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無は白い顔をしている
- __
- その15周年記念シリーズ2作を両方とも拝見しました。どちらも應典院での上演でしたが、そういえば全て暗幕を吊るのではなく、白幕でしたよね。そういうところの印象が、何故か強くて。全体に、その独特な味付けをしているような気がしたんですよね。
- 戒田
- ありがとうございます。暗幕ってね、演劇の先人達の偉大な発明やと思うんですよ。あれは「何も無い」という表現なんです。僕たちはそれを借用してる。歴史上初めて暗幕を見たお客さんは「何やあの黒い布?」と思ったんじゃないかと思うんです。
- __
- ああ、そういえばそんな気がしてきました。
- 戒田
- 一方、應典院はベースが白いんです。だから、應典院で「何も無い」のは白色なんじゃないかと思うんですよね。
- __
- 應典院での無は白色をしているという事ですね。とても暗示的な観点だと思います。それは「ツキノウタ」※の時に凄く生きたと思うんですよね。冒頭のシーン、音響照明と共にカラフルな幕が捲れ上がっていき、一面が白色になる仕掛けがありました。非常に印象的で見事でした。色とりどりの世界が一瞬でめくれ上がり、白い無になってしまう。
- ※満月動物園第弐拾参夜『ツキノウタ』
- 公演時期:2015/3/6~3/8。会場:シアトリカル應典院。
THE ROB CARLTON「ELDER STATESMAN'S GARDEN」※
- __
- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。本日はTHE ROB CARLTONの皆様にお話を伺います。早速ですが、ご近況を伺っても宜しいでしょうか。
- 村角太洋(以下、ボブ)
- 最近はもっぱら、次回4月公演の「ELDER STATESMENT'S GARDEN」の稽古ですね。
- __
- 来月4月にHEPで上演する予定なんですよね。チラシによると庭についての作品という事ですが、まず、何故今回は「庭」がテーマなのでしょうか。
- ボブ
- 次はHEPホールという事ですので、広い空間を生かせられないかと思いまして。そこから庭が出てきたんです。
- __
- そうなんですね。THE ROB CARLTONは毎回、舞台セットに気合いが入っていますからね。やはり庭のセットが出てくると思うのですが、まずそのあたりが楽しみです。
- ボブ
- ありがとうございます。毎回毎回進化していっていますね。出来上がりが楽しみです。
- __
- 作品の見所をひとつ教えてくださいますでしょうか。
- ボブ
- 今回は今までで一番出演人数が多いんです。いままで出演してくださった方にもたくさん出て頂いているので、これまでの集大成になるかもしれません。
- __
- それは素晴らしいですね。
- ※THE ROB CARLTON
- 京都で活動する非秘密集団。(こりっちより)
- ※THE ROB CARLTON 9F「ELDER STATESMAN'S GARDEN」
-
歴史は、庭で作られる。
ある晴れた日 穏やかなこの庭に
多くの男が訪れることになる 無論、思いがけずに
「庭」とは時としてそういう場所である
【公演日程】
2015年4月 17日(金) 19:30~
18日(土) 13:00~ / 19:00~
19日(日) 13:00~
*開場は開演の30分前、受付開始・当日券の販売は開演の1時間前より
【会場】HEP HALL
【料金】一般前売¥3,000 一般当日¥3,500 学生¥2,000(前売り・当日共)(整理番号付自由席)
【作・演出】村角太洋
【出演】THE ROB CARLTON(村角ダイチ/満腹満/ボブ・マーサム)大石英史/高阪勝之(男肉 du Soleil/kitt)/角田行平(男肉 du Soleil)/西垣匡基(マゴノテ)/古藤望(マゴノテ)/伊勢村圭太(夕暮れ社 弱男ユニット)/渋谷勇気
京都芸術センター制作支援事業
いつかはもっと大きな事が出来るように
- __
- 今後、どんな表現をやりたいですか。
- せん
- いま稽古しているのが台詞のある演劇なんです。演劇初めてなのに、何をやらせてくれとんねんという感じで。でも、紙芝居のイベントと同じように演劇も総合芸術なんだなと気づいたんです。
- __
- というと。
- せん
- 私の絵、台詞、それから女優さん、音楽、みたいに。演劇にはそれらが含まれているんですよね。それから、凝り固まった演劇のイメージが壊れましたね。演劇も色々あるんですよね。香聲さんの作られているような音楽劇があれば、人間関係を丁寧に描く方もいる。ミュージカルだったら歌もあるし、照明や衣装や小道具や舞台美術もある。
- __
- 演劇は総合的な芸術であると良く言われますよね。
- せん
- そう思うと、私がやりたい総合芸術やなあと気づいたんですよ。私はそれまでコンパクトな総合芸術をやってたんですね。
- __
- そして、演劇は何でもあり、ですね。
- せん
- いつかはもっと大きな事が出来るように、勉強させてもらっていると思うので。自分を奮い立たせています。
母性が爆発
- ___
- 作家に必要な孤独を、家族の存在によって埋められた。それは、たみおさんにとっては喜ばしい事?悲しむべき事?
