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ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」※
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- 来月公演予定の、ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」。生演奏とマイムの作品という事で、とても楽しみです。マイム公演という事は、台詞は無いんですよね。
- 黒木
- そこはいまちょっと迷っていて。言葉を使ったとしてもマイムというジャンルでいけないかな…と思っているんです。演劇から呼んでいる人もいて、その方が台詞を発している時の身体、姿にはやはり生々しさがあって。人が生きているように見えるけれども、その台詞を無くしたマイムにいかにその姿を残すのか、それとも台詞も入れてマイムとして成立させるのか。
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- さじ加減の難しいところですね。
- 黒木
- 喋ると演劇やん、ってなりかねないので。悩みながらも楽しくやっていますね。
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- どんな公演になりそうでしょうか。
- 黒木
- その、自分自身が見たいものを実現出来たらいいなと思ってます。人を見せたいというよりは、人を通してその奥に広がっている風景が見えたらいいなと思っています。その息づかいを見せたいですね。
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- マイム俳優から見えてくる風景。
- ※ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」
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目の前にある写真。私を取り囲む人びと。
目の前にある写真。弾き語りをする男。
目の前にある写真。出された美味しい食事。
目の前にある写真。の中で笑っているひとりの人。
あなたは、だれ。
私は口いっぱいに広がる人参の香りを味わいながら、目を閉じる。
まぶたの裏は、真夜中のように暗い。
波の音が聞こえてくる。
【公演日程】
6月19日(金) 19:00
20日(土) 15:00 / 19:00
21日(日) 11:00 / 15:00 / 19:00
22日(月) ★13:00 / 17:00
★6月22日(月)13:00の回は、平日マチネ割(500円引き)
[一般]前売2500円 当日3000円
[ユース(25歳以下)・学生]前売・当日共に 2000円
[高校生以下]前売・当日共に 1500円
【会場】KAIKA
【出演】岡村渉 / 菅原ゆうき(兵庫県立ピッコロ劇団) / 豊島勇士 / 仲谷萌 / 黒木夏海
今、見てほしい作品あります
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- 今年のおすすめのコンテンツを教えてください。
- きた
- 今回、3年目にして初めて運営スタッフが全員ディレクションしてるんですよ。今まではディレクションと制作チームが分かれていたりしてたんですが。だから3年目の今年は全部オススメです。
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- おお。
- きた
- 上演プログラムを説明すると私がやる「ダンス、なんや?」※はですね、そもそもダンスとは何なんだ?これがダンスなんや?みたいな、企画です。
- 竹宮
- 発音の微妙なニュアンス。
- きた
- contact Gonzoの塚原悠也と、ヨーロッパ企画の上田誠。この二人がダンスの演出をするというと「ええっ?」みたいな感じかもしれんけど。塚原さんはトヨタコレオグラフィーアワードに選出されたり、海外のダンスフェスティバルにたくさん呼ばれてるのに、本人的にはダンスを作るのは初めてらしい。今までやってたのはパフォーマンスだから。今回はダンス作品という体の動きを彼がデザインする、ダンスとしての初めての作品という事になります。
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- なるほど。
- きた
- 上田さんは、実はずっと誘いたい演出家だったんです。でも今までスケジュール的に合わないというのもあって、3年目にしてようやく。上田さんは絶対にダンスの演出が出来ると以前から思っていたんです。彼の作品の作り方を聞くと、これは絶対にダンスにも応用出来ると思っていて。というのは空間を設定して、そこに役者を載せるという作品プロセスなんですが。これはダンサーでも成立すると。しかも、コメディ。
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- おおっ。ダンスでコメディとは。
- きた
- (笑う)上田さんがダンスでコメディを作るのは、これは絶対にDance Fanfare Kyotoでしか見れないので、ぜひ。そして、今年の「ねほりはほり」は振付家がもの凄く若いんですよ。大学を卒業したばかりのニューカマーで、どっちも20代前半で佐藤有華さんと山本和馬くん。二人ともすばらしいセンスを持っている。以前、作品見た時に「あっセンスいいな」と思ってて。次来るんだろうなと思ってたら、ながらちゃんが誘ってくれてて。若くてまだ名前は知られてないけど、いま見ておくべきだと思います。
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- なるほどね。
- きた
- 美術×ダンスの方は完全なコラボレーションですよね、美術の鬣さんはペインターなんですが、何かね、ハプニングが起きるんじゃないかなと思ってる、話を聞く分には。そもそもライブペインティングにダンスは必要?そこにダンサーがいるという事は、もしかしたら筆の役割を果たすのか?60年代前後の「具体」の美術のような何かが起きるのかもしれないって。これは本当にわかんないけど超楽しみで。どれもDance Fanfare Kyotoじゃないと絶対見れないので、上演プログラムは全部見た方が良いと思います。後はね、アウトリーチプログラムとして川那辺さんがやっている企画「Listen, And... / around kyoto」※。これはね、毎回いい意味で訳分かんないと思うんですよ。
- 一同
- (笑う)
- きた
- 例えば今日の「火を囲み、はなす」。これがダンスとどう繋がっているのかと思うし、じゃあダンスって何と繋がっている訳?って疑問でもあるし。根本、ダンスって生活の身振りから出てきたものでもあるし。劇場ばかり行っていてもしょうがないと思うんですよね。劇場も大好きだけどさ。やっぱり色んな気づきを得られる場として、アーティストに来て欲しい企画だなと思ってます。自分たちがマイノリティであるという事がどういう事かに気づける場だと思っています。トカティブカフェはアーティストやお客さんが語り合う場として機能できればと。Dance Fanfare Kyotoは実験としてやってきてるから、だからこそやりっぱなしにせずに、その実験をいかにして語り合う事が出来るのかと思っているので、この企画にも是非来て頂ければと思います。
- ※PROGRAM01 きたまりディレクション ダンス、なんや?
