お祖母ちゃんの光景

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ikiwonomuでは、どんな作品作りをされているのでしょうか。
黒木 
その人の生い立ちなどを聞くのが凄く好きなんです。それをまず最初にばーっと聞いて書き残して、面白かったエピソードを、ちょっと反映します。でも、「かつての風景」に関しては、大体わたし自身の話です。ちょっとずつ、お客さんが楽しめるように再構成して。
__ 
例えば。
黒木 
ウチの陽気なお祖母ちゃんの話かな。結構前から認知症で、私たち家族の事も忘れていて、今は施設に入ってるんです。でもお爺ちゃんのお葬式に、出席せざるをえないじゃないですか。私たちにとってはお葬式はしめやかで静かなものなんですけど、お祖母ちゃんにとってはライブ会場のようで、お坊さんの頭が光っているのを笑ったり、数珠のふさふさで遊んだり。家族としては思う所もあるんですけど、同時に、面白いなあと思ったんです。
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というと。
黒木 
お祖母ちゃんからは、その時のお葬式はどんな風に見えていたんやろうか、と。違う風景が見えていたのかもしれない、と。それを、形を変えて今回の作品に生かせたら・・・。
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黒木さんが伝えたい風景。それは根本的に、家族から来ている?
黒木 
そうですね。何年か前に引っ越したんですけど、その時の母のワクワク感とか、父が少し寂しそうだったり。そういうのが何か、良いなあと。
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なぜ、家族の事を伝えたいと思うのでしょうか。
黒木 
何ででしょうね。そもそも、何で作品を作ろうと思っているのかな。でも、作らんとと思っていて。今のところ、テーマが家族になってしまう。そこにちょっと共感してくれる人がいた時、嬉しいというか、そういうものを通してのつながりが何だか好きなんです。

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転機の数だけ

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15周年を迎える満月動物園。これまでで転機となった作品はありますでしょうか。
戒田 
転機といえば沢山あって。作風がよく変わるし、お客さんも変わっていくんですよね。死神シリーズを始めてからもお客さん変わったし。
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年齢層が高めなような気はしますね。
戒田 
若い人にも観に来てもらいたいですけどね。来てもらいさえすれば、なにかしら響くと思うんですけど。どうしたらいいんですかね?
__ 
やりたい事をやってる感じが伝わればと思います。本当に、それだけさえあれば・・・難しいとは思いますが。でも、1年を通してシリーズを完結させるというのは大事業ですよね。追求しているのがただ心強いです。

タグ: 実験と作品の価値 焦点を絞った作品づくり


主役・脇役

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造形大で学んだ事が「歪ハイツ」にどんな感じで活かされたと思いますか?
衣笠 
今回は主役でした。4年間で主役をやった事はなく、いつも脇役ばっかりだったんです。あんなに出ずっぱりなのはあれが初めてで。自分の中で、あれだけの台詞を言えるのか、2時間舞台に立てるのか。でも、主役も脇役もやる事は一緒なのでやり方を変えようとは思わなくて。で、目立とうとも思っていなかったんです。どっちもやりたいんですしね。今回の歪ハイツで言えば、主役と言えば主役ですけど、最後に生き残るのは他の人だったし。「歪ハイツ」は皆が主役だったのかなと思うようになっていて。
__ 
なるほど。
衣笠 
そういう意味で、オレが目立つぞというのはなくて。皆目立ってほしい、っていう気持ちがありました。ずっと脇役やってきたからというのもあったのかなと思います。結果的には目立ったのはあるかもしれませんが、脚本により焦点を当てられたんじゃないかと思っています。4年間の経験が、上手いこと還元出来たのかなと思っています。

