役への執着

__ 
笑の内閣の一番のネックは芝居の質だと思うんですよ。それはお客さんによるかもしれないですけど、色んな作品を見てきたような人には物足りない。だから説得力が削がれるんじゃないかといつも思っている。
高間 
それはですね、重々自覚しているんです。問題はいくつかあって、まず僕の演技が下手であるという事。それは僕が出演しなければ解決するんです。もう一つは、僕は芝居が下手でも気にならない演出家なんですよ。
__ 
そうなんですね。
高間 
まるで気にならない訳でもないんですけど。上手い役者には声掛けなくなっちゃったんですよね。演出としての欲が浅いんでしょうか。
__ 
今回は上手な人が何人もいるじゃないですか。少なくとも私は、自分の演技を責任持って作って来てくれればそれで何も文句ないです。
高間 
そうしてくれる役者がしてくれればいいんですよ。僕よりも役に執着してくれればそれでいいです。今回出てないですけど田中浩之とか小林真弓とかは書いた僕より執着してるんです。そういう人については信用しています。やっぱり脚本家としての比重が強すぎるんですよね。ラジオドラマでやったら実は充分かもしれない。

タグ: ラジオドラマ 役者に求めるもの


KYOTO EXPERIMENT オープンエントリー作品 - Theatre Company shelf『shelf volume 18 [deprived]

矢野 
今度京都に持ってくる作品というのが[deprived]というタイトルで、東京では(仮)とタイトルにつけて4月に上演したんですが、20人しか入らないギャラリーで、一週間ほど上演したんですね。音響や照明効果に頼らず、同じ空間で、観客と空間を共有して、物語を物語るという作品です。一度徹底的に、演劇に付随する様々な要素を削り落として俳優の“語り”の力だけを使った作品を作りたくて。
__ 
東京で上演して、いかがでしたか。
矢野 
今回の[deprived]に限らず、僕たちは基本的に、都度、再演に耐え得る強い作品を作るんだ、という気持ちが強くあります。僕は専業の演出家なので、基本的にテキストは他の誰かが書いたものを使う、というやり方を取っています。セットなども極力作らず、音響も薄く、観客の無意識を支えるように入れるか、あるいは最近はもう音響は無くてもいいかな、という感じで。だいたい装置を建て込む、という感覚からはもう10年ぐらい離れていますね。ただ、再演に耐え得る、といってもそれは同じものを正確に再現できるようにする、ということではなくて、つまりどこに持っていっても同じように上演できるパッケージ化された閉じた作品ではない。環境、つまり劇場という建築物の歴史や場所性、ロケーションなど大きな要素まで含めて、それらを含みこんで、その都度ちょっとずつ作り替えて、稽古場で出来るだけ柔らかく且つしなやかなものを作って、それを現場で毎回、アジャストしてから上演するという感じで。俳優には、まあ相当な負担がかかるんですけど、そういう風に劇場というか<場>の魅力を引き出した方が舞台芸術としてもっとずっと楽しいんじゃないかと。お金が掛からない、というのもありますけどね。でも、貧乏ったらしくはしたくなくて。
__ 
そうした上演形態が、shelfのスタイルですね。
矢野 
貧乏ったらしくしたくない、というのはこちらの気構えの問題でもあって、経費をケチってコンパクトにするというよりか、稽古場で相当な時間をかけ、試行錯誤しながら練り込んで来たものを1ステージ20人しか見られないような空間で上演する。それってむしろ、凄く贅沢なことなんじゃないだろうか、と。もちろんそこには懸念もあって、1ステージ20人だと、変な話客席が全て知り合いで埋まってしまうかもしれない。でもそれは何とかして避けよう。出来るだけ当日券を用意するとか、常連客しか入れないような一見さんお断りの飲食店のような雰囲気じゃなくて、誰でも入れるような、そんなオープンな空間を作ろうと。そのように、どうやって自分たちの存在や場所そのものを社会に対して開いていくか? ということについては、これからももっともっと考えていかないといけないと思っています。ただ先にも言ったように、自分たちのやりたいこと、課題、やるべきことが見えて来ているという意味では今は本当にとても充実した毎日を送っています。
__ 
課題が見えるという事は、少なからず問題に直面していた?
矢野 
将来的に考えて、何というか、テレビの仕事や、演劇、コミュニケーション教育など教える仕事、レッスンプロっていうんですかね、そういう二次的な仕事でなくちゃんとしたアーティストが、純粋に演劇作品を作ることでそれで対価が支払われるような社会になっていかないと、それはちょっと社会として余裕がないというか、貧しい社会なんじゃないかな、と思うんです。例えば俳優や、スタッフにしても例えば子どもを育てながらも演劇活動が出来るような、そんな世界になっていってほしいんです。まあ、そもそも演劇制作って、ビジネスとしてはすごく成り立ちにくいものなんですけどね。資本主義の、市場原理の中では回っていかない。だけど、や、だからこそ一人一人がただ良い作品を作ればいい、作り続けていれば、というのは違うと思ってて、それはそれでちょっと独りよがりな発想だと思うのです。で、だからそういうところから早く脱して、演劇に関わる一人一人が将来についてのそれぞれ明確なビジョンを持って、これからはそれぞれが一芸術家として文化政策などにも積極的にコミットしていかなければならないと思います。じっくりと作品作りをしている僕らのような存在が、ファストフードのように消費されるんじゃなくて、きちんと評価される。社会のなかに位置づけられる。国家百年の計、じゃないですけど、二年とか三年とかそんな目先の利益じゃない、大局的なビジョンを持って、演出家とか、劇団の代表者という者は活動をしていかなきゃいけない。そんなことをずっと考えていて、いろいろと、作品作りだけじゃなく制作的な面でも試行錯誤をしています。

