世界一緊張感のない劇団

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壱劇屋で犯した最悪の失敗を教えてください。
西分 
「BlackSpace」という公演で、お芝居の中で焼きそばのUFOを作って食べながらやるパフォーマンスがあるんですよね。私、UFOを作った直後にひっくり返しちゃって。一瞬で舞台上にUFOが散らかって、わーってなってたらみんながすぐ寄ってきて、全部容器に放り込んでさーっといなくなる。息止まりましたね。その後袖で大熊さんにお前何やっとんねんって怒られて、「うわすみません」ってヘラヘラって謝って。その一連が数秒の間にあって、舞台は生物だなと思いましたね。
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なるほど。
西分 
ウチの悪いところでもあるんですけど、誰かがミスしてもあんまり怒らないんですよね。笑い話にしちゃうんです。だから「ダメ出し」というのはなくて、「反省会」なんですね。車座になって、「はい何かあった人」って言って。事故に繋がるものは注意しるんですけど、誰かが段取りを間違えたぐらいだったらネタにしてますね。誰々さんが小道具出すの忘れててあれは困りますわ、みたいな。全員が全員のダメを出して、割と対等に言い合うんで。そのあたりはいい影響はあるかもしれませんね。お芝居って、絶対どこかで失敗するんですよ。100点では終わらんなあと。そういう、どうしても起きてしまうミスを「あいつやりやがった」ってピリピリして注意するんじゃなくて、面白い事が起きてるぐらいに思ってた方が、後々余裕が出来るんです。そっちの方が、多分いいなと。ウチは段取りが多いし、でも、だからこそミスは後々取り返せるし。
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そうした空気感は大切ですね。
西分 
これが悪い方向にはならないようにしないといけませんね。ミスした人はちゃんと反省して、でも周りは許せるような。

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許し

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「LIFE」を見ていて、どこか浮遊感があったんですよ。次に何が起こるか分からない事による浮遊感。実はこの間、舞台映像家の方にインタビューしていたんですが、記録映像にした演劇と生の演劇とでは、その情報のあり方が全く違うという事が分かりました。過去の記録映像はその戯曲の物語性が浮かび上がり、生の演劇は俳優が放つ衝動を受ける事が出来る。しかし、戯曲の俳優は何も知らない体でありながら物語の結末を知っている・予定された未来を持っている。であれば、演劇の映像作品とインプロショーは逆の関係にあるなあと。インプロは観客はもちろん俳優も次に何が起こるか知らない。
木村 
ほんとに、何が起こるか知らないからこそ面白いと思います。一緒に発見していく面白さというのでしょうか。
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怖いですけどね。何が起こるか分からない。
木村 
前のめりになって見てしまうお客さんもいますよね。
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俳優が失敗するかもしれなくて、心配になってしまう。
木村 
失敗も見せどころなので、そこも楽しんでもらいたいです。皆が心の中に持っていないといけないのは、「失敗しても良い」という事なんですよ。
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「失敗しても良い」?
木村 
シアトルにいた時、ランディさんという方にインプロを教わっていたんです。「君たちがどんなに失敗してもシアトルの市民にはなんの関わりもないから、どんと楽しんでおいで」と言って下さって。それが凄く素敵だなと。そうあれたらと思います。だいたい、即興の舞台に立つだけで凄い勇気なんですよ。みんな、よくぞ立ってくれているなと。
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そうですね。
木村 
日本は失敗を許さない意識が結構社会に根強くあるけれど、人間は失敗して成長するものだと学んできました。そのような社会であればいいな、って。全部まとめて見せられればいいなと思っています。
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失敗を許す。
木村 
失敗したね、あははって。自分自身を許すし、誰かの失敗も許すし。失敗を楽しんでいくというか。だってそれは面白い事だから。失敗も含めて、その人自身を見せるのが面白いんです。
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素晴らしい。「失敗してもいい」か。
木村 
それは凄く大きなインプロのメッセージで、失敗出来るのであれば役者さんはチャレンジ出来るし、失敗出来るという事は進化のスピードも違うんです。失敗を許されないと、いつの間にか果敢なチャレンジが出来なくなってしまう。失敗を楽しめるのは、ワクワクする環境なんじゃないかと。まあこれはインプロの基本的な考え方なんですが、そういう意識をお客さんが感じて帰ってもらえたら、それが最高ですね。失敗した場面をプププって笑ってほしいし、そうしたらきっと豊かになるんじゃないかなって。