- たみお
- ユリイカ百貨店は、2001年からずっとやってきて。必ずハッピーエンドにするという事で作品を作ってきています。いい景色が見たいという願いは最初から変わらないですね。舞台美術がキレイという事は、見ている景色がキレイという事だから。私が見たかったんです、その景色を。
- ___
- なるほど。
- たみお
- 何かが欠落していたんでしょうね。
- ___
- 欠落があったから、風景を見たかった。
- たみお
- それはあるかもしれない。ずっと何かが孤独で、現実って辛い事が多いな、って思ってたんです。せめて劇場に夢を求めていたんですが、年を経て好きな人と結婚して、子供が出来て、その子供が育っていく過程で、想像していなかったぐらいの母性の爆発があったんですよ。
- ___
- 母性の爆発。
- たみお
- そうなんです、母性の爆発。産まなければ爆発しなかったと思うんですけど。子供が笑うともう、それでいいかと思ってしまう。凄く幸せな反面、ずっとモノ作りをしていた自分との葛藤があって。何か作りたいという思いと母性とで。実は3年間、それほど穏やかな毎日でもなくて、子供が寝た後に家出したり・・・
- ___
- そうなんですか。
- たみお
- そんなに穏やかに子育てしてた訳でもなくて、葛藤してたんです。
舞台美術のためのワークショップ公演※
- __
- さて、舞台美術ワークショップ公演、京都ロマンポップ「夏の扉」。面白かったです。いかがでしたか。
- 高田
- 今回、実は本番期間が学校のテスト期間と危うく重なっていて。直前でようやく参加出来る事になったんです。WS自体はとてもやって良かったです。でも、もっと舞台を生かしきる、そんなやり方がもっと出来たんじゃないかなとは思います。一緒に出て頂いたゲスト劇団さんはもちろん素晴らしかったんですけど。ウチの作品的には、鍾乳洞というセットはしっくり来ていたとは思いますが。
- __
- 作品に関してはもちろんです。玉一さん演じる、異常を来したお母さんの精神と、お兄さんにしか分からない地獄を端的に現していたと思います。
- 高田
- 鍾乳洞という、物質が煮詰まる空間と、家族の関係が煮詰まっている部分がうまい事しっくり行ったんじゃないかなと思います。舞台の良さも、作品の良さも、さらに引き出す事が出来たらさらに凄いと思いますね。
- ※第1回 舞台美術のためのワークショップ公演
- 公演時期:2014/8/15~17。会場:東山区総合庁舎2階 東山区青少年活動センター。
KYOTO EXPERIMENT オープンエントリー作品 - Theatre Company shelf『shelf volume 18 [deprived]※
- 矢野
- 今度京都に持ってくる作品というのが[deprived]というタイトルで、東京では(仮)とタイトルにつけて4月に上演したんですが、20人しか入らないギャラリーで、一週間ほど上演したんですね。音響や照明効果に頼らず、同じ空間で、観客と空間を共有して、物語を物語るという作品です。一度徹底的に、演劇に付随する様々な要素を削り落として俳優の“語り”の力だけを使った作品を作りたくて。
- __
- 東京で上演して、いかがでしたか。
- 矢野
- 今回の[deprived]に限らず、僕たちは基本的に、都度、再演に耐え得る強い作品を作るんだ、という気持ちが強くあります。僕は専業の演出家なので、基本的にテキストは他の誰かが書いたものを使う、というやり方を取っています。セットなども極力作らず、音響も薄く、観客の無意識を支えるように入れるか、あるいは最近はもう音響は無くてもいいかな、という感じで。だいたい装置を建て込む、という感覚からはもう10年ぐらい離れていますね。ただ、再演に耐え得る、といってもそれは同じものを正確に再現できるようにする、ということではなくて、つまりどこに持っていっても同じように上演できるパッケージ化された閉じた作品ではない。環境、つまり劇場という建築物の歴史や場所性、ロケーションなど大きな要素まで含めて、それらを含みこんで、その都度ちょっとずつ作り替えて、稽古場で出来るだけ柔らかく且つしなやかなものを作って、それを現場で毎回、アジャストしてから上演するという感じで。俳優には、まあ相当な負担がかかるんですけど、そういう風に劇場というか<場>の魅力を引き出した方が舞台芸術としてもっとずっと楽しいんじゃないかと。お金が掛からない、というのもありますけどね。でも、貧乏ったらしくはしたくなくて。
