アプローチ、アプローチ

__ 
丸山さんにとって、優れた俳優とは何ですか。
丸山 
難しいですね。人によって考え方は違うと思うんですけど・・・少なくとも作品に対してアプローチ出来る事が最低条件だと思っています。ある演出で狙われている効果を察して、そこにアプローチを掛けられる事で、ようやく役者としてのスタートラインだと思うんです。その積み重ねで作品の方向性をお客さんに伝えられるんです。そうでなければ、漠然とした時間になってしまう。
__ 
そうですね。
丸山 
それは最低条件で、演出をより効果的に感じてもらえるというのがいい役者なんじゃないかなと思います。さらに、その人でしか出来ない演技が出来ればその人がオンリーワンなんですよね。
__ 
そこが、行き着くべき場所ですね。
丸山 
その為には、自分のやりたい事を全面に出すというよりは、そのシーンでなすべき事に積極的なアプローチ、例えば役作りや打ち合わせ、段取りの整理や確認。それは、ある程度経験のある役者であれば誰でも出来る筈の事なんですが、いかにサボらずに丁寧にやれるかなんじゃないかなと。
__ 
そうですね。
丸山 
ただ、そこにこだわりすぎても面白くない演技が続いてしまうので。いかにその積み上げを忘れた身体になれるか、なのかなと思います。若手のいい俳優さんは個性でガッといけてしまうんですけど、ベテランさんになるほど、派手な演技じゃなくても一つづつのプロセスを積み重ねた仕事を手早くこなして、圧倒的な存在感が出せる。そんな人が求められるんじゃないかなと思います。

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瞬発力。

__ 
河原さんにとって、優れた演技者とは何ですか。
河原 
うーん。やっぱり、僕にない部分を持っている人は羨ましいですね。瞬発力を持っている人や、インプロが上手い人。すぐキャラ付けが出来る人は羨ましいです。
__ 
瞬発力。
河原 
インプロをめっちゃやってるとそういう力は付くんじゃないですかね。
__ 
トランク企画の木村さんによると、この瞬間に集中する事、失敗を恐れない事が重要だそうですよ。
河原 
僕は集中力というよりは、段取りを重視して、正確にやる事が好きな方なんです。理論じゃないですけど、「これはこういう事だからこう言うことが起きる」、というのを綿密に積むのが好きですね。

