ドラキュラに狙われちまったあの子を救うために白井宏幸が出来る唯一の方法

__ 
さて、エリーの晩餐会という集まりがあるそうですが、これは。
Arry 
簡単に言うと宴会なんです。「出会わなければ演劇人は始まらない」というコンセプトの元、とりあえず飲もう!と。
__ 
あ、そのままなんですね。
Arry 
数年前は東京で不定期に開催していたんですが、昨年は大阪を中心に開催しました。LINX'S TOKYOに参加したこともあって、ステージタイガーさんとか劇団ZTONさんとかとも仲良くしていただけて…。関西の演劇関係者ともそれなりに飲み会を重ねることが出来ました。結果、そんな大阪のエリーの晩餐会から派生して生まれたのが、先日のindependentの一人芝居フェスの白井さんの作品です。
__ 
あれについても伺いたいです。
Arry 
自分の本拠地、つまり劇団エリザベスですね、そこでは絶対にやらないものをやりましょうというコンセプトで創りました。とても楽しかったです。
__ 
相手の女の子の事など一切考えず、恋と性欲のままに突っ走る作品でしたね。プロレスして出血もするし、久しぶりに勢いのあるお祭り騒ぎ芝居を拝見しました。
Arry 
(笑う)
__ 
私が拝見した回は他にコロさん・隈本さんの、自分の道に殉じる男がテーマの作品でした。3連続で見ると壮観でしたね。
Arry 
エリザベスの作品は基本的にはラブストーリーだったり、女の子のお芝居だったりするので、あんな下ネタまじりの作品は書いたことがありませんでした。なので、そういった自分の道に殉じる男が描けていたと思って下さるのはありがたいです。
__ 
劇団エリザベスでは、これまでやってこなかったし、今後も絶対にやらない、そんな作品。
Arry 
そうですね、絶対にやらない、やれない作品です。脚本を劇団員に見せたときに、面白いですけどエリザベスではやらないでください、と言われてしまいましたしね。…あの脚本についてですが、開き直って言うと、何も考えてないです。あのイベントは俳優のフェスティバルだと思うんですよね。白井さんにしかなりえない、白井さんがやってこそ輝くもの。あの作品が観客投票で一位になったのは、白井さんの事をみんな好きになったからだと思うんです。あんだけ変態な事をやっておいて人気が出るのは白井さんだからなんじゃないかな。あと、タイトルが長いのも、見ている側が入り込みやすいものは何か考えた結果ですね。タイトルに意味深なこと書いちゃって、お客さんに余計なこと考えて欲しくない。
__ 
なるほど。最初に手の内を晒されたという感覚は確かにありましたね。しかも開始6分あたりで、女の子に謝罪し始めるじゃないですか。あれが素晴らしかったです。観客の機先を征するかのように「警察は勘弁してください」「もうストーカーはやめます」とか言い始めて。これは一筋縄ではいかない脚本だなと思いましたね。
最強の一人芝居フェスティバル“INDEPENDENT:14”
公演時期:2014/11/27~30。会場:in→dependent theatre 2nd。

