言い方をすると、きっとお客さんの想像の余地を奪ってしまうものなのかもしれない。現時点で、どういう面白さになると思いますか?
是常 
説明が難しいんですけど、見てて笑っちゃうんです。何回見ても、違うところで笑ってしまう。その人が生活としてやっている事が、外から見ていて何か笑っちゃう。「な・・・何やってるんだろうこの人?」、みたいな。その人そのものを見て、最終的に、その人面白いな、喋ってみたいなと思ってもらえたら。

タグ: 会話劇研究 舞台にいる瞬間 役作り=放棄する事から始まる


やってやろうやってやろう

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最近の、演技を作る上での気づきを教えてください。
畑中 
ずっと言われ続けてきた事でもあるんですけど・・・舞台の上では、何も考えない方がいいな、と思っています。もちろん、稽古ではそういう細かい事を作り続けるんですけど、それを本番でやると、役として生きられず、閉じてしまう。何も反応出来なくなるんですね。だから、こうしようああしようというのは稽古場で済ませておくべきだ、って。
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素晴らしい。意識的になるべきところは意識的になる?
畑中 
やれてる人は無意識にやれてるんだと思います。引き出されるように台詞を言えるように、芝居は常にリアクション、と山崎さんからずっと言われていて。自分発信の台詞や行動であっても、相手の状態をどれだけ汲み取れるかどうか。それって、「やってやろうやってやろう」という態勢じゃ絶対出来ない事なんですね。
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正直者の会の田中遊さんが昔言ってたんですけど、相手に呼びかける台詞、例えばAが「おーい」というのが台本にあったとして。呼びかけられたBはそれに振り向くという台本なんですけど、もしBが「呼ばれていない」と感じたら振り向かなくていいし、たとえBが振り向いたとしても、「Bの意識がこちらに向いていない」と感じたらもう一度呼びかけても良い、と。そういうのって、役者の責任で作るべき領域ですよね。実は観客としてはそこをもの凄く重要視している気がするんですよ。
畑中 
山崎さんもそのような事を言っていて。台本というのはあくまで記録にしか過ぎないから、台詞に「あははは」って笑う一行があったとしても、もし笑い続けたいんだったらずっと笑い続けていてもいいんだ。エチュードで出来た事が台本になると出来なくなる、ってすごく良くある事なんですよね。
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そうですね。
畑中 
だから、もうリアクションリアクションと思っていて。課題ですね。
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その上で伺いたいのですが、畑中さんが考える魅力的な俳優とは。
畑中 
さっきの話の回答とかぶっちゃうと思うんですけど。「見たいもの」を出した時に、そう来てほしかった!というのと、そう来るとは思わなかった!が両方出来る人が魅力的だと思います。村上誠基さんは大好きな俳優さんの一人なのですが、相手ありきのリアクションの芝居をずっとしてて。当たり前の事をしているんですよね。具体的な何かにずっと対峙しているように見える。そういう人は強いな、と思います。
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お客さんが期待していながら、でもびっくりするもの。新しい価値観を見せられて、さらに納得してしまうもの。

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舞台で生きる

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Hauptbahnhofで今後やりたい事はなんですか?
金田一 
京都と東京の二都市公演はしたいですね。
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結構、お客さんの反応が違うんでしょうね。
金田一 
そうだと思います。でっかい芝居したいなあ。野田さんの昔の作品をやりたいんですよ。ずっとやりたいと思ってたんですよ。
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あなたにとって、演劇を作るとはなんですか?
金田一 
うーん。いまちょっと自信を無くしてるからなあ・・・でも、唯一他の事より上手く出来ること。
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演劇を使ってお客さんに与えたい事はありますか?
金田一 
ちょっと明日元気になってくれたらいいなあ、みたいに思ってます。不思議なもんで、悲しい話を聞いても元気になる事はあると思うんですよ。作品を見てへコんでも元気になったような気がする。笑って帰ってほしいという事じゃなくてね。
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金田一君にとって、魅力のある俳優とは?
金田一 
凄く基本かもしれないけど、相手の台詞・自分の台詞にきちんと反応出来る人。
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というと。
金田一 
台詞を投げかけられたら反応出来て、今を生きているかのような人は魅力的ですよね。ただ動きたいから動いているようなのじゃなくて。「こういう風に言われたら、私は下手に動く。けれど、今そういう風に言われたからここで止まって話を聞いている」というのがあるんだよね、役者って。それを自然と出来る人。でも、それくらいの役者じゃないといけないですよね。かといって「こういう風に言われなかったから動けませんよ」というのじゃなくて。
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玉置玲央さんのユニット、カスガイの「バイト」という作品があるんですよ。その作品は役者の立ち位置を固定しなかったそうなんです。
金田一 
そういうのもあるんだね。
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役者は台本の全てを知っているから、逆に難しい状況だったんだろうと思います。そんな中で凄く緊張感に溢れた作品だった。
金田一 
そういう事が出来る役者がカッコいいんだよね。自分の動きに根拠が持てている人、は相手が動く為のキッカケも与えてあげられるんですよ。ここで動けよ、みたいな。橋爪功さんが凄かった。ザ・キャラクターの稽古場の代役で僕が入ったんですけど、橋爪さんが何か原稿を書いている演技をしていて、で、書けなくなってしまった。ペンを机に音を立てて転がしたんです。「あ、今だ」と分かって、「どうしたの」って僕の台詞を言えたんです。パスをくれたんですね。うわあ、めっちゃいい役者だなあって思った。これかー、って。

