「ダムで芝居したい」

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ちょっと話題を変えて。ありえない想定として、300億円あったらどんな作品を作りたいですか?
戒田 
ええと・・・ダムで芝居したいかな。
__ 
ああ、いいですね。300億は丁度いいですね。
戒田 
そう、ものすごいお金掛かるらしいですからね。
__ 
1日借りるぐらいならいいですよね。
戒田 
コンクリートの巨大な壁を背景に芝居してみたいですね。決壊させたいな。300億じゃ済まないですね。
__ 
プロジェクションマッピングとかじゃなくて、本物の。
戒田 
役者が流されていって終わり、みたいな。
__ 
カーテンコールは救命ボートで。いつかやってほしいですね。

タグ: 泡のように消えない記憶 舞台美術 妄想


「肩甲骨と鎖骨」と日々の流れ去ること

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「肩甲骨と鎖骨」、ジョルジュ・ペレックの作品が下敷きにあるそうですね。記録の羅列に興味があると和田さんは仰っていました。それが作品を見る上でのヒントになるのでしょうか。
高木 
一つのキーワードに「記憶」があって。ペレックは著書の中でずっと自分の昔の記憶を書いていたりするんです。稽古場でも、出演者が自分の記憶をひたすら言葉にするというワークを行っています。それは個人的に大切な思い出とかではなく、日々の生活の中で憶えていられないような、忘れていってしまうだろう記憶を思い起こし続ける行為なんです。
__ 
忘れそうなぐらいの記憶を残す。
高木 
でもそれは声になって消えてしまう。ペレックは本に残しましたけど。それを舞台でやる事で何かペレックとは別の見え方が生まれるんじゃないかと思っています。
__ 
そのワークは、ご自身としてどんな体験でしょうか?
高木 
私自身はそれほど自分の記憶には執着してない気がしていて。でもこのワークをしてると、ふとした瞬間、今この状況をせめてあと3日間は憶えていよう、みたいに日々の時間を大事に捉えるようになりました。

タグ: アーティストの生活 泡のように消えない記憶


ピンときたら!

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
西村 
またピンときたら、素敵な場所と出会ったら、こまち日和をやりたいと思います。
__ 
そこで、お客さんに何かを手渡せたらいいですね。
西村 
こまち日和は、一回一回の公演を「wake」で数えているんですけど。それは航跡(船が通り過ぎた後の波)という意味なんです。お客さんの心に、こまち日和が通り過ぎて、何か少しでも航跡が残せたらいいなって。
__ 
すぐ消えてしまうものだけれども、何かが残ってほしいという祈りが込められている。
西村 
はい。

タグ: 泡のように消えない記憶 一回一回を大事にする 今後の攻め方


katacotts『不動産を相続する姉妹』

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katacottsの前回公演『不動産を相続する姉妹』面白かったです。表象的な、うすっぺらい小道具を使って表層に振り回される人々を皮肉った演出だったかもしれないなと。戸谷さんとしてはどのようなつもりで演出されていたのでしょうか?
戸谷 
ひとえに出演者の方にご協力頂いて、色々ご意見も頂いてそれに助けて頂いたんです。田辺剛さんの作品は、その作品世界や登場人物たち個々のさじ加減(演じる上での)とその調和を難しく思いました。私は戯曲の中で、物語自体の儚さや登場人物たちの脆さを感じたんです。それで小道具も薄いもの(アクリル板やガラスなど)にしたんですけど。もとから透明なものを使うというプランはもっていました。
__ 
脆さ。
戸谷 
登場人物達が立っている場所が一本の柱の上のような気がしていて。だから、ミステリーの部分についてはあまり掘り下げずにしていました。そこに脚本の焦点があるという訳じゃないのかなと。そこを探ると物語が崩壊してしまいそうな気がして。だからそこは色々想像が出来るようにして。
__ 
なるほど。
戸谷 
上演する時にある程度イメージはあったんです。定点としての土地は共時的にあり続けるけど、幾千年をかけて風化し、色々な人々が移り住む。時には雨風にさらされるだけのときだってある。その通時的断片である、ある家族と土地を巡る物語を見せたかったんです。私は姉役を演じたんですけど、家族への執着を演じながら、最後には前提として「通時的土地(共時的家族)」からその「概念」のみを受け継ぎ「その土地に決別する行動を見せたかった。土地を離れられる精神状態まで演じきれればなと思いました。土地や国や場所って、壊れやすいものだと思うんです。家族だってまんざらではない。でも、概念や思いは漂っていて、如何様にも変えられる。思いを持っていればループされていくんじゃないかと思っています。
katacotts『不動産を相続する姉妹』
脚本:田辺 剛。公演時期:2013/2/22~24。会場:壱坪シアター スワン。

