あくまで想像でしかないけれど・・・

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fukui企画「歪ハイツ」。とても面白かったです。衣笠さんのやっていた役が、アパートの住人たちを洗脳して陰惨なリンチを繰り広げさせるというとんでもないサイコ野郎でしたね。見ていて怖かったです。
衣笠 
ありがとうございます。僕もやっていて怖かったですね。
__ 
ご自身でも?
衣笠 
終わってから色んな人に「キヌって怒ったらあんな感じよな」って言われて。そんなワケないて否定するんですけど、役にハマってたと。これは自分はちょっと危ないんちゃうかなと思うんですけど、でも反面やりやすかったんですよ、確かに。何でやりやすかったのかは分からないんですけど。それが良い事かどうかも分からないですけど。
__ 
やりやすかったというのは、気持ちが理解出来たという感じ?
衣笠 
いや、気持ちは全然理解出来なかったです。振る舞いとか喋りがスッと入ってきて、自分の口から言葉にしやすかったんです。台本の力なのかもしれないです。
__ 
仕草とか、表情とかかもしれないですね。実はさっきインタビューしたダンサーの方が、ダンスを放棄するような踊りがしたいと仰っていてですね。自分の演技を置いてこれる、そんな演技が実践出来たという事かな。
衣笠 
もし自分がああいう立場になったらこうするやろうな、という決め付けでやってました。それだけ自分で決めつけたのがたまたま嵌ったと思うんですよ。見当ハズレだったら「やりにくかった」という感想になったと思うんです。
__ 
自分の考えとたまたま合っていた、から。
衣笠 
そうですね、人を殺した事も、人に通電した事もないので分からないんで理解はきっと出来ない。あくまで想像でしかないんですけど、ちょっとは寄せられたのかなと思っています。

タグ: 役づくりの成功


「さくら」

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掴むのに、苦労した役はありますか?
丹下 
最近で申し訳ないのですが、トリコ・Aさんでやらせて頂いたさくらが一番つかみにくかったですね。ふだん、派手な演技で賑やかなお芝居をさせて頂く事が多いので。言ってみれば普通の女の子だったんです。丹下真寿美としては、彼女を理解するのは難しかったです。
__ 
丹下さんは、確かにジャンルとしてのエンタメ系に出る事は多いようですが、そういう意味で会話劇が難しかったりはありましたか?
丹下 
そうですね、日常生活の所作が難しかったです。相手の言葉に対する反応が凄く大かったんですね。びっくりしたら手を広げて、というのが私にとっては普通だったんですよ。トリコ・Aさんはそれとは作り方が全然違うんです。私が作り上げた土台は使えなかったですね。稽古初期に茜さんに頂いた指示が「そんなに一個一個反応しなくていいです。動かないで下さい。それぐらいが一番、丁度いい」と。どうしても、動かなきゃという気持ちがあるんですが、それをしてはいけないと。
__ 
舞台に立っている人間をそのまま感じるために、演技は却って邪魔になる、という事かもしれませんね。リアクションを一旦保留するというか、反応する動きを一旦保留する。すると、それを見ている観客は彼の真意をつかもうとして想像を広げるんじゃないかなと個人的には思います。こうした言い方が相応しいかは分かりませんが、京都で支持されている会話劇はこういう意識で作られている気がします。良いか悪いかは別にして。
丹下 
なるほど。
__ 
丹下さんの演技、私は不自然だとは思わなかったです。むしろ、いつも相手を受け止めるような反応をしていたと思いました。この人には近寄ってはならないと思いました。あれは凄かったですね。
丹下 
良かったです。全ての男性に対して粗末に扱わないでください、傷付けないようにしてくださいと言われていて、でも、誤魔化すような事もしないでと。「そんなのゆうてないし~」みたいな事も言わず、じゃあどうするの?って悩んでたんです。
__ 
そうですね。詰め寄られても、一旦受け止めてあげるみたいな。それが、ワクワクするような嘘と駆け引きのバトルシーンを見ているようでした。すごく面白かったです。
丹下 
嬉しいです。素直に嬉しいですね。小屋入りしてからも稽古の時間を頂けて、結構変わったんです。一日一回通したりして・・・。

タグ: 出来ない!難しい!演技 役をつかむ 会話劇研究 自然体 役づくりの成功 自覚的になりたい


vol.317 丹下 真寿美

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2013/春
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丹下

トリコ・Aプロデュース演劇公演2013「つきのないよる」

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トリコ・A「つきのないよる」。思い出す度に鳥肌が立つんですが、ひとえに丹下さんが怖かったですね。
丹下 
怖かったですかー?
__ 
怖かったですね。
丹下 
私がやった役の「さくら」はお話の中で4人と付き合ってたんですが、作・演出の山口茜さんから、「全員にいい顔をしてください」と言われていました。嘘を付かないで下さいと。私も付いているつもりはなかったんですよ。
__ 
あ、正直者だったんですか!
丹下 
はい。相手を悲しませたくないから、NOとは言えない人間というか。目の前のこの人を傷付けないための嘘。そういう形でやってくださいと言われたんです。
__ 
でも毒殺するんですよね?
丹下 
毒殺ではなく、男性に飲ませていたのは睡眠薬入りの飲み物なんです。眠らせた後、練炭による一酸化炭素中毒にさせて殺してしまいます。そのへんになってくると難しいところで、もうみんなに知られて来てしまって、本命の彼もいるし、これ以上ごちゃごちゃしたくなくて・・・という形なんです。これは実際の事件を元にしているんですが、資料としての取材本が凄く面白くて。茜さんの台本にも少しずつ事実が設定として出てくるんです。やってる側としては客観的には見れないので、どうだったのかは分からないんですが・・・。
__ 
私としては、山口さんの作品は境界が曖昧で、お話なのか設定なのか、単なるギャグなのか暗喩なのか分からない演技もある。ただ、全体を貫くその腑に落ちなさが、凄くロマンチックになるんですよね。
丹下 
やってる側もどこかすっきりしない部分は残るんですが、これは明確にしない方がいいんだろうなというイメージはありましたね。
__ 
消化出来ないものを扱っている。
丹下 
実はトリコ・Aさんを見たことがなくて、しかも共演者も初めての方ばかりで。緊張しました。
トリコ・A
トリコ・Aは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)
トリコ・Aプロデュース演劇公演2013「つきのないよる」
公演時期:2013/7/26~30(大阪)2013/10(金沢)。会場:インディペンデントシアター1st(大阪)、シアターアンゲルス(金沢[リーディング公演])。

タグ: ロマンについて 俳優の「素」を生かす 衝撃を受けた作品 殺す 役づくりの成功 曖昧さへの礼賛


vol.317 丹下 真寿美

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2013/春
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丹下

質問 silsilさんから 大石 英史さんへ

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前回インタビューさせて頂きました方から、質問を頂いてきております。silsilさんという、画家の方からです。「もし、自分には絶対にムリな役があるとしたら?」
大石 
役を演じるって、そもそも全てが無理のあることのような気がしています。で、無理だからこそ、僕は演劇をやっているのかなぁと、今、話していて思いました。
__ 
ムリだからこそ?
大石 
自分が他人になることは無理だからこそ、役と自分のズレをきちんと感じられる訳ですし、100%は理解できないからこそ近づこうとのたうち回るのを面白いと、僕は思っているのかも知れません。

タグ: 役者の積み上げ 演技それ自体への懐疑 役づくりの成功


vol.312 大石 英史

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大石