タグ: 観客のクオリア ちゃんと楽しませる 社会の中で演劇の果たすべき役割 ユニークな作品あります しなやかさが大切 私の劇団について 劇団=場所論 再演の持つ可能性について 役者に求めるもの 会場を使いこなす


野生に僕らは逆らわない

__ 
そういう意味では、「俺ライドオン天使」ではかなりスカッとしました。坂本さんにとってはどんな作品でしたか?
坂本 
楽しかったです。演劇って毎回、違う体験を得られるんですよね。退屈しないんです。例えば、キモオタが女の子のヒップラインを全身を使って見るシーンがあったんですけど、そこが僕の人生の中で5本の指に入る楽しさでした。彼とは「あなたが一番気を付ける事はなんですか?」「お尻を目で追いかける事です」「それは役者として役を演じる事以上に大切ですか?」「役者として役を演じる以上にお尻を目で追いかける事が大切です」こんなやり取りを30分くらいして、周りの人は全員引いていたんですけど、そういうコミュニケーションは大切にしたいです。
__ 
なるほど。しかし、過激な下ネタが予想されるチラシだったにも関わらず女性客が大変多かったですね。
坂本 
そうですね。もしかしたら女性的なのかな?意外と、男性より女性にウケるのかなあ?
__ 
小手先ではない品性下劣な下ネタを、もしかしたら女性こそ求めているのかも?
坂本 
ちょっと、話を聞いてみたいですね。次回公演はレディースDAYを作ってみたいですね。