- __
- そうした上演形態が、shelfのスタイルですね。
- 矢野
- 貧乏ったらしくしたくない、というのはこちらの気構えの問題でもあって、経費をケチってコンパクトにするというよりか、稽古場で相当な時間をかけ、試行錯誤しながら練り込んで来たものを1ステージ20人しか見られないような空間で上演する。それってむしろ、凄く贅沢なことなんじゃないだろうか、と。もちろんそこには懸念もあって、1ステージ20人だと、変な話客席が全て知り合いで埋まってしまうかもしれない。でもそれは何とかして避けよう。出来るだけ当日券を用意するとか、常連客しか入れないような一見さんお断りの飲食店のような雰囲気じゃなくて、誰でも入れるような、そんなオープンな空間を作ろうと。そのように、どうやって自分たちの存在や場所そのものを社会に対して開いていくか? ということについては、これからももっともっと考えていかないといけないと思っています。ただ先にも言ったように、自分たちのやりたいこと、課題、やるべきことが見えて来ているという意味では今は本当にとても充実した毎日を送っています。
- __
- 課題が見えるという事は、少なからず問題に直面していた?
- 矢野
- 将来的に考えて、何というか、テレビの仕事や、演劇、コミュニケーション教育など教える仕事、レッスンプロっていうんですかね、そういう二次的な仕事でなくちゃんとしたアーティストが、純粋に演劇作品を作ることでそれで対価が支払われるような社会になっていかないと、それはちょっと社会として余裕がないというか、貧しい社会なんじゃないかな、と思うんです。例えば俳優や、スタッフにしても例えば子どもを育てながらも演劇活動が出来るような、そんな世界になっていってほしいんです。まあ、そもそも演劇制作って、ビジネスとしてはすごく成り立ちにくいものなんですけどね。資本主義の、市場原理の中では回っていかない。だけど、や、だからこそ一人一人がただ良い作品を作ればいい、作り続けていれば、というのは違うと思ってて、それはそれでちょっと独りよがりな発想だと思うのです。で、だからそういうところから早く脱して、演劇に関わる一人一人が将来についてのそれぞれ明確なビジョンを持って、これからはそれぞれが一芸術家として文化政策などにも積極的にコミットしていかなければならないと思います。じっくりと作品作りをしている僕らのような存在が、ファストフードのように消費されるんじゃなくて、きちんと評価される。社会のなかに位置づけられる。国家百年の計、じゃないですけど、二年とか三年とかそんな目先の利益じゃない、大局的なビジョンを持って、演出家とか、劇団の代表者という者は活動をしていかなきゃいけない。そんなことをずっと考えていて、いろいろと、作品作りだけじゃなく制作的な面でも試行錯誤をしています。
- ※KYOTO EXPERIMENT オープンエントリー作品 - Theatre Company shelf『shelf volume 18 [deprived]
- 公演時期:2014/10/2~3。会場:ARTZONE。
舞台美術のためのワークショップ公演※、準備中
- ___
- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。肥後橋さんは最近、いかがでしょうか。
- 肥後橋
- お芝居の事で言うなら、8月の「舞台美術のためのワークショップ公演」の準備をしています。初めてのプロデュース業なので、大変といえば大変ですね。演劇以外としては、僕は非常勤講師として働きながらお芝居をやっているんですけど、職場で僕の役者写真が流出して教室で張られていたりしています。白塗りのピカチュウの写真とか。
- ___
- そう、先生をされているんですよね。教科は何でしたっけ。
- 肥後橋
- 理科を教えています。
- ___
- そうなんですね!そういえば。いきなり話が脱線しますが、昔の笑の内閣のサイトの肥後橋さんの役者紹介の写真。フレミングの法則のポーズしてましたよね。
- 肥後橋
- それを難しそうな顔で見てましたね。
- ___
- 白衣でね。
- 肥後橋
- 笑の内閣※は楽しいですね。僕が学生劇団の頃、一番多く客演していたのは内閣でした。
- ___
- 肥後橋さんのレスリング、とても面白かったです。
- ※京都ロマンポップ
