社会人役者のなぞ
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- 廣瀬さんがお芝居を始めた経緯を教えて下さい。
- 廣瀬
- 僕は大学二年の時に仮面NEETをしていまして。実は1年の時にロボットサークルに入っていたんですが、人間関係がいやになって。別に問題があった訳じゃないんですけど。その1年で水曜どうでしょうにハマり、TEAM NACSにハマり、演劇サークルに入ったんです。基本的には、文化芸術は趣味でやってこそと高校の頃からそう思っているんですね。
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- ええ。
- 廣瀬
- まあ京都にはセミプロの人がたくさんいるんで「何言うてんねん」言われそうですけど、まあまあそう思っていて。で、サークルを卒業するとやはり寂しくなって、アクターズラボ※に入ったんですね。僕は就活が嫌でフリーターに成り下がったんです。演劇をやっている人って、普通の仕事したくないから芸術系の仕事をやりたいと思っている人が多いと思うんですけど、僕は就活というまどろっこしいものが嫌で、そんなややこしい事で仕事を決めなあかんというのが嫌で。それだったらアルバイトしつつ社員登用を狙ったほうが、いろいろ経験も積めるし、演劇もし易いだろうし。ようやく、ちょっとずつその足場固めが出来つつありますね。
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- 素晴らしい。
- 廣瀬
- アクターズラボをやっていて、他のクラスの公演にも行くんですけどね。プロの役者はそりゃ皆さん上手だと思うんですけど、僕は社会人役者の方が面白いと思っているんです。プロの方々はもちろん尊敬しますけど、僕の趣味志向で言うたら、面白いのは社会人役者なんですよ。会社取締役をしながら計5公演くらい出演されてる人がいるんですが、ものすごく面白い役者でした。社会人劇団でいうと、ベトナムとか中野劇団とか柳川とか、面白いでしょう?
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- 社会人俳優の身体が面白いというのは、よく分かります。
- 廣瀬
- アクターズラボの杉山さんは「責任感の違い」と仰っているんですけど、きっと、言語化出来ないですけど決定的な何かが責任感の他にあるんだろうなとどこかで思っていて。職業・職場が醸し出す個性が絶対あるんだろうなと。
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- 社会人俳優の身体がこの世界に見られ慣れていないから、経験的に飽きられていないから、かもしれませんね。
- 廣瀬
- 確かに、見られ慣れていないというのが、一つの圧になっているのかな。社会人の方が、見られるという圧力を自分の力に変換する能力を持っているんじゃないかなと思うんです。まあ、ハリウッド俳優とかは別にして、外からの圧を出力に変えるメカニズムは普通に働いていた方が養われると思うんですよ。さらに、観客の圧に慣れていないから、それを変換する作業がエネルギッシュになるんじゃないかと。その2つの構造があるんじゃないかと思うんです。
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- 分かります。しかも、意気込みの種類が違いますからね。
- 廣瀬
- アクターズラボに参加する人は、次に出られるかどうか分かりませんからね。そういう意味で、責任感は違うかもしれません。
- ※アクターズラボ
- 劇研アクターズラボはNPO劇研が主催する、総合的な演劇研修の場です。舞台芸術がより豊かで楽しい物となる事を目指して、さまざまなカリキュラムを用意しています。全くの初心者から、ベテランまで、その目的に応じてご参加頂く事ができます。現在、京都と高槻を拠点に、アクターズラボは展開中です。(公式サイトより)
大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「ロボット版銀河鉄道の夜」※
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- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。最近、片桐さんはどんな感じでしょうか。
- 片桐
- 最近はピンク地底人が終わって。今度は「ロボット版銀河鉄道の夜」に参加するんですけど、その稽古が始まるところです。今は、他の舞台を観に行ったりしています。
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- 楽しみですね、ロボット演劇版「銀河鉄道の夜」。中々、ロボットと同じ舞台に立つという機会はないですよね。
- 片桐
- お客さんも、演劇に興味がなくてもロボットに興味がある人が観に来てくれそうな気がして。それが楽しみです。
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- それに、吉本興業と平田オリザというのは中々珍しい組み合わせですよね。
- 片桐
- そうですね。
- ※大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「ロボット版銀河鉄道の夜」
- 公演時期:2013/5/2~12。会場:ナレッジシアター。
道
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- ありがとうございます。そうだ、前回のインタビューでも伺ったんですけど、改めて。「役者として、どんな方向で進みたいですか?」
- 山脇
- ちゃんとプロになりたい。何だろう。やっぱりきちんと「仕事が出来る」、ようになりたい。
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- なるほど。最近思っているのは、いい役者って事件性のある人なんじゃないかと思っていて。その人を客席で見て、凄い事が起こっている、と感じるような。事件を起こすのが役者の、仕事かもしれないなって。
- 山脇
- そうですねえ。お芝居って芸術の側面はあるけど、興業でもあって。「あの人が出るんだ」って話題も、一つの魅力ですよね。
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- 山脇さんは、どんな役者に憧れますか?