- 関西を拠点に、演劇/パフォーマンスというそれぞれのフィールドを超えて幅広い活動を展開している、ヨーロッパ企画・上田誠contact Gonzo・塚原悠也の両者がダンスの演出を行います。どんな作品が生まれるのか?ご期待下さい!
ダンスコメディ「呼び出さないで!アフタースクール」
Hurricane Thunder / Super Conceptual Dance no.001
公演時期:5月29日(金)19:30(呼)、5月30日(土)14:00(Su)、30日(土)19:30(呼)、31日(日)12:30(Su)、31日(日)17:00(呼)。場所:元・立誠小学校 1階 講堂。 - ※PROGRAM03 和田ながらディレクション ねほりはほり
- 振付家がダンス作品を≪つくる前・つくっている最中・上演する間際≫に、インタビュアーが対話を通じて、ダンス/身体/作品について、ねほりはほり、聞き出します。さぐる、まとめる、ひろげる、ちらかす…ダンスにまつわる言葉のトライアル!
「愛してしまうたびに。」振付・構成:山本和馬
「CardinalLineⅡ-1」振付・構成:佐藤有華
公演時期:5月30日(土) 17:00 31日(日) 14:00(※2作品連続上演、30日(土)は終演後にトークセッションあり)
場所:元・立誠小学校 2階 音楽室。 - ※PROGRAM06 川那辺香乃ディレクション Listen, And... / around kyoto
- 「対話」をテーマに全3回のイベント・ワークショップを実施します。一期一会の出会いのなかで、生まれて消える言葉たち。ルールは耳をすますこと。
1)「火を囲み、はなす」 4月25日(土)19:00~ (自由解散)、 2)「作品をみながら、はなす」 5月17日(日)14:00~17:00、 3)「まちあるきで、はなす」 6月27日(土)10:00~14:00(昼食込み)
転機の数だけ
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- 15周年を迎える満月動物園。これまでで転機となった作品はありますでしょうか。
- 戒田
- 転機といえば沢山あって。作風がよく変わるし、お客さんも変わっていくんですよね。死神シリーズを始めてからもお客さん変わったし。
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- 年齢層が高めなような気はしますね。
- 戒田
- 若い人にも観に来てもらいたいですけどね。来てもらいさえすれば、なにかしら響くと思うんですけど。どうしたらいいんですかね?
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- やりたい事をやってる感じが伝わればと思います。本当に、それだけさえあれば・・・難しいとは思いますが。でも、1年を通してシリーズを完結させるというのは大事業ですよね。追求しているのがただ心強いです。
死神シリーズの正体(?)
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- 世界における満月動物園の位置付けについて、伺っても宜しいでしょうか。
- 戒田
- ちょっと前から、演劇業界を引退したって言ってて。プライベートが忙しすぎて。一時期、付き合いが全く無くなってたんです。公演はしてたのに。
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- 公演しながらプライベートが忙しいって相当忙しいですよね。
- 戒田
- だから、つい最近まで、自分が満月動物園をどう世界に位置付けて作品作りをするかにまで手が回っていなくて。・・・俳優が、役を、もっと生きるようであって欲しいと思っています。でもそれは他の演出家の下では全く違う意味合いになると思いますし。
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- ええ。
- 戒田
- 僕たちの中で、ちょっとずつでも前を向いて進んでいく事で、やりたい事はどんどん増えていくんだろうとは思っています。元々は凄く実験的な事をやってたんですよ。満月動物園と言えば「実験」だったんですよね。
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- やっぱり前衛だったんですね。
- 戒田
- 死神シリーズは、そんな実験を繰り返していた僕が、どこまで分かりやすいものを書けるか、という、自分なりの実験、挑戦でもあるんです。
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- 死神シリーズ。本当は具体的な作品の筈なのに、ものすごく抽象的な感覚があります。そして、演歌の世界に入っていく。改めて言うと、観覧車が倒れるというのもとても象徴的なモチーフと言えるでしょう。不条理さすら覚えるほどの事故と、そこから始まる怒濤の残りの人生。それは観客個人の物語を語る事でもあり、輪廻を暗示する幕切れは、白幕の向こうの世界を黙示することでもある・・・かもしれない。
飛び込める人
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- 面白いダンサーって、何だと思われますか?
- 高木
- 繰り返しになるかもしれないですけど、自分を手放せる人。もしかしたら、自分を裏切れる人。
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- パフォーマンスで、見ている人の思惑や予想や視覚に飛び込める人。
- 高木
- そうですね、飛び込むというのはしっくりしましたね。観客としても裏切られたいですね。
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- いつか、どんなダンスが出来たらいいと思われますか?