タグ: イベントの立ち上げ 孤独と演劇 ラブストーリー 一人芝居 タイトルの秘密 飲み会結成 自分は何で演劇を 女性と下ネタ


ドラマチックは終わらない

___ 
ユリイカを休止されている間、結婚して出産して、子育てもして。その間、お芝居はされていなかった?
たみお 
全然していなかったです。
___ 
必要ではなかった?
たみお 
もうやらないだろうなと。すごく申し訳ないんですが、過去の頂いたアンケートも「ありがとうございます」と手を合わせて焼却しました。
___ 
あ、お焚き上げしたんですね。
たみお 
色々溜め込んでいた衣裳とか脚本とかも。データで残せるもの以外はほとんど処分したんです。これからどうやって生きていこうかなあ、と。それぐらいに、いろいろご縁を頂いて、友人夫婦二人のための本を作らせてもらう事になったんです。二人のこれまでの人生と、出会いを一つの物語にまとめたものです。ちゃんと製本して、永遠に残るようにしようと思っています。
___ 
素晴らしい。
たみお 
その人の人生が、実はすごくドラマチックだということ。すぐ隣に生きている人の存在がすごくドラマチックなんだなと気付くきっかけになりました。それはもちろん、ユリイカでもずっとやってきた事ではあるんですけど。ずっと何かを作りたいというのはあったんです。
___ 
休止している間に、出会うべきものには出会っていたんですね。
たみお 
作家として必要な孤独は埋められていたんです。

タグ: 退団したら・・・ 結婚したら・・・ 孤独と演劇


「何だか自分はこの人に似ている」

__ 
話はちょっと変わるのですが、作道さんの見たいもの、作りたいものとは何ですか?
作道 
さっきの「くりかえしへこむ」の話にも通じるんですけど。「疲れているときに見ると癒される」というのはつまり、自分を肯定してくれる、という事だと思うんですよね。自分の孤独であるとか、傷ついている部分であるとか。
__ 
ええ。
作道 
たとえば、僕は性格的に、みんなでワイワイするのが好きなのに、それが出来ない部分があって。だからそういう描写のある作品が好きなんですよ。人はたくさんいるのに、それぞれが距離を持っている、みたいな。ちょっとだけ俯瞰で見て自分の居場所を探り合っているような。そういうのを描いた作品が好きなんです。それが、僕みたいな性格の人の肯定につながるのかもしれない。自分が作るものも、何だか自分はこの人に似ている、って思えるような人がたくさん登場するようなものになりつつあるのかな。
__ 
舞台の上の誰かに、重ね合わせる事が出来るような作品を作りたい。
作道 
そういう事ですね。昔は、ミステリーとかサスペンスとか、お話の波で満足出来たんですけど、ある時から日常に疲れてしまったんでしょうか、モノを見る時にどうしても自分と同じ部分を見つけだそうとしてしまっているような。
__ 
その、人間関係空間の中でのフィッティングに困っている人を見ると癒される。内面のあり方を重ね合わせるような。
作道 
だからと言って、明確なメッセージがある作品は見ていてこれまた疲れてしまうんです。
__ 
悩んでいる自分を、俯瞰して見ている自分を静かに肯定してくれる、そんな作品。
作道 
そうですね。例えば笑うにしても、嬉しくてまたは驚いて、とかで人は笑うと思うんですよ。でもそれって、「こういう奴いるよな」とか「こういう状況あるよな」とかを単純なレベルで肯定されているのが心地良いと思うんです。そういう「肯定」が出来たらいいな、と思います。自分が生きている状況というのは自分だけが抱えているものでは決してなくて、普遍的な部分があると気づいたり、同じ苦しみを抱えている人がいる事に気付けたり。そういう事を思えるだけで、大丈夫な気分になれるんじゃないかと思うんです。そういう作品を発表し続けて、誰かがほっと出来るような、活力になれるような作品を作れたらいいなと思います。