- 山脇
- 嘘が凄く少なくて、極端に嘘がつける人かなあ。本当にヤバい一瞬までギリギリまで嘘が少なくて、強いシーンになって、舞台に立っているその人が本当に傷ついちゃったんじゃないかって心配になるみたいな。
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- 大きな嘘が付けるようになりたい?
- 山脇
- なりたいっていうか、何だろう。でも舞台上で、借り物みたいな事はやりたくないなーと思います。
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- なるほど。台本と、演出の演技指導通り(あれば)にやるのはちょっと違う?
- 山脇
- というか、例えば、A地点からB地点に行くのって、もし訓練を受けてたら誰でも出来るんですよ。でも、自分が見つけた行き方で行きたいなって常に思っています。AからBへの近道を作るようにはなりたくない。素敵な役者さんって、絶対に自分のやり方で道を作ってらっしゃるんですよね。
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- 大切ですね。「その人の演技は、その人にしか出来ない」。
- 山脇
- だからその人に役を頼むんだろうなって。それが役者の仕事なんだろうな、って思っています。選択した道に、自分の血が通っているんです。色んな人を見て、そう思っています。
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- 仕事を振られて、でもそれをこなすだけじゃまだまだなんですよね。その仕事を通して、誰に何を与えられるかを意識する必要がある。台本と指示通りにやるのであれば・・・
- 山脇
- じゃあ誰を呼んできてもいいじゃないか、という事になってしまいますね。
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- なぜロボットを使わないのか、という事になる。
- 山脇
- 私は自分でも映画を撮るので、撮影時に、その人なりの演技が出てくると監督としてとても嬉しく思います。昨年舞台で共演した憧れの人たちからもものすごく勉強させてもらいました。
指一本一本まで、意識して動かしてみたい
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- どこかで聞いたのですが、殿井さんはアニメーションが作れるらしいですね。
- 殿井
- (笑う)技術は全然ないんですけど・・・。針金が入った人形をちょっとづつ動かしていくんです。
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- おお、クレイアニメみたいな。
- 殿井
- 簡単な動作でも、いざ人形を動かしてそれらしくみせるとなると難しいです。普段自分がどうやっていたかを改めて思い返さないと。歩くことひとつとっても、膝が先だったかな?かかとかつま先か?と、改めて考えてみるとこんがらがってきます。
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- 難しいですね。
- 殿井
- 演劇やダンスの稽古エクササイズでもゆっくり歩く、動いてみる。というのがあるんですが、同じように難しいです。そういえば「教育」や、「文化祭」のときも、稽古のはじめの頃に「ゆっくり動く」ワークショップがありました。
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- はい。
- 殿井
- 普段無意識にしていることが実は、難しいというか奥が深いというか、思い知らされます。
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- 面白いですね。
- 殿井
- ロボットの開発みたいですが、常々指一本一本まで意識して動けるようになったらいいなあと思います。自分でできたら、人形でもできそうな気がするので・・・。
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- クレイアニメで日常の動きを作るには、自分の筋肉を人形に延長させて動き方を発見していかなくてはならない。制作するとき、人形を通して自分の演技を同時に見るという、普通ではありえない体験が出来る。
- 殿井
- そうですねぇ、いや、本当に拙くて私には演技というほどのことを人形にさせるだけの技量、人形作りの技術がまだないのですが・・・。ちがう分野をいったり来たりするというのは、何かしらの肥やしになってきたように思いますので、アニメーション制作もつづけていきたいですね。
明和電機とロボット演劇
- 山口
- 僕、たまたま知り合いが同志社大学の同じような学部に知り合いがいて、ちょっと色々聞いてるんですよ。作品を作るだけじゃなくて開発も同時にしないと行けないんですよね。
- 西尾
- そうですね。
- 山口
- 何か、授業で作ってはりますよね。それがすごいなと思って。
- 西尾
- そうなんですよ。パソコンから作っちゃう勢いで。ゲイナーっていう、USBにつないでプログラムを仕込む機器があって、それとモニターを繋いで展示環境から作ったり。
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- ああ、もう明和電機ですね。
- 西尾
- そう、明和電機。意外に日本のメディアアートは世界から注目されているんですよ。明和電機、凄いですよ。ホントにモノから作っちゃうし、パフォーマンスもするし。オーストリアでの最大のメディア博覧会にVIPで呼ばれてて。ヨーロッパからみると、日本人の「遊びを加えつつ、ゼロから自分たちで作ってしまう感」がびっくりするらしいんですよね。別会場では、DSとかWiiも置かれてた。
- 山口
- そういう技術を取り入れてる演劇も増えるでしょうね。絶対融合出来ますよね。
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- 平田オリザさんの「ロボット演劇」がそうですね。
- 西尾
- あれ凄かったらしいですね。ほとんどの観客が「人間味を感じた」って。
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- 不気味の谷を超えちゃってたんですね。