- 「物語は幸せへの通り道」京都ロマンポップは、2005年京都を拠点として旗揚げしました。作品は、よりふじゆきによる脚本:本公演と、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンの二本を支柱としています。現在は、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンを主に発表しています。本公演の舞台設定は、古代ローマ、中世ドイツ、昭和初期日本、そして現代と多岐にわたっていますが、一貫して描かれているのは普遍的な人間の悲しさや苦悩であり、そこから私たちの「生」を見つめなおす作品です。哲学的な言葉を駆使しながらも、役者の熱や身体性を重視する、ストレートプレイ。「ロマンポップ」の名前の通り、エンターテイメント的な要素も取り入れながら物語を紡ぎます。さかあがりハリケーンは、短編作品集です。その作品群は「コント」ではなく「グランギニョール」ただ笑える作品ではなく、どこか屈折した退廃的な空気が作品に漂います。歌やダンス、身体表現を最大限に取り入れていますが、対峙するは「現代の演劇手法」です。(公式サイトより)
- ※第1回 舞台美術のためのワークショップ公演
- 公演時期:2014/8/15~17。会場:東山区総合庁舎2階 東山区青少年活動センター。
- ※笑の内閣
- プロレス芝居や言論を舞台にしたお笑い芝居政治的な分野にアプローチする劇団。
壱劇屋の作り方
- __
- 今回の反省点を教えてください。
- 西分
- ホールが大きくて、最初に客席を見たときにすごい沢山やりたい事が出てきて。舞台上もセリと緞帳を使っていいと言って頂けて。その大きいものと戦う準備期間が、もっとあったらなと思いますね。結構、削ったネタもあるんですよ。その中でも、大ホールじゃないと出来ないネタもあって。
- __
- というと。
- 西分
- 全員で、色んな乗り物でレースするというのがあるんです。自転車、キックボード、ローラーブレード、一輪車、缶ポックリや三輪車とかで。もう、上演時間の関係で削らざるを得ませんでしたね。
- __
- なるほど。
- 西分
- そういうのも含めて、もうちょっと推考する時間もあったらなと。大きければ大きいほどやりたい事も制限も増えるので。
- __
- 稽古期間がなくなりつつあり、しかも台本が上がってない、なのに削るネタがあったというのは驚きですね。
- 西分
- ウチの作り方でしょうね。とにかくパフォーマンスを先に作るんですよ。本がたとえ進んでなくてもとりあえずストックをいっぱい作って、大熊さんの本にはめていくという感じなんです。
- __
- なるほど。
- 西分
- だから消えるネタもあるんです。順番が逆なんですけど。文章が先じゃなく、動きが先にあって、それを大熊さんが横目で見ながら台本を書くんですね。ただ、客演さんにはそれは不安だったでしょうね。その点はめっちゃ申し訳なかったです。
- __
- 一度、時間を掛けて作品を作る壱劇屋を見てみたいですね。
- 西分
- それはホンマそう思いますね。そういう意味では、次の6月公演は。期間があるし、HEPやし、みんな気合い入ってると思うんですね。変な言い方、小劇場すごろくの一個目の階段なので。予定を2ヶ月あけて、じっくりと全員で向き合って作る作品になりそうです。
1122席じゃないと出来ない感じのパフォーマンス
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- 次回公演「LumiereDangeon」。どんな作品になりますでしょうか。
- 安達
- 始めて演劇を見る人には、これが小劇場の普通だと思われてしまうのはちょっとどうかと。
- __
- 大分変わった作品なのかな。今も、アイデアを詰め込もうとしているらしいですね。
- 安達
- 1122席じゃないと出来ない感じのパフォーマンスと演出を詰め込もうとしていますね。もっと余裕とお金があったら、もっと盛り込めるんですけどね。
- __
- 楽しみです。
劇団壱劇屋 第22回公演『Lumiere Dungeon』※
- __
- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。最近、坪坂さんはどんな感じでしょうか。
- 坪坂
- いや、それはもう充実してますよ!劇団として立て続けにいろんな事が起こっていて。今回の作品もそうですね。初めての会場で初めての事をする訳で。個人的にも初めての体験が続いているんです!