タグ: 泡のように消えない記憶 土地の力 さじ加減


憧れ

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宗岡ルリ一人芝居「撲滅ならず今日」。このタイトルの意味を教えて下さい。
宗岡 
いつも死のう死のうと思っているんですけど、死なないし死ねないじゃないですか。四十ぐらいには死ぬと思うんですけど、けど結局は九十まで生きてるんじゃないかなと。私の祖父がまさにその通りで、四十の時に子供を集めて「俺はもう死ぬからお前たち頑張れ」って言ってたのに93まで生きて(笑う)。いつも終わりたい終わりたいと思うのに、毎朝起きて友達と会って可愛いものを買ったり美味しいものを食べたりして、その繰り返しへの悔しさと、絶望じゃないですけど、そういう思いをタイトルに込めています。
__ 
その思いはいつからありましたか?
宗岡 
「何かになりたい」という憧れが強くて。この漫画の主人公たちみたいに。でも、なれないじゃないですか。その悔しさがあって。両親共に教職員で公務員で、朝起きて働いて、「何だかんだでいい家庭よね~」という中で育たせて頂いたんですけど(笑う)それに対する嫌な気持ちや、大分の田舎にいた時はずっと空を眺めていて焦燥感があって、それは今でも続いているんですね。中二病かもしれないけど。
__ 
焦燥感が今でも続いている。私は宗岡さんより11歳上なんですけど、確かにその頃は私も持っていたものかもしれない。宗岡さんのそれは、10年後、私みたいに消えてしまうんだろうか?
宗岡 
それが消えてしまうのも素敵な事かもしれません。この「バナナブレッドのプディング」の主人公のお姉ちゃんが妊娠しているんですけど、お姉ちゃんが夢で赤ちゃんに「お腹の中でさえこんなに孤独だのに、外の世界に出てきたらもっと孤独に決まってる。生まれてきたくない」って言うんです。でもお姉ちゃんが「まあ生まれてきてご覧なさいよ、最高に素晴らしい事が待っている」って。それは焦燥感を忘れた人の言葉で、大人になるという事だと思うんです。この作品はその素晴らしさも教えてくれたんですけど、私はいまはそうなれないと思う。

タグ: 子供についてのイシュー 外の世界と繋がる 孤独と演劇 泡のように消えない記憶 家出についてのイシュー X年後のあなた


vol.284 宗岡 ルリ

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2013/春
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宗岡

近づけない2mm

__ 
このチラシの文章が気になりますね。「どうやっても近づけない2mmは、切なさの距離。海と空、月と地球、舞台と客席の距離」。
宗岡 
それを読まれるの、何だか写真を見られるより恥ずかしいです。
__ 
他人へのアプローチが苦手な宗岡さん。このチラシを作ったとき、近づけない2mmに対して強く意識していたと思うんですが、その距離に対してどう思っているのでしょうか?
宗岡 
大事な事だと思うんです。その2mmって、手を繋いだ時、微妙に組織が交じり合うという話を聞いた事があって。
__ 
マジですか。
宗岡 
ホンマかどうか分からないんですけど、それが離れる時の切なさやロマンチックが好きで。これは嶽本野ばらという人がエッセイで書いてたんですけど、「月と地球は惹かれ合ってるから、海で波が寄せたり引いたりする。それは切なさを目にする事だ」と書いてて。そういう儚い関係に惹かれます。
__ 
地球も月もそれぞれ重力を持っているから、引力と斥力が引きあっている。それを秘めた宗岡さんが見れるという訳ですね。
宗岡 
でも、ちょっと嫌な気持ちになるかもしれません。お客さんを嫌な気持ちにしたいというのもあるんです。想像通りのものが出てくるより、リアルにもっと近づきたくて。演劇の虚構性が嫌いで、でも全て制御されていないのも嫌なんです。いかに私が制御しながら、セーブしながら、お客さんをハッとさせる瞬間を作っていけるかを考えています。
__ 
宗岡さんが主導権を握っておきたいという事?
宗岡 
そういう指揮者みたいな事ではないですけど、観客として見た時に予想しないハプニングが起こってわたわたする役者を見た時は意地悪な気持ちになるんです。そうじゃなくて、あえてやっているというぐらいの。このチラシだって、私の性格の悪さとか、人との関わりの苦手さとかがないと成立しないと思うんですね。ハプニングがあってもあえてやっているという構造がかっこいいと思うんですね。岡村靖幸さんみたいな、笑えるぐらい・痛いぐらいのパフォーマンスに、かっこ良さを感じるんです。
__ 
それに憧れを持っている。

