静けさ
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- 「愛はないと僕は思う」。次回公演のタイトルですが。4月4日からですね。とても楽しみです。
- FJ
- ありがとうございます。
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- 私はこの作品の前進となる「お母さんとファック」という作品をgate#9で拝見しました。会場は、同じKAIKAですね。あの作品は、一人語りそのものを高度に洗練したらどうなるかという文学的な実証であったかもしれないと考えています。
- FJ
- 洗練。
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- 語る時のファックさんの身体がとても純粋だったと思うんです。ご自身の半生を素直に語っているからなのかもしれませんが、同時に虚構でもあるという前提が役者と観客の間に明らかに対流を生んでいるんです。それは一人芝居という形式の性質ではありますが、ファックジャパンという嘘モノなのか真実なのか分からない存在の語る、夢と性欲と静けさが一緒くたになった世界がとても美しかったんですよ。
- FJ
- なんかその、「お母さんとファック」は、分をわきまえたいというか。そんなに効果的に、お話に乗りたくないというか。
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- ええ。
- FJ
- 自分は一体、何をしている時が一番興奮しているか、それは雑談している時なんですよ。思い出話を公の場でするための演劇だったと思います。面白い面白くないは優先順位は下げて。20分の思い出話をしてみた、という。
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- それにしてはとても幻想的でした。一つ、印象に残った手法があって。京都でのデートのシーンで、一人称がファックさんなのかお母さんなのかお母さんの相手の男性だったのか、ないまぜになっているシーンがありましたね。
- FJ
- 実際にその、母がデートした場所に行ったんですよ。それを思い出した順に書いていっていたら、そうなったというのはあります。
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- ファックさんの記憶や主体がスライドしていって、観客の思惟も同時にスライドしていって。集中して聞いていればいるほど、垣間見える景色が清冽に視界に飛び込んでくる。ただ単に美しいと思ったんです。
質問 坂本 アンディさんから 小林 欣也さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた、がっかりアバターの坂本アンディさんから質問を頂いてきております。「自分の性欲の強さを感じた瞬間はいつですか?また、その時どう思いましたか?」
- 小林
- あまり露骨な事は言えないですけど・・・一度、ある事があって。命が危険に晒される状況でも、するのをやめなかった事がありましたね。
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- 凄いですね。
- 小林
- 死にそうだと思いました。もちろん、あの時の状況に戻りたいとは思いません。頭がやばい状況になっていました。本当は、死にたいと思っていたのかもしれないですね。
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- でも、死と性という、生命の本質に一度に触れていた訳でしょう。つまり、一つの生命としては、もうこの宇宙でやることはないかもしれませんね。
- 小林
- そうだったかもしれません。我に返ったら死にたくないですけど。
ゴム手袋
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- がっかりアバターの作品についてお話出来ればと思います。2013年6月に上演された「俺ライドオン天使」※、すごく面白かったです。個人的な所感ですが、非常に真摯に作られた下ネタであると感じました。大変下劣な下ネタに、あるフェアさを見た気がしたんです。いじめられっこもリア充も障害者も幽霊も皆同列に性欲を持っているという観点に、差別意識の無さを感じました。後半でひきこもりが出てくるんですけど、彼は非常に下種なんですが、それをとても正直に描いている。ネガティブな人間性すら受け入れ、下種をそのまま認めている。なぜ、そうした姿勢をとる事が出来るのでしょうか?
- 坂本
- もしかしたら、以前見た映像に影響を受けているんじゃないかと思います。障害者の性的支援サービスを紹介するドキュメンタリーで、おばさんがゴム手袋をしてしごいてあげるというもので。それを見た時に、「そうか、こういう人もそうなのか」と。障害を持って生まれた子を天使という言葉で呼んであげる親がいるけれども、障害者も当然性欲を持ってるんですよね。
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- そうですね。
- 坂本
- そういうモヤモヤした思いがあるんですよね。自分の中で答えが出ている訳じゃないんですけど。でも、その映像を見た時に納得した思いもあったんです。性欲というものは、NHKがそれを取り上げるぐらい歴然と社会にあるんです。
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- そこに気付いた時、何かが腑に落ちた。
- 坂本
- はい。もちろん、下ネタをやっているのが楽しい、面白いというのはありますけど。
- ※がっかりアバター vol.3『俺ライドオン天使』
- 公演時期:2013/6/28~30。会場:ロクソドンタブラック。
性
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- 佐々木さんはどんなエロを求めているんですか?
- 佐々木
- どんなエロがいいのか(笑う)面白いですね(笑う)。
- ___
- セクシャルハラスメントになりましたか?
- 佐々木
- いえいえ。フェチです。何に興味があると言われればフェティシズムです。あと、動物の性事情について有北さんと話していて、それにきょうみがあります。
- ___
- というと。
- 佐々木
- 人間って邪念が多いからいろんなバリエーションがあるんですけど、動物はそうでもないという思い込みがあるじゃないですか。でも、動物全てが同じ性行動を取るわけではなくて、種の分だけ多様なんですよ。例えばペンギンには同性愛が多かったり、ゴキブリには前戯があるとか、雀は1分間に20回性行為をするらしくて。イルカが集団レイプするとか。
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- 興奮するんじゃないですかね?