- __
- なるほど。「ルミエール・ダンジョン」は劇場を丸ごと使うという事で、確かに初めて尽くしですよね。
- 坪坂
- その大劇場を、小劇場的に使えるというのがすごく新鮮なんじゃないかと思うんです。僕ら壱劇屋は小劇場で表現してきた者なので、大きな空間を贅沢に区切って使えるというのは非常に貴重な体験ですね。
- __
- 面白そうですよね。
- 坪坂
- お客様にとっては、そこを体感的に感じる仕掛けになっているんですよ。この人達、これをどう使うんだろう。あそこがこうなるんだ、この空間でこんな事をやってしまうんだと思うような。見るだけじゃない、五感を使って楽しんでもらえる時間になると思います。
- __
- 素晴らしい。本番まで二週間を切っているのに、ネタを盛り込もうとしているらしいですね。
- 坪坂
- 枠が大きすぎて、贅沢になってしまっって。あれを使いたい、これを使いたいとアイデアがどんどん出てきて、まとまらないですね。
劇団壱劇屋 第22回公演『Lumiere Dungeon』※
- __
- 壱劇屋の次回公演、「ルミエール・ダンジョン」ですね。いまはどんな感じでしょうか。
- 丸山
- ちょっと追い込まれてますね。いつも通りといえばいつも通りなんですけど。でも、面白い事はギリギリまで詰め込みたいといういつものパターンなので。本番までそれを続けます。いまは半分くらいまで詰め込めたのかなと。
- __
- おお、二週間前で半分。
- 丸山
- まあダメなんですけどいつも通りのペースです。事前に完成して何度も通し稽古をする、というのが出来ていないですね。
- __
- 面白い事を詰め込みたいから、なんですね。
- 丸山
- 一通り作っては、まだ足りないとか、アイデアが湧いてきた、とか。本番直前でも盛り込めるならそうしてますね。これからまだどれぐらい盛り込まれるのかは未知数です。台本が早い方ではないので、台本が上がった瞬間にパッと伸ばさないといけない。リアルタイムで進化していかないといけない。終わってから色んなアイデアを思いついてからでは遅いので。
- __
- 今回の見所を教えてください。
- 丸山
- 壱劇屋らしい作品ではあるんですけど、劇場大ホールの全てのものを大きく広く使ってます。そこらへんを楽しんで頂ければなあと。見たことのない感じにはなるかなあと。
- __
- 例えば。
- 丸山
- 普通の演劇だと、お客さんが客席に座って舞台上の俳優を見るというのが普通なんですけど。お客さんが移動する事で視点が変わる事で、視覚の動き方や感覚が変わるというのが、ちょっと映画に近いんじゃないかなとは思いますね。
- ※劇団壱劇屋 第22回公演『Lumiere Dungeon』
- 公演時期:2014/1/22~24。会場:門真市民文化会館 ルミエールホール 大ホール。
・ - ・
- 市川
- これは最近の問題じゃないですけど、「客が生きる」という事を考えています。上演時間が6時間の作品を以前作った事があります。それは、お客さんに何をしてもらっても良いんですね。
- __
- というと。
- 市川
- 劇場にお客さんが来る訳じゃないですか。そこに携帯を切れとか喋るなとか、横暴じゃないですけど、何か死ねと言っているような気がする。だから、生きるという事を考えたいなと思ったんですよね。俳優に与えられる二択が、観客にもあるんじゃないかなという気がします。喋るか、黙るか。一番いいのは、客席でも何かが作られ、舞台が客によって作られていくという事態が生まれれば、自由さに行きつけるんじゃないかという気がします。
「TACT/FEST2013」※での悪魔のしるし
- __
- 悪魔のしるしの作品を、ロクソドンタの「TACT/FEST2013」で拝見しました。それは子供をテーマにしたもので、もちろんお子さんがたくさん来ていて。なのに、悪魔のしるしの作品だけ、会場の子供が何人も泣き出すような作品でした。子供番組のお姉さんが出てきて、みんなと一緒にトトロを呼ぶ。「トトローっ」て呼んだら菓子袋の寄せ集めにくるまれた怪物や、真っ赤な妖怪が出てくるという。
- 危口
- ええ。
- __
- 今考えると狼少年の逸話を借りた啓蒙作品だったのかもしれないし、期待したものが出てくるとは限らないという、社会の厳しさを教えるものだったのかもしれない。とても面白かったです。どのような意図があったんでしょうか?