- 高木
- 観た人に、ダンスとしか呼べないと言われるようなもの。先日、ちょっと実験的な音楽のライブに行っったんですけど、分かりやすさはひとつもない時間の中で、だけども、これはどうしようもなく音楽だとしか言いようのない、すごく不思議な経験をしました。初めての音楽体験というような。
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- なるほど。
- 高木
- 私自身、決してキレイに踊れるダンサーではありません。でも、ちょっとでもそういうものに近づきたい。
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- そういう表現技法を創りたい?
- 高木
- もうちょっと感覚的なものだと思います。これはもう、愛としか呼べない、祈りとしか呼べない、それと同じように、ダンスとしか呼べない。私もいくつかそういうものに出会ってきたから。でも、分からないんですよね。感覚が伝わるかどうか分からないんですけど・・・でも多分、信じているんだと思います。
倍率とレイヤーが語りだす事はあるだろうか
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- 3月末の上演作品「肩甲骨と鎖骨」。どんな作品になりそうでしょうか?サイトに、はジョルジュ・ペレックに影響を受けた作品になるそうですが。
- 和田
- ペレックはフランスの作家です。きっかけは忘れたんですけど、「さまざまな空間」という本を読んで、それにすごく惹かれたんです。それは色んなレイヤーの空間にアプローチするっていう作品で、ページ、ベッド、寝室、アパート、通り、街区、街、国、世界と、どんどん倍率が広くなっていくかたちで記述が続いていく。
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- 面白そう。
- 和田
- それを皮切りにペレックの作品を読み進めたら、どんどん面白くなっていって。いろんな側面があるんですけど、作品を作る時の技法が興味深いというか。彼はウリポ(潜在文学工房)という実験的な文学グループにも所属していたんですが、例えば、書く時に制約を掛けたりするんですよね。「煙滅」という作品は、失踪した男についての話なんですけど、フランス語で最も使われている「e」を使わずに書かれているんですよ。しかもかなり分厚い。
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- 面白そうですね!
- 和田
- それから、ある1年に自分が食べたものをとにかくリスト化した作品や、自分の仕事机の上の物の来歴をとにかく記述した作品とか…。現実の物事をどのように描くことが可能か、そのトライアルをした人だったと思うんですよね。そこにとても共感しています。自分は演劇でそういうことをやりたいんじゃないのかなって。
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- それが「肩甲骨と鎖骨」。
- 和田
- はい、ペレックの作業を参照しながら作ろうと思っています。
難しい問題
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- shelfは、自分たちの尺度を自分たちで作るカンパニーだと私は思っています。そこで伺いたいのですが、その尺度を共有出来ない鑑賞者に、どのような近づき方をしてもらいたいですか?
- 矢野
- ああ、難しい問題ですね・・・。
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- 受け付けないお客さんもそれは当然いると思うんですよ。
- 矢野
- そういうお客さんがいたとして、周りのお客さんに悪い影響を及ぼすような、例えば明らかに邪魔をするように貧乏ゆすりを始めたりガサガサとノイズを立てたりとか、そういう場合は、僕、ひょっとして芝居を途中で止めてもいいのかも知れないな、って思っています。「すみません、お代は結構ですので、あれでしたら今日はもうお帰り頂いても・・・」って。でもそれはちょっと、なんというか、“晒す”ことになっちゃう危険を孕んでいるのかなとも思ってて、それじゃ、ちょっと駄目かなあと。
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- そうですね。
- 矢野
- ああ、そうか。むしろそこで、対話が始まるべきなのかもしれない。要望を聞いたりとか。俳優にとってはいい迷惑でしょうけど。
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- 最近、同じ状況に置かれたことがあります。まあイベント公演ではあるんですけど立派に演劇なんですよ。でも、一人お客さんが喋り初めてしまったんですよ。俳優にずっと話しかけたり芝居にツッコミを入れたり。私も含め周囲のお客さんは全員イライラしているようでした。ちなみに、俳優はノッてました。
- 矢野
- なるほど。
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- その劇団のテーゼ的には、彼のような存在を排除するのはおかしい。だから、そこでの正解はきっと、彼を排除するのではなく、その場の全ての観客が彼と同じように芝居にツッコミを入れ始めることだったんです。
- 矢野
