俳優をめっちゃ見てほしい

和田 
それから、ペレックは記憶にこだわりがある人なんですよね。彼はユダヤ系の人で、彼が幼い頃に両親は戦争で亡くなっていて、両親にまつわる記憶がほとんどない。そのコンプレックスというか、傷が、ペレックが記憶にこだわる発端です。彼の作業を参照するというのは、記憶そのものについて考えるという事でもあります。
__ 
なるほど。ところで、puntoという、ある種制約のある環境において、どのような作品になる予感がありますか?
和田 
そうですね、まだ、構成台本ですら最後までできていないような状況ではあるんですけど・・・ただ、思い出を愛でるようなことにはしたくなくて、目の前に俳優がいる現在と、記憶することと、思い出すことを往復したいなと思っているんです。
__ 
その往復を観客がどのように受け取るか、ですよね。そういう装置を自覚的に見ていて、往復し続ける体験によって生まれる快感がもしかしたらあるのかもしれない。・・・どうだろう、それはお客さんに事前に断ったらいいんじゃないか?
和田 
バランスの問題ですよね。さっきの話ではないですけど、「こう見てほしい」と伝えたからってそう見てくれるとは限らない。でも、観る体験を損ねないようなヒントとしてであれば、当日パンフレットなどに、そういった文言を載せてもよいかもしれません。
__ 
役割としての観客に何を期待しますか?
和田 
俳優をめっちゃ見てほしいですね。そこで、変な言い方ですけど、目の前に人がいるってことに興奮できたらいい。それから、お客さんが自分自身の記憶を参照する、それも特別な記憶ではなくて、日常の些末な記憶にアクセス出来たら、うれしいですね。
__ 
人間として、一個の記憶をリアルタイムに呼び出し始めたらいいな、って事?
和田 
そうですね。その感覚の入口を、俳優のパフォーマンスが提示できたらいいのかも。
__ 
俳優がそこまでの取っかかりを持ちうるようであれば素晴らしいですよね。近くて狭い、小劇場というフレームの中で。
和田 
観客と俳優が近くて、それこそ隠れる場所がないので、ゆるいことをしてしまったら一発でバレるっていう怖さは常にありますね。
__ 
ええ、何となくで伝わると思います。
和田 
チラッと視線が逸れただけで、それまでが台無しになっちゃうこともあるので。

タグ: 自覚的になりたい


fukuiiiiii企画「歪ハイツ」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。最近、福井さんはどんな感じでしょうか。
福井 
最近は、次の公演の稽古が主な感じですかね。
__ 
歪ハイツ。「ゆがみ」ハイツ?「いびつ」ハイツ?
福井 
歪ハイツと書いて、「ひずみハイツ」です。「ふせい」って読んだ人もいました。ちょっと呼び方難しいですかね。
__ 
どんな作品になりそうでしょうか。
福井 
作り手側の気持ちとしては、これ見せて大丈夫かな?というぐらいのものを作っています。それに拒否感を持つ人もいるでしょうし、何か感化されてしまう人もいるかもしれないです。逆に僕はそういう要素が全くないから書けたんですけど、ちょっと劇薬というか、危険な。
__ 
そう、チラシに15歳未満入場禁止とありますね。性的描写や残酷描写がある?
福井 
性的な描写は全くないんですけど、残酷描写はあります。血がいっぱい出るとかではないんですけど、しんどい人にはしんどいんで。見る前に思い留まってくれるようにその但し書きを付けています。
__ 
自分達のやっている事に自覚的ではあるんですね。
福井 
少なくとも僕はそうですね。役者全員がそうだとは限らないですけど。・・・・あんまり危険危険言い過ぎるとハードルが上がってしまいますけど、僕がお客さんだったら嫌だなあと思う事を書きました。脚本家として乗り越えなくてはいけない部分に触れた脚本が書けたんじゃないかと、自己満足じゃないんですけど。
fukui企画
福井しゅんやの個人ユニット。2011年8月「不肖、死スベシ。」にて旗揚げ。
fukuiiiiii企画「歪ハイツ」
公演時期:2014/2/14~15。会場:元・立誠小学校。