タグ: わたしの得意分野 孤独と演劇


應典院舞台芸術祭space×drama2013 特別招致公演 ミジンコターボショートショートvol.11「ゼクシーナンシーモーニングララバイ」

__ 
前回の公演「ゼクシーナンシーモーニングララバイ」。大変面白かったです。当初私は楽しいお芝居を期待して劇場に行ったのですが、実際に受けた印象はそれとはかけ離れた、個人の心情に触れる作品でした。話の筋は、人生に迷って生きる優柔不断な男・シンイチの後をヒロイン・ナンシーが付いて行くというもので、男女同権主義者としては心にクるものがあったんですが、やはり一人の男として、彼の人生は果たして幸せだったんだろうかと。ハッピーな結婚の話だったんですが、そう考えると哀しい感情を掻き立てられるような・・・人生で仕事を見つけられなかった彼は、死後、天国で最高に幸せな結婚式を迎える訳ですが、それは彼の人生にとっては本当の幸せなんだろうか?この話、片岡さんはどのようにして生み出されたのでしょうか。
片岡 
まず、すんごい遠い題材でやりたいと思っていて。僕自身が結婚願望がそんなにないんですよ。じゃあいっそのこと、結婚をモチーフにしたお芝居にしようと。さらに、言い訳ばっかり口ばっかの守るものもない、何の目的もなく生きている男の話を書きたいと思ったんですね。言い訳する奴の話が書きたかったんです。
__ 
なるほど。
片岡 
そして去年、公演直前に入院した話。
__ 
本公演「シニガミと蝋燭」の時、ですね。
片岡 
誕生日の前日にやっちゃって病院に搬送されたんです。ところで入院すると、名前や番号や誕生日が書かれたバンドが手首に巻かれるんですよ。次の日が誕生日だったから一日限りのバンドだったんです。なんや、年齢変わるんかいな、と。稽古場もバタバタしていた状況だったので、僕の状況が誰にも伝わっておらず、期せずして誰も近くにいない、祝ってもらえない誕生日がやってきて、逆に気持ち良かったんです。一人や、と。病室はカレンダーはあったんですが時計が無くて、時間も分からないみたいな残酷さを感じて。人に迷惑は掛けているけど開き直るしかない境地になってました。だって、もう申し訳ないという言葉を重ねてもしょうがなくて。病室から稽古場に連絡を取って、役者さん達に頑張ってもらったんです。そういう、ちょっと死を感じるような事があったんです。人が周りにいっぱいおるけど孤独感がある。そういう感覚は女性には分かってもらえないんじゃないかと思ったんですね。それをやりたい、というのが原動力かなあ。
__ 
そのリストバンドの存在が印象的ですね。誕生日が書いてあるものを手首にはめられるのはちょっとショッキングかもしれません。いや、填めてみないと分からない感慨でしょうけど。
片岡 
そうなんですよ。それにもうその歳ちゃうがなと。もう歳食ったんかいと。去年から入院していたような気になってしまって・・・。劇団員が千羽鶴折って持ってきてくれて、千足りてなかったんですけど。なるべく早く退院したくて、リハビリ以外の時間も頑張ったんですよ。夜中に病院脱出しようとしてみたりして、めっちゃ怒られました。力づくで病院の玄関をこじあけようとしたりして(笑う)。
__ 
「ゼクシー」の主人公のシンちゃんも、言ってみれば寂しい人生だったんじゃないかと思うんです。あの特殊能力も活かせないまま。
片岡 
そうですね。
__ 
私にとっては虚しくて泣ける話でした。
片岡 
男性全てがそうだとは限らないんですが、知人の結婚式にいくと、やっぱり新郎さんではなく新婦さんにフォーカスが当たるんですよね。でも満足気なんですよ。目立ってないけど。目立つ事が良い訳ではないけど。女性がやりたい事をやっているのを見て満足しているというのが、男にはあるんじゃないか。ちょっとロマンチックですが、それを見ているだけでプライスレスというか。シンイチの人生に関して言えば、それが一番のご褒美だったんじゃないかと思うんです。自分が演じてきて、それを感じましたね。
ミジンコターボ-10『シニガミと蝋燭』
公演時期:2012/7/27~29。会場:ABCホール。

タグ: 役者の認識(クオリア) 残酷な演劇 死と性と 産みの苦しみ ユニークな作品あります 感想がトシと共に変化していく 迷っています 孤独と演劇 男性性とは何か 大・大・理不尽


