音の仕事

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。お久しぶりです。椎名さんは最近はいかがでしょうか。
椎名 
いい意味で人生を楽しんでますね。会社勤めをやめてしばらくぶらぶらしていたんですが、また音響の仕事に戻りつつあります。普段は家で映画見てるか散歩してるか。音響の仕事が入ったら、稽古に行ったり、プランを立てたりしてる。
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いいですね。そう、会社を辞められていたんですね。
椎名 
そうやね、今は時間に余裕がある分、密度を上げて音響という仕事に打ち込めてます。
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私が椎名さんに初めて会ったのは電視游戲科学舘 2(以下デンユウ)の「天つ狐乱れにぞ」の現場でした。私はそこで舞台作業に関わっていたんですが、客席の下に小さいスピーカーを仕込むというプランを伺った時ですね。衝撃的でした。そんな事までするのかと。
椎名 
実はあれはローテクなんですよね。百均で売ってる小さなペン立てとスピーカーを組み合わせて、客席分作って下に仕込む。言うても100~200円で買える材料やねんな。
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そうなんですよね。でも、今でさえ目新しく思うんです。客席のエリアに音響が食い込むからかもと思います。なぜ、あのような方法になったのでしょうか。
椎名 
ビジョンがまずあって、それを実現するにはどうすればいいのかを考えてあの方法になったんですね。乱暴な言い方かもしれないけど、「音響装置イコール舞台の左右にスピーカーを置く」というイメージの人が多いねん。でもそれだと、僕のやりたい事はできないので。そうした色んなプランは必然性があってそうなっています。
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なるほど。
椎名 
あと、誰もやっていない事をやって、お客さんを驚かせるのが好きなんですよね。演劇人、そういう人多いと思うで。「天つ狐乱れにぞ」 3という作品もそれに答える力があったからね。
1劇団飛び道具
京都を拠点に活動する劇団。
2電視游戲科学舘
京都の劇団。大がかりな舞台装置、凝った音響・照明、しかし行き過ぎない美意識のもとに作られたエンターテイメント演劇を得意とする。
3電視游戲科学舘 第5回公演 『天つ狐乱れにぞ』
公演時期:2001年4月。会場:京都大学西部講堂。

新しい刺激を受ける

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なぜ、「誰もやっていない事」をやりたいのでしょうか。
椎名 
驚かせたいからやろうなあ・・・。誰もやってへんからこそ、記憶や印象に残る。
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そういう欲求は、ご自身のどこから始まっているのでしょうか。
椎名 
自分が驚きたいからかなあ。自分でもこんな事が出来たとか、新しい事をやった時の充実感が高くて。お客さんも結果的に喜んでくれるし。
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新しい事。この情報化社会で、新しい事は飽和しつつあると思うんですが、今後「新しいもの市場」はどのような変化をたどるでしょうか。
椎名 
今は技術的なハードルがどんどん下がっていて、昔は沢山機材が必要だったのが、今はノートPC一つで音が出せるんですね。だからこそ、いかに自分で発想力を深められるかが鍵だと思います。でも、僕はそこに際限はないと思う。同じ劇団にずっと関わっていたら刺激はなくなっていくと思うけど、全然別の、例えば若手劇団と一緒に仕事すると違う刺激になるね。すると、僕の方も新しいアイデアを思いつく。最近は若手の子と仕事をする事が多いんですが、本当に刺激になります。今後も全然知らない面白い人達とどんどん仕事をしていきたいですね。

タグ: 印象に残るシーンを作りたい

多くの人に見てもらいたい

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今まで目標にしていたことはありますか?
椎名 
目標。うーん。飛び道具でいい作品を作って、多くの人に作品を見てもらいたいです。
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劇団飛び道具。私、大好きなんですよ。何回も観ているにも関わらず、飽きないんですよね。それは何でだろうといつも思うんです。
椎名 
一つには、ウチは人の感情の移り変わりを丹念に表現する劇団やねんね。それをライブでやるから楽しい。音響席で観ていても楽しい。
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なるほど。5月の公演、楽しみにしております。これからの目標は。
椎名 
オーロラを見る事やね。僕の人生の最終章はオーロラを見ること。それからマチュピチュに行きたいね。あんな高地に文明を立てていた凄い奴らの残り香ね。パワースポットとかそういう意味じゃなくて。

