第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」 2

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今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。最近、千尋さんはどんな感じですか?
千尋 
よろしくお願いします。次回公演「プカプカ河の川底石」の準備をしています。次は役者ではなく照明オペをやらせてもらえます。
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楽しみです。意気込みを教えてください。
千尋 
意気込みですか。新入生にとっては初舞台になるので、彼らの魅力を引き出しつつ、三劇ワールドを広げていけたらなと思ってます。
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演劇以外ではどうですか?
千尋 
大学も行きつつ、習い事の武術太極拳も続けています。
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武術太極拳!いつからやってるんですか?
千尋 
4歳ぐらいからやってます。家の近くに道場があって、興味があって始めました。
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本格的ですね。段位とかそういうのってあるんですか?
千尋 
私がやっているのは長拳なんですけど、1級まで取らせてもらって、普及指導員の資格と、国体の指導員資格までは取らせてもらいました。
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じゃあエキスパートですね。
千尋 
いえ、エキスパートというわけではないです。ちょっとかじってる程度で。まだあまり広まってはいないので、知ってる人は少ないんですけど。
1第三劇場
第三劇場は1954年に設立された同志社大学を拠点に活動する学生劇団です。オリジナルの脚本の上演を主とし、同志社大学新町キャンパス別館小ホールにて年に5回の公演を行っています。(公式サイトより)
2第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」
【延期後の公演情報】
第三劇場7月公演
『プカプカ河の川底石』
脚本・演出:今村駿介
演出補佐:太田伸甫

【日時】
7/14(土)13:00/18:00
7/15(日)14:00
(開場は開演の30分前です)

【料金】
前売100円
当日300円
学生無料(要学生証)

【会場】
同志社大学新町キャンパス別館小ホール

【予約方法】
シバイエンジン
・メール→sangeki303@yahoo.co.jp
・Twitter(@sangeki303)へのDMまたはリプライ

【お問い合わせ】メール→sangeki303@yahoo.co.jp

第三劇場新歓公演「胎に還る」 3

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前回は第三劇場の「胎に還る」でしたね。大変面白かったです。ご自身としてはどんな公演でしたか?
千尋 
先輩方がいない初めての公演で、右も左も分からない状態だったんですけど、少ない座組の中でみんな一生懸命頑張れたと思います。あまり三劇にはなかった傾向の芝居だったと思いますが、新しいことに挑戦できたのは良かったと思います。
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殺陣もありましたしね。
千尋 
バイオレンスなシーンもありましたしね。
3第三劇場新歓公演「胎に還る」
公演時期:2018/5/4~6。会場:同志社大学新町キャンパス別館小ホール。

