劇団ZTON vol.9「天狼ノ星」※
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。森さんは最近、どんな感じでしょうか。
- 森
- 最近はZTON「天狼ノ星」の稽古三昧ですね。殺陣に悪戦苦闘しています。天の章、地の章とあって、両方に出させて頂くんですけど、どちらにも殺陣があって毎日筋肉痛です。
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- 今回は、刀以外の殺陣もあるんですよね。
- 森
- そうですね。4つの種族があるんですが、それぞれが狩りに使う得物を使った殺陣になっています。それぞれ勝手が違う武器の殺陣なんですよ。
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- 森さんはどこの部族ですか?
- 森
- 僕は鷹の種族です。鷹は狩りに弓を使うので、弓矢の殺陣ですね。
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- おお!前回公演「月に叢雲、花に風」※の時の弓矢の殺陣があって、1.5メートルぐらいの高低差のあるステージで、上からヒュンヒュン射ってはSEと共に相手が命中するというのが物凄くかっこよかったです。
- 森
- あれはウチの鈴木さんがやってましたね。いやー、僕も練習していますが、難しいんですよ。鈴木さん凄いなと思いましたね。武器によって、実は使う筋肉が違うんですよ。弓矢だったら背筋に来るんです。刀は腕に来て。毎日、違う部分に筋肉痛が出ています。
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- 使われている筋肉が違う。という事は、本番の時にそれぞれの種族によってどこが鍛えられているかがハッキリ分かると。
- 森
- そうですね。やっぱり種族の大元が全然別の動物なので、生き方が違うんです。現実世界でも、人間は生活様式によって違うんですよね。今でも狩猟を続けている民族は視力が僕らに比べて発達しているし・・・
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- 農耕民族は長期間の集団作業に強いし・・・
- 森
- 生きている環境で身体って違うんだなと、それを実感出来ていますね。
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- 我々がそれを、今更獲得出来るかどうか、ですね。
- 森
- そうですね、結局、想像の範囲内でやっていますね。
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- ガラスの仮面で、亜弓さんもマヤも役をつかむために実践するんですよね、毎回じゃないですけど。亜弓さんなんて、幽閉された王女の役をつかむために、一時期下町でケンカに明け暮れる荒れた生活を送ってたんですよ。
- 森
- 読んだ事ないですけど、ええ。
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- 役者が、演じる役の重みをその役者個人に刻み付ける事を役作りだと言うのかもしれませんね。
- 森
- 自給自足なんですよ、この世界の部族は全て。今の世の中でそれはかなり難しくて。
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- 我々は農耕民族ですしね。
- 森
- でも、鷹の種族は貴族社会的な所があるんですよ。下々の者の税で生きているみたいな。鷹はグルメなんですよね。僕は鷹の王をやらせてもらうんですけど。
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- あ、王なんですか。
- 森
- ニソロという名の王なんですけど、ワイン好きであると。苦手なんですがこの間、飲んでみました。
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- なるほど。
- 森
- 河瀬さんに、「お前は人生経験がなさそうに見える。役者として重みを出せ」と言われてズバッと来て。だから、色んなものに出会う為に外に出ていったり、意識して見るようにしています。
- ※劇団ZTON
- 2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(公式サイトより)
- ※劇団ZTON「天狼ノ星」
- 公演時期:2013/5/9~12。会場:京都府立文化芸術会館 。
- ※劇団ZTONエンタメストライク002「月に叢雲、花に風」
- 公演時期:2012/8/18~19。会場:京都府立文化芸術会館 。
素敵と逆の方向性
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- FUKAIPRODUCE羽衣の作品について。私は実は「15 minutes made」で拝見しているんです。「浴槽船」という作品でした。それは15分間、お風呂の素晴らしさを歌と踊りで表現するという作品でしたね。ショックでした。これは私がこれまで見てきた舞台作品と一線を画しているなと思ったんです。
- 糸井
- はい。
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- こんな事を言うのはきっと、インタビュアーとしては失格だと思うんですが・・・それを拝見した時、私の中に強烈な拒否反応が起こったんですよ。文脈や構造を読み下すのが通じないというか、そういうのじゃないんですよね、きっと。
- 糸井
- はい。
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- だから、受け入れられなかったんです。今考えると、作品とは構成されているものだという前提で私は生きていたのが、(私にとっては)そうではないものを目にして、驚いたんです、きっと。しかし反面、憧れを抱いた筈なんです。
- 糸井
- 凄く分かります。僕の性格や性質もあると思うんです。前置きとか説明とかはナシで一気に音楽と歌で歌いあげていくからですね。
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- きっと、羽衣の価値は男の子的な「面白さ」ではないんだと思うんです。展開そのものが持つ面白さではないんです、きっと。俳優が出てきた瞬間から、彼らが変質するわけではけしてない。むしろその存在のまま高まっていく。そこにあるのは観客を啓発する展開や物語ではない。
- 糸井
- 言ってみれば単純になってしまうんですが、その人の存在感というか。羽衣の場合は役作りとかそういうのは一切ないんですね。「何か素敵じゃないのは、あなたが素敵じゃないからだ」という事になるんです。色んなパターンはあるんですけど、俳優さんの個性が発揮されない作品もあるんです。そうした作品は個人的には好きな作品だったんですが、集客も芳しくなく。
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- なるほど。
- 糸井
- 作品の作り方には毎回悩んでいます。僕の世界を全面に押し出す作品もあれば、単純に俳優さん達が楽しそうに舞台で演じている作品もあり。それが客足にも響くので・・・。「耳のトンネル」は配役があり、評判も良くて、それでこりっちの賞も頂いたり。手応えはもちろん感じたんですが、それよりも、創作のやり方についてもっと考えないとな、と思ったんです。