質問 高木 貴久恵さんから 衣笠 友裕さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、高木貴久恵さんから質問を頂いてきております。「一番古い記憶を教えて下さい」。
衣笠 
家族旅行で温泉に行った帰り道、転んでペロペロキャンディーを割った事ですね。家の近くまで着いて、歩いていたらこけちゃって。持っていたペロペロキャンディーが全部粉々になったんです。袋から出して間もないのに、全く手を付けてなかったのに。めっちゃ悲しくなっちゃって物凄い泣きました。でも家に帰った後に、母が一個一個洗ってくれて、パズルみたいに一個一個をお皿に並べてはいって渡してくれたんですよね。
__ 
ええっ。
衣笠 
その時、嬉しかったんですけど、ちょっと・・・自分が割ってしまった事でここまで手間を掛けさせてしまった事に悲しくなってしまって。そういう感情で、喜びたいけど喜べないみたいな状態で一つ一つをポリポリ食べたのが一番古い記憶です。
__ 
その、御母上の行動は教育そのものですね。だって、飴は粉々になってしまったけれども、手間を掛ければ戻す事が出来る。とは言っても、完全な元の飴ではない。そういう重大な事を伝えられた教育だったと思うんですよ。最初の記憶になるぐらい。
衣笠 
しかし、そこに僕は罪悪感を覚えてしまったんですよ。
__ 
お母上は、その引け目に気付いてましたよ。
衣笠 
あ、そうなんですかね。
__ 
飴を一つずつ口に運ぶ時、微妙な表情をしていたでしょう。びっくりするぐらい泣き始めた息子と、粉々になった飴、復元してみせたけれども、今度は複雑な表情になってしまって。それはお母上の心に、どのような思いを生じさせたのでしょうか。
衣笠 
何かちょっと、おかんとしても、悲しいじゃないけど、キュッとなる感情があったんじゃないかという気がします。別に新しいのを買えばいいかもしれんし、しょうがないよと諭したらいいかもしれんし、もっと簡単に終わった話かもしれんし。多分、電車の中でずっと大事に持ってたと思うんですよ僕は。帰り道、家の近くになるまで袋を開けなかったぐらい大事に。それが、母親にとっては、僕が大事にしている事が分かったと思うんですね。あともうちょっとで家なのに割れちゃったという事に対して、ちょっと悲しくなったのかなと。
__ 
旅行の帰りのお土産を大事に扱っていた。これは息子の、家族に対する裏表のない愛情表現であると母上は取ったでしょうね。だからこそ、新しい飴を買うという案は旅行の思い出を帳消しにしてしまいかねない。家に着くまでに待ちきれずに封を開けてしまった・・・パンドラの箱ですよね。
衣笠 
そうですね(笑う)
__ 
その悲しさに対して、何かをせずにはいられなかった。すっぱり諦めるという選択肢もあったが、でもあえて修復してあげる事を選んだ。そういう教育を選び取り、息子に見せた。もしかしたら、その時点で息子への放任教育は始まっていたのかもしれない。そうでなければ「自衛隊ええんちゃう」とか言わずに内部進学に行ってくれと言うはず。放任とはつまり、自由と責任という事ですね。
衣笠 
そういえば母は僕のわがままに対しては厳しく、反面、大切なものが失くしたり取られたりしたらすぐに直したり替りを持ってきてくれたんですよ。新しいものを欲しがってもダメって言うんですが。なんか、僕が大切にしているものを同じように大切に扱ってくれたと思います。

タグ: めっちゃ泣いた・号泣した SeizeTheDay 罪悪感 温泉の話題


津あけぼの座スクエアクリエーション2 葉桜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
全員 
よろしくお願いします。
__ 
「葉桜」を3月に京都の西陣で上演されるという事で、今回のインタビュー企画となりました。大変楽しみです。まずは・・・最近、どんな感じでしょうか。How are youという意味で。
油田 
実は今、津あけぼの座がリニューアルのための改修工事をしていまして。3月の頭には終わる予定なんです。これはあけぼの座9年目の改修工事なんですね。元々は学習塾として作られた施設を、本当にやっていいのかなと思いながら工事していたのが9年前で、今の工事はもしかしたら次の10年に向けてのものなんじゃないかと考えると、ふと・・・止めるなら今だなと(笑う)。次の10年も頑張らないといけない。まるで伊勢神宮の遷宮みたいですね。山中さんをはじめ、若い年代に劇場の作り方のあれこれを伝えています。まさに我々にとっての遷宮ですね。
__ 
次の世代への継承ですね。
油田 
もう3つ作ったので、もうこれのリニューアルが最後で4つ目はないだろうと思っていますが。
山中 
あとは遷宮を繰り返すだけでしょうか。
__ 
素晴らしい。次の代への思いはありますか。
油田 
三重はこの4・5年でやっと盛り上がってきたので。私どもは民間の事業ですので、三重県文化会館さんや三重大学さんとの連携も動き出して広がりが出来てきたんですけど、でも、いま一線で活躍している人たちが下がれば、もう多分この盛り上がりは終わる、無くなると思うんですよね。次がいない訳ではないんですけど、次を担う人材が出てこないといけないと思っています。
津あけぼの座
2006年10月の開館以降、演劇公演・トークカフェ「ZENCAFE」・ワークショップ事業など、客席数50席の小規模空間のメリットを最大限活かして活動をして参りました。2012年3月から、津市栄町に最大150席のスペース「津あけぼの座スクエア」を2つ目の劇場としてオープンいたしました。これまでの津あけぼの座で培った劇場運営のノウハウを活かし、アーティストにも来場いただくお客様にもご満足頂けるよう目指して参ります。人々が交流し、文化芸術を発信し、研究できるスペース。ワークショップやアウトリーチ活動を積極的に推進し、地域に住む方々に還元する劇場。そして、全国にもクオリティの高い文化芸術を発信できるスペースとなるべく運営してまいります。(公式サイトより抜粋)
津あけぼの座スクエアクリエーション2~「葉桜」を上演する~岸田國士「葉桜」~
公演時期・会場:2015/2/28~3/1(三重公演・津あけぼの座スクエア)、2015/3/7~8(京都公演・西陣ファクトリーGarden)。演出・舞台美術:鳴海康平。出演:広田ゆうみ(このしたやみ)、川田章子。