タグ: 泡のように消えない記憶


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宗岡

人は何度でも出会える・前回公演「復活」

__ 
その前回公演「復活」。どんな作品だったのでしょうか。
浅田 
そうですね。「人は何度でも出会える」というテーマのお芝居でした。実際にあった精神医学のレポートを元に作ったんですね。
__ 
あ、実際にあった症例だったんですね。
浅田 
発達障害を抱えた女の子が出てくるんですけど、それを精神科医が診るんです。彼女の頭の中には、凄く綺麗で何でも出来るというアンナという女の子がいる。そしてその女性が実際に出てくるんですが、アンナは彼女の成長とともに消えてしまうんです。精神科医はその女性が好きになっていたのに。それをバーでぐちぐち言っていたら、隣にいた初対面の男性に「お前なんやねん」って怒られるっていう。
__ 
浅田さんはどんな役どころでしたか。
浅田 
その発達障害の女の子でした。まるがという名前なんですけど、足が悪くて精神年齢が5歳という。めちゃくちゃしごかれましたね。まるががおかしかったら全部おかしくなるって。歩き方とか表情とか。
__ 
浅田さんは、どんな風にして演技を作っていくのでしょうか。
浅田 
私もまず、人物について調べますね。ディテールから、自分と共通している点はどこかって。その上で、私にしか出来ない演技は何だろうと考えますね。結果的に感情ベースで作ってしまうのがまだ技術不足な点ですが。
__ 
なるほど。
浅田 
最後には開き直って、「これが私のまるがや」って(笑う)。
京都ロマンポップ 第八回公演『復活』
作:よりふじゆき。演出:向坂達矢氏。会場:京都大学西部講堂。公演期間:2009年4月2~6日。

タグ: 泡のように消えない記憶


一本の樹

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今回の「物書きの書き物」。ストーリーの概略としては、流しの物書きの女の子が物語をスナックで発表し、その内に架空であった筈の物語が自分の過去と重なっていくというものでした。ええと、このお話はどのようにして生まれたのでしょうか。
中谷 
そうですね。まず、これは個人的な認識の問題なのですが・・・自分が感じた事というのが、実は見たもの・聞いた事よりもリアルだと感じていて。そういう、感じた事をフレッシュな形で留めておきたいというのがあって。だから物を書いたり、芝居を作ったりしているんですが。その時自分が一番感じた事を、何故?という疑問を置いておいて「わっ」て捕まえて「ばっ」て紙に流すという感じで書くんです。そういう意味で、今回の「物書きの書き物」の、自分自身の過去の思い出を書いて残しておくというテーマと似てますね。
__ 
主人公の女の子が、ね。
中谷 
ある意味、私がやっている事と同じで。だから、日記や物を書いたり、芝居をしたりとか、私がやっていた跡を残したいという思いがあります。今まで感じた事を忘れてしまったり、あとは大学で過ごしてきた環境を出る寂しさとかが重なって生まれました。時期的にも卒業式がありましたし。というか、昨日卒業式だったんですけども。
__ 
あ、おめでとうございます。ええと、何故そういった思いや考え方などを残したいと思われたのでしょうか。
中谷 
そうですね、残す理由・・・。一番大きいのは、振り返る事だと思うんですよね。実は、常に忘れてしまう事への怖さがあって。考えた事って、それ自体に形がない為に消えてしまうものだと思うんですね。それって脳の電気信号そのもので、一瞬で消えてしまうもので。
__ 
どうしてもそうですね。
中谷 
本能的にそれを外に出したいという欲求があって、それを貯めて置くことで振り返りたいと思うんですね。それは物凄く手間の掛かる事だけれ。感覚って、消えてしまうものなんですよ。例えば一本の樹を見て、「あ、キレイ」と思ってもその感情はその時だけに思われるものかもしれんと・・・大分深い話になるんですけども。
__ 
いえ、どうぞ。
中谷 
大学で、40代・50代の年上の方と話す機会がありまして。お話をする内に物を見る価値観って年と共に変わっていくんやなあと思ったんですね。すると、一本の樹への感想を今のうちに残しておきたいという衝動が。
__ 
なるほど。
中谷 
ある意味で冷静過ぎるのかもしれないですけど、そういう思いは最近特に大きくなってきたように思います。
「物書きの書き物」
公演時期:2008年3月1~2日。会場:アトリエ劇研。

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