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当たったら死ぬよね

__ 
ZTONの稽古はどんな感じで進んでいくんですか?
土肥 
最初に段取りを付けてから細かい所を付けていきます。今回は本当にセリフを覚えるだけじゃなくて、それぞれの種族のディテールを詰めて考えてこないといけないんですよね。例えるなら、河瀬さんの言葉を借りると、ガンダムの一年戦争です。「ストーリーが一本あって、舞台はホワイトベースの内部が主なんだけど、しかしその外にも色々な部隊があって、敵の勢力にも色々な人物やドラマの存在を感じる事が出来るだろう。今回は戦記として、世界が感じられるような作り方をしてこい」と。それは今回の特長ですね。
__ 
それが肝なんですね。
土肥 
そうですね。その世界の空気を立ち上げるために、それぞれの部族の生き方を持っていないと構成出来ないので。今までと何よりも違うのは、借景がないんですよ。日本史という背景があれば大体イメージ出来るので。
__ 
完全なオリジナルの世界観なんですね。
土肥 
江戸時代なら米食ってるのかとか想像出来るんですけどね。
__ 
今回は、そうした世界観を作る所から始まるんですね。
__ 
意気込みを聞かせてください。
土肥 
いや~、僕はもういっぱいっぱいで。でも主役なんですよね、天の章、地の章ともに。頑張ります。
__ 
殺陣もね。
土肥 
今回は殺陣のアプローチも今までとちょっと異なるんですよ。言ったら「当たったら死ぬ」ものを作ろうとしています。
__ 
おお!というと。
土肥 
今までは「カッコイイ!早い!やっつけた!決まった!!」ものを作ろうとやってましたけど、当然、刃物が当たったら切れるんですよ。そこを大切に見せようと思ってます。今回は刀の殺陣だけじゃなくて、短刀とか斧とか弓矢とか、バリエーションのある殺陣を作っています。種族ごとに狩りの方法が違うので。そして、それを振るう人たちの思いを大切に描きたいですね。これは、戦国無双じゃないよと。ゲームみたいな殺陣の爽快感というのは、今作ろうとしている「天狼ノ星」ではきっと浮きます。
__ 
なるほど。大改革ですね。
土肥 
河瀬さんが突き詰めて考えてきたものが、ようやく仕上がりつつあるという感じですね。
__ 
スピード感があって美しい殺陣。当たったら死ぬという当然の事をやろうとしているのが気になりますね。
土肥 
そうなんです。「はい、ここから殺陣ですよ」みたいな事にはしたくないですね。芝居で殺陣を見るとき、技術そのものには実は感動はないんだと思うんです。ドラマがあって、剣を持たないといけない理由が分かって、相手を殺すのでも制圧するのでも、全ての行動にそれなりの理由が体感出来るのが殺陣をやる意味だと思うんです。話に対して浮いている殺陣ショーにはしたくないですね。それはみんなが思っていると思います。
__ 
演劇でやっている意味がないからですね。
土肥 
そうですね。殺陣だけ出来てもしょうがないですからね。実際の剣術じゃないし。
__ 
芝居が始まった瞬間のドラマに共感出来た時、目の前で行われている演技に臨場感が生まれて、ようやく予測から離れる。そこからが面白いと思える。というモデルですね、きっと。
土肥 
そうですね。早い、カッコイイだけになってしまうと、きっと物語を見せている意味が無くなってしまう。物語の空気に触れていってほしいです。とか言っていらんギャグとか言っちゃうんですけどね。この間遊戯王カードのネタ言っちゃったり。そういう矛盾も含めて。
__ 
プリキュアネタとかね。
土肥 
あ、狗神エイトの時ですね!懐かしい!寝坊して「今何時?プリキュアは!?」とかね。「あの役あんなナリでプリキュア見るねんな」って思ってもらえたら嬉しいです。
__ 
あのネタ、自分で作ったんですか!?
土肥 
はい、河瀬さんは呆れながらも流してくれるんですよ。ダメなときもたくさんありますけど。
狗神エイト
公演時期:2009/8/27~30。会場:ART COMPLEX 1928。

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えへへ、私ね、段取リストなんですよ

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大学では数学を学んでいるそうですね。
榊  
一家全員が数学科卒で、昔から好きなんです。父が数学教師で、実は小学校4・5・6と担任だったんですけど、その頃から好きになっていました。凄く理屈をこねる考え方で、周りからは「あの子数学科だもんね」と言われてます。
__ 
数学をやっていて、その筋道を立てた思考が俳優としての作業に生きた事はありますか?
榊  
段取りを覚える時ですね。こうなってこう、みたいな考え方をするので、段取りを覚えやすいです。あと、台本を覚える時。暗記があまり得意じゃないんですけど、流れを整理して覚えてます。
__ 
段取りが得意という方は初めて見ました。
榊  
えへへ、私ね、段取リストなんですよ。バナナ学園とかアマヤドリってダンスが多いので、その辺りが生きてきますね。
バナナ学園純情乙女組
二階堂瞳子を中心とする”永遠に卒業出来ないスクールガール調”を大義名分に挙げ、いつまでもセーラー服を脱ぎたがらない女子や男子の集合体。脚本担当は中屋敷法仁。中屋敷法仁が不真面目・不道徳に書いた脚本に対し、二階堂瞳子の間違いだらけの不適切・不衛生な演出が加わった時、現代の科学では到底解明出来ない亜空間が観客の前に現れる。(公式サイトより)
アマヤドリ
2001年 ひょっとこ乱舞結成。2012年3月 ひょっとこ乱舞爆破。同年、アマヤドリとして出発。作・演出の広田淳一を中心に、オリジナル戯曲で年平均3~4回の本公演を行う。(公式サイトより)