向こうにあるもの

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千尋さんが三劇に入ったのはどんな経緯があったんですか?
千尋 
私の通っているのは田辺キャンパスで、なかなか演劇ができるような状況じゃなかったんですけど、中学からの先輩である海老飯もぐもさんに去年の7月公演に観に誘ってもらって。役者さんのお芝居が自分に刺さるような感じだったんです。だから、もう1回芝居をやろうと思ったんです。
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というと、大学生になる前から演劇はされてたんですか?
千尋 
はい、中学高校と演劇部でした。高校の頃に一旦締めくくりかなと思ったんですけど、まだまだ全然私は浅いところにいたんだなと思って。
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私が初めて千尋さんを拝見したのは、去年の「ダブリンの鐘つきカビ人間」でした。千尋さんの演技は非常に面白かったです。これは凄い奴が出てきたなと思いました。演技が上手というのはもちろん、呼吸の合わせ方がすごく良かったですね。
千尋 
でも先輩方にたくさん助けていただいた部分もあります。私がやりやすい空気を作ってくださって。元々、私は周囲と一緒に考えた上でその場で演技を作っていきたいタイプだったので。
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それはどんな感じで?
千尋 
演出の広田すみれさんが、脚本にある事以外もやってくれていいよと言ってくださって。色々試したんですけど、場をどういう風な空間に持っていくかということをまず王様役の武士岡大吉さんが定めてくださって。おもしろおかしくという空気感と、王様との関係性にも気を配りつつ、お客さんに面白く思ってもらえるようにできたらいいなと思っていました。
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周りの人とその場で作って行くのが好き。
千尋 
元々テキストの読み込みが苦手ということもあって。文字に書いてあることをそのままやると、どうしてもその中だけに止まってしまう気がするんです。その時の一瞬一瞬でこうしたら気持ちよくできるなというのを、高校2年生ぐらいから始めていて。
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なるほど。テキストを読み込むのが苦手。
千尋 
どうしても、私の演技がこういうのだ、と固まってしまうような気がして、苦手で。どんな役でもできるように、一瞬一瞬を大事にしていけたらなと思っています。演劇はやっぱり、リアルタイムでお客さんに見てもらえるので、その呼吸感や空気感が伝わるようになったらいいなと思っています。
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演技の上に載っている意味が区画化されるときの息苦しさってありますよね。これは演技の上手さとか下手さとかではなくて。認識がそれを捉えたときに。千尋さんはそれを恐れているんですか?
千尋 
そうですね。そこにある意味以上に、まだまだ色々あるんじゃないか、と思ってもらえたら。私、今のところはっちゃけた役が多いんですが、この人の中からこんなにいっぱい色々出てくるんだというのを楽しめてもらえたらなと思っています。
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人物がいて、その人物から色々出てくるというのはいいことですね。ある明確なキャラクターがあったとして、その区画が終わるのも良いものしれませんが、ライブで観ているときにそれ以上に湧き出ているといいですよね。
千尋 
表面上に見えているものだけじゃなくて、この人は一体どういうことを考えているのか、とか、視覚情報からその奥に踏み込んでもらえたらいいなと思ってます。表情で笑っていてもその内では泣いているかもしれない。演劇としてドラマを見れる一番の利点が、そういう空気感だと思うので。
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もしかしたら、時間を共にしていからこそ生まれるタイプの洞察がある。

どうしたいんだろうか

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千尋さんが演技をする時に気をつけていることはありますか?
千尋 
その役がどうしたいんだろうというのはよく考えています。私が役を演じるんじゃなくて、この役に私の体を貸してあげる、というとすごいことになるんですけどイメージはそういう感じで。今どういうことを考えていてどういう気持ちで、でもこういうことになっているというのを分解して理解したいと思っています。それこそ周りの人のアプローチの仕方だったりとか、私がどういう気持ちを出したいというのを表現していくという感じ。
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舞台上でリアルタイムにその人物の気持ちになれる人もいますけどね。
千尋 
そういうのを目指しています。読み解きが苦手な私でも、直感的に感じられるものを引き出せていけたら、それが長所に繋がるかなと思ってます。
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ヤングジャンプで連載しているキングダムで言う、本能型の将軍ですね。
千尋 
私もそういうタイプかもしれない。結構ぐちゃぐちゃとはしちゃうんですけど。
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本能型と戦略型の両方を併せ持つ将軍がいて、それが作中最強なんです。でもそんなの難しいですけどね。
千尋 
直感だけでやっていると周りの人がついていけなくなったりすることもあったりするので。自分の思っていることを相手と共有できる能力というのは必要だなと思っています。新歓公演で相手役だった葵とまとちゃんと話していたんですけど。お互いの考えを具体的に話せない時が一番もやもやするんですよ。
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そうですね。頭でごちゃごちゃ考えていても先に進まないし、でも感覚だけで暴走していても良くないし。言葉の全てを尽くせばいいかと言うとそうでもなく、感情の部分で相手を置き去りにすることもあったりする。

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自分が本能タイプだと気づいたのはいつですか?
千尋 
中学の頃は全然うまく演技できていなくて。元々私は演劇部には裏方志望で入っていたんですが、人数の関係で舞台に出てたんです。高校2年生の頃に、二個上の代の方と一緒に演劇をやって、そこでテキストの読み込みがどうしても苦手だなと気付きました。じゃあどうしたら私は自分のレベルを上げられるんだろうと思った時に、1日1アドリブみたいな制度で今日はどうしようか、どうしたいのかというのを考えたんです。そうしたら、考えて行くんではなくてその場その場で思った事をやるのがしっくりきたんです。
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正解を掴めるタイプの本能タイプ?
千尋 
いえ、偶然うまくいっただけだと思うんですけど。
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間の調整だとか、ミザンスの調整とか、相手役との調整だとか。そういう部分についてはどうですか?
千尋 
そこはまだやっぱり苦手で。相手の言葉や行動を受けての間を一動作としてとらえて、その中で内部でどう考えるべきかを考えてます。だから相手のセリフを聞いてる時に顔が動いちゃうんですよ。何かしていないと止まっちゃうので。
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曖昧にしておいても良い間もありますからね。難しいですけど。本当に何もない、表現していない状態とかも必要なのかもしれませんね。お客さんが、見るわけでもなく観ている状態。
千尋 
なるほど。私にとっては新しい考え方です。そこを突き詰めていけたらもっと幅が広がりそうです。