- 実は、劇場で演劇作品が始まった後に、所謂作り手(俳優)と観客とを分けるのって、ナンセンスなことなんじゃないかな、と最近、感じています。決して欧米の文化を礼賛するワケではないんですけど、平田オリザさんが雑誌「演劇人」に演出家コンクールの講評でこんなことを書いていたことを覚えています。「日本の観客は優しい。つまらなくても必ず最後まで観て、カーテンコールには拍手してくれる。ただし、その後二度と劇場には来ない」。あるいは、これは五反田団の前田司郎さんが言ってたのかな、「例えばあるラーメン屋に行って不味かったら、『このラーメン屋はまずい』ということになる。でもちょっと具体名は忘れちゃったんで適当ですが、例えば日本でマイナーな料理として、例えばモンゴル料理とかの店にいって不味かったら、『モンゴル料理はまずい』となってしまう」。現代演劇は、日本の社会のなかできちんと、なんというか身の置き所みたいなものを獲得出来ていないから、最初に見た演劇がつまらなかったら、そういうことになってしまう。ホントは1本だけでなくいろいろ観てみて欲しいんですけどね。それが、一方のヨーロッパの観客は、つまんないと途中で本当に帰っちゃうらしい。
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- ああ、そうらしいですね。
- 矢野
- 最近、クロード・レジが死と沈黙についての作品を上演した時、途中で帰ったお客さんについて俳優にこういったことがあるそうなんです。「死を直視する事を恐れるように帰っていった。」
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- その舞台を直視出来ない観客と、どう向き合うべきなのか? が問題です。
- 矢野
- もちろん、排除するのは違う。観客も、演者も含めて全員での対話が始まるのがいちばん良い気がします。それでみんなが納得出来て、必要であればそこから上演を再開するのがいちばん幸せなんだと思います。
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- そうですね。それは理想ですね。
- 矢野
- 自分とは違う価値観(を持った人)の存在を肯定するのが、きっと演劇のスタート地点なんだと思います。感じ方も考え方も違う人々が、それを前提にして、一緒に社会を営んでいくための具体的な仮説を立て、実践し、結果を検証し、という実験を行うのが、劇場という場所の本質なんじゃないか。最悪のケースとして、対話が長引いて上演が再開出来ず、そのまま公演が終わってしまってもそれはそれでいいのかも知れない。
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- 連帯感というのかな、そういう状態に劇場が統一するのかな。社会のミニチュア。
- 矢野
- ミニチュアというか、個人と社会の関わり方についての実験をする、その可能性を探る場所なのかも知れません。ヨーロッパが生み出した資本主義や民主主義を、現状、我々はそれがいちばん優れたものとして受け入れている。けれど、世界を経巡ってみれば他にもっと良い選択肢があるのかも知れない。未来に賭けてみれば、他の選択肢がきっとあるんじゃないだろうか。僕は、僕らの作っている演劇って、そういうものなのだと考えています。
ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」※
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- 次回のドキドキぼーいず公演「だらしない獣」。昔話を題材にした作品らしいですね。ヰトウさんは今回は出演されていないそうですが、どんな魅力があると思いますか?
- ヰトウ
- 台本を読んだ時に思ったんですが、新しいジャンルに足を踏み入れたんだなあと。いつもはもっと、うぉーって感じなんですが。新しい事なので探り探りだと思います。
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- 確かに、ドキドキぼーいずとしてはかなり珍しいテイストですよね。
- ヰトウ
- 再旗揚げしてからは目まぐるしくスタイルが変わっている感じですね。去年11月の「浮いちゃった☆」も実験公演みたいな演出で、ダンサーと役者、ダンスと演劇を混ぜた作品でした。
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- なるほど。
- ヰトウ
- 端から見たら迷走しているように見えるかもしれないですけど、本当は軸があるからブレてはいないんです。ありがたい事に、周りの方からも評価頂いていて。今後どんな感じに変わっていくか分かりませんけど、軸は失わずにやっていきたいです。
- ※ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」
- 公演時期:2014/2/15。会場:京都府立文化芸術会館。
「ウチら、もう失敗できへんね」
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 西分
- 6月にHEPホール、夏には東京に行きます。「ウチら、もう失敗できへんね」という話をしていて。「偽フェスティバル」※みたいなコント公演をウチらの趣味で打つ事もあるんですけど、本公演をやる上で失敗出来ないところにきたぞ、と。絶対に面白いものしか作っちゃダメだし、多分、これから面白いものをどんどん積み上げて、たくさんのお客さんに見てもらう段階に来たんですね。もう、好きな事を実験する時期は過ぎて、試すにしても、絶対に面白いものでなくてはならないという。そこは絶対に守った上で、でも収まりたくはないですね。他の団体さんがやってないような変な事もやりたいです。今回の「Lumiere Dungeon」で、客席で遊びまくったような事を、もっとこれからも続けて。他では見れない事を続けていきたいですね。
小箱
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 戸谷
- マジですか。開けてもいいですか?