音楽と、演劇と、身体と、

__ 
興味があるやり方に「しちゃう」のが筒井さんの演劇なんですね。そこで伺いたいのですが、筒井さんが発見されたセリフと身体の時間的な分離は、革命的な手法として演劇史の延長線上に位置しているのでしょうか。それとも、人間存在なるものを、意図的に発生させたズレから問い直す意義に立脚しているのでしょうか。
筒井 
後者ですね。確かにそれは後者なんですよ。最近になってようやく、自分がやっているのは演劇だと思えるようになりました。dracomが舞台芸術集団と名乗っているのもそこからです。舞台で何か、面白い事をしたいという気持ちは当初からあるんですが、それが演劇である必要はないなあと。そういう中で、例の実験が大きかったんです。ちなみに僕は音楽が趣味なんですが、劇中で音楽が鳴る時、「音楽が鳴ってるからここは盛り上げたいんだ」という見え方がするともう最悪なんですよ。そういうものが世の中に多い中で、演劇を後押ししたりとか、足をひっぱりあうみたいな関係じゃなくて。音楽と、演劇と、身体と、セリフというものが有機的に関わる表現を模索していたんです。その中で、ずらすという手法が、今までにない形で捕まえる事が出来たと思ったんです。演劇に革命を起こそうとかは考えてなかったですね。音楽好きだったから辿り着いたかもしれません。もしこのやり方を、演劇だけを志向する人が気付いたとしたらどうだったんだろう?それを深めたり継続したり、上演に持っていったとはちょっと思えないですね。
__ 
音楽と空間と演劇。それらが同じ時間と場所に結実するものを、コンセプトから引き出せないかと考えているのですね。
筒井 
まあ、偶然に助けられたものかもしれないし、それを稽古場で初めて見た時面白がったのは僕だけだったんですけど。あの瞬間は、それまで目指していたものを掴んだと同時に今後の自分の方向性を広げてくれました。ただ、その広がりは用意されている劇場空間に集中してしまい、以降、それほど変な公演はしていないですね。もちろん、試みを面白いと多くの方に仰って頂いたし、僕自身も面白いと思っていたんですがその次へと越える為の何かを生むのに苦しんでいます。あの演出方法でどんどん作っていけばいいじゃないかという声もあるんです、が、実感としては「いくらでも作れそうだ」と思っています。テキストさえあれば。だから、いくらでも作れると思えてしまった時点で、これはブレーキを掛けないといけないと考えたんです。

タグ: 総合芸術としての演劇 孤独と演劇 有機的に関わりあう 作家の手つき


何をしても一人

__ 
ベトナム時代とは違って、役者が黒川さん一人だけになりましたが、どのような点が違いますか?
黒川 
単純に、稽古が一人なんですが、辛いですね。何をしても一人。これが面白いかどうかの判断も一人ですし。まあ、丸井も中川さんもいますけど。「これで合ってるのか?」と悩む事は増えましたね。もちろん、一人しかいないから生まれてくるものもあります。
__ 
出演者一人だけという事で、何というか、黒川さんの方向性に合ったらどこまででも笑う事が許されるような気がします。逆に言うと、観客個人が持つ悪趣味を、そのまま肯定してくれる気がする。そういう意味で、優しい笑いなのかもしれないと思っています。
黒川 
僕は、その辺に落ちてる石ころでも面白いと思ったら引き出しに入れてしまうので。だから受け付けない人は全く受け付けないと思います。仕方ないんですけど。受け付けない人でも、ちょっとでも笑ってほしいんですよね。