いい感じ。もっと盛り上がってほしい

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最近、椎名さんは若手の劇団と主に仕事されているんですね。
椎名 
そうですね。この間入った現場で、僕の年齢の半分の子がオペに入っていました。でも、最近は若手の劇団が元気がいいですね。京都学生演劇祭が影響強いのかな。
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そうかもしれませんね。
椎名 
チラシ束も、若手劇団多いし。いい感じ。もっと盛り上がってほしいです。
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作品を主体とした盛り上がりだと思います。お互いに批判したり評価しあったり。非常に良い雰囲気ですね。
椎名 
そうね。あとはやっぱり、劇団が少ないというのはあまり盛り上がらないんじゃないか。僕らが活発立った頃は、今でも活躍している劇団も含めてたくさん活動していたね。
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盛り上がってましたね。
椎名 
それが少なくなって、一時期落ち着いて下火になってたでしょう。今は、活発な時代になりつつあるんだと思う。
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良い悪いじゃないですけど、プロ化したりとか、会社を立ち上げたりとか。昔はそれが主題でしたが、そう、今の時期はそれはそれほどでもない。いま、若手に向かって、何か一言ありますか?
椎名 
劇団が互いに講演を見て、良い刺激を与え合ってほしいですね。あと、これはスタッフにも言いたいんですけど、やっぱり妥協するなと。音響キッカケがない作品をよう見るねんけど、それは無音劇という選択の一つであって。無自覚に音響キッカケを持たない芝居というのはないんだよ、と。音響は作品全編の全時間に対して考えていないといけないんやね。それをあまり考えてない若手が多いように思うけど。空気を演出するのに最も有効なのは音響なんです。もっと言うと、空気を扱えるのは音響だけなんです。音楽を選んで流せばいい、それだけの仕事じゃないよと。

タグ: 後輩たちへ 相互承認 一段落ついた

演劇作品の音をプランするには

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空気を演出。
椎名 
そう。その空間をどれだけ具体的にイメージしているかが大事で。この間見に来てくれた「ハレ学」は学校の旧校舎館が舞台だったんだけど、その館の奥行きや天井の高さや、天候をイメージして(これ、お客さんにはわざわざ言わん事やけどね)その上で、その状況をどれだけ再現出来るか・それを芝居でどれだけ効果的に使えるかをプランしないといけない。もちろん、ずっと力任せで押しっぱなしでも面白くないんです。波がないと面白くない。そういうバランスを自分で吟味する。あえて無音にする事もプランの一つだけどね。もっと、自分の中で作品を構成しないとあかん。その上で音響のプランを当てはめる。その上で、どのようなシステムを組まないといけないか考える。一番最初に必然性と言ったのはそういう意味で。ここまでやっているお芝居はまあないけれども。うーん、どういうのが参考になるかな?ハリウッドのホラー映画とかは参考になるね。体で感じるのは音だからね。

質問 四方 香菜さんから 椎名 晃嗣さんへ

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前回インタビューさせていただいた四方さんから、質問をいただいてきております。「椎名さんが怒るのはどんな時ですか?」
椎名 
ここ最近怒ってへんな(笑う)。犬がいたずらしたら怒るくらいやね。勝手にお菓子の袋を開けて中身を食べたりするんですよ。
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頭の良いワンちゃんですね。

デンユウの精神

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それにしてもデンユウ。いつかまた見れるんでしょうか。
椎名 
デンユウかあ。自分の中ではやっぱり、大好きな劇団。デンユウがあったから俺も色々に挑戦しようと思ったし。
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生き方を大きく左右された感じはありますね。
椎名 
今年の学生演劇祭の打ち合わせで、代表の子にお願いしたんです。今の若手で「天つ~」を再現してほしいと。やってみたら楽しいし、絶対に快感やからやってみてほしいな。力比べしてほしい。
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出来るでしょうか。
椎名 
出来たんだから、今出来ない事はないんじゃないかな。
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懐かしい。無茶でしたよね、あれ・・・。
椎名 
あの時のナスを越えるお笑いシーンを見たことが無い。斜幕とかの使い方も上手かったし天井まで届く障子も素敵だった。
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確かに出来ない事ではないですね。やろうと思ったら。
椎名 
巨大蜘蛛とかね。
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あれはワクワクしましたよね。例の動力や、死に様も含め。・・・思い出話になってしまいますね。
椎名 
やりたい事が違うのかな、今の子らは。
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うーん。デンユウが特殊すぎるような気はしますし、今は演劇作品のやり方に重きが置かれているんじゃないかなとは思いますね。ただ、デンユウのマインドはまだどこかに生きているとは思います。まず、ギアがそれを受け継いでいるはずだし。
椎名 
まあね。ギアは頑張ってるしずっとロングランで頑張って欲しい。

誰も見たことのないものを

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さて、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
椎名 
今後も、誰も見たことのないものを作っていきます。良い意味で椎名さんの音だなーって判ってもらえる風に。
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楽しみです。どんな仕事に関わっていきたいですか?
椎名 
新しい若手ともっと仕事したいね。惰性的に芝居をやってるところじゃなくて、向上心を持った人。人を驚かせてやろうという気持ちとしっかりしたビジョンを持った劇団との仕事は刺激があるので。あとは、違う地方でもやりたいな。福岡とか、行った事のない地方に。あとは、死ぬまで芝居をやっているであろうと思う。

タグ: 今後の攻め方

任天堂製のトランプ


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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
椎名 
プレゼントはどきどきしますね。何だろう。開けていいんですか。
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もちろんです。
椎名 
(開ける)トランプや。ファミコン世代としては任天堂のトランプって言うのが嬉しい!

(インタビュー終了)