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「さくら」

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掴むのに、苦労した役はありますか?
丹下 
最近で申し訳ないのですが、トリコ・Aさんでやらせて頂いたさくらが一番つかみにくかったですね。ふだん、派手な演技で賑やかなお芝居をさせて頂く事が多いので。言ってみれば普通の女の子だったんです。丹下真寿美としては、彼女を理解するのは難しかったです。
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丹下さんは、確かにジャンルとしてのエンタメ系に出る事は多いようですが、そういう意味で会話劇が難しかったりはありましたか?
丹下 
そうですね、日常生活の所作が難しかったです。相手の言葉に対する反応が凄く大かったんですね。びっくりしたら手を広げて、というのが私にとっては普通だったんですよ。トリコ・Aさんはそれとは作り方が全然違うんです。私が作り上げた土台は使えなかったですね。稽古初期に茜さんに頂いた指示が「そんなに一個一個反応しなくていいです。動かないで下さい。それぐらいが一番、丁度いい」と。どうしても、動かなきゃという気持ちがあるんですが、それをしてはいけないと。
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舞台に立っている人間をそのまま感じるために、演技は却って邪魔になる、という事かもしれませんね。リアクションを一旦保留するというか、反応する動きを一旦保留する。すると、それを見ている観客は彼の真意をつかもうとして想像を広げるんじゃないかなと個人的には思います。こうした言い方が相応しいかは分かりませんが、京都で支持されている会話劇はこういう意識で作られている気がします。良いか悪いかは別にして。
丹下 
なるほど。
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丹下さんの演技、私は不自然だとは思わなかったです。むしろ、いつも相手を受け止めるような反応をしていたと思いました。この人には近寄ってはならないと思いました。あれは凄かったですね。
丹下 
良かったです。全ての男性に対して粗末に扱わないでください、傷付けないようにしてくださいと言われていて、でも、誤魔化すような事もしないでと。「そんなのゆうてないし~」みたいな事も言わず、じゃあどうするの?って悩んでたんです。
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そうですね。詰め寄られても、一旦受け止めてあげるみたいな。それが、ワクワクするような嘘と駆け引きのバトルシーンを見ているようでした。すごく面白かったです。
丹下 
嬉しいです。素直に嬉しいですね。小屋入りしてからも稽古の時間を頂けて、結構変わったんです。一日一回通したりして・・・。

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vol.317 丹下 真寿美

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
丹下

主体が動かされる時

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「TEA×HOUSE」の時、町家の一部屋で上演されていましたね。出演者はもちろん、観客席がお互いの顔が見える状態でした。「ハシ×ワタシ」も挟み舞台でしたし。そうした距離感を意識されているのでしょうか?
山口 
観客席と舞台を出来るだけ分けないやり方が好きなんです。高校卒業後、演劇を学ぶためにイギリスに留学してたくさんの舞台を観に行っていたんですが、気に入った作品のほとんどは舞台と客席が分かれていない形式が多かったんですよ。観客が舞台と同じ高さで知覚し、体験する。私も、自分の作品を通してそのリミットを広げたいと思うようになりました。
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舞台で起こっている事を体験する。
山口 
同じ空間で観劇するという事。それだけがやりたいわけじゃなんですけどね。変な形にすれば巻き込めるとは一概にいえないし。安易には言えないですけど、意識として、どういう形が合っているのかは考えますね。
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では、山口さんは具体的にどんな面白さを大切にしたいと思いますか?
山口 
何かに動かされている人が、踊りでも演劇でも好きですね。表現する力よりも、キャッチする感度が高い演者がいる作品を作りたいです。
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感度が高いとはどういうことでしょうか?
山口 
演者が表現する内容の完璧さを追求するのではなくて、どれだけ主体が外部のものによって大きく動かされるか、です。
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外の世界というのは、何を指していますか?
山口 
例えば、「TEA×HOUSE」ではブリジットという他者の言葉を通訳して演じてもらいましたが、俳優が置かれているその状況、です。英語から日本語に通訳していくことによって、その俳優が元々の話者に浸食されていく。もちろん俳優は俳優のままで、ブリジット・スコットになってしまうという訳じゃない。影響されているという事(つまり演技ですね)を見せたかったんです。「私はブリジットなんだ」って言い聞かせるみたいなのじゃなくて、あくまで通訳として「私はブリジット・スコットです」と口から言った時に、感度が高ければなってしまう。知らぬ間に徐々になってしまった、そんな瞬間が見たいです。
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主体が動かされる時。
山口 
主体が動かされてしまう時、を見たい。普段もそうじゃないですか。こうして喋っている時も動かされている訳であって。演技はその再構築だと思うんです。私はそれを極端にしてみようと思っているんですね。それを、出来れば面白く見せたいですね。
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主体は主体としてあるけれども、それが何かによって反応する。
山口 
取り憑かれる、乗っ取られるというのに近いクオリティを目指しているのかもしれませんね。
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それは何というか、私があまり触れて来なかった領域かもしれません。具体的にそれがどんな面白さを見せてくれるのか未知数なんです。でも、それがそれだと分かったらものすごく興奮させられると思う。突き動かされている主体の向こうに、大きな力を目にするから。
山口 
その通りだと思います。「動かされる主体」は、受動的に動かされるんじゃなくて、そこには必ず完璧な能動性が必要なんですよ。主体が反応して動かされる、その感度ですよね。どれだけそれに対してクリアに反応できるか。それは「この演技が面白い」という邪念ではなく、素直に反応するのが面白いんだと信じてやっていきたいですね。とても難しいんですが、反応する人間が面白いんだという信念です。そうした事象が起こっていて、観客に体験を与える。
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形骸化からは最も遠くあってほしいですね。
山口 
そうですね。そうありたいです。どうしても、「これだ」と思った瞬間にそれでなくなってしまう。型を作って、それを突き進むという芸術もあるんですが、その瞬間に何かを失うんだと思う。

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