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役者、野村

__ 
演劇を始めた経緯を教えて下さい。
野村 
中学までは野球部だったんですけど、高校からは帰宅部でした。何もやることがない僕を心配して親が芸能事務所を勧めてくれたのがキッカケです。TVに出れたらいいなぐらいのミーハーな感じでした。
__ 
役者をやってこられて、身につける事に出来た最大のものはなんですか?
野村 
これは作演をやっているからかもしれないんですけど、例えば嫌な事があって、「これは面白いから覚えておこう」と俯瞰で見れるようになった事です。悩むよりは、もしかしたらこれが芝居に役立つかもしれないとネガティブな方向に行かないマインドを手に入れたんですね。このシチュエーション、逆に面白いって感じれるようになったのかも。人生をちょっと楽しめるようになった気はします。
__ 
凄いなあ。状況の中にあって、それを一度とらえ直すみたいな。
野村 
現実逃避するのに近いかもしれないですけど、逆に鮮明に覚えていて、振り返るんですね。まあその時はその時で真剣に悩んでいるんですけど。

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早川さんの初期衝動

__ 
早川さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
早川 
元々何か文章を書く事が好きで、読書感想文が得意なこまっしゃくれたガキだったんです。中学の時、文化祭のクラスの出し物でみんな演劇をするんですけど、大体ああいう時って女子が全然おもしろくない劇をし始めるんです。それが耐えられなくて。中三で台本を書いたのが初めての脚本です。そこから高校まで書いてました。文化祭で毎年劇をやってたんですが、それがまさか仕事になるとは思わなかったです。大学は大阪芸大に入りました。父親のすすめで。
__ 
お父さんに薦められてですか。
早川 
僕のやりたい事を察したのかもしれませんね。ちょっと不思議な人なんですよ。僕が、折り合いを付けるつもりで適当な大学の願書を取り寄せたら「お前は本当にそれでいいのか」と怒られて。「お前はこういうのが好きなんじゃないか」と、芸大の資料を持ってきて。まさか普通、親は普通、芸大は薦めないと思うんですけど。
__ 
そうですね。普通は。
早川 
芸大に入っても、実は脚本を書いていた訳じゃなくて。僕はコピーライターとかそっちのがやりたいなと思ったんですね。企画とか。夢みたいな夢じゃなくて、可能な夢にシフトしたんです。それでも、大学の最後、卒業制作でやっぱり一本芝居をやろうと。学内で役者を目指している仲間も出来たし・・・そうしたらこれが面白かったんですよ。楽しかったし。その時東京の広告代理店の内定を貰ってたんですけど、蹴って。もしかしたら本当は今頃フェラーリぐらい乗ってたかもしれないと自分では思っています。そういう経緯から、放送作家になりました。
__ 
素晴らしい。早川さんの初期衝動について伺いたいんですが、女子が全然おもしろくない劇をやってたのが我慢できなかったと。それを見てしまって火がついた?
早川 
反感食らいそうですけどね。実は中一でルイ何世だかの王様の役をやってたんです。でもあまりにも台本が面白くないから、相手役の男子と相談して、勝手にちょこっとだけ自分達の台詞を作って、勝手に衣装も自作して、勝手なシーンを作ってやったんですよ。それがウケたんです。今思えば、役者としては最低ですね。
__ 
(笑う)
早川 
ほら見ろと。女子はちょっとおかんむりでしたが、僕は大満足でしたね。
__ 
それは、本番突然始めたんですか?予告なしに当日?
早川 
はい。当日。その来年の中二の時も、女子が企画した演劇でまたルイ何世とかの役が振られました。その時は衣装の子がいて全員分作ってたんですが僕は自分から拒否して。ロビンフッドの映画でのショーンコネリーが着ていた衣装を参考に、ちゃんとしたものを作りました。一人だけ衣装のクオリティが違うという。なんかそういう、ヤなガキだったんですよ。
__ 
早川さんの笑いって、もしかして、誰かを驚かせたいという気持ちがあるのかもしれませんね。

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芝居と結婚

__ 
是常さんがお芝居を始めたのは、どんな経緯があったのでしょうか。
是常 
演劇を始めたのは高校からなんですけど、中学の頃に宝塚にハマってたんです。中学の時にTVで天海祐希さんを見て、ハッとなりまして。いとこも偶然宝塚が好きだったので、天海さんが出演されている作品のビデオを借りて、何回も見返しました。でも、思い返してみたら元から芝居には興味があったみたいで。小一の頃に、親子旅行で宝塚ファミリーランドに行ったんですが、雨が降ってきて。遊園地の代わりに入った宝塚の舞台を食い入るように見ていたそうです。
__ 
なぜ、舞台に引かれていたんでしょうね?
是常 
変身願望が強かったのはあるかもしれません。これは関係あるかどうか分からないんですが、上に二人姉がいるんですが両親は男の子が欲しかったそうで、産み分けのためのサプリメントを飲んでいたそうなんです。
__ 
えっ、そんな事が出来るんですか。
是常 
当時信じられていたんでしょうね。子供心に「男の子に変わらないと」という刷り込みがもしかしたらあったのかもしれない。昔は妄想癖がすごくて、本とかを大量に読んでいて。宝塚は身長が足りないので諦めて、憧れの天海祐希さんが高校時代演劇部だったこともあって、演劇部に入りました。
__ 
なるほど。失礼しました。そこから、大学でも演劇部に?
是常 
いえ、実はそこを区切りにして芝居をやめようとしていたんです。男役も出来ないし、演劇が好きかどうかというと、その演劇部が好きだっただけなんだろうと思って。大学では合気道部に入ってたんですけど、一年後のある夜、寝てたらいきなり「芝居がしたい!」と突然思ったんです。自分でもびっくりしました。私、芝居が好きだったんだ。
__ 
おお、ある種の回路が結びついたんですかね。
是常 
結局二回生から演劇部に入ったんです。卒業後もいくつか出演したり舞台も見ていたんですけど、ある公演がすごくしんどい事があったんです。そこでまた「芝居はもういいかな」と。
__ 
そこでも区切りを迎えようとしていた。
是常 
こんなんやってられへんという状態になって。でも、同じ出演者の方に誘っていただいた舞台を経験して、それからまた出演し続けているんです。
__ 
それはつまり、辞めるに辞められない状態?
是常 
うーん、何て言うのか。元々自分は外に出るのも億劫な人間で、でも芝居に関われるなら外に出れるというのがあって。芝居に出られるんなら仕事も出来るし。芝居が、自分の行動の動機付けになっていたのかもしれません。敬愛する作演出家のひとりであるGRAVITY VANISHEDの村田絵美さんに、「いい役者ってどうやったらなれるんかな」って相談した事があって。そしたら、「いい人間になるしかないんじゃない?」って。ごもっともだな、と。
__ 
確かに。
是常 
いい役者でいるために、いい人間になりたいと思ってます。ただの趣味として何かをやろうというのは私にはピンとこない。芝居をするというのが、自分の活動の動機付けになっていて・・・こんなんでええんやろうか、と自分の中ではコンプレックスなんですけどね。でも、昔ある人と話していたんですけど。芝居が大好きな人いうんは芝居を恋人にしていて、是ちゃんは、芝居と結婚したんじゃないの?って。芝居という存在にいてもらわないと困るんちゃう?って。
__ 
リビドーじゃなくて、自分の体重が乗っているって感じなのかもしれない。だから、きっと、次のこまち日和の芝居には合ってるんじゃないですか?
是常 
どうですかね、でも、その場所に、無理せずに楽にいる事を心がけてからは、だいぶ楽しくなりました。