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「そこで本当に起こっているんだ」

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見に来たお客さんに、どう思ってもらうのが理想ですか?
坂本 
「ここで起こっている事は本当の事なんだ」と思って欲しいですね。ドキュメンタリーという意味じゃなくて。役者の演技が「そこで本当に起こっているんだ」と感じてもらいたいですね。
__ 
鬼気迫る、という事ですね。物語の再現という訳じゃなくて、いま目の届く距離にかの人がいる事。それは、何故でしょうか。
坂本 
私が興奮して見ている時、「本当の事なんだ」と思うから、ですね。現代劇でも歌舞伎でも、同じように思います。私の書くものはファンタジーであり、一見するとただの「つくりごと」なのですが、私、座右の銘的に思っている事があって。「リアリティとは現実に似ていることから生じるのではなく、わたしたちの魂の願望を言い当ててくれることによって生じるのではないか」って。これは「十二国記」の評論にあった一節なんですが。
__ 
魂の願望からリアリティが生まれる。
坂本 
「十二国記」は、主人公の女子高生が色んな超人的能力を得て一国の王になるという英雄譚で、それは現実にはあり得ないけど、魂の奥底にある願望を汲み取っているからここまでのリアリティがあるのだ、と。これも受け売りですけど(笑う)現実と似てるからリアリティを感じるんじゃなくて、現実からは遠いけれども、私達の根源的な望みや悲しみをすくい上げてくれているから共感出来るし、リアリティがあるのだと。そのことは思い続けていますね。
__ 
魂が震える、揺れるところを見たいですね。
坂本 
はい。それを書きたいです。演劇が面白いのは、役者は何回も同じ芝居を演じていて、もちろん結末も全て知ってるんですよね。そうした存在が、また自分の運命を頭からたどり直している。そこには、潜在的な色気を見る気がするんです。
__ 
構造が生む、かすかな色気。
坂本 
そうだと思います。それは狙う所じゃないんですけどね。まるでファンタジーです。見ようと思っても見えない。でも視界の隅でチカチカと光っている。でも焦点を合わせようとすると見えない。そういうものをつかみとろうとすることが、ファンタジーを書くという行為なんだと思います。

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ナカゴー「レジェンド・オブ・チェアー」

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明日から始まるナカゴーの「レジェンド・オブ・チェアー」。とても楽しみです。
川面 
ありがとうございます。ホントにナカゴー、面白いんですよ。知らない人は知らないけど、知っている人は「いま一番面白い」って言うんですよ。
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興味深いです。出来れば、川面さんがナカゴーに出るようになった経緯を教えて下さい。
川面 
大学在学中に、コメディユニット磯川家と一緒に東京でシェアハウス生活してまして。その滞在中にMrs.Fictionsの15 minutes maidのお手伝いに入ったんですが、そこでナカゴーを初めて見たんです。もうダントツに面白くて、子どもたちが突っ立っておしゃべりしたり缶蹴りしてるだけの作品なんですけど。変ぶってる感じじゃなく頭おかしい。人を惹きつけるクレイジーさが最高だったんです。俳優もみんな上手で、びっくりしちゃいました。
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おお。
川面 
2年前にサンプルの出演が決まって、そのタイミングで東京に越して来たんですが、ナイロン100℃の菊池明明ちゃんと仲良くなったんですけど、彼女もナカゴー知ってて。めっちゃ面白いよねって。ちなみに、ハンバーガーを武器に戦う芝居だったそうです。そこでサイトを見たら出演者募集ってあったので、応募しました。それから度々出ています。
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面白そうですね。
川面 
今回はかなり冒険していて。英語劇なんです。ストーリー自体はハッピーエンドで終わるような普通の感じなんですけど、ネタや演技のディテールが全部決められていて、奥行きがあるんです。それが誰にもマネ出来ないんですよ。例えば笑う演技一つも、目ん玉の動かし方や首の筋肉の角度と力加減とタイミングが指示されるんですよ。それはお客さんの目には届かないんですけど、奥行きが出るんです。
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それは、ますます楽しみです。川面さんは、ナカゴーのどういう部分が好きですか?
川面 
面白いと思うものを素直にやっている所です。「人間とは」とかそういうテーマが入っている作品って、どうしても多いと思うんですけど、そういうメッセージは一つもなくて。
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尖ってますね。
ナカゴー
東京の劇団。
ナカゴープレゼンツ マット・デイモンズ 「レジェンド・オブ・チェアー」
公演時期:2013/9/27~29。会場:Brick-One。

