全ては二人のために?
- 伊藤
- 一人芝居、初めてなんですよ。最初はメチャクチャ戸惑いました。今まで僕は、相手のリアクションで演技していたんだなと。相手役に応じてセリフを返しているだけの演技は、自分には楽だったんですね。一人芝居だと相手の演技を自分の中で作って、その上で自分の演技をしないと行けないので。最初の内はだいぶ戸惑いました。
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- もの凄く難しいですね。そして、とても面白そうですね。
- 伊藤
- 舞台上にはもう僕一人しか居ないんですよ。大きめのクッションを一つおいて、それだけなんです。気恥ずかしいし、照れがなくなるまで一週間くらい掛かりました。
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- 最初の1分は少なくとも、一挙手一投足がお客さんに受け止められるでしょうね。そういう時の観客って面白いもので、工夫して作ってきた所があったら、絶対認識するんですよ。もちろんラッキーパンチはあるけれども。
- 伊藤
- 僕が演技していて、ふっと出てくる面白さや、僕の事をよく知っている延命さんが考えて作ったネタがあるんです。さっきまで通しをしていたんですが、・・・大丈夫かなあ(笑う)。頑張ります。頑張ってます。一人芝居なので、お客さんを集めるのが大変なんですよ。これで西部講堂がガラガラだったら・・・。
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- ガラガラでもいいじゃないですか。私、たまたま客席が自分一人だけ、みたいなそんなシチュエーションに憧れていて。ガラスの仮面の「忘れられた荒野」の1ステの時みたいな。
- 伊藤
- それ、やってる方は大分キツイですね(笑う)それが一人芝居だったらもう・・・お客さん一人に役者一人。
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- 最高のコミュニケーションじゃないですか。その二人の為だけに、舞台・照明・音響・演出が用意されているんですよ。
- 伊藤
- それでお客さんが寝ちゃったらキツイですね。
すこしずつすこしずつ好きになっていく
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- 小沢さんが演劇を始められた経緯を教えて下さい。
- 小沢
- 僕の姉は画家なんですが、姉の友達の関係である舞台のチラシデザインをしていたんですね。僕はそれまで、映画に興味があってワークショップだったりオーディションを受けていたんです。でも中々上手くいかなくて。そこに姉が「こういうのがあるよ」と教えてくれたのが「阪神タイガーウッズ」という名前の、いまはもう無き京都の劇団のワークショップだったんです。そこの主宰である方に興味を持ってもらえて。エチュードをやったりしたんですが、今までそういう事をしたことが無かったので新鮮だったんですよね。皆で何かでっち上げたり、お話にしたり。自分以外の人物になるという事がこんなに楽しいのかと。
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- なるほど。
- 小沢
- 当時はガラスの仮面の北島マヤみたいな天才になりたかったですね。あんなに深く、そしてたくさんの他人の人生を生きる事が出来たらと。当時、自分の事が嫌いでコンプレックスをずっと抱いていたんです。少しでも現実逃避出来たらという気持ちもありました。自分とは違う人間になりたかった。それでもコンプレックスや嫌いな部分は拭いきれなくて、だから今でも基本的には、なぜ役者をやっているか、と聞かれたら、小沢道成という人間を魅力的にしていきたい、と答えると思います。
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- ご自身を魅力的にしていく?
- 小沢
- 一年に4~5本舞台で役をやらせてもらっているんですが、色んな役の人生を味わえるんですね。舞台が一本終わると、確かに自分が何か変わっているんです。強くなったり弱くなったり、嘘をつくのが上手くなってたり下手になってたり。人とコミュニケーションを取るのが昔から下手だったんですが、役者を続けていて、少しは好きになっているんですよ。という事は小沢道成という人間が少しは魅力的になっていて、いろんな要素を吸収している。もしかしたら、悪いものを吸収しまくるかもしれないですが、それはそれで楽しみです(笑)最終的にはお爺ちゃんになった時に、いい人生だったと思いながら死んでいけたらいいかなと。
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- 初めてお会いするタイプの方です。
- 小沢
- そうなんですか。
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- 役者の生き方としては珍しいような、いや、それこそが最高の理由のような。
- 小沢
- 「人を楽しませたい」という気持ちが前提にあるんですが、突き詰めていくとそういう理由になっていきますね。
悪い芝居にいるから
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- さて、今後大川原さんはどう攻めて行かれますか?