タグ: 役者のその場の判断 孤独と演劇 役作り=個人の人間力 悪意・悪趣味


憧れ

__ 
宗岡ルリ一人芝居「撲滅ならず今日」。このタイトルの意味を教えて下さい。
宗岡 
いつも死のう死のうと思っているんですけど、死なないし死ねないじゃないですか。四十ぐらいには死ぬと思うんですけど、けど結局は九十まで生きてるんじゃないかなと。私の祖父がまさにその通りで、四十の時に子供を集めて「俺はもう死ぬからお前たち頑張れ」って言ってたのに93まで生きて(笑う)。いつも終わりたい終わりたいと思うのに、毎朝起きて友達と会って可愛いものを買ったり美味しいものを食べたりして、その繰り返しへの悔しさと、絶望じゃないですけど、そういう思いをタイトルに込めています。
__ 
その思いはいつからありましたか?
宗岡 
「何かになりたい」という憧れが強くて。この漫画の主人公たちみたいに。でも、なれないじゃないですか。その悔しさがあって。両親共に教職員で公務員で、朝起きて働いて、「何だかんだでいい家庭よね~」という中で育たせて頂いたんですけど(笑う)それに対する嫌な気持ちや、大分の田舎にいた時はずっと空を眺めていて焦燥感があって、それは今でも続いているんですね。中二病かもしれないけど。
__ 
焦燥感が今でも続いている。私は宗岡さんより11歳上なんですけど、確かにその頃は私も持っていたものかもしれない。宗岡さんのそれは、10年後、私みたいに消えてしまうんだろうか?
宗岡 
それが消えてしまうのも素敵な事かもしれません。この「バナナブレッドのプディング」の主人公のお姉ちゃんが妊娠しているんですけど、お姉ちゃんが夢で赤ちゃんに「お腹の中でさえこんなに孤独だのに、外の世界に出てきたらもっと孤独に決まってる。生まれてきたくない」って言うんです。でもお姉ちゃんが「まあ生まれてきてご覧なさいよ、最高に素晴らしい事が待っている」って。それは焦燥感を忘れた人の言葉で、大人になるという事だと思うんです。この作品はその素晴らしさも教えてくれたんですけど、私はいまはそうなれないと思う。

タグ: 子供についてのイシュー 外の世界と繋がる 孤独と演劇 泡のように消えない記憶 家出についてのイシュー X年後のあなた


vol.284 宗岡 ルリ

フリー・その他。

2013/春
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宗岡

描く

__ 
今後、描いて行きたい作品はありますか?
横山 
30代後半の、主に独身女性が抱えているものを垣間見たいんです。どうしようもない不安を。
__ 
出産リスクなどの問題でしょうか?
横山 
そうした面ももちろんですが、恋愛していない30代後半の女性は、時に大きな不安に苛まれると思うんですよ。一瞬でも楽になれるものにハマってしまうし、不倫だってあるし。茶化しでもなんでもなく、そういう部分に興味があるんですよ。それは人間自体への興味なんですけど。
__ 
ええ。
横山 
でもそれを描く事で何になるのかはまだ分からないんです。日常感じているような事をわざわざ舞台で見せないでくれと言われるかもしれない。いわゆるエンターテイメントに仕上げて、どこに何を投げかけられるかを感じないといけないんですね。「みんな一緒だよ」と言ってあげればいいのか?
__ 
何故、そこに興味が向かうのでしょうか。
横山 
何故でしょうね。そこに人間性が詰まっていると思うからでしょうかね。結局、人間のどうしようもない孤独とか、弱さに興味が向くんですね。