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- もちろんです。
- 戸谷
- (開ける)あ、かわいい。こんな小道具を使う芝居を作ってみたいですね。
劇団 壱劇屋 第21回公演「6人の悩める観客」※※
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- そして、壱劇屋「6人の悩める観客」ですね。
- 丹下
- はい。
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- これ、丹下さん。
- 丹下
- はい。ぶっさいくな顔をしております。肌色のチラシなんですけど。
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- いえいえ。横の丸山さんが気になりますね。
- 丹下
- そうですね、凄い顔してますね。一応、悩んでいる顔を指定されたんですが、どう見ても私だけ怒ってるんですよね。
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- うーん?怒ってますね。
- 丹下
- そうなんじゃないかと言ってみたんですが、もうチラシ刷っちゃったので・・・。この作品、初演がものすごく面白かったんです。壱劇屋は作風が毎回違って、非日常を描く作品もあればファンタジーの時もある。私はどちらかというと奇妙な非日常を扱った壱劇屋が好きで、「6人の悩める観客」はそれだったんですよ。西分ちゃんとかに「再演するなら私出たい」とずっと言ってたんです。そしたら今回呼んでもらえて。
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- おめでとうございます。
- 丹下
- ありがとうございます。
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- 壱劇屋。私もこれまで3回拝見したんですが、面白いですよね。チャンバラ時代劇の「タケミツナリタ」が本当にバカバカしくて、ずっと楽しんでみていられました。センスがいいんですよ、なんか。飽きずに見れましたね。
- 丹下
- 私も何回か拝見はしましたが、これが一番好きな作品です。今回どうなるかは分かりませんが、頑張ります。
- ※壱劇屋
- 2005年、磯島高校の演劇部全国出場メンバーで結成。2008年より大阪と京都の狭間、枚方を拠点に本格的な活動を開始。主な稽古場は淀川河川敷公園で、気候や時間帯をとわず練習する。マイムパフォーマンスを芝居に混ぜ込み、個性的な役者陣による笑いを誘う演技にド派手な照明と大音量の音響と合わせ、独自のパフォーマンス型の演劇を行う。イベントではパントマイムやコントをしたり、FMラジオにてラジオドラマ番組を製作するなど、幅広く活動している。(公式サイトより)
- ※劇団 壱劇屋 第21回公演
- 公演時期:2013/10/11~14(大阪)、2013/10/25~27(京都)。会場:芸術創造館(大阪)、京都市東山青少年活動センター(京都)。
村川拓也「羅生門」※を終えて
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします!最近、舞台でよく見る大石さんにお話を伺います。大石さんは、最近はどんな感じでしょうか?
- 大石
- よろしくお願いします。最近は、『羅生門』が終わって、バイトをしたり、映画を観たりと、のんびりとした時間を過ごしています。
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- 村川拓也さんの『羅生門』ですね。振り返ってみると、大石さんの良さが非常によく出た作品だったと、私は思っています。ご自身にとっては、どんな経験になりましたか?
- 大石
- 自信を持つことが出来た公演でした。自分のことを役者と名乗ることに対しての抵抗が、少しだけ減りました。
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- なるほど。公演の内容的に、結構特殊な役どころでしたね。大石さんが言葉の通じないドイツ人の女性に、身振り手振りで羅生門を説明するという作品でしたね。でもそれが、どこか重なるかのような。伝わったというか、重なったんじゃないかなと。どのような稽古場だったのでしょうか?
- 大石
- 他の稽古場のとき以上に、演出家(村川拓也さん)と対話をする時間が多い稽古場でした。自分の考えを言葉にして伝えなればならない状況が、他の稽古場よりも多かったように思います。
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- 言葉にするというのは、セリフの言い方を整理する為に、考え方を精査するという作業でしょうか?
- 大石
- うーん、というよりも、舞台でする行為を僕自身が自覚して行えているかに、向き合う作業だったように思います。うん、何だか的は外していないのですが、伝えたいことと微妙に違うような気もします。一言では表せない作業でした。
- ※AAFリージョナル・シアター2013~京都と愛知 vol.3~ 参加作品 村川拓也「羅生門」
- 公演時期:2013/6/13~16(愛知)、2013/6/21~23(京都)。会場:愛知県芸術劇場小ホール、京都芸術センター。
美学
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、為房さんはどんな感じでしょうか。
- 為房
- 最近はですね、5月に劇団ZTONの本公演「天狼ノ星」※、6月に客演した笑撃武踊団さんが終わりまして。それからはしばらく稽古がひと段落していたんですが、ちょっと仕事でまた東京に行くのでその準備に追われています。
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- というと。
- 為房
- 戦国BASARAのイベントなんですけど、その準備ですね。
- __
- 実は、戦国BASARAに為房さんがでている事は知っていました。拝見はしていませんが・・・
- 為房
- あ、そうなんですか。これで4本目くらいになるんです。僕は役についている訳じゃなくてアクションチーム、つまり斬られ役なんですけど。普通は、斬られ役って本来は目立たないみたいな事を思われてるんですが、結構随所随所で悪ふざけする人も多くて。
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- 素晴らしい。
- 為房
- 影響の無いところで勝手に階段落ちしてたりとか。自分達の出番が無いところはただ待ってるだけなので、勝手に斬ったり斬られたりしてますね。普通はNGと言われるんですけど、結構・・・。
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- そういうのはお客さんも楽しいですよね。
- 為房
- そうですね、リピーターのお客さんが多いので、「あ、あそこであんな事やってる!」って見つけて貰えたりして。
- ※劇団ZTON
- 2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(公式サイトより)
- ※劇団ZTON「天狼ノ星」
- 公演時期:2013/5/9~12。会場:京都府立文化芸術会館 。
一人芝居の脚本執筆中!!
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い致します。片岡さんは最近、どんな感じでしょうか?
- 片岡
- 最近はおかげ様で忙しくさせて頂いていますね。いまはウチの劇団員の真壁愛がindependentの一人芝居フェス※に出るんですが、今その台本を書いています。
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- どのような作品になるのでしょうか。
- 片岡
- 前回は恋愛の話だったし、今回はせっかくの一人芝居なので、少し変わった事をやってもらいたいなと思って。女性役ではないものを書こうとしています。
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- 人間以外ですか?