100と80

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これまでで、難しかった演技はありますか?
千尋 
まだ3役ぐらいしか行ったことないんですけど、「ダブリン」の目玉はパッとできたなと思います。新人公演の時に、ちょっとだけ暗い役をやらせてもらったんですけど、楽しいシーンから暗いシーンに切り替わる時に何をすればいいのかなと。先輩によく言われたのが、悲しい演技をする時に「悲しいを100出してしまっているから、それを内に秘めて出せるようになったらいいね」と。「胎に還る」でも、8割ぐらいに収めるというのができたらいいなという事も言われて。難しくて今も模索中です。
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結果として、千尋さんの演技は100として伝わってしまったと。
千尋 
「私、こんなに悲しいことがあったの。どう?悲しいでしょ?」じゃなくて、「悲しいことがあったけど忘れようとして頑張っている」姿に空回っているところを感じたりするのかな。
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100の、のっぺりとした演技ではなくて、雑味があるといい、みたいな事かな。それは出力のムラだったりするのかもしれない。
千尋 
そうですね、お客さんが踏み込める演技がいいと思います。
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それをやるにはどうすれば。
千尋 
きっと、キャラクターを作るというのは案外やろうと思えばできると思うんです。「怒りっぽい人だよ」というのはとりあえず怒っておけばそう見える。でも、その人は悲しい時に、逆にそうは振る舞わないとか、そういうやり方もあると思うんですけど。色々なやり方を学んで行けたらいいなと思ってます。
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から回っているということは、虚勢を張っているとかかな。
千尋 
その辺りの振る舞い方は人間関係にも繋がっていくのかなと思います。役同士の距離の近さ、気の緩みとかも見せていけたらいいなと思ってます。そういう微小な変化を重ねていけたら。

グループのなかの私たち

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変化と洞察について。人間は感覚を通じて、対象の内情を洞察する能力を獲得していますが、なぜ人間はそんなことができるんだろうか。
千尋 
難しいなあ。見てる人からすると、目の前で起こっていることについていきたいという心の動きがあるので。演劇に限らず、偶然テレビで見かけただけのドラマに対してもそう。とっかかりとしては、話についていきたいと。
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話についていくという本能。
千尋 
大多数の人間は群集心理と言うか、グループに入る本能があって、どうしても空間の中に入ろうとして、洞察して。合ってるか間違ってるかはともかく、理解して安心したところに位置を置きたいのかもしれない。私が観劇する時は、自分が納得する解釈の仕方で一度落ち着きたいというのはあります。
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本能タイプとは裏腹ですね。
千尋 
話を理解したい欲求はあります。
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話が理解できるというのは素晴らしいことですからね。
千尋 
分からないと、分からない!ってなっちゃう。でも理解していても結局は変化していくから、それがワクワクするのに繋がっていくのかなと思う。
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予想を裏切るということね。お客さんの想像を先取りしないと出来ない所業ですね。そういう技術の存在こそが怖いけどね。
千尋 
そうですね、お客さんを手玉に取ると言うか。でもやる側としては、結局お客さんが作品に対してどう思うかまではコントロールできないので、逆にそこがものすごく楽しみです。あ、こういう見方もあったんだ、みたいな。そういう相互関係はいいなと思います。
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そして、最初の開演時間から終演まで、一つの流れに乗れるというのは奇跡ですね。