- 危口
- そうですね、あれは最初にイベントの企画担当の方からお話を頂いて、とても面白そうだ、でも何をしよう?と考えたんです。どうしても我々は、やるのは大人、観るのは子供、そんな二項対立で考えてしまいがちですが、もう少し細かく、自分の子供時代も振り返りつつ考えてみれば、3歳・5歳・7歳・9歳と、成長するに従って興味の対象ってどんどん変わっていきますよね。だから、結論として、全年齢の子供を単一の理由で面白がらせる作品は不可能だと。本当は大人だって、年齢層や生活習慣が違ったら面白いと思うポイントは違うんですから。でも、最終的に作る作品は一つでしかない。だったら、それぞれの年齢層の子が面白がる理由を個別に用意した方がいいんだろうなと。例えばちょっと物心がついた小学校3年くらいだったら、呼んでも呼んでもトトロが出てこないズッコケ感は楽しめるだろうなとか、幼稚園ぐらいの子だったら、おねえさんが出てきてコールアンドレスポンスするだけで面白いだろうなとか。
- __
- お子さんを不気味がらせるという演出意図だと思っていたんですが。
- 危口
- 怖がらせる危険性はあると思ってましたけど、まあそれはしょうがないと。狙っている訳じゃなかったです。役者が悪ノリしていた部分はありましたけどね。真っ赤な着ぐるみを着た、どぎついメイクの化け物が出てきて、泣き出す子もいるけど、一方で笑う子もいるんですよ。かといって、どちらかを選ぶことはできない。否定的な反応が出ることは、ある程度は覚悟してましたけどね。という訳で、最初に考えるのは複数化です。「子供向け」という条件だったら、「子供」を複数に分類しつつ、何歳以上、或いは以下の子はこのネタ通じないだろうな、ごめんなさい、と判断しながら、各年齢層へ届くであろう要素を個別に設計していく。児童向け作品に限らず、他の作品を考えるにしても同様です。
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- 大人もびっくりしてましたよ。悪魔のしるしにものすごい興味をそそられました。
- ※TACT/FEST2013
- 大阪 国際児童青少年アートフェスティバル2013。公演時期:2013/7/29~8/11。会場:大阪府阿倍野区各会場。
月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
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- 月面クロワッサン「オレンジのハイウェイ」※が終わりましたね。面白かったです。脚本協力という役割だったそうですが、どんな事を。
- 丸山
- ありがとうございます。作家の作道くんが書き始めるぐらいの初期から話し相手になるぐらいの役割ですけどね。面白かったんだったら、それは作道くんが面白かったんだと思います。
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- この作品、時間のずらしが大きな構造としてありましたね。その構造自体が人物表現に一役買っているという、ダイナミックな使い方がとても良かったと思います。しかも、あの2ndで、ですね。
- 丸山
- independent theater 2ndさんは大変良い劇場で。またもう一度やれるように京都で頑張ります。
- ※月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
- 公演時期:2013/6/21~24(京都)、2013/7/13~14(大阪)。会場:元・立誠小学校 音楽室(京都)、in→dependent theatre 2nd(大阪)。
バカ正直な人間
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- 嵯峨さんのプロレスを、西部講堂で拝見した事があります。ブレーンバスター三連発がとても美しかったです。嵯峨さんが空手をされているうえ、演じられていたリッキー・クレイジーという役も空手出身というキャラクターだったからかもしれないですけど、型の美しさというものがあるプロレスだったんじゃないかと思うんですよ。
- 嵯峨
- よくご存知で(笑う)そうですね、型は大事にしています。バカ正直な人間なので、自分がやってきた事をしか反映させられないんです。ストロングな、意地を張る、アスリートのキャラクター。僕も笑いを取れるような怪奇キャラやりたかったんですけどね。