- 片岡
- 人間ではあります。やっぱり、振り幅の多い役をやった方が貴重な経験になるなと思っていまして。僕も他の所に出させて頂いて、そういう恩恵も感じているんです。ウチの劇団員には色んな役をやらせて、引き出しを広げてもらえたらと。
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- 作品が上演されるのは一人芝居トライアル二次審査、ですね。
- 片岡
- 審査会という事で、14組中6組なのでどうしても周りを意識してしまうんですけどね。でも見せるのはお客さんだし、一人芝居やねんからその関係性を崩さないようにしてほしいですね。そうした意識を内に秘めて望んで欲しいです。
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- そういう意味では、落語に似ていますよね。
- 片岡
- そうですね。一人芝居の作り方って、一人で喋っててもおかしくないシチュエーションを設けるか・独り言をただただ吐露させる説得力を成立させるために人物設定を練り上げるか、なんじゃないかと。脚本家としての腕の見せ所ですね。裁判での証言とか、留守電に言葉を吹き込み続けるとか。僕が一人芝居フェスに出た時は浮遊許可証の坂本見花さんに脚本をお願いしたんですが、坂本さん「これ、終わっても拍手一つも貰えないかもしれませんよ」って。最高じゃないですかそれ、って。
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- 脚本と役者の掛け合いの究極が一人芝居なのかもしれませんね。どんなものになるのか、楽しみです。
- ※ミジンコターボ
- 大阪芸術大学文芸学科卒業の竜崎だいちの書き下ろしたオリジナル戯曲作を、関西で数多くの外部出演をこなす片岡百萬両が演出するというスタイルで、現在もマイペースに活動中の集団、それがミジンコターボです。最終目標は月面公演。(公式サイトより)
- ※INDEPENDENT:13 トライアル
- 審査:2013/7/9~10。会場:in→dependent theatre 1st。
テント公演と、女三人
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- 筒井さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 筒井
- 「たんじょうかい」のような地に足着いた演劇作品を作りつつ、僕が発見できた「ズレ」から広がった、従来にはない方法から模索していこうと思います。具体的な公演予定としては、秋にテント公演するんです。
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- テント公演!?
- 筒井
- 10人ぐらいが入れるテントで、いろんなところに持っていきたいなと思っています。
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- 面白そうですね!なぜテント・・・。
- 筒井
- ある条件下で作ってしまいがちな今の状況から抜け出したかったというのもありますし、実は昔から冗談で言ってたんですよ、テントでやりたいというのは。発想が劇場などのすでにある上演施設に収まりたくないという思いもあって。
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- 6月にはそよ風ペダル※の公演もありますね。
- 筒井
- 高槻市のシニアの皆さんですね。劇場での公演ではありますが、素人ゆえに劇場に収まらない方々なんですよ。お互いに「客席に顔を向けていかな」とかって声を掛けあってくれるんです。シニアの方々だからこそ出来る、生の声に聞こえるようなセリフの言い方がどういうふうに受け止められるかですね。その辺りが楽しみです。
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- 「女3人集まるとこういうことになる」※は。
- 筒井
- 今稽古途中なんですけど、演劇をやっていてダンサブルになりすぎる瞬間と、ダンサーが演技になりすぎる瞬間の、本来ならダメ出しされてしまう、ダメな部分を集めるとこうなる、という事をちまちまと作っています。
- ※高槻シニア劇団 そよ風ペダル 第1回本公演『モロモロウロウロ』
- 公演時期:2013/6/22・23。会場:高槻現代劇場 レセプションルーム。
- ※DANCE FANFARE KYOTO参加『女3人集まるとこういうことになる』
- 公演時期:2013/7/6~7。会場:元・立誠小学校 職員室。
好き放題
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。筒井さんは最近、いかがでしょうか?
- 筒井
- おかげさまで、忙しくさせてもらっています。まあ順風万帆でもないという感じかな。
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- 私は逆境に立たされているというのが結構好きなんですけど、筒井さんはいかがですか。
- 筒井
- そうですね、そもそも演劇を選んでいる時点で、この現代社会においては逆境なんですけれども、もっと具体的には、なかなか自分がやりたいことを認めてもらえなかったり、賞をもらってから数年経って、昔ほどやりたい放題ではなくなっていたりして。それは僕のせいでもあるんですけど。
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- 好き放題出来なくなっている?