タグ: 結婚について 「変身願望」 SeizeTheDay 妄想 自分は何で演劇を


ふたりの会話

__ 
2年、学んだ中で一番ショックを受けた事は何ですか?
西岡 
一番最初の演技の授業。イギリスのRADAでも教えられているローナ・マーシャルさんの授業ですね。二人一組のダイアローグを、とりあえず貴方たちの思ったように作ってきて、と課題を出されまして。ペアの子と試行錯誤して作って、実際見て頂いたら、「お芝居をしているわね」と言われたんです。
__ 
なるほど。
西岡 
それまでやってきた事を根底から覆された気がして。私、今まで何をしてきたんだろう・・・いや、芝居をしているわねって言われたけどそれはどんな事なんだろう? 一年目は、演じるというよりも、まず自分が何者か、どこに立っているのか、その上で自分の癖を見直す、とかそういう、パーソナルな部分に触れる授業がほとんどでした。1年目の授業は、ほぼ毎回ショックを受けまくりでした。こんなにも、自分の体はコントロール出来ないものか、こんなにも私は人の話を聞いていないのか、というように。
__ 
自分の事を見つめる一年だったんですね。
西岡 
私はすごく、怖がりだという事が分かりました。
__ 
怖がり?
西岡 
芝居を始めた頃に自分がどういう演技の作り方をしていたかはあまり覚えてないんですけど・・・パッケージングするのが得意だったんじゃないかと思ってます。パッケージするというのは、例えばいまここで喋っている時、お互いに刺激を感じていますよね。
__ 
ええ。
西岡 
でも、会話している役を演じるとなると、相手からリアルタイムで刺激を受けている事実を忘れてセリフを吐いていたんです。しかも、やりたい絵を最初から決めてしまっていて、そこに向かう為にはどうすればいいのか?というのがある程度「かたち」として出来てしまう。
__ 
会話の交流を予測したり決めたりする事は、安心ですね。たしかにその意味では怖がりと言えるかもしれない。
西岡 
けれども、それはもう相手が誰であっても良いという事なんじゃないかと。多分、講師が言いたい事はそういう事だったんじゃないかと思います。人とどうやって対話するべきかと、それを考えるようになりましたね。
__ 
異なる存在と接する時の、エモーショナルな瞬間、ですね。
西岡 
そうですね、そういう、エモーショナルな状態のフリをしていたんだと思います。本当にそういう状態になる前に、まず「かたち」を作ってしまった。会話先行、頭先行だった。本来なら、もっと何が起こるか分からないのが演劇と交流の醍醐味なんですけど、私は多分それを見過ごしたまま、無自覚に絵を作って出来た気になっていたんです、きっと。でも、そういう事じゃなかったみたいだと。
__ 
それはきっと、舞台と観客席の間でも起こるべき事で。例えばいい映画って、全部の動きにワクワクするじゃないですか。一つ一つの動きや曲線が目に入る度、その効果が純粋に心に響く。意味や意図さえ伝わる。あれは舞台でも起こる。
西岡 
はい。
__ 
とにかく、一年目のスタート地点から、「交流」が本来持つべき価値が見えた。
西岡 
もしかしたらそうかもしれません。今まで関わった戯曲に対しては失礼な事をしていたのかも。答えを一つに決めて掛かってしまうなんて。それが、スタート地点に立つ上で一番大切な事だったのかもしれないなと。
__ 
なるほど。

タグ: 俳優の提案作業 演技それ自体への懐疑 見えないぐらい濃い交流 相互承認 観客との関係性 SeizeTheDay


「凄い奴」じゃなくて「近い人物」

__ 
ところで私、飛び道具の芝居を見ている時、凄く落ち着けるんです。「アイス暇もない」からかな。飛び道具の演劇はすごく「調和」しているように思うんです。色んなレベルで調和している。役者も空間も組合わさっていて余剰がなく、心地良い説得力があって抵抗なく舞台の表現を受け入れているというか。
大内 
その感覚は、とても嬉しいです。
__ 
ありがとうございます。
大内 
そういう風に感じられるのは、もしかしたら俳優さんの力による所が大きいかもしれませんけど。それと、僕の書き方なんですが、「近い人物」を描こうと思っています。「凄い奴」じゃなくて。
__ 
「近い人物」を描きたい。
大内 
これは俳優さんには物足りないかもしれないですけど。普通の人が紡ぎだすドラマを描こうと、最近はよく思います。
__ 
我々の世代の若者たちがアジアのどこかでボランティアに行ったり、我々に近い感覚を持つ人々が飛行機の残骸に住んでいたり。
大内 
そうですね。
__ 
だから、彼らが持つ素直な感覚を強く感じる、のかもしれないですね。何故そうした人物達を書こうと思われるのでしょうか。
大内 
自分のイメージを伝える為には、そうした人物像を通したいと思うからです。他のものが書けないと思った事もありますしね。台本の上では「こんなこと普通は言わないな」みたいなセリフも書くんですけど、その彼もやっぱりどこか我々に近しい。良くも悪くも脚本を書いてそのままお任せしているので、「もうちょっと考えを聞かせてくれ」と言われる事もあるんですが。
劇団飛び道具・アイス暇もない
公演時期:2004/3/3~7。会場:アトリエ劇研。