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BRDG vol.2『TEA×HOUSE』

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「TEA×HOUSE」。物語というよりも、取材で得た資料を再構成して作品化しているという事ですが、そうした作品を作っているのはどのような理由があるのでしょうか。
山口 
まず、私は物語が作れないんですよ。自分からはどうしても出てこない。紡げないし、自分よりも大きなものが沢山あるとずっと前から思っていて。紡ぐよりはどう吸収するか、が私の表現だと考えています。舞台に出る時も、自分から表現するというよりも何かに動かされる事が多いですね。外の要素だったりとか、もちろん共演者、環境、お客さんにも動かされるのが好きなんです。受動的な・怠惰な態度ではなくて。作品を製作する時も、世界を解釈をして変換して、つまり通訳してそれを違う言語に出力する。そういう事に興味があります。私は別に作家じゃないと思っています。紡げないので。外と接する作品を作りたいと思っています。
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個人が世界と接する作品。
山口 
個人と他者が、どう接するのか。いい悪いじゃなくて、そこを観察したいですね。
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ありがとうございます。私は最近のテーマとして、情報は読み手の創造性を以って初めてその価値を成立させると思っています。だから、山口さんの仰っている事はそうした観客にはきっと歓迎されるかもしれません。しかし、観客という他者が、舞台上の世界を常に受け止めてくれる訳ではありませんよね。積極的になるかもしれないし、消極的になるかもしれない。むしろ、敵視してくるかもしれない。
山口 
そうなんです。他の人にも、それが美しいと思ってもらえる為の工夫をしないといけないんですよね。やっぱり、お客さんの感想が分かれるんですよ。「全く意味が分からなかった」と、「もの凄く面白かった」と。それは、どちらも当然返ってくる反応で。分からない=面白くないと見なすのは当然じゃないか、って私も思ってしまう時があるんです。だから、もっと作り手として、「これがキレイだよね」と紹介するだけのものじゃなくて、「何故そう思えるのか」が分かる。そんな、もっと面白く見てもらえる仕組みを考えださないといけないと感じています。
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余談ですが・・・「TEA×HOUSE」で、非常にスリリングで面白いと思ったシーンがあります。スコーンが焼けるまでに、若干時間が余りましたよね。その時に舞台上で二人の出演者が暴れまわっているという場面がありました。時間稼ぎだと気付いた瞬間、ものすごく面白かったんですよ。物凄い可愛らしい時間でしたね。チャームポイントだったと思うんですよ。何か、お客さんに渡してあげたゆとりのある時間というか。
山口 
素敵に思って頂けるのは嬉しいですが、そこに甘んじる事無く(笑う)スコーンを焼く間の時間で作品を収めようと決めていたんですが、出演していたブリジットが「焼き時間を短くなんて出来ない」と言ってくれて。だからどうしても。辛かったお客さんもいたかもしれません。
BRDG vol.2『TEA×HOUSE』
公演時期:2013/4/26~28。会場:京都四条大宮滋野宅。

