ターニングポイントと半分こへの期待

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第七劇場のやるべき事を教えてください。
油田 
それ、俺も聞きたい(笑う)
鳴海 
私たちの創作のポリシーは、国境を越えられる作品の製作です。三重という場所から国境を越えられる価値のあるものを作り、第七劇場がレジデントカンパニーになっているベルヴィルを、県や市だけではなく、劇場がある美里地域の人たちにも誇りとなって愛される劇場にする。その二つですね。
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素晴らしい。
鳴海 
舞台芸術ってどうしても消えてなくなってしまうものですよね、それがいくらエポックメイキングなものであっても。見ていなければ語りようがない。
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演出はそうした作業ですよね。
鳴海 
でも、いろんな時代でターニングポイントになっている作品はある。私たちも美里で、そうした作品を作る事がミッションのひとつだと考えています。
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ありがとうございます。では、ご自身にとってのターニングポイントになった作品は。
鳴海 
鈴木忠志さんの「カチカチ山」。これは初めて富山県利賀村に行ったときに見た作品で、これはあらゆる意味で衝撃でした。それから、ピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」「春の祭典」の連続上演を韓国で見たんですが、終演後、膝に力が入らなくなった舞台体験でした。その計3つは私にとって大事件でした。
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そうした重大な作品をもし作れるとしたら、それはどんなものだと思われますか?
鳴海 
さっき、油田さんの話にもあったんですが。地方都市だと一人の表現者がいろんな種類の活動をする必要が出てくる場合があるんです。たとえば絵本も純文学も児童文学もラノベも書かないといけない場合があるんです。もちろんそれぞれをそれが得意な人に任せるという方法もあります。いろいろなジャンルが求められる中で、私がある種のピリオドとなる自分の作品を作れるのがどのジャンルなのか、なかなか想像しにくいですね・・・ただ、変な話をしますけど私は50歳で死ぬつもりにしていて、あと15年なんです。一年に一作と考えたらあと15作。その15作で納得した創造活動を送るぞと考えたら、多くのものに触れて、考えて、その時その時で真摯に向い合っていく事でしか為しえないんだろうと思います。当然のことなんですが。
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一回一回の積み上げという事ですね。
鳴海 
私はこれまで、存命していない作家の作品の演出がほとんどだったんですけど、この間のこけら落としで作った「シンデレラ」は油田さんの構成台本でした。油田さんのポップでスピーディーな作風を演出していて、私の中で開いた部分があったんです。これから15年、切って捨てずにやっていって、どの活動に対しても意味を見出して、楽しく苦しみながらやっていければと思います。
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ありがとうございます。それが大きなものであれ小さなものであれ、良いものである事を願っています。
鳴海 
そうですね。それをご覧になったお客さんにとって糧になりたいと思います。作品としてのクオリティが劇場内の半分を占める要素だとすれば、それは私たちの仕事であり、作品を通して、残りの半分を占めるお客さん一人ひとりが自分自身や他者について思いをはせて考えを深めるような時間に貢献できれば、その劇場はとても幸福だと言えると思います。

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ピンときたら!

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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
西村 
またピンときたら、素敵な場所と出会ったら、こまち日和をやりたいと思います。
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そこで、お客さんに何かを手渡せたらいいですね。
西村 
こまち日和は、一回一回の公演を「wake」で数えているんですけど。それは航跡(船が通り過ぎた後の波)という意味なんです。お客さんの心に、こまち日和が通り過ぎて、何か少しでも航跡が残せたらいいなって。
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すぐ消えてしまうものだけれども、何かが残ってほしいという祈りが込められている。
西村 
はい。

タグ: 泡のように消えない記憶 一回一回を大事にする 今後の攻め方


一度きりの一秒

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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
鈴木 
伝舞企画は力押しで攻めていく感じです。オレ松さんはまだ配役は決まってないんですけど。で、内閣のツレウヨはまたツアーです。一年前と同じ主演で、プレッシャーもありつつ。その間、のるてちゃんや石原正一ショーも経て、そこで熟成したものが自分の中にはあるはずなので。それから、一回一回を大切にしたいです。
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というと。
鈴木 
ずっと長くやっていると変な感覚があるんですよね。一回のお芝居が4ステ5ステだと、「1ステはミスがあってもしょうがないし」「2ステは中だるみしないように気を付けないと」とかそういう訳の分からない思い込みが出てきてしまって。学生演劇祭の時に、喀血劇場で高校生の子と共演したんですが、最初の本番が終わった後に「あと2回出来るんや!」って言ってて。よく考えたら高校生って一回の本番の時に何ヶ月も掛けて稽古していて、1回の本番に掛ける気持ちって絶対強くて。そういう気持ちは忘れかけてたなあと。それは1回の稽古に対してもそうなんですよね。
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他人との出会いを大切にするようにね。
鈴木 
だから、自分が感じる事もノートに取っておいたりしています。

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vol.318 鈴木 ちひろ

フリー・その他。

2013/春
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