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vol.283 榊 菜津美

フリー・その他。

2013/春
この人のインタビューページへ
榊

おじさまとキレイな女性

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これまでお話を伺っていて、羽衣では俳優の初期衝動を特に大事にしているのかなと感じましたが・・・
糸井 
もちろん気持ちは大事なんです。でも、「段取りとかじゃないんだ、やるぜ!」って感じではまるでなく、意外と稽古は真面目にやっているんですよ。勢いのあるシーンでも、綿密に詰めてるんですね。それがあんまりお客さんには伝わっていないというか、分からないみたいで。勢いだけみたいに思われてしまっているかもしれませんが稽古は大切です。
__ 
もちろんです、「愛死に」の映像も、浴槽船も、物凄い稽古の量を感じました。もしかしたら、初期衝動云々というのは、糸井さんの戯曲の書き方について言うべきだったのかも。
糸井 
そう、そうだと思います。
__ 
糸井さんが素晴らしいと感じた、お風呂の素晴らしさとか愛とか恋とか死についての純粋な感動が次から次へと溢れだすという。
糸井 
そうですね。今回のぐうたららばいの作品も結局はそうなんです。とはいえ、もちろん歳を取ってしまうので成熟して衰えたりしていくんですよね。むしろそれを先回りしている面があるかもしれません。でも、中学生の頃のような衝動は今まで続いているんです。
__ 
今の私には、そういう「溢れ出す」作品が凄く豊かなような気がします。その時間とか空気に浸り続けられるというのは、きっと、絵画の鑑賞体験に近いと思うんです。好きな画家の個展だと、本当に1時間は見ていられるような。
糸井 
その体験に対してちょっと躊躇を感じるお客さんもいて。そこまでずっといるというのが辛いというのがあるのかもしれません。これは正確に統計を取った訳ではないので、僕の印象に過ぎないんですけど、羽衣の作品を好きと仰ってくれる人の傾向を考えると、けっこうおじさまとキレイな女性、みたいなパターンが多いのかな。
__ 
おおー。
糸井 
分からないですよ(笑う)でも、愛とか恋とかに浸れる方には面白いかもしれません。多少論理的に考えるのを面倒くさいと思ってきたおじさまには「まあいいんじゃないか」と思って下さるのかも。