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- 笑いが主体の内閣プロレスで、正統派のシモンさんの試合がとても見応えがあって好きです。格闘をやっている人はやっぱり違うなと思います。嵯峨さんは空手の有段者なんですよね。
- 嵯峨
- 初段です。子供の頃から高校二年までやっていました。大学受験までやってたんです。実は高校演劇をやっていたので、大学に入ってからはずっと演劇部でした。いまお世話になっている道場に入ったのは2年前なんです。だから、ついこないだ再開したばかりなんですよ。
どうしたらああいう事が出来るんだろう
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- 演劇を始めた頃の衝撃作を教えてください。
- 古藤
- めちゃめちゃ最近なんですけど、KUNIO※の「椅子 FINAL」※ですね。僕は本当にお笑いしか見た事がなくて、演劇を見始めたのはつい最近なんですけど、「椅子」はちょっと凄かったです。
- __
- 私も見ました。面白かったですね。
- 古藤
- 冒頭で古典劇のストレートプレイがあって、「こういう感じなのか」と思ってたんです。でもしばらくしたら杉原さんが舞台に出てきてモニタが付いて、観客も登場人物になっちゃったりして。舞台セットがどんどん変化していくのにも驚いたし、凄いなと。これなら、普段劇場に来ない人でも、観た後に「面白かった」って言えるんじゃないかなって。不条理劇の名作なのに、エンターテイメント性がめちゃあって、結構衝撃を受けました。今までは台本の構成とか、ギャグとか、役者の個性やキャラや演技とか、つまりソフトに目が行きがちだったんですけど、こういうやり方のエンターテイメントがあるんだって。
- __
- 目から鱗だったんですね。
- 古藤
- あ、何やってもいいんだ、って。度肝を抜かれました。最近、その事ばかり考えています。どうしたらああいう事が出来るんだろう。きっと、客層の照準を絞ってるかもしれない。m-floのライブみたいだったんですよ、クラブの要素が入っているような気がしましたね。
- ※KUNIO
- 杉原邦生が既存の戯曲を中心に様々な演劇作品を演出する場として、2004年に立ち上げる。俳優・スタッフ共に固定メンバーを持たない、プロデュース公演形式のスタイルで活動する。最近では、杉原が2年間務めた“こまばアゴラ劇場”のサミットディレクターの集大成として、初めて既存戯曲を使用せず構成から杉原自身が手がけた、KUNIO07『文化祭』や、上演時間が約8時間半にも及ぶ大作『エンジェルス・イン・アメリカ』を一部、二部を通して上演するなど、その演出力により戯曲はもちろん、劇場空間自体に新しい風を吹き込むことで、作品を生み出している。(公式サイトより)
- ※KUNIO08『椅子』ファイナル
- 公演時期:2013/3/28~31。会場:京都芸術劇場 studio21。
あの時代(3)
- 木下
- 今考えてもむちゃくちゃな時代でしたね。僕、中之島で遭難した事があったんですよ。台風の日にテント芝居を見に行ったら浸水が酷くて、役者の血と雨水が膝の高さまで来てたから観客全員「く」の字になって足を持ち上げてたら公演中止になって、その公演の舞台監督さんが「こっちだ!」ってラストシーンで使う予定だったであろうスクリーンを開けたら、そこは海だったんですよ。
- __
- ええっ。
- 木下
- 中之島無くなってるんだよ。焦って、舞台美術のベニヤをバンってはがして「これに乗ってください!」って言われて、お客さんを5人ずつ乗せて・・・これ新聞沙汰やん、そうしたむちゃくちゃな演劇を見てきているから、そういうものなのかなという思いこみはあるのかな。
- __
- 今はもう、そんな演劇をやってもすぐ事件になっちゃうんでしょうね。
- 木下
- 怒られるぐらいの事をした方が、演劇の価値は上がるんじゃないかとかは思いますね。でも、今はネットがあるからなあ。ちょっと何かがあったらみんな書いちゃって、叩くやろうなあ。
- __
- 正義感がありますからね。
- 木下
- 何なんだろうね、ああいうのはね。もっと笑った方がいいと思いますね。
未知を求めて
- __
- さらに伺いたいのですが、クリエイターとして、そうしたコンセプトにどのような創造的価値を見いだしていますか?