タグ: わたしの得意分野 SeizeTheDay 調和の価値


寄り添う僕ら

__ 
飛び道具の良さは調和だと思っています。それは、舞台上の人間関係や会話が様々なレベルで非常に調和されて美しくまとまっているという事だけではなく、演劇作品が、そのテーマが持つ重みに対して肉薄しているという印象がありまして。会話がキャッチボール出来ているというか、それが当然の効果を持って演じられているというか。
渡辺 
舞台上で自然に会話のキャッチボールが出来ているんですよね。私も初めて見た時からその印象は変わっていません。そこが驚きなんです。
__ 
やっぱり。
渡辺 
全体的に、奇をてらわないからかも。お客さんをきっちり楽しませるスタンスだし。でも、みんな心の中ではくそっと思っているんじゃないかなと思います。もしかしたらそれがとっても大事なところかも。
__ 
というと?
渡辺 
主役でも端役でも、表現する時に「自分がどうしたいか」という根幹が関わってくるんですよ。いわゆる「我が(わが)」はあると思うんです。それが、その役の中心点に迫っていたらいいんですけど、集団で作る作品は必ずしもそうじゃない。集団で人々を描くとは何か?それが、七刑人の時にはよく話されていたと思います。
__ 
飛び道具「七刑人」。罪人達が死刑に向かう、非常に重厚な演劇作品でしたね。大変面白かったです。
渡辺 
俳優個人がどうしたいか、それは一旦どうでも良くて。その役の中心にどこまで行けるか。もっと言うと、この人達はどこに向かおうとしているのか?が大切なんだ、って。集団で何かをやるのって、そういう事なんだろうと。だから、ワガワガにならないんじゃないかと思います。逆に、ワガワガは簡単に出来るんです。
__ 
俳優個人を超えた調和を実現する。それはきっと放任する事じゃないんですね。むしろ、個人の可能性をずっと思考し続ける事かもしれない。
渡辺 
「お前の役はこういう性格で、こういう存在なんだ」とかは言われないです。役割としての話はされますけど、具体的にこうあれとかこうしろとかは言われない。「そんなん、ナンセンスや」って。どれだけ物語に寄り添えるかが、飛び道具のお芝居の本質なんじゃないかなと思います。それは優しい所ですよね。この人達、凄いなあと思いますね。新参者の気持ちが続いています。
__ 
そうですね。
渡辺 
人に寄り添うという事については、ここ数年思いますね。藤原さんが言ってたのかな。例えば職場に嫌な人がいたとしても、その人の出来ない事はみんなでフォローするんです。まず、自分の出来る事をやって、その人をフォローして。社会としては排除するのが一番効率的なんですけど、みんなが輝ける場を作るのが、飛び道具で学んだ事でした。
飛び道具「七刑人」
公演時期:2012/5/24~27。会場:アトリエ劇研。

タグ: 会話のキャッチボール ちゃんと楽しませる 続ける事が大事 群像劇 SeizeTheDay 失敗を許容する社会 調和の価値


言葉以外の色々な方法

__ 
これは俳優としての諸江さんに伺いたいのですが、演技するという技術を誰かにかいつまんで説明するとしたら、どんな言葉になりますか?
諸江 
うーん、何ていうんでしょうか。意識する技術だと思うんです。普段何気なくやっている動作を、改めてやらないといけない。例えばコップを持つ時はいつも右手なんですけど、見せる時は左で持った方がいい場合があるんです。そのとき、考えずに自動的にやってくれていた動作に、意識をあえて挟む事になる。無意識を意識して再確認する技術だと思います。誰かに見せるために。
__ 
その説明の中では、無意識とは何でしょうか。
諸江 
体の慣れとかクセ、ですね。もっと言うと、何も考えずにやっている自分を制御する。
__ 
ありがとうございます。子供に説明するとしたら?
諸江 
子供相手にだったら、「言葉を使わずにお客さんとお話する事だよ」と言いますね。
__ 
おお!それはいいですね。
諸江 
言葉でお話してももちろんいいけど、それ以外の色んな方法があるよね、と。例えば拍手というのがあって、目の前の人に言葉じゃなく、手を叩いてメッセージを伝えている。
__ 
もしかしたら、言葉よりも明確に伝わるのかもしれない。

タグ: 拍手についてのイシュー 例えばこのコップ SeizeTheDay


vol.287 諸江 翔大朗

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
諸江

日没より

__ 
もしかしたら、剥ぎとった末の、何も言えなくなる場だからこそ美しいのかな。「シ・バハマ」は沈黙と静寂の風景が非常に良くて。何だろう、饒舌な沈黙だと思ったんですよ。
北島 
それはうちの言い方だとキレイな絵という事なんですけど、・・・これはさっきの「鉛の夜」のラストの話にもつながるんですけど。
__ 
ええ。
北島 
人が舞台に出てきたら、まず十中八九は喋りますよね。それ自体はやむを得ないものと考えています。で、たくさん喋って、喋ったことの真偽についてあらゆる可能性を検討して、これを繰り返しているうちに大体の選択肢はなくなっていきます。これを「可能性を潰す」と稽古場では言っていますが、可能性がなくなればもう喋ることがなくなるので沈黙が始まる。一方、舞台上には検討のための膨大な情報と身体が残されたままな訳です。ベケット的というか、ベケットを評論しているドゥルーズ的に言うと消尽に近いかも知れませんが、沈黙に伴う情報量の多さが、雄弁な印象になるのかもしれませんね。
__ 
なるほど。・・・男を否定する女達。否定が終わったら、何かの残り滓みたいな生活シーンが描かれるのみでしたね。スズキスズオが否定されつくされて、それを観客が見守っている絵。何故、あの場が焼き付いているんだろう。
北島 
スズキスズオの立ち位置は、客席のすぐ前、照明がギリギリ当たらないあたりになることが多いです。お客さんに背を向ける形になりますが、客席からの目線は、男のそれと近しいものになる。観客はいやでも否定される男の体験を経たうえで、必然として沈黙のシーンを迎えるからじゃないかと・・・その前に飽きるお客さんもいますけどね。ああいう作品なんで。
__ 
そういう事だったんですね。
北島 
嫌いな人は大嫌いだと思います。舞台の上で殺人事件とかが起きないと許せない人は、気をつけてほしいですね。
ナントカ世代06「シ・バハマ」<
公演時期:2008年12月12日(金)~14日(日)。会場:アトリエ劇研。