- 筒井
- 昔はお金の事なんか全く気にしないで作品を作っていたんです。すごい借金して公演を打ってたりしてました。それだけじゃ難しくなると思って方向転換をしていきました。やりきった感と共に辞めるのならともかく、お金の融通が効かなくなって、どうしようもなくなって辞めるのは避けたいです。
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- なるほど。
- 筒井
- ただ、やれる範囲でものを作るという事が習慣化されていくという弊害にも直面していて。発想力が上演空間に収まっていて、それを破るようなキテレツなアイデアが生まれにくくあるんじゃないかというのが、自分が生んでいる逆境といえるのかも。悩んでいるという訳じゃないんだけど。いまは活動の継続性を確保しつつ、発想力が劇場に収まらないようにするやり方を模索しています。
- ※dracom
- 1992年、dracomの前身となる劇団ドラマティック・カンパニーが、大阪芸術大学の学生を中心に旗揚げ。基本的には年に1回の本公演(=「祭典」)と、同集団内の別ユニットによる小公演を不定期に行う。年に一回行われる本公演では、テキスト・演技・照明・音響・美術など、舞台芸術が持っているさまざまな要素をバランスよく融合させて、濃密な空間を表出する。多くの観客に「実験的」と言われているが、我々としては我々が生きている世界の中にすでに存在し、浮遊する可能性を見落とさずに拾い上げるという作業を続けているだけである。世界中のあらゆる民族がお祭りの中で行う伝統的なパフォーマンスは、日常の衣食住の営みへの感謝や治療としてのお清め、さらには彼らの死生観を表現していることが多い。我々の表現は後に伝統として残すことは考えていないが、現在の我々がおかれている世界観をあらゆる角度からとらえ、それをユーモラスに表現しているという意味で、これを「祭典」と銘打っている。(公式サイトより)
「IN HER TWENTIES 2013」※
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、榊さんはどんな感じでしょうか。
- 榊
- TOKYO PLAYERS COLLECTION※の本番中ですね!「IN HER TWENTIES 2013」です。
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- チラシ、可愛いですよね。
- 榊
- ありがとうございます。これ、2年前の作品の再演なんですよ。関西の皆様に観てもらえるのが嬉しいです。
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- 今日、拝見します。楽しみです。どんな作品なのでしょうか。
- 榊
- 二十代の女優10人で、一人の女の子の20歳から29歳までの10年間を描くんです。女性としては共感するところもあるんですけど、脚本を書いているのが男性の上野さんなんですよね。なんか、キレイだなと思ってしまうところはあるんです。
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- なるほど。
- 榊
- でも、20代に起こった色々な事に共感します。男性の方にも、意外と共感は呼ぶみたいで。
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- 一人の女性を10人で演じる。10人一役という事でしょうか。
- 榊
- そうなんです。しかも全員違う女優なので、本当に全部ばらばらのキャラクターなんですよ。
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- 全然違うんですか?凄いですね。
- 榊
- 私、初演の時は20歳をやらせてもらって。今年は22歳役なんですよ。
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- あ、引き継いでいくんですね。そういう部分の変化があると。演じていて楽しそうですね。
- ※IN HER TWENTIES 2013
- 公演時期:2013/1/31~3(大阪)、2013/2/7~11(東京)。会場:大阪市芸術創造館(大阪)、王子小劇場(東京)。
- ※TOKYO PLAYERS COLLECTION
- 劇団競泳水着主宰、上野友之の個人ユニット。略して「トープレ」。その都度、お気に入りのPLAYER達に声をかけては、好きな時に各地に出没します。2011年6月に上演された「IN HER TWENTIES」では、「一人の20代女性が過ごす20歳から29歳までの十年間を、20代の女優十人で描き出す」というテーマの元、ワークショップ形式から作品を立ち上げ、話題を呼ぶ。 (公式サイトより)
素敵と逆の方向性
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- FUKAIPRODUCE羽衣の作品について。私は実は「15 minutes made」で拝見しているんです。「浴槽船」という作品でした。それは15分間、お風呂の素晴らしさを歌と踊りで表現するという作品でしたね。ショックでした。これは私がこれまで見てきた舞台作品と一線を画しているなと思ったんです。
- 糸井
- はい。
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- こんな事を言うのはきっと、インタビュアーとしては失格だと思うんですが・・・それを拝見した時、私の中に強烈な拒否反応が起こったんですよ。文脈や構造を読み下すのが通じないというか、そういうのじゃないんですよね、きっと。
- 糸井
- はい。
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- だから、受け入れられなかったんです。今考えると、作品とは構成されているものだという前提で私は生きていたのが、(私にとっては)そうではないものを目にして、驚いたんです、きっと。しかし反面、憧れを抱いた筈なんです。
- 糸井
- 凄く分かります。僕の性格や性質もあると思うんです。前置きとか説明とかはナシで一気に音楽と歌で歌いあげていくからですね。
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- きっと、羽衣の価値は男の子的な「面白さ」ではないんだと思うんです。展開そのものが持つ面白さではないんです、きっと。俳優が出てきた瞬間から、彼らが変質するわけではけしてない。むしろその存在のまま高まっていく。そこにあるのは観客を啓発する展開や物語ではない。
- 糸井
- 言ってみれば単純になってしまうんですが、その人の存在感というか。羽衣の場合は役作りとかそういうのは一切ないんですね。「何か素敵じゃないのは、あなたが素敵じゃないからだ」という事になるんです。色んなパターンはあるんですけど、俳優さんの個性が発揮されない作品もあるんです。そうした作品は個人的には好きな作品だったんですが、集客も芳しくなく。