タグ: 残酷な演劇 死と性と 自覚的になりたい


役者の条件

__ 
役者の魅力が引き立った今回。石畑さん以外にも、銃を突きつけられた時のイチイチ微妙なポーズになる松原さんのセルフボケツッコミや、佐々木さんの身振り手振りを交えた微妙なニュアンストークのシーンも良かったです。私の席からは芝原さんの顔が半分だけ見えて、意味不明な別れ話を告げられる理不尽さが引き立ってました。その後ろから冷静な福谷さんが見えていて、その絵が映像的で良かったですね。
福谷 
あっはっは。
__ 
東さんの、まるでトラック野郎のような男口調が何故かやたら似合ってたし、杉原さんは声とアクションが素晴らしかったです。さて、福谷さんにとって魅力のある俳優とは?
福谷 
それ、この前twitterで書こうとして止めたんですけど・・・発汗を自分で調節出来るのが優れた俳優なんだろうなと思います。ていうような事をちらっと思いました。
__ 
あると思います。
福谷 
自分の身体を管理出来る人。
__ 
私がいる劇団に昔いた役者さんが、めっちゃ上手い人なんですけど、長台詞の間の瞬きの回数を調節出来ると称されてましたね。
福谷 
そうですよね、そこに自覚的であるべきですよね。ウチの劇団のメンバーがどうかというと出来てたり出来てなかったりするんですけど。意識が及んでいるのがいい俳優なんですよね。

タグ: 大・大・理不尽 自覚的になりたい


「さくら」

__ 
掴むのに、苦労した役はありますか?
丹下 
最近で申し訳ないのですが、トリコ・Aさんでやらせて頂いたさくらが一番つかみにくかったですね。ふだん、派手な演技で賑やかなお芝居をさせて頂く事が多いので。言ってみれば普通の女の子だったんです。丹下真寿美としては、彼女を理解するのは難しかったです。
__ 
丹下さんは、確かにジャンルとしてのエンタメ系に出る事は多いようですが、そういう意味で会話劇が難しかったりはありましたか?
丹下 
そうですね、日常生活の所作が難しかったです。相手の言葉に対する反応が凄く大かったんですね。びっくりしたら手を広げて、というのが私にとっては普通だったんですよ。トリコ・Aさんはそれとは作り方が全然違うんです。私が作り上げた土台は使えなかったですね。稽古初期に茜さんに頂いた指示が「そんなに一個一個反応しなくていいです。動かないで下さい。それぐらいが一番、丁度いい」と。どうしても、動かなきゃという気持ちがあるんですが、それをしてはいけないと。
__ 
舞台に立っている人間をそのまま感じるために、演技は却って邪魔になる、という事かもしれませんね。リアクションを一旦保留するというか、反応する動きを一旦保留する。すると、それを見ている観客は彼の真意をつかもうとして想像を広げるんじゃないかなと個人的には思います。こうした言い方が相応しいかは分かりませんが、京都で支持されている会話劇はこういう意識で作られている気がします。良いか悪いかは別にして。
丹下 
なるほど。
__ 
丹下さんの演技、私は不自然だとは思わなかったです。むしろ、いつも相手を受け止めるような反応をしていたと思いました。この人には近寄ってはならないと思いました。あれは凄かったですね。
丹下 
良かったです。全ての男性に対して粗末に扱わないでください、傷付けないようにしてくださいと言われていて、でも、誤魔化すような事もしないでと。「そんなのゆうてないし~」みたいな事も言わず、じゃあどうするの?って悩んでたんです。
__ 
そうですね。詰め寄られても、一旦受け止めてあげるみたいな。それが、ワクワクするような嘘と駆け引きのバトルシーンを見ているようでした。すごく面白かったです。
丹下 
嬉しいです。素直に嬉しいですね。小屋入りしてからも稽古の時間を頂けて、結構変わったんです。一日一回通したりして・・・。

タグ: 出来ない!難しい!演技 役をつかむ 会話劇研究 自然体 役づくりの成功 自覚的になりたい


vol.317 丹下 真寿美

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2013/春
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丹下

