葉桜のゆくえ

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という事は、鳴海さんは「葉桜」自体にはそんなに思い入れはない。
鳴海 
そうなんですが、実は岸田國士に対しては少し苦い思い出があって。昔『驟雨』をナチュラリズムで演出したんですけど、納得いかなかったんです。でも今回のプロジェクトが動き出して、これはと思って。
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ある意味、リベンジ?
鳴海 
そうなんですよ。岸田作品と和解したいです(笑う)先日読み合わせをした時に手応えがあって、この作品、良い形に作れるという実感があります。
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母子二人の話ですね。
鳴海 
お芝居としては45分ぐらいのものになります。ええ、短いんですよ。
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二人芝居を全国で持っていく。三重発信のポータブルな作品は珍しいというか、あまり記憶にないので楽しみです。どんな作品が見れるのか。
油田 
2007年に、三重県文化会館で平田オリザさんが「となりにいても一人」という作品の公演企画が作られたんです。2バージョンのキャストを公募で集めて。全国でそういう企画一斉に行う、という試みだったそうなんです。地方って、割と大きいスケールの公演の企画が通りやすいんですよ。沢山の人数が公募で出て、でも続かない。という。でも「となりにいても一人」はそうではなくて、割と絞り込んだクオリティの高い作品も作れるんだという事が分かったんですよ。平田オリザさんがそれを証明したというのはあります。
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なるほど。
油田 
それからこのしたやみさんと仕事をして、鳴海さんとも出会って。地方から外に向けて、作りこんだ作品を持っていく事に、じりじりと迫っていった感じですね。あとは、実はあんまり大都会に出そうとは思っていないですね。去年は広島・金沢だったし、「人間そっくり」は松山・長崎・宮崎と、関西以西にしか行ってなかったり。演劇シーン的に、東京・大阪は意識していなくて、地域にいる演劇人同士でやっていきましょうというのも、お互い、面白いものが出来るんじゃないかと。逆に、向こうの地域の方が来てくださったりもするし。
__ 
都市部で作られてはいないという事は、集中して作られた作品と言えるのかもしれませんね。付随した情報が多すぎないという意味で。そのクオリティを目の当たりに出来ればと思います。
油田 
鳴海さんがこうやって三重に来ていただいたのもあるし、それは大きいですよね。これからいよいよ、パッケージの大きい作品も作れるかもしれない。4、5年ぐらいすれば三重からも本格的な作品が生まれ続ける土壌が整ってくるかもしれない。この「葉桜」が少人数の作品のモデルになって、段々と大きくなっていって。
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若手に対する良い例になればいいですね。
油田 
本当にそうですね。

タグ: 演劇人同士の繋がり 平田オリザ いつかリベンジしたい


新しい絶望

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今回の「あくまのとなり。」見所を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
葛原 
個人的には、ハタチの坂本アンディの作品なんじゃないかなと思います。今しか書けない葛藤が書かれている戯曲。今までの作品は、坂本さんの感性で書かれた、自己紹介的な作品だと思うんですよ。今回は彼の深層が書かれている。
__ 
坂本さんが本心を打ち明けている?
葛原 
そうですね。いつもはキチガイ役がいっぱい出てくるじゃないですか。そのキチガイって、基本的には超人的なキチガイなんですよ。前回僕がやらせてもらった役は超然としていて、僕自身、弱くて不安定な人間なので演じるのが難しかったんです。でも、今回はある種の純粋さからくる弱さが全員描かれているので。細井美保さんですら、弱い部分があるんですよ。
__ 
あ、そうなんですか。それは驚きました。
葛原 
細井さんは、今回大分演技の質が違うんです。そこは個人的にはとても楽しみです。
__ 
坂本さん、なぜ今回はそんな書き方になったんでしょうね。
葛原 
もしかしたら、前回公演の「おしゃれな炎上」が、第二回公演の「啓蒙の果て、船降りる」とプロットが似ていたんです。台本を読んだ時、これはリベンジなのかなと思ったんです。
__ 
というと?
葛原 
多分なんですけど、第二回公演の「啓蒙の果て、船降りる」から、前回公演の「おしゃれな炎上」の一連の流れで、アンディはずっと一つのテーマにリベンジし続けて来たんじゃないかと思っています。そしてそのリベンジは、前回でようやく終わったんじゃないかと思います。
__ 
「オシャレな炎上」では、つまり世界が終わった後に何が待ち受けているのかを見たかったんですね。そこを経ての、前回までの公演を準備としての「あくまのとなり。」は、個人の絶望に迫ろうとしている。
がっかりアバター「おしゃれな炎上」
公演時期:2013/12/27~12/29。会場:ウイングフィールド。

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てんこもり堂第五回本公演「真、夏の夜の夢」

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てんこもり堂第五回本公演「真、夏の夜の夢」。まず、素敵なチラシですね。
藤本 
ありがとうございます。デザイナーの方にかなり注文を押しつけてしまって。僕の中に、今回はこうしたいというコンセプトがあったので、折れてもらったという形になりました。ストイックでキレイなチラシには憧れるんですが、自分のキャラクターとは合ってないなと。
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タイトルの「真、」の部分。真夏である事が強調されながらも別の意味が込められているように思うのですが。
藤本 
「ま、なつのよのゆめ」と読んで貰いたいと思っています。実はこの作品、6月の夏至の日がベースのお話で、5月の祭も話題に出てくるんです。日本で真夏と言えば8月だし、昨今は「夏の夜の夢」というタイトルで上演される事が多いみたいです。ウチはそこをあえて「真夏」にして、「、」を入れてみたら、何か普通にはやりませんよみたいな。「真」って何やろうと思ってくれるのかなと思ってもらえるんじゃないかと。
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原作を選んだ経緯を伺っても宜しいでしょうか。
藤本 
3年前にぶんげいマスターピースのシェイクスピア部門に、てんこもり堂も参加させてもらったんです。地元の劇団だからという配慮もあったのかもしれません。1時間程度の作品で、力いっぱいやらせてもらったんですが、審査員の方にきつい事を言って頂いたんですね。それが、僕の中の闘争心に火を付けたんですね。いつかシェイクスピア作品で返したいと思ったんです。それが、もう一度シェイクスピア作品を考えようというキッカケになったんです。
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どのような魅力を今は感じられているのでしょうか。
藤本 
400年前に書かれた作品で、けれど色々と個性溢れる人が出てくるんですよ。彼らの個性って、現在でも色褪せる事がないし、何だかそういう人がいていいんだと思えてくるんですよね。
てんこもり堂第五回本公演「真、夏の夜の夢」
公演時期:2013/7/5~7。会場:アトリエ劇研。