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秘密が薫るとき

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本日、女性を重大なモチーフとして描くsilsilさんにインタビューするにあたって。もう一度、私個人が抱く男女それぞれが持つ原理についての認識をまとめました。いわく「女性とは世界を出来れば全て手に入れたいという志向を持っており、男性は世界の頂点を目指す」という。こういう捉え方はいかにもステロタイプで、同権主義者としてはあまり良くないんですが。ただ、silsilさんの絵を見るにつけ、この認識にもそれなりに言い分はありそうだなと。例えば絵の一部を切り出してみても、複雑な水玉が混乱を起こさず配置されていて、それらは猥雑で複雑だけど、全体を構成するべく整った混乱を見せている。水玉の一つ一つ全てが「私の世界を何度も解釈して捉えてほしい」と言っているように思えて、それはこの世の女性全てを代弁するかのようです。ええと、まず、いま何故この描き方になっているのでしょうか。
silsil 
元々女性を描いていたんですが、女性の魅力を探すにつれ、どんな可愛くない子でも一瞬惹き込まれる瞬間があるんですよ。その一瞬というのは、私にとっては色気。それはただエロいという事ではなくて、何かが薫る瞬間が、どんな女の子にもあるんですよ。それを捉えたい。美しい子にも、一瞬怖い・悲しそうな瞬間がある。でもネガティブとされるそれらもまた美しかったり。そうした一瞬を描くために、技法として何層も何層も重ねているんですね。その都度、週毎くらいで顔が変わっていくんです。私以外には工程を見る方はいないんですが。
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えっ、顔が変わっていく。
silsil 
そうなんですよ。哀しそうな顔にも見える時もあれば、何も考えてなさそうな日もあって、どこか怒っているような瞬間もあるんです。描き方としては、始めにあぶりだしで焦げを作るんですが・・・
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あぶり出し。
silsil 
そうなんです。下書きに一回、レモンのインクを塗って焙っているんです。もちろん自然のものなので計画的にはいかないんですが、そうする事によって計画的ではないものがベースになる。その上に何層も女の子の像を重ねて、最後の水玉(途中にも入りますが)。これは感情の表現として描いています。自分にとって魅力的な女性の描き方を追求していったら、こういう技法になった、という感じですね。
___ 
何層も重ねるという事は、上に描き直すという事でしょうか?
silsil 
この作品であれば、薄い赤の作品があって、紫の作品、最後に赤の作品。目の印象もそれによって違ったりします。目って、少し違うだけで全然違う印象になるんですよ。細かい上がり下がり、大きさ、それらがちょっとずつ変化していくとこれになる、みたいな。
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何だか、ちょっと納得出来ます。実は2年位まえか、中津で個展をされた時ありましたよね。あの時2回くらいお邪魔して、どちらも40分くらい居たんですけど。
silsil 
ええ。
___ 
あの時、実はしんどかったんです。絵の情報量が多くて。今回の作品はもっとそう。一つの絵を読み下すのにこんなに時間が掛かる。単純な表情じゃないという事もあるし、物理的に色々な顔が重なっているから。
silsil 
それと、最近の描き方として、目に光を入れないというのがあります。目に明らかなる方向性や意思を持たせない事にしています。一瞬を一つに限っていないので、光が射さないというか。それが傍から見ると魅力的な目に見えるのかも。嬉しそうにも見えるし悲しそうにも見える、微妙な所を描きたいと思っています。
___ 
目に光がない?それはもしかして、こっちと目を合わせていない状態かも。
silsil 
何かを考えながらどこかを見ていると、光が焦点を結んでいるんです。そうじゃない、目には光がなくて、だから焦点が明確でなくて。場合によっては鑑賞している人と目があっているし、全然違う方角かもしれないし。逆にそれは、この絵が生きている、のかもしれない。目が入って生きている瞬間じゃないけど、そのようなイメージが出るように、明らかな方向性がない状態を描きたい。
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一瞬が重なりまくってる訳ですよね。そこに、ある種の時間の凝縮を感じます。その瞬間に生きている彼女に立ち会っている自分を自覚した時に、強い実感を覚えます。つまり、鑑賞者は、一つの絵に重なって宿った表情の輻輳に立ち会うんですね。そのうち、「この謎の表情をした女は何だろう。自分の周りに居た人物だろうか?」と戸惑うかもしれない。その戸惑いがsilsilさんの作品なのではないかと思うんです。
___ 
silsilさんは女性をモチーフにすることが圧倒的に多いですが、どうしてでしょうか。
silsil 
女性がキレイだなと思うのが大前提なんですが、二つ以上の感情が重なってる感じがするんですよ、女性って。真逆の衝動が同時に起きて、重なる瞬間が凄く楽しいです。無限に可能性があるんです。
___ 
絵を描き始めた時から、そうした認識はありましたか?
silsil 
当初はとにかく可愛い女の子を描きたくて描いてました。男性も描いてましたが、じきに女性だけを描くようになって、ご覧の通り今は女性の表情にフューチャーされていっています。女性の全身像も多かったんですけど、顔に何かがあるな、って寄ってってるんですね。
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顔に?
silsil 
そうですね。レンズの焦点が合っていくように。
___ 
昔はパステル的な絵具の使い方が多かったですね。あの時代も、とてもキレイな具合に滲んでいました。
silsil 
今は飛沫のようになっています。インクの使い方は変わっていっています。カラーインクで描いていたんですけど、長期間保存すると色が退色していくんですよ。なので、出来るだけ長期間保存に耐えるアクリル絵具に切り替えました。その頃から、飛沫であったり水玉であったりの表現が増えていきましたね。

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vol.311 silsil

フリー・その他。

2013/春
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silsil

奥底

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ZTONの次回作について。
為房 
ZTON下半期としては、かなり数は多くなりそうです。でも、お仕事関係、イベント関係の活動になりそうです。次回作としては、河瀬君自身も気づいていない心の奥底に眠っている作品になるのかなと。僕個人は、これまでいわゆる歴史物で来て、今回初めてのオリジナル物でしたので、さあ次どうなる、という感じですね。

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