歯車がぴたっと合った瞬間

__ 
舞台の上で演技をした時。「この演技が上手くいった」という時があると思うんですが、その条件は何だと思いますか?
丹下 
それは私個人では絶対出来ないんです。相手ありきというか。全ての歯車がぴたっと合った瞬間。その確率を上げるのが稽古なんだなと思います。全ての関係者とも、その日のコンディションも合わないと上手くいかないと思います。
__ 
確率を上げる。その言い方、凄く面白いですね。
丹下 
エンタメ系だと、それはパフォーマンスに当てはまるんですけど、会話劇だとそれは当てはまらなくなるんですよね。

タグ: 一人では何も出来ない 揺らぎ、余白 引き出し合う 舞台にいる瞬間 関係性が作品に結実する 自覚的になりたい


vol.317 丹下 真寿美

フリー・その他。

2013/春
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丹下

自覚的になりたい

__ 
いま、演技する上でのテーマは何かありますか?
大石 
もっともっと自覚的になりたいです。その日の劇場の空間や相手の役者さんに対して、自分が感じていることを今よりも意識的になるというか、ちょっとして変化に敏感になれると良いなぁと思います。

タグ: 自覚的になりたい


vol.312 大石 英史

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2013/春
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大石

ああ、今日は何しよう

__ 
2つの作品を振り返って、いかがでしたか。
名越 
実はtabula=rasaでも、自由にやっていいよ的な演出で、だから本番の前はすごく緊張していたんですよ。ああ、今日は何しようって。今までの作品はやることは全部決まっていて、ちゃんとしようと思って舞台に出るんですけど。
__ 
つまり、袖幕から出て表現する事について自覚的になる経験だったと。
名越 
ハシ×ワタシで大事にしていたのが、他の役者や音響や一部照明も基本は即興だったので、それら全てと関係をとりあって、ということでした。「これやろう」と思っていても、相手がやってくる事にもリアクション出来るように相手への回路を開いておくんですよ。
__ 
最後のあのメモで出来た橋も、伝える事自体を提示された感じですよね。伝達がテーマの作品だったと思います。

タグ: 自覚的になりたい


vol.197 名越 未央

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2012/春
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名越

2割

__ 
勝手な話、私は上原さんを演技の天才だと思っているんです。別にお世辞を申し上げている訳ではなく。
上原 
ほほ。
__ 
イメージを観客の予想よりずっと素早く的確に表現する俳優を天才だと思っているんですが、上原さんは正にそれだと。
上原 
そうした勘は、関西の文化である漫才やお笑いが元かも知れませんね。ツッコミみたいに、反射的にやれるというのがあると思います。さらに、月曜劇団の場合は素の部分を出す事があるんですよ。演じているのが8割、素の部分が2割となるようにあえて残しています。
__ 
それは、ライブ性を大事にするからですか?
上原 
そうですね。だから以前客席で携帯が鳴った時、芝居止まったんですよね。
__ 
えっ。
上原 
僕が出ていたシーンで、携帯が客席で鳴って。振り向いたんです。
__ 
素晴らしい。
上原 
僕がバーテン役で舞台に立っていたんですが、「オーダーでーす」とかいう着ボイスが鳴ったんですよ。「注文受けるの俺やから!」ってなりました。
__ 
すごいですね。だからこそ、客席と空気を共有出来ているのかもしれませんね。「素の部分を残す」。どのような効果があってほしいと考えておられますか?
上原 
効果的には、同じ時間を過ごしながら一緒に覗いているという事になってほしいですね。月曜劇団の舞台セットは3方がパネルになっている事が多くて、客席との間に透明な壁があって、それを越して見て貰ってる感覚があります。こちらが、演技の中で素になっている部分を残している事で、お客さんと一緒に醒めながら自覚的に作品を覗けるんんじゃないかと思うんですね。
__ 
では、その空間の中の人々には、どのような存在であってほしいですか?
上原 
自由であってほしいですね。誰よりも。台本通りですけど(笑う)でも、どんな役でも楽しんでほしいと思います。

タグ: 自覚的になりたい