タグ: 孤独と演劇


だから僕は、みんな違うという前提に立ち続けたいのかもしれない。

藤原 
ただこういう生き方ってもはやカタギではない。世の中を引っかき回したいとは思うけど、できれば人に迷惑はかけずに生きたい・・・・・・。
__ 
私個人も、やはり迷惑を掛けている人は多かれ少なかれいるんですよ。きっと。婉曲的にでも、恩を返していきたいですね。
藤原 
朝、二日酔いの頭で、幾らかの後悔とともに例えば太宰治のことをぼんやり考えたりします。生まれてきてしまったことへの原罪のようなものってやっぱりあって。ただ、後ろめたさに溺れていくのも甘えだと思う。デカダンス気取りではいられないんです。もはや生きてしまっている以上、開き直りということでもなく、その「存在している」という事実を過不足なく受け止めたい。そうすると、どんな隣人と一緒に生きていくのか、ということは考えざるをえませんね。今は幸いにも一緒に仕事をしようと言ってくれる人もいるので、本当にありがたいです。たぶん他人から受けた恩は、一生かかっても返しきれない。そのぶん、若い子たちに何かプレゼントできれば、と思ってはいるんだけど・・・・・・。
__ 
藤原さんは、13歳から東京に移ったんですよね。
藤原 
中学進学と同時ですね。寮ではなくて、アパートで一人暮らししました。なんでそんなことしたんだろう・・・・・・。未だに謎なんですけど、たぶん高知というそれまでいた世界とか、家とかが、窮屈に感じられて、外の世界で勝負したいって思っちゃったんでしょう。でも想像してた以上にキツかったです。いきなり知らない土地に放り出されたようなものだし。自分で選んだことだけど、まだ子供ですからね・・・・・・。
__ 
ようやるわ、と思います。
藤原 
想像を絶する孤独でしたね。寂しいからテレビ付けっぱなしで寝たりとかしてたんですけど、途中で砂嵐になってむしろ怖いし眠りも浅いから、闇に耐えるしかない。同じ家に人がいるかどうかだけで全然違うんだと痛感しましたね。実際、空き巣に入られそうになったりとか、具体的な危険もあったし、ボロアパートだからヘンな虫とかもいたし、ほんとに夜が恐ろしかった。僕はいわゆる一般的な「反抗期」というものも経験してない。反抗する対象がいないわけだから。その頃からですかね、夜の徘徊癖が出てきたのって。待ってるのが怖いから、自分から夜に向かっていくしかなかったのかも。こう見えても結構不幸な人生を歩んできてるんですよ。それこそ京都にも心中しようと思って旅したことあるし(笑)。自分でもよくここまで死ななかったなと思います。「中学から一人暮らししてえらいね」とか同情されることはしょっちゅうでしたけど、いや誰にもこの孤独は共感出来ないでしょ?、と思ってた。だからよくあるホームドラマ的な家族観は苦手なんです。いや全然違うしって思う。「家族」なんて存在しない。「ある家族」が存在するだけだと思う。すべての体験は固有のものです。簡単に共感とか言われても困っちゃう。だから僕は、みんな違うという前提に立ち続けたいのかもしれない。

タグ: 外の世界と繋がる 出立前夜 孤独と演劇 演劇は勝ち負け?


ギューンてなった

__ 
「カナヅチ女」。客演さんが弾けてましたよね。
吉川 
ねー!大塚君村上さん渡邉君。金髪、メガネ、若人。素敵メンズは特徴も一発です。魅力的で嫉妬します。チーム悪い芝居は、ほぼ初対面だったなぁ。
__ 
そう。吉川さんがいない間にね。
吉川 
びっくりしましたー。でも皆、変わってて優しくて、お近づきになれて嬉しい人ばっかりです。あ、でも、あれだ私、やっぱり大川原さんと一緒にやれるの嬉しいーって思いました。
__ 
そうそう。最初の方のシーンね。大川原さんが爆発してましたね。
吉川 
そうですか。良かった!二人の所をいい感じだねって言われると嬉しいです。それ大川原さんに言ったら「私もだよ」って。その後、当然、変な感じになりました。
__ 
一緒に芝居するの何年ぶりって感じですもんね。
吉川 
ほんとですね。でも別に2年ってたいした日数じゃないのにな。稽古してる時が、大変大変あわわ・・・ってなった分、舞台に立った時すっきりしてて、ギューンてなったの覚えてます。
__ 
吉川さんにとって、劇団を辞めてからの2年間はどのような時間でしたか?
吉川 
孤独!しかし、素敵な演出家さん、役者さん、スタッフさんとの出会いがありました。最高です。一緒にお仕事させて貰えた人も、一方的に焦がれてる人も含めて。