- 蓮行
- 僕は価値観については切り分けて考えないことにしています。例えば東洋医学では、胃腸の調子が悪いというのは全く別の身体部位の、症状とも障害とも言えないような癖が原因になっていたりする訳です。人間の抱える問題についても、彼が属する社会と切り離して考える事は出来ないんですよ。
- __
- 問題を対象に考える時、それが持つ関係性を無視してはいけない。そのようなポリシーがあるのですね。
- 蓮行
- あらゆる問題は複雑系から生まれているんです。どのようなものも切って切り離せないんです。これは僕が発見した事じゃなくて、2500年前にお釈迦様が残している言葉なので全然威張る事じゃないんだけど。
- __
- ええ。
- 蓮行
- 僕は個人的な意見や、社会的なプロパガンダとか、ゲストにかわいい女の子を呼んでエッチなシーンを描きたいだとか。それら全ての要素に、全てに創造的な価値が生まれていると願っています。どうでもいいような部分を見て価値を感じる人もいれば、プロパガンダ的な部分をみて「芸術には必要ない」という人もいるわけですよ。それでいくと、毎度毎度、いきあたりばったりに芸術的な価値を考えています。基準は、僕が客席でみて「うおお!」と思うかどうか。
- __
- はっきりとしていますね。
- 蓮行
- そう。芸術的価値と一言で言うが、公演する場所によっても千差万別なんです。「大陪審」という作品にしたって、劇場だけではなく公民館で上演する場合もあるんですが、全然作品が違うんです。結果として、どのような価値が発生するかは、まあやってみなくては分からん訳ですよ。KAIKAで作品を作るのは3回目ですが、僕らもこの劇場のポテンシャルを完全に解放している訳ではないので。その力も借り、僕の非常にこだわっている作品を上演はするが、そこにどのような価値が生まれるかはほとんど想像がついていない。
- __
- なるほど。
- 蓮行
- 反面、そうしないと、劇団が持つ個性的な「様式」が語られるようになってしまう。平田オリザさんの静かな演劇しかり、地点の日本語の解体しかり。
- __
- 特長はまっさきに語られますね。
- 蓮行
- 今の芸術シーンが様式で語られてしまうのは、しかし僕は仕方ないと思う。短い言葉で印象付けるべき説明をせざるを得ないから。でも、それは正直気にくわない。
絞り出す
- __
- 舞台美術の成功について。私が思うのは、観客が見ている芝居と、その視界に入るセットが相乗効果で鑑賞体験における想像力を増幅した時だと思うのですが。
- 奥村
- なるほど。そうですね、仰られたように俳優や演出やセットが掛け算で相乗効果を得られて、世界が立ち上がった時ですね。その為の空間構成ですので、演出家と打ち合わせを重ねていく中で、色んなアイデアをガンガン作っていきますね。ここを圧迫させたいとか、ここにこういう物が必要だとか。
- __
- つまり、舞台美術とは、イメージを作る事なんですね。
- 奥村
- はい。毎回それを絞り出しています。アイデアがないとつまらないですね。
- __
- 私は、単なる思い込みからか、演出家の要望を抑えて、効率良く、世界を表現出来る舞台セットを作る事だと思っていました。私は人に頼まれてwebサイトを作る事があるんですが、クライアントの要望に沿って効率の良いものを作るのが基本だと思っている所がありまして。もちろん、舞台美術と比べるつもりはありませんが。
- 奥村
- でも、やはり見た目が美しくないと美術ではないと思いますので。これを見せるためにはこれを切って、こういうラインにして、みたいな。そういうアイデアを各所に盛り込んで行かないと。
- __
- 美しくするために。
- 奥村
- もちろん、端的に美しくと言っている訳ではなくて・・・。僕の「美しく」って、どういう事なんだろう?
傀儡政権
- 若旦那
- ここ数年、自分の専門は何だろうと悩んでいたんです。したら、「自分が面白いと思うものを広めたい」欲が強いという事に気づいて。最近はピンク地底人※、コトリ会議、かのうとおっさん※ですね。例えばピンク地底人を応援する時。彼らがやりたいと思っている事がスムーズになるように、色々手伝いたいなと。舞台監督という肩書きですけど、それに関わらず、大阪で宣伝したいのであれば、チラシを撒く。リクエストに応じて、役割さえ決めておいてくれればそこに収まる。スキマ産業みたいですけど。
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- なるほど。
- 若旦那
- 好きな所は、時間が許す限り手伝う。というのが、僕がやりたい仕事なんだろうな思います。
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- サッカーでいう、スイーパーみたいな役割なのかもしれませんね。
- 若旦那
- そうですね。現場は時間も人材も素材も限られていて、例えば舞台監督が舞台美術を兼ねている現場だとセットにリソースが割けない事もあるんですよね。そこで、僕みたいなのを据えておくと、セットの簡素さを音照でカバーする、みたいな調整が出来るかもしれない。緩衝材という役割があるのかもしれませんね。
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- 少ない資産や時間でも、有機的に結果を生み出せるという事ですね。そして、現場での仲介役もあるんですよね。その現場が初めてで、勝手の分からない人が問い合わせする人、みたいな。
- 若旦那
- 傀儡政権ですね(笑う)。
- ___
- ええ。色々な意味で。
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