101股
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- ざくっとした伺い方なんですが、小劇場に入ってから、特にこの作品や企画は私を変えた、というものはありますか?
- 大塚
- 仕事の幅を広げてくれたのはアクトリーグ※ですね。関西の有名な小劇場の方たちがぎゅっと濃縮された感じだったので、人脈は広がりましたね。それから、ピースピット※の『風雲! 戦国ボルテックス学園』※もそうですね。そこで山崎氏にもあったし。個人的に、役者として影響を受けたのはつかこうへい追悼企画「飛龍伝」です。
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- 一心寺プロデュースの飛龍伝※ですね。拝見しました。
- 大塚
- ありがとうございます。それまでは飛び道具的なキャラクターが多かったんですけど、玉置玲央君と一緒に、がっしりとやらせてもらいました。新しい自分を発見するキッカケを頂きました。それから、一人芝居。
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- あ、independentの。拝見出来なかったんですが、タイトルから非常に惹かれますよね。「101人ねえちゃん」。
- 大塚
- 見た目がやはりチャラいので(笑う)101人股掛けていたので全ての女性のお客様に嫌われました。しかも、30分で次々に振っていくんです。
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- 嫌われるという事は、心に残ったという事ですよね。
- 大塚
- 僕もそういう風に取るようにしています。これで全国各地を回ったんですが、やっぱりどこの都市でもチャラ男だと思われてます(笑う)。日本全国で糞野郎の冠を頂いたんですが、役としては可哀想な奴なんですよ。
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- 悪名が高すぎますね。
- 大塚
- はははは。あれ以降、僕の発言が信ぴょう性を無くしているような気がします(笑う)。
- ※アクトリーグ
- アクトリーグは、世界中の俳優および俳優を目指す全ての人たちに平等なチャンスを与え、映画、演劇に続く第3のエンタテインメントを目指すものです。ルールは、3分×4ステージというシンプルなもの。その空間の中で、何を演じても良いし、何を表現しても良い。全ては「自由」なのです。私たちは、世界中の全ての俳優、俳優を目指す人たちに門戸を開いています。何ひとつ制約するものはありません。最高のプレイヤー(俳優)が何の制約にも阻まれず集える場であること。最高の観客と感動をシェアすること。最高の競争の場であること。この3つを常に念頭において、私たちはアクトリーグを世界中の人々とシェアしていきたいと考えております。(公式サイトより)
- ※ピースピット
- 劇団「惑星ピスタチオ」(2000年解散)に所属していた役者・末満健一により、2002年に旗揚げされた。特定のメンバーを持たず、公演毎に役者を募る「プロデュース」形式にて、年1~2本のペースで公演を行う。作品的な特徴としては、作りこまれた世界観、遊び心に満ちた演出ギミック、娯楽性を前面に押し出しつつ深い哲学性に支えられたストーリーなどが挙げられる。作風は多岐にわたるが、「街」などの外界と区切られた括りの中で物語が進行されたり、終末世界が舞台となることが多い。また作中に必ず「猫」が登場することも特徴のひとつとして挙げられる。(wikipediaより)
- ※ピースピットVOL.12『風雲! 戦国ボルテックス学園』
- 公演時期:2010/7/21~25。会場:HEP HALL。
- ※一心寺シアター倶楽 つかこうへい追悼企画「飛龍伝」
- 公演時期:2011/6/23~26。会場:一心寺シアター倶楽。
ブレ
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- 舞台で演技をしているときに、好きな一瞬はありますか?
- 村上
- 昔から、笑いを取れた瞬間が一番好きなんですけど、最近はちょっと興味が変わってきています。今は、自分の影響力が共演者に伝わっているなと感じる時に喜びを感じるというか。その日によって調子が変わったりするじゃないですか。同じ事をやってるのに違うんです。感度が鋭かったり鈍かったり。例えば相手に「座れよ」と声を掛けるセリフ。その時の流れによって、説得するように優しく言った方がいいのか、強く言った方がいいのか。その時々で判断があって、相手がそれを汲んでくれて、噛み合った時というのがすごく面白いですね。もちろん、それを考えながらやってる訳じゃなく、終わってから「あの時、あのやり方にして良かった」と思うんですが。
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- そう考えるようになったのは、いつからですか?