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劇団レトルト内閣とその変遷について

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さて、レトルト内閣とその変遷について今日はお話したいと存じます。
三名 
細かく説明しだしたらキリがないんですけど、どういう感じでいきましょうかね。
__ 
まず、私の経験から良いでしょうか。5年前に楽園狂想曲という作品を芸術創造館で拝見し、それから一作品くらい飛ばして全て拝見しています。
三名 
ありがとうございます。
__ 
これは大変失礼な言い方ですが、最初に観たその作品からほぼ別の劇団なんじゃないかというぐらい作品の質が上がったと思っています。偉そうな言い方にならざるを得ないんですが、成長されたなと。最初に観た作品は、下手というよりかは、表現を伝えたいという意思と手法がマッチしておらず、安易な作りに見えたというか・・・やりたいようにやってるだけのように見えてしまったんですね。しかし5年して、演出方法に劇的な変化があり、ほとんど変身しているように思えます。驚きました。何があったんでしょうか。
三名 
楽園狂想曲に関しては、まあ失敗したなというのがあったかなと。
__ 
そうなんですね。
三名 
演出方法として、大劇場寄りの作り方をしてしまったので・・・これではちょっとあかんなと。どこまでいっても大劇場を超えられないし自分達の良さを引き出せない。そういう意味では絶叫ソングもそうでした。社会に訴えるようなというテーマを選んでしまったために、焦点がぼやけていて。演出の面でも、ポイントがハッキリと分からなかったんですよね。
__ 
しかし、「さらばアイドル、君の放つ光線ゆえに」から一転、全く違う演出方法が取られるようになりましたね。「さらばアイドル」は非常に場面転換が多い、暗転と出ハケと映像のテンポが良く、恐ろしいスピードでイメージの切り替わる芝居でした。それまでのレトルト内閣の持っていたイメージを受け継ぎながら、とてもシャープな仕上がりでした。強烈なイメージを伝えるのに必要な、切れ味のあるやり方。演劇に形を借りたパフォーマンス作品と言えるんじゃないかと考えています。そういう作品はあまり観たことがなかったので、新鮮でした。そうなったのは、内から来る表現欲求だけに拘るよりも、演出方法に目を向け始めたからじゃないかと考えているのですが。
三名 
それはありますね。従来の手法を変えようと言い出したのがレトルト内閣の代表でした。
__ 
というと。
三名 
「さらばアイドル」以前は演出に向いていないんじゃないかと思っていて。それならお芝居の鉄則、一場一シーンに則って作ったらクオリティが高くなるんじゃないかなと。ウチは台本を決める会議を毎回するんですが、そこで私が「鉄則通りの大人しい演出をしたい」と言うと、代表の川内が「それは可能性を狭めるから嫌だ」と。「そんな発想ではもうどこにも行けないから、抜けだそう」と。じゃあ思い切ってやってみましょうかという事になって、逆にシーンを細かくぶった切って映画のシーン作りを意識した演出になりました。
__ 
そう、映画みたいな演出でしたよね。
三名 
次の「猿とドレス」はデビッド・リンチやジョーン・ゾーンを研究して、訳の解らない演出をやりました。
__ 
あれは凄かったです。強烈なイメージがあるんですよね。
__ 
しかし、そうした転換は会議で決まった方針なのですね。
三名 
会議はいつも作品が幅広い客層にウケるようにというスタンスで、焦点のボケるものだったんですけど・・・。その時は珍しく、変化や挑戦していこうと代表が言って、すごく感謝しています。
__ 
それからなのか、俳優の会話もモノローグも凄く上手くなっていったような気がします。自分の保守範囲を守るような演技じゃなくて、演じる事に捧げているように感じます。見せ方が変わっただけじゃなくて。この間の「金色夜叉オルタナティブ」も非常に面白かったし。そうなんですよ、劇団って頑張ったら成長するんですよね。少なくとも変わる。でも、俳優の方々は苦労されたんじゃないですか?
三名 
凄く苦労しました(笑う)。早替えであったりとか、複数役があるとか、数秒で暗転するとか。技術も気合もいる(笑う)
__ 
でも、よく訓練されている感じはしますね。全然不安にならない。
三名 
やり始めたら、技術がだんだん蓄積し始めているんですよ。俳優も苦労しながらノウハウを蓄積して、根をあげず助けてくれました。
__ 
たった一作品で変わる事ないですもんね。
三名 
ウチの特徴として、セリフのテンポが早いんですね。以前伊藤えん魔さんがゲストで来て下さったとき、ものすごく多忙な時期を融通してくださって来てくれたんです。バタバタだったので段取りだけ確認して、本番が始まってから、自分の出番までの時間で台本を覚えてはったんです。そろそろ自分の出番かなというシーンで。そしたら、すごいスピードでシーンが変わっていくから「今、どこ?こんな早いんか、間に合わない」って(笑う)。
__ 
それは伊藤えん魔さんが面白い話ですね(笑う)。
三名 
知れば知るほど凄い方です(笑う)。

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質問 飯坂 美鶴妃さんから 小林 真弓さんへ

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以前インタビューさせて頂きました、京都でフリーで俳優をされている飯坂美鶴妃さんから質問を頂いてきております。「舞台上に立っている時、何を考えていますか?」
小林 
お客さんの反応とか、段取りとかはどうしても考えますね。感じるのは、一緒に立っている人の状態です。今日は調子が良さそうだとか、テンポがいいとか。
__ 
なるほど。
小林 
笑の内閣のツアー中で感じているのが、自分のテンポだけで芝居すると、ボタンを掛け違えたように後の芝居が合わなくなってしまうんですよね。本番後も、演出から「ちぐはぐな感じだった」って言われてしまって。その次の回以降は、ムリに修正をかけるんじゃなくて、なだらかに乗って立てなおしていくようなイメージで演技していました。無理に我を通さない。声量とかでも、一人だけ大きくても、やり過ぎると差が見えてしまう。見てておかしくないくらいに合わせて行く感じです。
__ 
歩調を合わせるという事ですね。
小林 
はい。それが最近考えている事です。それが正しいかどうかは分かりませんけど。

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