タグ: 嫉妬心 孤独と演劇


vol.247 吉川 莉早

フリー・その他。

2012/春
この人のインタビューページへ
吉川

ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はいかがでしょうか。
3号 
最近ですか。台本が書けないんですよ。
__ 
書きたいことがない?
3号 
いや、そんな事はなくて。上手く形にならないんですよね。最初のシーンだけ決まったんですけど、それ以降が・・・。最後に形にはなるんですけど。追いつめられています。
__ 
3年くらい前の「Ex.人間」は確か一晩で書き上げたんですよね。
3号 
そうですね。あの時も苦しかったです。今回は書けるかなと思ってたんですけど、追い詰められています。
__ 
魔女の宅急便的に、「書くのを止める!」とかって出来ますかね。
3号 
いや出来ますけど、一日書くのを止めてたりしましたけど、変わらないんですよ。
__ 
なるほど。いつもはどうなんですか?書けないところからどうやって書けるようになるのでしょうか。
3号 
ある日、ふと、全てが組み合わさる日が来るんですよ。今回は、もうずっと以前にその状態になったと思ったんですけど・・・なっていなかったんですよ。このインタビューが載る頃までには書けている事を祈っていてください。・・・今回は大変なんですよね、色々掛かってて。
__ 
何よりも、今回はピンク地底人の第10回公演ですからね。
3号 
そうですね。今までの集大成です。さらに、始めての関東での公演ですので、割と気合い入ってます。
ピンク地底人
京都の地下は墨染に生まれた貧乏な三兄弟。日々の孤独と戦うため、ときおり地上にあらわれては演劇活動をしている。夢は関西一円を征服することと、自分たちを捨てた母への復讐。最近は仲間も増え、京都を中心に大阪にも出没中。(公式サイトより)
ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」
公演時期:2012/6/30~7/1(大阪)、2012/8/17~8/19(東京)。会場:インディペンデントシアター2nd(大阪)、王子小劇場(東京)。

タグ: 孤独と演劇


人間の冷たさ

__ 
廣瀬さんはご職業がデザイナーなんですよね。
廣瀬 
はい。会社が出している店頭のPOPを作っています。実は、焼き菓子の店頭販売なんですよ。だから、手作りの感覚を大事にしたものが置けるように色々。
__ 
ものづくりですね。素晴らしい。たしか、絵も描かれるとか。
廣瀬 
はい! こういうのです。イラストって感じなんですが、この時は水彩を中心にして描いています。ソノノチ団員は基本的に全員がモノづくりをしているんです。それぞれ自分の製作があって、それとは別に演劇作品を作っています。みんな、視覚的なセンスが高いので、ミーティングの時は色んな意見が飛び交って面白いです。
__ 
それは面白そうですね。私が考えるソノノチの魅力とちょっと被っている気がします。何だか、穴の中で土を掘っているイメージがあるんですよね。素手で横方向に。その人の指が探る土の冷たさが伝わるというか。
廣瀬 
ちょっと分かります。
__ 
その感触がなぜかいいんですよ。寂しさと悲愴感もあって。
廣瀬 
そういうところありますよね。それを、私は、みんなで掘っているんだと思います。
__ 
なるほど。
廣瀬 
出来た作品も、仰る通り冷たい部分もあるんですけど、どこか人間らしい冷たさというか、ガラスのようにキンと冷えた感じ、そこに人の手のぬくもりを感じるようなのがあるんだと思います。
__ 
冷酷じゃないんですよね。孤独が持っている冷たさというか。
廣瀬 
そうなんです。誰しもが抱えている寂しさを演劇で共有したら、それは優しい世界という事になるんじゃないかって。私はそこの登場人物として、日常に当たり前にない表現や、自分らしさを通して、心のなかにあるものを発見してもらえたらと思っています。
__ 
ソノノチの物語。確かに具体的な筋はかなり隠されている感じですよね。「おやすみの砦」とか。
廣瀬 
そうでしたね。時間がずれていたり、構成が何だか夢の中にあるようにしてあって。