- 佐々木
- そうですかね。
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- 群体としての生に埋没している個体が、その行為をする時だけ・工夫した性行為をする時だけ、自我を意識しているのかもしれませんね。全く余計な工夫をする時だけ。
- 佐々木
- そうですね。
恋愛
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- 監督作品の「あばうとあがーる」拝見しました。面白かったです。
- 角田
- ありがとうございます。
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- あれを拝見して思ったのですが、男の性欲青春モノなのに、救いがないのが珍しいなと。バッドエンドでも、少し成長するとか恋愛を笑うとか、そういう陽性を帯びるのがセオリーだと思っていたんですが、全然ない。むしろ、恋愛に対する怨嗟が感じられて。望んでも何も手に入れられない、全ての弱い人間のための物語なんじゃないかなと。
- 角田
- あれ、原作は男肉duSoleilの吉田みるくさんで、脚本は僕なんですね。ラストについては吉田さんと話していて、ハッピーエンドにはしたくないなと。2年後3年後はそれは立ち直ってるかもしれませんけど、高校生にとって恋愛って全てですから。
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- まあ、必ず中心には来るでしょうね。
- 角田
- そういう嘘は、映画の中ではつきたくないんです。もちろんお話なので嘘をついてもいいんですけど、あの作品の恋愛の終わりで無理矢理なハッピーエンドは悪い嘘だと。
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- 悪い嘘。
- 角田
- 当時流行っていた恋愛映画で、レイプされた女の子がすぐに次に進む決意をして新しい男とセックスする展開があったんです。そんなんは、悪い嘘だと思うんです。観た人に無責任な悪い影響を与えるんじゃないかって。
泣ける下ネタ
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- 結局下ネタが入るというのは、失敗ではないのですか?
- 西
- 前回公演の「キャプテンクトゥルー年代記」※では、最初はナシで行こうとしていたんです。でも、途中からすごく遣る瀬無い気分になってきて。結局は「泣ける下ネタ」を目指していました。
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- 泣ける下ネタ! 最高じゃないですか。
- 西
- 下ネタには、まだまだ可能性があると思うんです。
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- WillBeの作品「猫型ロボット」※を拝見したんですが、よく西さんが舞台上でオナニーシーンを見せていましたよね。TENGAを使った。もちろんギャグとして、笑い易いようにして。男性の内向きの性欲が強烈に切り出されていたように思います。西さんにとって、下ネタはどのような存在であって欲しいのでしょうか。
- 西
- 人間性を極端に表現する有効な方法だと思っています。僕はここまでさらけ出しました、もう丸腰です、かかって来なさい、そう叫ぶような表現です。
- __
- 「猫型ロボット」では、西さんはTENGAをご自身の周囲に並べて叫んでいましたね。お尻を出しながら。当然、露出狂的な快楽とは違うと思いますが、では、舞台上で精神的にも肉体的にも裸になる事についてはどのように思われますか?
- 西
- 実は、ちょっと性描写は苦手なんですよ。
- __
- ええっ。
- 西
- 今は分からないですが、客席から見ていて、舞台の上の人が裸になると凄く生々しくて、直接的で、引くと思います。それは、僕の中に性描写についての文法がないからなんですが、「本当に?」って思っちゃうんですよね。
- __
- というと。
- 西
- それが本当に人間なんだろうか、って思うんです。セックスは人間性からは独立した現象なんじゃないか。アプローチとしての下ネタの方が、人間性を表現するのに適切ではないだろうか、って。
- ※Will Be SHOCK Entrance Gate「さらば彼女の愛した海底都市 或いはキャプテンクトゥルー年代記」
- 公演時期:2011/2/12~14。会場:京都市東山青少年活動センター創造活動室。
- ※Will Be SHOCK Entrance Gate 3rd OPEN「猫型ロボット~青いベストフレンドの伝言~」
- 公演時期:2009/6/12~14。会場:人間座スタジオ。
お客さんの楽しみ方を即座に考えつく(!)
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- というのは、ストリップ劇場に来ているお客さんの目線って、性欲目的と鑑賞目的が同時にあるんですよ、多分。それに耐えうるものを持っていかないと、すぐにつまらない時間になってしまうのではないかと。
- 葵
- お客さんは踊って脱いで、という流れを分かってるから、そういう面では受け身なんですよね。ステージを見るぞ、というよりは消極的なんじゃないかなって。だから、「分かってくれるかな?」だと絶対伝わらないんですよ。
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- へえー。
- 葵
- 自分が興味がないと、見なくなるんです。持ってきた新聞を読み始めた人もいたりして。
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- ええっ!もったいない。でも、同じ事をし続けていると目線がそれるんだろうなあ。
- 葵
- うんうん、脱ぐっていう事に飽きる。
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- 演劇のように、柔軟に別のネタに接続したり、場面を転換できない。ダンスのように、芸術の追求もちょっと制限がある。その上、脱ぐというプライズを過ぎたら、すぐにハイハイってなっちゃうかもしれない。女性の体だって、お客さんによっては見飽きているものだし。貴重である事は代わりはないけど。
- 葵
- そうですね。10年15年の経験がある先輩の方って舞台上ですごく遊ぶのが上手で、見せ方を知っているんですよ。強い身体を持つ反面、観客の視線にめっちゃ敏感だと思うんです。空気によってはしゃべりだしたり。
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- へえー。
- 葵
- 常連さんばっかりの4回目の終わりとか。その場のノリを感じ取るのがすっごいうまいから、その時のお客さんの楽しみ方を即座に考えつくんですよね。
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- なるほど。それは凄いですね。