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- なるほど。
- 糸井
- 作品の作り方には毎回悩んでいます。僕の世界を全面に押し出す作品もあれば、単純に俳優さん達が楽しそうに舞台で演じている作品もあり。それが客足にも響くので・・・。「耳のトンネル」は配役があり、評判も良くて、それでこりっちの賞も頂いたり。手応えはもちろん感じたんですが、それよりも、創作のやり方についてもっと考えないとな、と思ったんです。
sunday play #5「グルリル」
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- この公演「グルリル」について。偶然の一致が大きなキーワードなんですね。実は私もしています。ウォーリーさんもしているし、今日ここでも起こりましたね。
- 木下
- そうですね。起こるんですよね。物語の力ってすごいと思います。その偶然の一致について、ゲルハルト・リヒターの展覧会に着想を得たところがあるんです。すごく面白くて、初期の頃は写真の上に絵具を載せたりという技法があって(時代によって色んな描法を編み出している画家さんなんですけどね)、絵具の厚みが生まれるんです。失敗しても塗り重ねられる。そういうものって演劇では無いな。本番で演技が上からどんどん塗り重ねられる作品って作れないかなと思ったのがグルリルの最初です。
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- 物語のテーマは。
- 木下
- めっちゃダサいですけど、言えば、歴史とは何かとか、人間を人間たらしめているものは何か、です。スロベニアに行った時に民族博物館にいったんです。これまでの歴史が展示されているんです。バルト三国だったり社会主義国だったりの歴史があって、ロシアとの歴史があって、民主化して、EUに加盟して、が、現代の紹介コーナーをゴール地点にしてずっと並んでいる。でも、今いるコーナーは全然ゴールじゃなくて、この先から本番なんですよ。もしかしたらもう一度社会主義になるかもしれない。僕は、人間は進化してよりベターな方向へ向かっていると思っちゃってたんですね。
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- 進歩史観ですね。
- 木下
- 途中の状態に常にあるのが歴史で、「今は途中やぞ」という状態をはっきり受け入れないと、次の時代を考えられないと思ったんです。
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- 今は途中である事を受け入れる。
- 木下
- それが、演技を塗り重ねていくという演出と、どこかクロスしていると思っています。色んな時代の色んなシーンを、同時多発的にやってもらって、そこでいくつかのセリフが関連する時に生まれる面白さを発見する、という感じです。ただ、現時点ではまだどうなるかは分かりません。
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- まさに、いま仕組みを作っている最中という事ですね。手応えは。
- 木下
- それもまだ分かりません。お客さんが演出を見ようとすると物語が観れない、物語を見ようとすると演出が邪魔になるという状態なので、かなりコントロール出来るようなセリフや動きを作らないと完成しないので。中々ハードルは高いなと。そういう意味で手応えがあります。
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- 面白さの為にある、実験的な、前衛的な演出。それが許される場所だと私は考えていますので、とても期待しています。では、いま、この時代のここ日本でそのテーマを扱う事には、どのような意味があるのでしょうか。
- 木下
- その意味では、あまり意識しないようにしています。この作品は上演時間中ずっと雪が降っていて、何十センチも積もるといいんですけど。それが原発事故とか、現代の色んな問題に結びつけて受け止める事はしやすいんですけどね。でも、それは僕の役目じゃないんじゃないかと。僕は正直、明確な問題意識は強くなくて(それはコンプレックスでもあるんです。そもそも仕事も嫌いだし南の島で生きているのが一番向いていると思うんです)。「いまこういう問題が起こっていて本当はこういう事だからこうしなければならないんだ」というのが無くて。でも、今このテーマを選んだのは色々な配剤があったんです。だからこそ、製作を進めていく上で偶然が繋がっていくという感触を感じています。今現在のここ日本でも、色々なお客さんに見ていただきたいですね。
もうスーパー素敵
- 吉川
- 東京に引っ越しして、今で半年ぐらいです。東京の面白いお芝居にいっぱい出会いました。あ、でも私、京都のお芝居が好きやなっていうのも凄く思いました。
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- というと。
- 吉川
- 何かね、立て続けに、東京公演してる京都のお芝居をとととーって続けて観た時があったんです。それが全部面白かったからあっさりそう思いました。好みなんだ!って。それでその後、5月のGWにヨーロッパ企画※さん、6月の悪い芝居って続けて京都にいるから特に熱が今。ふふ、ヨーロッパ企画さんのハイタウン2012も凄いフェスでした。最高おもしろ先輩の集団なんやなぁって恐かったです。面白すぎて。あと、自分が出演させてもらったコメディ実験室っていうプログラムの、全部のタイトルが「●●コメディ」って付けてあって格好良かったな。武士みたいで。
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- 私、吉川さんの出ている芝居のプログラムだけ見逃したんですよ。他のプログラムを拝見しましたが、面白かったですよね。東京ではどんな芝居をご覧になりましたか?
- 吉川
- 特別印象に残ってるのは、井上ひさしさん作・長塚圭史さん演出の「11ぴきのネコ」。もうスーパー素敵だった!興奮しすぎて、何か、もう、放心でした。
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- 興奮しましたか。
- 吉川
- しましたー。こんな事が出来るようになりたいって、目標が出来た。
- ※ヨーロッパ企画
- 98年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。00年、独立。「劇団」の枠にとらわれない活動方針で、京都を拠点に全国でフットワーク軽く活動中。(公式サイトより)
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