質問 延命聡子さんから 千の千尋を神隠しさんへ

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前回インタビューさせていただいた中の劇団の延命聡子さんから質問です。「演技している最中、何を考えていますか?」
千尋 
結構まちまちだったりしますけど、ダブリンの時はその時に起こった一個一個のことに対してキャラクターとして考えているというのがありました。新人公演の時は、客観的な見方とかを考えていましたね。いまどう見えてるのかなとか。まちまちだなあ。
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気持ちになることもあれば、客観的に考えることもある。
千尋 
そうですね、ダブリンは毎回違う感じでわいわいやってくださいという演出だったので。脚本の流れを大事にする時は自分の冷静さを残しておかないといけないので、次のことを考えたりとかしていましたね。自分の中で伏線を張ったりとか。

何にでもなる子

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逆にものすごく簡単だった演技はありますか?
千尋 
高校2年の時、クラスの学園祭がオズの魔法使いで、カカシ役だったんです。キャラクターがあまりにも固定されていて。頭が藁でできているから、相手からのセリフに自由に返して良い、という。なんでもできちゃうので、楽といえば楽でした。客席に向かって意味のわからないことをずっと喋ってたりとか。楽しかったです。
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そこから本能タイプが始まったのか。
千尋 
そうかもしれない。私は昔から、周りに驚いてもらうのがちょっと好きで。何にでもなるよ、みたいな驚きを与えていきたいタイプなので。人生のテーマがそんな感じかもしれないです。
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ずっとそうあって欲しいですね。
千尋 
こういう子だよね、というのに留まらない、みたいな。色んな私になりたいなと思っています。

呼吸する役者

千尋 
役者として大切にしてる事って、どんな感じがなんかなと思っていて。演劇をやる上にあたって一番大事にしていることが呼吸なんですよね。人の呼吸って不随意じゃないですか。だからその人の感情とか人柄とかも全部、息に出るんじゃないかなと思っていて。そこを大事にしたら、どういう人か、みたいなのが伝わりやすんじゃないかなと思っています。
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呼吸か。
千尋 
小劇場を見ていると、距離が近いから呼吸が上がって行ったりだとか落ち着いていったりだとか、悲しい時の息の出し方とか、震えているだとか、逆にぐっとこらえているだったのか、私はそういうのを見るのが好きで。どうしてその人の気持ちがすっと入ってくるんだろうと思った時に、呼吸からナチュラルに入ってくるというのが目指しているところです。
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逆に舞台に上がり慣れていない人は、あっぷあっぷして呼吸が上がってしまう、みたいな。
千尋 
呼吸だけは自分が出てしまうところなのかなと思います。役に入りきれないとき、緊張が出てしまう。自分の呼吸にならないように注意したいです。役として呼吸も演技したいという心意気です。
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呼吸がその身体の状態を表していて、見る側の身体の呼吸器官が勝手にそれを感じ取っている、みたいな感じだろうか。意識に届かない基礎の部分。
千尋 
伝えやすいツールとして使っていけたらいいなと思っています。私も「ここの呼吸は大事」とまでは思えないんですけど、すんなり入っていく演技のアプローチの一つとしては大事なんじゃないかなと思っていて。
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意識的に演技に呼吸を組み入れる、とはまた違った階層での話ですね。
千尋 
お客さんと一緒に息を吸うような瞬間もあると思います。何て言ったらいいのかわからないですけど。呼吸って色々な分野でも大事にされていることなんですよ。武術も息の仕方は大事にされていて。ヨガでも。
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緊張していると呼吸がしにくい。リラックスしていると、しているのかどうか分からないぐらい穏やかに呼吸をしている。
千尋 
「胎に還る」では死ぬ演技が多かったので、呼吸のことは結構考えていました。死体の演技だったとしても呼吸を止められるわけじゃないですか。お腹が上下してしまうので、リラックス状態になるようにしたかったです。難しいこと言えば、意識しつつ無意識になりたい。

色々と

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今後、どんな感じで攻めてくれますか?
千尋 
演劇ということにおいては、もっと色々な役をやりたいなと思っています。
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生き方としては?
千尋 
うーん。想像もしないような生き方をしたいです。その時思ったことを素直にパッとできるような感じ生きていけたらいいなと思ってます。

十八番の噺落語家が愛でる噺の話

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今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
千尋 
ありがとうございます。(開ける)落語だ。
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なんとなく興味があるかなと思って。
千尋 
落語家さんってすごいですよね。演技してるわけじゃないのにパッと情景が思い浮かぶ。一度見たことがあります。席が遠かったのに全然楽しかったです。表情とかに頼ってない感じがあって。
(インタビュー終了)