タグ: B級の美学 ファンタジー 関係性が作品に結実する 役者に求めるもの 女性的、それはなにか 女性と下ネタ


劇団ZTON「天狼ノ星」を終えて

__ 
天狼ノ星を終えて。ZTONの傑作として記憶に新しいですね。大変面白かったです。私の考え方だと、傑作って作品だけではきっと成立しなくて、客席も含めた劇場が置かれている時代背景がかなり影響していると思うんです。そうして初めて演劇は必然性を持って現在の我々の前に現出しうるのではないか。天狼ノ星は、多文化共生社会の到来と東アジアとの国際関係に悩む現代日本を背景に、他国の国民とこれから向き合うであろう世代の横顔を、ループ状の物語構成を借りた演劇作品として鮮やかに表現されていました。もちろん芝居としても非常に完成度が高く、素晴らしい演劇になりました。為房さんは、一人の役者として、どのような経験でしたか?
為房 
ありがとうございます。お芝居を作るにあたって何が一番大事かって、話が一番大事だと思っていたんです。僕が何かお芝居やパフォーマンスを見る時、やっぱりお話を見るんですね。脚本家が書いたものの起承転結がきちんと魅せられるか。そこに徹するあまり、自分が演技をする時も「色がない」「安定感が凄いよね」「もっと余分な事をすればいいのに」と言われる事があって。
__ 
そんな事を言われますか。
為房 
安定はしているけどね、って。でも今回に関して言えば、早い段階で稽古が回ってこなくなって。つまり殺陣指導をはじめ稽古を見る時間や、自分自身のプラスアルファを考える機会が多かったんですね。さらに、団員の平均年齢があがるにつれ、僕が、絶対的に話を魅せる側に回らないといけないと自覚したんです。地の章では割と、一本の柱としての役なので、もっと我を張らなくてはならないと。今までは誰がメインなのかによって、そこに意識を集中させるために考えて、それはもちろん大切なんですけど、その中でも我を持つようになったというのが個人としては大きい変化でした。
__ 
話を律する立場を意識するようになった。
為房 
そうなるのが遅すぎると言われそうですけど。ホントに極端な事を言うと、話が壊れてもいいから僕が目立てばいいかなというぐらいの気持ちになった、というのが大きいですね。

タグ: 傑作の定義 背景が浮かびあがる 自分の演技を客観的に見る 世界がズル剥け 役者に求めるもの 殺陣の話題 劇団ZTON、参る


水平方向を探る

辻  
最近、俳優には二つの方向の仕事があるなと思っているんです。
__ 
というと。
辻  
一つは、上を目指す事=「上手になる、売れる。」もう一つは、演劇の土壌を広げてあげる事なんじゃないか。僕は圧倒的に後者ですね。基礎のコミュニケーションゲームとか、そこから演劇にはこういう要素があるよねとか、台詞を格好良く言える事の前に、演じてコミュニケーションする価値があるよねと。この前の京都学生演劇祭の時は、毎日のように基礎練習を交えて、いろんなコミニュケーション、もしくは演劇WSをやっていました。
__ 
その「水平方向」。どのような経緯で演劇WSに取り入れられるようになったのでしょうか。
辻  
「上を目指す」ためのWSだったら、僕よりももっと上の人たちがいるんですよ。でもそれをやろうと思ったら、辛く恥ずかしい訓練をしないといけない。自分を曝け出したり。僕は正直、それが嫌なんですよ。自分もやった事はあるのですが。
__ 
それよりは、水平の土壌方向。
辻  
広げるという意味ですが、別に演劇の観客をもっともっと増やしたいという事ではないんです。お芝居に興味のない方がWSに参加してみて、「ああ面白いんだ。でも観ないけど・・・」これで充分だと思うんです。演劇というジャンル、カテゴリに拘る必要はないと思うんですよ。
__ 
おお。
辻  
僕も野球は好きですけど、毎日は見ませんし、ましてやプレイもしない。参加者のアンテナに触れて、そこから個人の中で発展していくのが土壌を広げるという事だと思うんです。僕の演劇WSは、集団による作品作りをしますが、それを通して、会話の基礎であるとか、誰も指摘してくれない見方であるとかを提供する場でありたいと思っています。もちろん、演劇が面白いと思ってくれるきっかけになってくれれば最高ですね。
この前の京都学生演劇祭
辻さんは第2回京都学生演劇祭で、劇団月光斜参加作品「Celebration」では作・演出を務めた。