- 村上
- 柿喰う客の玉置玲央が主宰のカスガイというユニットに参加して会話劇をやって、それぐらいから面白いなと。得意不得意は別として、コメディを主にやってきたので、ちょっとノリが違うのをやるとみんな驚いてくれるというのもあって。意外だって。笑いで培ってきた貯金を崩しているような感覚があります(笑う)。
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- 予想を裏切るみたいな感じですね。
- 村上
- 会話劇。稽古が楽しいですよね。この間出演したオーストラマコンドーの稽古で、演出の倉本さんがとことん、練習に付き合ってくれるんですよ。役柄としての気持ちにも。白雪姫と七人の小人のお話で、僕は小人の一人だったんですけど、みんなで台本を持ってきて、お姫様が言った事に賛成の人、反対の人って聞いていって。その理由を聞いて、「ああそれだったらこのシーンはそうしよう」って。すると、嘘がないから自分の意思が明確になって演技のブレが少なくなるんです。段取りをガチガチに決めた芝居ではなく、かと言って感情以外何も決めない芝居でもない。相手が段取りにない意外な事をしてきても、方向性が決まっているのでどんなことでも対応出来る。芯のある話を作る。そういう取り組み方がすごく勉強になりました。
「どくはく」
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- さて、一人芝居フェス※での「どくはく」※。大変面白かったです。
- 大西
- いやー。がっさがさの声で・・・。すみません。
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- いえいえ、あのハスキーボイスが良かったと思います。
- 大西
- みなさん慰めのようにそう仰ってくれるんですよ。申し訳ないです。
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- あれはシチュエーション的に、大西さん演じる袖にされた女が、浮気している彼氏に、既に怒鳴った後だと思っているので。あそこで声が枯れていたというのは正しかったと思います。
- 大西
- ありがたいです。皆さんそう思っておいて下さい(笑う)。
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- 浮気されている女でしたね。
- 大西
- 私の中にもある気持ちだったんですよ。でもそういう役はやったことが無くて。脚本を見たとき、これが来たか!と思いました。
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- 演出の上原さんは大西さんのずば抜けた身体性を生かして、内面からわき出る怒りをそのまま表現したかったと言ってました。
- 大西
- そうなんですか? ずば抜けた身体性?日呂さんは直接ぜんぜん誉めてくれません(笑う)。男性にしたら、あの役はめんどくさい女だなと思われるんじゃないかって思ってました。
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- 面白かったですよ。あの「袖にされている」というのは誰の心にも生まれる気持ちだと思うんですよ。大西さんみたいな女性的な人が、恋愛というドロドロした関係性を通して、人間性を突きつけた作品だと思っています。何だろう。暗い失恋ソングを聞いて、癒されるみたいな感じですよね。
- 大西
- 良かったです。もう一度、やりたいですね。
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- いいですね。もう一回、じっくり見たいと思います。
- ※「最強の一人芝居フェスティバル」INDEPENDENT:11
- 公演時期:2011/11/24~27。会場:in→dependent theatre 2nd。
- ※「どくはく」
- 出演:大西千保×脚本:玉置玲央(柿喰う客)×演出:上原日呂(月曜劇団)。
「どくはく」
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 上原
- 役者として借り出された時に、求められた事を楽しんで仕事したいですね。
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- 私も、楽しんでいる上原さんを見たいです。
- 上原
- (笑う)どんな舞台でも楽しみたいですね。
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- 演出者としては。
- 上原
- 応えてくれる俳優には、最大限報いたいと思います。こないだの一人芝居の大西さんみたいに。
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- あれは凄かったですね。
- 上原
- あの作品は、もうそのまま素直に演出させてもらった感じですね。
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- 「どくはく」大変面白かったです。演出をされておりましたね。途中から、見てはいけないものを見ているような気がしていました。
- 上原
- 脚本の力ですね(笑う)。実はめっちゃ細かく段取りを付けました。大西千保という役者の存在感がずば抜けている上に踊れるので、緊張と緩和を上手く使えるんですよね。30分間ずっと緊張していても面白いかなと思って作りました。
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- 最後、大西さんにしては珍しく汗だくになっていましたね。
- 上原
- そうですね、普段大西さんはそんな状態になりませんからね。
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- 役柄は「思いの強い人」でしたね。
- 上原
- 内面から出てくる腹立たしさを鍵に作りました。彼女の中ではグルングルンしたと思いますよ。せっかく、演出が別だから「どくはく」は玉置君がしないであろう遊びをしてみたり。色々な試みに応えてくれたと思います。
人気劇団として見ないで
- 中屋敷
- でも、最近は柿へのイメージというのがちょっと固定化されているのかなと思います。無名の若手と思って見てほしいんですよ。
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- あ、その辺が問題。
- 中屋敷
- 初めての人が「柿って評判なんだよね。さあ、楽しませてよ」って感じで来られんですけど、何も前情報のない状態で見て頂くとより楽しめると思います。外国で上演した方がやりやすいのはそこですね。
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- なるほど。
- 中屋敷
- 素の状態でお願いしたいです。玲央クンカッコイイとかそんなのいいですから。※彼も望んでないし。一人の役者として見てほしいです。人気劇団を見に来たじゃなく、作品を見てほしいです。
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- 先入観はいらない。
- 中屋敷
- 僕らはどんどん新しい方向ものを作ります。だから、前の公演の事なんか一切わすれて。
- ※玉置玲央氏
- 柿喰う客所属俳優。