- 大川原
- 自分は何で役者を続けているのかなって思った時に、やっぱり舞台に立つのは楽しいし、まだ何も舞台の事を分かっていないし。だからやるのかなーと思ったんですけど。
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- ええ。
- 大川原
- 一番しっくり来るのは、悪い芝居にいるから、かなと。お芝居はまず楽しいんですけど、悪い芝居が存在しているから。私がどうなるか、じゃなくて、悪い芝居がどうなっていくか、というのを考えていますね。だから、大川原としてこれからどうするよりかは、悪い芝居に役者として図々しく居座ってやろうと思います。
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- もしあれば、課題を。
- 大川原
- 感情的になれないところですかね。感情で一気に役を作るというよりは、周りから固めるタイプなので、一気に役に詰め寄れる力が欲しいです。
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- それは、姫川亜弓が北島マヤに出会ってから求めるようになったモノに近いですね。
- 大川原
- そうですね(笑う)やっぱり、感情が入っているものはぐっと持って行かれますから。普段も何か、感情がうまく表現出来ていないらしく。楽しい時間でも「大丈夫?楽しい」って聞かれるんです。どうも素直じゃないんですよね。それが最初に行った、天邪鬼の部分かなって。
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- いやいや、それは大川原さんが気を使われる方だからだと思いますよ。何だろう、多分誰に対しても分かりやすい言葉やイントネーションで話す方のように思います。だから、もしかしたらそう見えるだけかも知れない。すみません、インタビューしてるのにこんな事。
- 大川原
- いえいえ。ありがとうございます。
どこでも脱げるような人間になっちゃいけないんだと思う
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- 最近は小劇場でも、俳優が脱ぐという機会が増えているような気がします。
- 葵
- あ、私も京極さんのダンスを見て。上半身脱いでいて、やっぱり男の人って脱げるんだって。
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- 男はそうですよね。
- 葵
- でも、それを自然に見れるようになってきているんですよね。御法度だった時代もあったのに。もったいぶっててもしょうがないんじゃないかって気持ちはあるんですよね、こういう仕事していると。
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- 私は未だに、舞台上での裸はびっくりしますけどね。何かの届け出が必要じゃないかって思ったり。
- 葵
- そういう感覚は持っておかなくちゃいけないんですよ。どこでも脱げるような人間になっちゃいけないんだと思う(笑う)。本当に、恥じらいは無くしちゃいけないんですよ。ぱって脱いだら終わりな事も、少しずつ脱いでいくとハッとさせられる。裸を見せるだけのものじゃなくて、脱ぐのを見せるものなんだなあって思うんです。ベテランの先輩のお姐さんたちのステージを見ると、脱ぐのに時間を掛けるんですよね。ちらっと見えてくると、女の私でもドキドキする。髪をかきあげる動作だけでも絵になるし、かっこいい。ダンスのうまい人は、そういう演技というか。
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- 仕草が。
- 葵
- 仕草が上手いんです。一つ一つのフリを先生に決めてもらってそれをそのままやるって事じゃなくて。そういう姿勢はダメなんかなぁって。帽子を取るだけで「あ、脱ぐんだ」って、次の期待が出て引き込める。それも仕草だと思うんだけど、合間合間に遊びを入れると盛り上がるし、自分もステージに入り込めるんだなぁって。
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- お客さんの心理を考えながら、いや、お客さんに共感しながらやってるのかな。
- 葵
- そうかも。お客さんと会話しながら出来る人のステージは面白いんですよね。
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- 舞台も客席も一つになって、同じ世界にあるってなかなかないですけどね。
- 葵
- そういう、仕草と振り付けの間みたいな事がダンスと同じくらい大事なんだろうなって思います。
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- なるほど・・・。ガラスの仮面でいう、北島マヤが得意とするところですね。
- 葵
- ガラスの仮面はドラマ版しか見たことないですけど、えーと、あっ、フィギュアの村主章枝さん。
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- ああ、私も大好きです。
- 葵
- 表現がすごいですよね。主な点数はジャンプの回転で決まっちゃいますけど、あの人のはジャンプだけの踊りじゃなくて、それも組み込んだ作品になっている。
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- わかるわかる。果てしなく表現を向いている
- 葵
- 味わって踊ってるんですよ、アスリートとはちょっと違うんですよね。