タグ: カテゴライズされる俳優 役者に求めるもの


vol.270 辻 悠介

フリー・その他。

2012/春
この人のインタビューページへ
辻

必要な事をやっているつもりです

__ 
以前拝見した、野木さんが作演出を務めているパラドックス定数の「東京裁判。非常に面白かったです。タイトル通り戦後の極東軍事裁判を題材にした作品でしたね。登場人物は5人の日本側の弁護士。世界の耳目の中で日本そのものを弁護する様はまるでそういうようにして戦っているようでした。まるで情報戦のような感触があったんです。例えば、かわぐちかいじの描く軍艦同士の戦闘のような。
野木 
情報戦。はい。
__ 
俳優が演じている役の思想とか事情がすごく分かりやすいんですよね。具体的だからこそか、こちらの側のリアルタイムな想像が次から次へと実証されていったり、併走したり、追い越したり。パラドックス定数では、いつもこのような作品を作られているのでしょうか?
野木 
うちは節操なく色んな題材に手を出しています。でも、稽古のやり方としては毎回同じ事をやっているつもりです。ええと、さっきの情報戦って・・・。
__ 
すみません、私も手探りで言葉を探しているので、例えが変かもしれません。俳優が演じる役がいままさに仕事をしていて、身体がそのために動く時に帯びる使命感というか。それが、観客に具体的な理解をさせてくれるんですよね。共感とは質の違う共有のあり方で。国の利益というか、敗戦処理という戦争に立ち会っている身体。そうした演技を作るには、もしかしたら稽古の仕方に特別なやり方があるのではないかと思っているのですが。
野木 
いえ、特殊なやり方というのは特にないんですよ。とはいえ私の方から「こうしてほしい」と指示をする訳でもなく。でも、「ここに五人いるから、お互いを無視しないでほしい」という事はよく言いますね。
__ 
「ここに五人いるという事実」。
野木 
その認識の上で、必要な事をやっているつもりです。細かい事ばかりやっている訳ではなくて、でも、「相手がこの台詞を言う間に、自分の中に立った気持ちは絶対に無視しちゃいけない」とか。
__ 
そうそう、そうですよね。
野木 
相手の態度を受けて、こう返すというか、こう返さざるを得ないというか。
__ 
舞台上の人間同士の、誰にでも提示される流れ。これを明確に掴んでいるのって、きっとどこまでも演劇的で、同時に作りものからはかけ離れた、間合い的な何かだと思うんです。それこそが会話劇と言えるかもしれない。
野木 
俳優には支えられています。本当に。そう、詰め詰めばかりの稽古ではないんですよ。毎日の稽古は違うので、当然、変化はありますね。
パラドックス定数 第29項 「東京裁判」
公演時期:2012/7/31~8/12。会場:pit北/区域。

タグ: ユニークな作品あります 役者に求めるもの


「どくはく」

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
上原 
役者として借り出された時に、求められた事を楽しんで仕事したいですね。
__ 
私も、楽しんでいる上原さんを見たいです。
上原 
(笑う)どんな舞台でも楽しみたいですね。
__ 
演出者としては。
上原 
応えてくれる俳優には、最大限報いたいと思います。こないだの一人芝居の大西さんみたいに。
__ 
あれは凄かったですね。
上原 
あの作品は、もうそのまま素直に演出させてもらった感じですね。
__ 
「どくはく」大変面白かったです。演出をされておりましたね。途中から、見てはいけないものを見ているような気がしていました。
上原 
脚本の力ですね(笑う)。実はめっちゃ細かく段取りを付けました。大西千保という役者の存在感がずば抜けている上に踊れるので、緊張と緩和を上手く使えるんですよね。30分間ずっと緊張していても面白いかなと思って作りました。
__ 
最後、大西さんにしては珍しく汗だくになっていましたね。
上原 
そうですね、普段大西さんはそんな状態になりませんからね。
__ 
役柄は「思いの強い人」でしたね。
上原 
内面から出てくる腹立たしさを鍵に作りました。彼女の中ではグルングルンしたと思いますよ。せっかく、演出が別だから「どくはく」は玉置君がしないであろう遊びをしてみたり。色々な試みに応えてくれたと思います。

タグ: 役者の汗を見せる エネルギーを持つ戯曲 役者に求めるもの 今後の攻め方 玉置玲央さん