タグ: 情報量の多い作品づくり SeizeTheDay


キャンプファイヤーWS

辻  
WSの理想的な状態を表した図というのがあるんですよ。こちらです。火が真ん中にあって、それを囲む人々がいます。それは、全員が一つの価値観を共有していて、同時に自分自身のバックも持っている。目の前のひとつの価値と、個人の価値観がバランスよく存在している。個人の価値観はそれぞれにあった上で、同時に何か違ったものを構成しあうというのがWSの理想で、演劇ってこれだと思うんですね。
__ 
これは分かりやすい。確かに演劇もこういうふうに、価値観を巡る生のコミュニケーションと言えるかもしれない。それは上演中でも、稽古でも関係なく。
辻  
いや、本の引用なんですけどね。演劇って生だから、稽古ももちろん生で作る必要があると思っています。役者が失敗してもそれを取り入れて進む事もあるし、スタッフさんからの指摘もある。すり合わせて作る過程に、僕はより、演劇らしさを感じます。
__ 
一つの価値観を共有した瞬間。それはきっと、参加者全員が、それを明確に感覚している状態なんだと思うんです。短い時間で結果を出す、キャンプファイヤーWSというのは理想的な体験ですね。そして私は、そうした体験が直接生活の糧になるとまでは思っていません。ただし、考える材料にはなる。
辻  
仰るとおりで、例えば僕の出したアドバイスとかが守られなくてもいいんですよね。昔は「上手くいかないなあ」と思ったり、口に出したりしてしまったんですが。結局は、参加者の体験になって、生きる上で役に立つ材料になってくれればいいんですよ。
__ 
参加者にとっては、実生活とは切り離された箱庭での体験ですからね。もしかしたら、それは幼児体験に近いものになるかもしれない。何故なら、純粋に人との関係性を体験するから。そして、日常生活からは年齢と共にそうした機会が無くなっていく。
辻  
ええ。
__ 
さらに、ネットのインフラが発達しまくって、コミュニケーションの主な手段がメディア越しになってしまったら?
辻  
今はそこら中に自己発信が出来る機会がありますしね。ナマでの表現(つまり演劇も含まれますね)というものの価値観が、どのように変わっていくか。もしかしたら、僕らのやっていることは危ないのかもしれません。食いっぱぐれるという意味で。でも、そういう現状を理解した上で何とかしようという人たちもいるんですね。これだけコミュニケーションという言葉が叫ばれているのも、そうした流れへのカウンターだと思うんです。WSという短い時間の中で、共同体験が持てるというのは意義があると思っています。

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vol.270 辻 悠介

フリー・その他。

2012/春
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辻

sunday play #5「グルリル」

__ 
この公演「グルリル」について。偶然の一致が大きなキーワードなんですね。実は私もしています。ウォーリーさんもしているし、今日ここでも起こりましたね。
木下 
そうですね。起こるんですよね。物語の力ってすごいと思います。その偶然の一致について、ゲルハルト・リヒターの展覧会に着想を得たところがあるんです。すごく面白くて、初期の頃は写真の上に絵具を載せたりという技法があって(時代によって色んな描法を編み出している画家さんなんですけどね)、絵具の厚みが生まれるんです。失敗しても塗り重ねられる。そういうものって演劇では無いな。本番で演技が上からどんどん塗り重ねられる作品って作れないかなと思ったのがグルリルの最初です。
__ 
物語のテーマは。
木下 
めっちゃダサいですけど、言えば、歴史とは何かとか、人間を人間たらしめているものは何か、です。スロベニアに行った時に民族博物館にいったんです。これまでの歴史が展示されているんです。バルト三国だったり社会主義国だったりの歴史があって、ロシアとの歴史があって、民主化して、EUに加盟して、が、現代の紹介コーナーをゴール地点にしてずっと並んでいる。でも、今いるコーナーは全然ゴールじゃなくて、この先から本番なんですよ。もしかしたらもう一度社会主義になるかもしれない。僕は、人間は進化してよりベターな方向へ向かっていると思っちゃってたんですね。
__ 
進歩史観ですね。
木下 
途中の状態に常にあるのが歴史で、「今は途中やぞ」という状態をはっきり受け入れないと、次の時代を考えられないと思ったんです。
__ 
今は途中である事を受け入れる。
木下 
それが、演技を塗り重ねていくという演出と、どこかクロスしていると思っています。色んな時代の色んなシーンを、同時多発的にやってもらって、そこでいくつかのセリフが関連する時に生まれる面白さを発見する、という感じです。ただ、現時点ではまだどうなるかは分かりません。
__ 
まさに、いま仕組みを作っている最中という事ですね。手応えは。
木下 
それもまだ分かりません。お客さんが演出を見ようとすると物語が観れない、物語を見ようとすると演出が邪魔になるという状態なので、かなりコントロール出来るようなセリフや動きを作らないと完成しないので。中々ハードルは高いなと。そういう意味で手応えがあります。
__ 
面白さの為にある、実験的な、前衛的な演出。それが許される場所だと私は考えていますので、とても期待しています。では、いま、この時代のここ日本でそのテーマを扱う事には、どのような意味があるのでしょうか。
木下 
その意味では、あまり意識しないようにしています。この作品は上演時間中ずっと雪が降っていて、何十センチも積もるといいんですけど。それが原発事故とか、現代の色んな問題に結びつけて受け止める事はしやすいんですけどね。でも、それは僕の役目じゃないんじゃないかと。僕は正直、明確な問題意識は強くなくて(それはコンプレックスでもあるんです。そもそも仕事も嫌いだし南の島で生きているのが一番向いていると思うんです)。「いまこういう問題が起こっていて本当はこういう事だからこうしなければならないんだ」というのが無くて。でも、今このテーマを選んだのは色々な配剤があったんです。だからこそ、製作を進めていく上で偶然が繋がっていくという感触を感じています。今現在のここ日本でも、色々なお客さんに見ていただきたいですね。