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根本
まちょっと、最近時間があって。長い意味でどうしていこうかなあみたいなのを考えていたというか。
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うん。
根本
去年の公演「猿とおどる」を中止にしてしまって。
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うん。
根本
体と心が付いていかなくなって頓挫してしまったから、もう一度自分の生活を見直していかないと思って。
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うん。
根本
色々な事を自分の中でもちょっと整理しないとと思っていたから。今日はそういう話になるのかな。
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そうですね、「猿とおどる」については聞きたいと思っていました。その、具体的に問題もあったと思うんですが、作品の作り手として不十分な点を自覚したって事なのかなと。
根本
そうだね。まずはもう本当に、技術的な部分。あとは時間の少ない中でやってしまったからそれを乗り切る体力の部分が無くなってしまったというのと。でも振り返ってみると、技術的には相当、高度なというか高望みをしようとしていた部分があって。単純に今後回復して「猿とおどる」リベンジをしようとしてもちょっとすぐには出来ないんじゃないかなと今は思っているんだよ。あの時にやりたいと思ってたのは、去年の「茶色い絵本」をやった時から、何となくベビー・ピー的なものというか、自分の作りたい芝居の大きな形みたいな物が見えてきた気がして。
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うん。
根本
大体、いくつかのストーリーの軸があって、それらの絡み合いを見せていくというような。「猿とおどる」ではそれを、3人という最小限の人数でやりたいなと。MEW'S CAFEというお店でやる予定で、なるべくお店の形を崩さずに、あまり仕込まずにやる予定でした。
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そういうのでかなり難しいと思うのは、やはり照明とか、セットとかを作ったりすると入りづらさが生まれてしまうと思うんだけど、そういうのを外してやりたかったと。
根本
そうそう。
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さりげない。
根本
うん。・・・さりげないってのは絶対ないんだけどね(笑う)。色んな形でやらないといけないなと思っている。普通の劇場の形式でもやっていきたいなと思うんだけど。でもそうじゃなくて、例えば知恩寺とかの手づくり市とか。あそこは京大の能学部の人達が勝手に踊ってたりしてて、それを観てる人もいればその横で古本を探してたり品物をみてたりしてる人もいて、ああいうざっくばらんな状況が凄く好きで、喫茶店は、劇場と手作り市の丁度中間ぐらいかなと思ってて。
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中間。
根本
音楽をやっている人がストリートライブをやってたりするけど、そういう形式への足がかりになったらと思っていた、というのが一つ。
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うん。
根本
あとは、話の構造。基本的に手法・人物造形的にも軸が2本から3本あり、それが一つに集約していく、というような。
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こないだの「みんなボブ」は。
根本
あれは一人20役ぐらい(笑う)。
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うん。あれも軸が大体同じような世界の中で、5本位の話が並列的に語られていくわけだけれども。
根本
あれは役者5人で、二人がハケて、次に別の二人が出てきたら別のシーンになるけど、「猿と踊る」の3人という人数はそうもいかない。でも、落語とか漫才とかって、最初の枕で観客と対話して、だんだん劇世界に入っていくじゃん。それってやっぱり多重構造といえば多重構造で、そういう様式だからかも知れないけど、分かり易いし、違和感なく見れる。照明を焚いたり、走ったりするマイムなどの大仰な事をしなくても、あれだけ一人で分かり易く出来るのに。
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うん。
根本
大人数でそうしたらより分かり易くなるのに、何故そうできないかというと、基本を踏まえずにいきなりハイレベルな所に行こうとしているからじゃないかと。そういう、古典芸能と、今まで自分が芝居でやってきた、ストーリーの重層性みたいなのを寄せていこうかと思っていた。
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思っていた。
根本
しかし。結構、難しかったんかな。「茶色い絵本」時みたいにあまり話をまとめずにいければと思ったんだけど、その力も演劇人としての体力も足りなくて、ちょっとふがいないなと思ったんだけど、ここで無理をしても空回りするだけだなと思って。今回は公演を中止にするという判断をしました。
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うん。
根本
自分の作りたい芝居の形も見えてきているし、これからも芝居を続けていきたいと思っているから、焦らんと気持ちを切り替えて、別のところからアプローチしていこうかなと思ってます。
ベビー・ピー
根本コースケ氏などによる演劇ユニット。ナンセンスコメディ、熱いジョジョ劇、お祭り芝居など、想像力を強く掻き立てられる作品群。
ベビー・ピー「猿とおどる」
公演中止となった。予定されていた公演時期:2006年12月28~29日。予定会場:Mew's Cafe。
ベビー・ピーのコント#1「茶色い絵本」
公演時期:2005年12月。会場:京都大学文学部学生控室。
ベビー・ピー#6「みんなボブ」
公演時期:2006年8月18日・20日。京都会場:shin-bi、大阪会場:BlackChamber(文化祭 =Culture Carnival= 参加作品)。

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