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寄り添う僕ら

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飛び道具の良さは調和だと思っています。それは、舞台上の人間関係や会話が様々なレベルで非常に調和されて美しくまとまっているという事だけではなく、演劇作品が、そのテーマが持つ重みに対して肉薄しているという印象がありまして。会話がキャッチボール出来ているというか、それが当然の効果を持って演じられているというか。
渡辺 
舞台上で自然に会話のキャッチボールが出来ているんですよね。私も初めて見た時からその印象は変わっていません。そこが驚きなんです。
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やっぱり。
渡辺 
全体的に、奇をてらわないからかも。お客さんをきっちり楽しませるスタンスだし。でも、みんな心の中ではくそっと思っているんじゃないかなと思います。もしかしたらそれがとっても大事なところかも。
__ 
というと?
渡辺 
主役でも端役でも、表現する時に「自分がどうしたいか」という根幹が関わってくるんですよ。いわゆる「我が(わが)」はあると思うんです。それが、その役の中心点に迫っていたらいいんですけど、集団で作る作品は必ずしもそうじゃない。集団で人々を描くとは何か?それが、七刑人の時にはよく話されていたと思います。
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飛び道具「七刑人」。罪人達が死刑に向かう、非常に重厚な演劇作品でしたね。大変面白かったです。
渡辺 
俳優個人がどうしたいか、それは一旦どうでも良くて。その役の中心にどこまで行けるか。もっと言うと、この人達はどこに向かおうとしているのか?が大切なんだ、って。集団で何かをやるのって、そういう事なんだろうと。だから、ワガワガにならないんじゃないかと思います。逆に、ワガワガは簡単に出来るんです。
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俳優個人を超えた調和を実現する。それはきっと放任する事じゃないんですね。むしろ、個人の可能性をずっと思考し続ける事かもしれない。
渡辺 
「お前の役はこういう性格で、こういう存在なんだ」とかは言われないです。役割としての話はされますけど、具体的にこうあれとかこうしろとかは言われない。「そんなん、ナンセンスや」って。どれだけ物語に寄り添えるかが、飛び道具のお芝居の本質なんじゃないかなと思います。それは優しい所ですよね。この人達、凄いなあと思いますね。新参者の気持ちが続いています。
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そうですね。
渡辺 
人に寄り添うという事については、ここ数年思いますね。藤原さんが言ってたのかな。例えば職場に嫌な人がいたとしても、その人の出来ない事はみんなでフォローするんです。まず、自分の出来る事をやって、その人をフォローして。社会としては排除するのが一番効率的なんですけど、みんなが輝ける場を作るのが、飛び道具で学んだ事でした。
飛び道具「七刑人」
公演時期:2012/5/24~27。会場:アトリエ劇研。

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sunday play #5「グルリル」

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この公演「グルリル」について。偶然の一致が大きなキーワードなんですね。実は私もしています。ウォーリーさんもしているし、今日ここでも起こりましたね。
木下 
そうですね。起こるんですよね。物語の力ってすごいと思います。その偶然の一致について、ゲルハルト・リヒターの展覧会に着想を得たところがあるんです。すごく面白くて、初期の頃は写真の上に絵具を載せたりという技法があって(時代によって色んな描法を編み出している画家さんなんですけどね)、絵具の厚みが生まれるんです。失敗しても塗り重ねられる。そういうものって演劇では無いな。本番で演技が上からどんどん塗り重ねられる作品って作れないかなと思ったのがグルリルの最初です。
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物語のテーマは。
木下 
めっちゃダサいですけど、言えば、歴史とは何かとか、人間を人間たらしめているものは何か、です。スロベニアに行った時に民族博物館にいったんです。これまでの歴史が展示されているんです。バルト三国だったり社会主義国だったりの歴史があって、ロシアとの歴史があって、民主化して、EUに加盟して、が、現代の紹介コーナーをゴール地点にしてずっと並んでいる。でも、今いるコーナーは全然ゴールじゃなくて、この先から本番なんですよ。もしかしたらもう一度社会主義になるかもしれない。僕は、人間は進化してよりベターな方向へ向かっていると思っちゃってたんですね。
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進歩史観ですね。
木下 
途中の状態に常にあるのが歴史で、「今は途中やぞ」という状態をはっきり受け入れないと、次の時代を考えられないと思ったんです。
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今は途中である事を受け入れる。
木下 
それが、演技を塗り重ねていくという演出と、どこかクロスしていると思っています。色んな時代の色んなシーンを、同時多発的にやってもらって、そこでいくつかのセリフが関連する時に生まれる面白さを発見する、という感じです。ただ、現時点ではまだどうなるかは分かりません。
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まさに、いま仕組みを作っている最中という事ですね。手応えは。
木下 
それもまだ分かりません。お客さんが演出を見ようとすると物語が観れない、物語を見ようとすると演出が邪魔になるという状態なので、かなりコントロール出来るようなセリフや動きを作らないと完成しないので。中々ハードルは高いなと。そういう意味で手応えがあります。
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面白さの為にある、実験的な、前衛的な演出。それが許される場所だと私は考えていますので、とても期待しています。では、いま、この時代のここ日本でそのテーマを扱う事には、どのような意味があるのでしょうか。
木下 
その意味では、あまり意識しないようにしています。この作品は上演時間中ずっと雪が降っていて、何十センチも積もるといいんですけど。それが原発事故とか、現代の色んな問題に結びつけて受け止める事はしやすいんですけどね。でも、それは僕の役目じゃないんじゃないかと。僕は正直、明確な問題意識は強くなくて(それはコンプレックスでもあるんです。そもそも仕事も嫌いだし南の島で生きているのが一番向いていると思うんです)。「いまこういう問題が起こっていて本当はこういう事だからこうしなければならないんだ」というのが無くて。でも、今このテーマを選んだのは色々な配剤があったんです。だからこそ、製作を進めていく上で偶然が繋がっていくという感触を感じています。今現在のここ日本でも、色々なお客さんに見ていただきたいですね。

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