タグ: SeizeTheDay 失敗を許容する社会 自分は演出が向いているかも 実験と作品の価値 前衛は手法から作る人々を指す


テリトリー

__ 
「夏の残骸」。この作品は、残骸として完結したぼろアパートのゴミだらけの一部屋とその住人が、闖入者によって割り切れない生命を生み出すという、夏らしく発酵したお話だと思うのですが。しかも、最後は何だか爽やかだし。
サリ 
ありがとうございます。
__ 
まず、あの部屋は、サリngさんにとっては何だったのでしょうか。
サリ 
分かりやすいですけど、わたし個人の世界ですかね。自分を守っている(とわたしが勝手に思っている)テリトリーみたいな。
__ 
自分にとって、テリトリーは必要?
サリ 
ある意味必要だと思います。この作品は、テリトリー自体に対する自分の考え方や思いを乗せている気はしますね。「もしかしたら必要じゃないかもしれない」「本当にそこはテリトリーなのか?」とか、疑いも挟んだり。
__ 
なるほど。そのテリトリーは最後には棄てられてしまった訳ですが、まずはあの部屋が残骸になって、どんどんその領域が広がって・・・という、終末感も感じました。ところで、ご自身にとって残骸とは何ですか?
サリ 
うーん。最近考える事があって。あるものに運命的なものを感じるというのが、どうなのかなと。すぐそういう考えに結びつけるような風潮が多いと思うんですけど。例えば秋前に海に行ったとして、どこかの家族が忘れていった浮輪とかに、ドラマチックなものを感じたりするじゃないですか、理由を付けて。勝手に。
__ 
ええ。
サリ 
でも実際はそんな事はないかもしれない。それは、凄く大きな流れの、通り過ぎている内の一個なんですよね。残骸っていって、ちょっと意味ありげなものはあるんですけど。別にそうでもないんじゃないのって。
__ 
浮輪に物語を結びつけて見るべきではないという事?
サリ 
結びつけても全然いいんですけど、勝手に浸るほどのものが無くなってきて・・・どれも別に、大した事じゃないんじゃないかって。もしかしたら、確かに誰かにとっての何かだったけれども、ただそこに置いてあるだけのものかもしれない。
__ 
あるもの、たとえばこの壁の汚れを見た時に、私はそこに因縁を想像してしまうんですけど。それは私の一つの指向として置いといて、でも実存として、その汚れ自身は彼しか持ち得ない歴史とともにある、という認識かな。人間だからしょうがないけど、目先の妄想に振り回されてはいけない。そういう事でしょうか。
サリ 
いけないという事はないですけど。
__ 
残骸から目を背けて生活出来るか。
サリ 
見てもいいし、結びつけた方が空想が広がるからいいんですけど。でも、そういう風に、重要なものを勝手見出して、しかもそれが無いとあかんみたいになり過ぎているような気がして。
__ 
我々は拠り所をめっちゃ探しているんですけど、探しすぎて疲れますからね。
サリ 
解決しようとしすぎているんですかね。因縁を分かって、安心したいだけなんじゃないかって。

タグ: 汚す SeizeTheDay


ブレ

石原 
でも、石原がお約束しか書けないと思われるのが悔しくて少しブレそうになったことはあります。説教臭い芝居を作ってしまったりね。それで好きだと言って下さる方もいたんですが。
__ 
何という作品ですか?
石原 
「恋味しんぼ」という作品で。出演して下さった蟷螂さんが、「あなたもこういう作品を書くようになったんですね」って言われて。僕も、タイトルからきっとグルメものをやるんだろうなと自分でも思ったんですけどね。色んな料理人が出てきて対決するみたいなのを考えていたんですけど・・・
__ 
ええ。
石原 
当時の演劇全体が、何か表面的な楽しさだけを求めているように思ったんです。演者側にもそういう空気が蔓延しているように思えて、どうにも気になったんでしょうね。僕の頑固な部分が出て、屋台の親父が客に説教しまくるみたいなディープな会話劇になったんです。
__ 
演劇界の、どういう部分が。
石原 
何か、ヌルいなと感じたんですよ。大阪も、もしかしたら東京もかな。もちろん皆さん命懸けてるんですけど、そういう感じがしなくて、「足りないな」と。本当にこういう事したいのかなと思ったり。いや、今から考えれば違うんですけどね。「なんか我慢ならん」となって、いやお前が我慢ならんわと言われるかもしれませんけど。
__ 
我慢出来なかった。
石原 
たまに、喧嘩したくなっちゃうんです。文句も言ってしまうし、揉める事もあって。でも、みんな、これから2・3年このまま同じ事を続けていていいのかなと。それは今でも思っています。僕に出来る事なんてちょっとですけどね。今から考えれば、恋味しんぼも料理人バトルをやっていれば良かったかもしれない。でも藤子先生だって、一時期ブレてからドラえもんに戻って来たんだし。僕も、ブレても戻ってきて面白い漫画が描けるようにがんばります。
石原正一ショー『恋味しんぼ』
公演時期:2009/12/26~28。会場:HEP HALL。

タグ: SeizeTheDay


カナヅチ女、夜泳ぐ

__ 
吉川さんってどんな俳優なんだろうと考えてたんですが、まず、きっとご自身では癖の無い人だと思ってるかもしれないですけど。
吉川 
え、思ってる(笑う)思ってます。あわよくば誰かに諭して欲しいと思ってます(笑う)
__ 
いやー、そういう迷路は、どうなんだろう。すごく失礼な言い方になるかもしれないですけど、それはもう充分なんじゃないかとちょっと思うところはあります。
吉川 
思ってるのに。連日も連夜も。
__ 
カナヅチ女みたいですね。
吉川 
え?
__ 
いや私、このタイトル不思議だなと思っていて。カナヅチって、自分で自覚出来ない訳がないじゃないですか。なのに泳ぐ。あまつさえ夜に。つまり、どうしようもない事情があって泳いでるんですよ彼女は。しかも、このチラシ。
吉川 
はい。
__ 
この絵の女の子は、近未来的な潜水装備までして溺れている。という事は、きっと誰かに流されてここにいるんですよ。自己を保てずに。
吉川 
はー。そんな事まで。私は・・・何も思わなかった(笑う)。
__ 
もしかしたら、彼女は、他者との、さらに自己との関係性においてカナヅチなのではないのか。
吉川 
え?それ私?
__ 
かも。
吉川 
っふッ!
__ 
・・・凄い声でしたね。
吉川 
・・・すません。へー、そうかぁ。でもそれ、私はどうやって受け取ればいいですか。
__ 
いやいや、最終的には溺れながらも目的地に向かって到着するじゃないですか。物語的にも彼女が自分をう事になるし。何とかなるさというエールだったんじゃないかなと。自分で自分をえるぜというメッセージがあるんですよ。
吉川 
そっか。応援されてるのか。愛情多めな物語ですもんね。愛されてますね、私。