タグ: 手作りのあたたかみ 孤独と演劇


でも、辞めなくて良かった

大西 
自分について話すとき、どうしても自分の根本的な部分に触れるしかないんですけど・・・。私、両親を早くに亡くしているんです。両親がいなくなってからは親戚に引き取ってもらって居候していました。自由な空間も勿論お金も無くて、エスカレーター式のお嬢様学校に行っていたんですけど、誰にも説明出来なくて。周りが羨ましくて。その18歳の時は自分の人生の中でも低迷期というか、つらい時期でした。ここから芝居の話なんですけど、当時既に演劇はしていて。家が無くなっても芝居だけはやめたくないと思っていたんですね。その時の気持ちが、何かがあったときも自分を支えてくれていると思います。
__ 
孤独で立つ事を知っている人が、演劇を続けているというのは、ああ何かそういうものなのかなと思います。
大西 
当時は親戚の家で今までと全然違う生活をして、しょっちゅう泣いてました。でもそんなところ誰にも見せられなくてよくお風呂場で泣いてたり。だけど当時関わっていたミュージカルで、踊ってた時だったかな?笑ったんです、私。こんな時でも笑えるんだ、って自分でも意外で。ハッピーな作品だったんですね。なんかめっちゃ笑ってました。そうか、自分の人生じゃないところで、笑う事が出来るんだって。
__ 
そうですね。大西さんご自身と、大西さんの境遇はあんまり関係ないですからね。
大西 
大変だったんだなあ、あの頃は。何で辞めなかったんだろう。でも、辞めなくて良かったと思います。
__ 
その2年後、ニューヨークに行くぐらいですからね。
大西 
高校の頃は卒業しないと行けないから、バイトはあんまり出来なかったんですね。卒業してからはやっと働ける!って。19の時は6つバイトを掛け持ちしてました。1年間、3時間以上寝た日は無かったです。今はそんな事出来ないですよ(笑う)

タグ: お風呂 孤独と演劇 めっちゃ泣いた・号泣した 自分は何で演劇を


質問 宮川 サキさんから松井 周 さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせていただいた、sundayの宮川サキさんからご質問を頂いてきております。1.生まれ変わったら何になりたいですか?
松井 
中性的な人になってみたいですね。男性でも女性でもない人と言うのに憧れていてですね。両性具有というのとはちょっと違うんですけど。
__ 
というと。
松井 
男性らしさ・女性らしさから離れてみたいんですよ。
__ 
いしいひさいちの「ののちゃん」で、あのクールな女の先生が「男らしさ・女らしさ」を「あいまいな部分を抱えておく事の出来ない度胸のない人間が飛びつく言葉」だと言い切っているコマがtwitpicで話題になっていました。
松井 
いいですね、それ。やっぱいしいひさいち凄いな。僕はどっちにも引っ張られている状態の人が好きで。身動きとれないけど、安定している。自分が偏見をもっているかもしれないけど。
__ 
2.最後の晩餐。何を注文して誰とどう過ごしたいですか?
松井 
あー・・・僕は納豆が好きなので、納豆とご飯と味噌汁と、あとは家族と過ごしたいですね。
__ 
どんな納豆ですか?
松井 
ひきわりも好きですし、藁納豆も。冷蔵庫に納豆が六個以上納豆がないと不安なんですよね。毎食食べています。
__ 
最後の晩餐として、たとえば、納豆のグレードをあげますか?それともいつも食べている納豆ですか?
松井 
いつも食べているものですね。
__ 
素晴らしい。最後だから高いものを食べる、それもありだと思いますけど。
松井 
死に備えた時、ニュートラルでいられない事自体に恐怖すると思うんですよね。死に怯えるかもしれないのに、ちょっと頑張っちゃったものを用意するのは、それはそれであるかもしれませんが。僕は、最後の日だからといって乱されたくはないですね。

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