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vol.247 吉川 莉早

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2012/春
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吉川

非日常

__ 
関さんが舞台に立つ上で、ご自分にしか出来ない事はなんだと思われますか?
関  
オリジナリティという事ですよね。まず身体が自分の個性かなあと思っています。そんなに器用という訳では全くなく、他の人の振り覚えも遅いので、素材として使うのは結構厄介な存在なんじゃないかなと。自分で作る振付はそうでもないんですけど。
__ 
振付家としては。
関  
最近の傾向のひとつとして、テクニックから離れていきつつあって、例えばダンスらしくないダンスが新しいとされていたり。
__ 
それは、ウミ下着がそうですね。
関  
それも素敵だと思うんです。でも、私自身がお客さんとして見る時は、身体なり、動きだったり、テクニックや特別な肉体を見たいんですよね。私も、そういうものを提供出来たらなと思っています。
__ 
そういうもの?
関  
非日常という事ですね、きっと。特別なものを見たいし、見せたいですね。それを表現するために、例えばバレエは客席と舞台が全く分離した、違う世界として扱うんですね。それにも惹かれるんですけど、受動的に鑑賞しているだけではなくて、本能的に、身体的に共感するような交流が舞台と客席の間で出来ればなと志向してきました。例えばサーカスは、映像で見るのとテントで見るのとはまるで違いますよね。映像は視聴覚的な情報だけで、身体に訴えかけるような感覚は伝わらないんです。
__ 
共有感覚ですね。相手の感覚がこちらで想像出来る。
関  
そうですね。追体験みたいな。それはもしかしたら痛さであるかもしれないし、笑いかもしれない。
__ 
そうした、特別なものを共有したいという思いはどこが出発点なのでしょうか。
関  
元々はバレエをやっていたんですが、高校入りたての時に続けていいのかどうか迷っていたんですね。もちろんダンスを仕事にしたいんですけど、バレリーナにはとてもなれないのではないか。それにはちょっと故障があったりとか、そもそも素質的に、バレリーナは無理だわと。
__ 
そうでしたか。
関  
それ以前に、バレエの演技に疑問を感じてしまったんですね。バレリーナは役柄になりきって踊るんですけど、もっと、自分として踊りたいと思っていたんです。自分として、お客さんに向き合いたいと。一年半ほど踊ることを休んでいました。ダンスを嫌いになった訳じゃないんですが。
__ 
休んでいたのですね。
関  
その間は舞台を見に行っていました。コンテンポラリーダンスとか演劇とか、色んな表現を見て、そうした思いはさらに強くなりました。もちろんバレエも特別な事は起きますけど、スタイルとして・様式として追求するものが予想を裏切らないように思ったんです。そこを裏切っていくものを見たいし、やりたいなと。
__ 
それはきっと、革命とか変革とかとはちょっと違うんですよね。関さんのような、クラシックとは違う方向を目指す人がいる事に、むしろ全体の意思を感じます。

タグ: 器用さ・不器用さ 非日常の演出 バレエやってた SeizeTheDay


vol.246 関 典子

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2012/春
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関

板の上

__ 
芝居を初めて最初の頃に特に影響を受けた作品はありますか?
大塚 
藤原竜也さんのお芝居。学生時代の頃からちょいちょい拝見しています。あの人凄いなあと。勝手にライバル意識がありますね。影響は絶対に受けています。
__ 
こいつ凄いな。それは、どういう時に感じますか?
大塚 
板の上で放っているオーラとかパッションを如実に感じる時ですね。技術はもちろんその要素なんですけど、あのオーラは何をやってもすごく見えてしまうんだろうなと思いますね。
__ 
そうですね。
大塚 
そんなものを感じる人はあんまりいないんです。そういう、すげえなと感じる人になりたいと思いますけど。
__ 
エネルギーが空回りしない為の技術を身につけるのがとても大変だと思うんですよ。オーラの凄い人が空回りしてしまった舞台を拝見した事があるのですが・・・。
大塚 
その通りです。そういう時は噛み合わないというか、作品としては成功ではないでしょうね。そうならないようにするのは役者の仕事ですよね。
__ 
というと。
大塚 
稽古でいくら想定しても、本番とはまるっきり違うんですよ。3日間の公演だったとしても、初日と千秋楽では演技が全然違う事があるんです。そこは駆け引きなんですよね。もちろん全ての回は100%でやっていますけど、お客さんが入って初めて「ここは稽古でやってきたやり方よりも、お客さんの空気感から、こうした方が作品としてもっと良いんじゃないか」って、絶対にそうなるんです。特に、笑いだったりシチュエーションコメディの場合は。
__ 
そして、そこに引きづられて変えてはならない部分もありますからね。
大塚 
演出の意図と、お客さんの空気と。バランスですね。
__ 
本番の時間というのは恐ろしいものですよね。ところで、こういう言い方は誤解を受けると思うんですが、上演中は営業時間なんじゃないかと思っているんです。
大塚 
そうです。そうですよ。
__ 
それはまさに、対価を払って入場したお客さんをその時間内で納得させなければならない。が、ある程度以上、感動する・面白いポイントを固定しきる事はあまり意味がないのかも。もしかしたら、稽古で意図したのとは違うタイミングで楽しむ事になるかもしれない。ずっと集中していなければならないんですよね。お客さんの目にさらすまで、その演劇作品のどこが面白いのかなんて誰にも分からないから。
大塚 
実際、自分が客席にいるときもそう思いますからね。
__ 
中止も巻き戻しも原理的に出来ない。考えてみたら怖いですね。
大塚 
楽しいですけどね。
__ 
楽しい。そう感じるのは、どんな時ですか?
大塚 
それこそ、僕は本番が一番楽しいんですね。あの緊張感と、自分がぶっこんでいった時、その時のお客さんの反応ががっちり合った時。あ、ここはそうなんだとか、ここはこういう意味だったんだ、とかいくら稽古しても作品の知らなかった意味に気づく事もあるんです。劇場の空間で、どんどん新しい発見がある。笑いが起きる時も引くときも。
__ 
今回の悪い芝居、まさに予想できませんね。演技やシーンの意味を限定しないと伺っています。
大塚 
お客さんが色んな事を思うと思います。シチュエーションコメディだったら、こういう展開にして、こう思わせる・こうやって笑わせるという線路があるんですが、今回は線路がめちゃくちゃあるんですね。最終的な終着駅は山崎氏の中にあるので僕らもそこに着くとは思いますが、出ている僕らですらどうなっていくのか分かりません。そういう舞台は、僕はとても楽しみです。

タグ: SeizeTheDay 「悪い芝居」の存在


地点『ーところでアルトーさん、』

__ 
さて、地点の前回公演。「ーところでアルトーさん、」非常に面白かったです。
大庭 
本当ですか。何がですか(笑う)
__ 
放送局の人たちが、アルトーさんの結構意味の分からない言葉を頑張って放送している姿が印象に残りましたね。いや、もしかしたらそんな設定ではなかったのかもしれませんが。
大庭 
具体的な設定はないですね。あの微妙なロングコートが制服にも白衣にも見えて、放送局にも研究室にも見えると思うんですが、でも僕らの中であれはどこでどういう人たちという設定はないんです。もちろんそういう話はしますけれども。
__ 
人間関係とかは全く見えてきませんでしたね。
大庭 
全部、モノローグだったんですよね。今回はとにかく、観客に対するアルトーの言葉の押し売り、という感じでしたね。アルトーさんの言葉はリアリズムでは出来ないですし。
__ 
舞台に出てきたテキスト。あの時代のヨーロッパの雰囲気に対する感情や、戦争に対して逃げたり立ち向かったり。それを肉声で語っていた言葉は攻撃的だし、恨みや自尊心も籠もっていて。かなりぐったりする時間でしたね。
地点『ーところでアルトーさん、』
多様なテクストを用いて、言葉や身体、物の質感、光・音などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。(公式サイトより)

タグ: SeizeTheDay 衣裳・ユニフォーム系


『work for the publick good』

__ 
私が葵さんを初めて拝見したのは、chikinのイベント『work for the publick good』でした。ストリップ自体見るのが初めてで、非常にショッキングな体験でした。
葵  
どういうところが。
__ 
あの時掛かった曲は「東京ブギウギ」で、舞台中央で客席に背を向けてお尻を突き出すというフリがありましたよね。で、Tバックだったじゃないですか。その瞬間まで、ストリッパーがプログラム表に書いてあったけど本気にしてなかったんですよ。それがマジなんだって分かって、一気に会場の温度が上がったんです。
葵  
あの時のお客さん、ストリップってものが初めてな人が多かったでしょうね。
__ 
最後のベッドシーンは歓声まで上がってね。それまで、ライブとコントとパフォーマンスのイベントだったのが一気にひっくり返った。・・・ちょっと悔しかったんです。女性が舞台上のあらゆるツールを使って、というか舞台芸術というメディアを使って脱いで踊るのであればそれは完全な夢の世界じゃないですか。それに敵うものなんてないだろうと。
葵  
いやぁ。
__ 
いや、実のところはダンスの技術が物凄く高かったからそこまで思ったんだろうけども。でも半年くらい時間が経って、それはもっと大変なことなんじゃなかろうかと思い始めたんですよ。もしかしたら、ストリッパーとは最も他人の視線に強い人種なのかもしれないって。
『work for the publick good』
公演時期:2010/2/14。会場:UrBANGUILD。
chikin
京都を中心に活動する劇団。京都造形芸術大学の卒業生3名で立ち上げ。ショート作品を連作形式で発表する。

タグ: SeizeTheDay Urbanguild


vol.156 葵 マコ

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2010/春
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葵

もしかしたら廃墟かもしれない

筒井 
芝居って基本的には全部ウソですけど、舞台で演じている人を見て、この人たちものすごく本気になってしまってるっていうのがすごく伝わってきて心を動かされる瞬間が私は凄く好きで。ウソのなかにチラッとみえる本物の瞬間が作れたらいいなあって思います。
__ 
会話劇でも何でも、そんな瞬間ってありますよね。そういう舞台に立ち会った時、本当に嬉しいですよね。
筒井 
今回の作品でも、金替さんもすごくいい目をされるので、見てるだけで私も引き込まれることが何回もあってやってて楽しかった。お客さんも作品に乗ってきてくれてるなあと思える瞬間がありましたし、嬉しかったです。
__ 
そうそう、上演中のお客さんの乗り方も良かったですね。後でお聞きしますが、例の空気砲のとことか、「おお~」ってなってましたよ。明らかに反応のあった舞台でした。
筒井 
お客さんの感想で一つ心に残るものがありました。セットの手前にボロボロになったトイレがあったんですけど、今現在使われている様子はないので、ここがもしかしたら廃墟かもしれないとか、ここにいる人物は確かにここにいるけども、もしかしたら生きてるわけじゃないのかもしれない。それから劇中に出てくる鉛筆とかノート等の小道具を本物ではなくて全部A4の紙を丸めたりして使ってたんですが、その紙をナイフにして人を刺すと本当に死んでしまったりする。そういう、「ある」と「ない」の混在が面白いと言ってくれたんです。嬉しかったですね。演出の水沼さんのアイデアが良かったと思います。
__ 
そうそう、舞台上の設定が、シーンによって全然正確じゃなかったりしましたよね。疑問に思うのが楽しみな時間でした。今思い返してみても、まだ森をさまよっているような気がします。全然正確な芝居じゃないんだけど、ファンシーな感覚は確かにあるみたいな。
金替康博さん
MONO所属俳優。
永野宗典さん
ヨーロッパ企画所属俳優。
水沼健さん
MONO所属俳優。壁ノ花団主宰。

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