キッカケを得た日々

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今日はどうぞ、宜しくお願いします。最近、杉本さんはどんな感じでしょうか。
杉本 
よろしくお願いします。最近は次回公演である「blue/amber」 2の稽古と、ちょっと色々と書き物仕事をしています。それから、ちょうど去年の3月ぐらいに大学を退学しました。就職もしていないので、来年再来年以降の動きをどうして行こうか考えています。
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それは良いニュースなのか悪いニュースなのか・・・
杉本 
大学に在学中も進路を変えようという話にはなっていたので。良いきっかけにはなっていると思っています。
1N₂
2011年に設立。メンバーは杉本奈月と秋山真梨子の2名。
口にされなかった言葉が日に見初められるべく、月並みな表現で現代に遷ろう人々の悲しみを照射する。詩として縦横に並べ立てられる台詞の数々は、数式のようであると評される。
2015年より、上演のたびに更新される創作と上演『居坐りのひ』に従事。過去の上演では、2月は静劇 / 三人芝居として、5月は音楽劇 / 二人芝居として、 7月は一人芝居として、8月は沈黙劇 / 俳優不在の上演として演出。2016年2月は、ウイングフィールドにて新作初演上演として本公演を実施。「劇場の窓」から射す陽の光はそのままに、窓辺を舞台として三方客席を設え上演した。
2016年より、書き言葉と話し言葉における物性の表在化を試みる「Tab.」シリーズ、同時代の思春を過ごす少女たちの姿を描く「Fig.」シリーズの創作を開始。

[賞罰]
2014年 ウイングカップ4個人賞受賞(杉本奈月)
2015年 第15回AAF戯曲賞最終候補『居坐りのひ』
2016年 ウイングカップ6最優秀賞受賞『居坐りのひ』
第16回AAF戯曲賞一次審査通過『草藁』(公式サイトより)
2N₂「blue/amber」
第5回公演 / 大阪市助成公演
ウイングフィールド提携公演 / 常劇

『 blue/amber 』
「居坐りのひ」と「月並みにつぐ」ならびに「水平と婉曲」

作・構成・演出 = 杉本奈月(N₂)

2015年より「上演のたびに更新される創作と上演」として始まり、
第15回AAF戯曲賞最終候補、またウイングカップ6にて最優秀賞を受賞した『居坐りのひ』。
おなじく劇場に宛て書き、前者と対の命題を扱った戯曲『月並みにつぐ』。
そして、2016年より始動した「書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み - Tab.」の第一作『水平と婉曲』。
以上、詩である言葉で書かれた三編の劇詩を新たにキャストを再編成して、
大阪ミナミに位置する老舗の小劇場・ウイングフィールドにて一挙上演します。

出演
[ A ] amber - 居坐りのひ / 月並みにつぐ
ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)
ガトータケヒロ
河合厚志
前田愛美

[ B ] blue - 水平と婉曲
ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)
三村るな
岡村淳平
杉本奈月

公演会場

ウイングフィールド

公演日時

2017年3月18日(土)~20日(月)

18日(土)
[ A ] 15:00 / [ B ] 16:00を予定
[ A ] 19:00 / [ B ] 20:00を予定 ★

19日(日)
[ A ] 11:00 / [ B ] 12:00を予定
[ A ] 15:00 / [ B ] 16:00を予定
[ A ] 19:00 / [ B ] 20:00を予定 ★

20日(月)
[ A ] 11:00 / [ B ] 12:00を予定
[ A ] 15:00 / [ B ] 16:00を予定 ★

全7ステージ
[ A ] amber =『居坐りのひ / 月並みにつぐ』
[ B ] blue =『水平と婉曲』

チケット料金

[ 一般前売券 ]【支払方法:振込】
二作品 3000円 / 一作品 2300円

N₂「blue/amber」

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さしあたり、3月には「blue/amber」が控えていますね。どんな公演にしたいですか?
杉本 
今回はこれまでの3作品の再演になるんですけど、「月並みに告ぐ」、「居座りの日」、去年11月に上演した「水平と婉曲」。発表してる作品がまだ多いわけではなくて、ただその3作品は、今後も自分にとって柱になるような作品になると思うので。先のことを見据えた上での公演にしたいと思っています。
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ありがとうございます。とても楽しみです。ところで、杉本さんは特定の作品を繰り返し上演し続けるイメージがあります。その「居座りの日」。3年以上上演していると思うのですが、そこまで上演し続けたのはなぜだったのでしょうか。
杉本 
「居座りの日」は私の作品の中でも、自分の人生のタイトルと言っても過言ではないネーミングなんですけれども。書く力が今より未熟だったし、大学にも演劇部はなくて、とにかく自分の劇団でしか実践の場はなかったので、とにかく上演を重ねるということと、何回も書き推敲を重ねる。劇作家の自分としてはそういう場としてあった、と思います。

変容

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それぐらい「居座りの日」にこだわってるようですね。そうすることによって洗練されていくもの、変わっていくものもあると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。
杉本 
はい。一つには、自分の文体。「居座りの日」の一つ前が「月並みに告ぐ」で、その前の作品は大阪の言葉で会話劇を書いていたんですが、それは個人的には少し嫌がっていたところがあって。というのは、私は高校生ぐらいから戯曲を書き始めたんです。
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高校生から。
杉本 
演劇部でした。最初はいまのような詩の形式の作品を書いて先生に見せたところ、「これは演劇でやるテキストではない」と言われてしまって。単純に技術が伴っていなかったと思うんですけど、そういうことを言われてしまって。だからしぶしぶ会話劇を書いたんですか、実際のそちらの方が反応が良くって。でも、やっぱり元々書きたかった文体に戻りたいと。
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詩に興味を持ったのはいつぐらいからですか?
杉本 
これは多分詩とは呼ばないと思うんですけど、小学校の頃に別役実の「空中ぶらんこ乗りのキキ」という童話作品に出会って。あれ自体は別に詩ではないんですけど、感銘というか着想を受けて。

杉本 
演劇を始めたのは、中学生の時に演劇部に友達に誘われたんです(演劇自体は、子供の頃はすごく嫌いだったんですけど)。うちの母校は、毎年新人公演で樋口美幸さんの「がらくた理論」という作品を上演する習わしがあって。彼女の作品も完全に詩とは言えないんですけど、台詞でありながら詩敵な感じのするテキストで、憧れた、というところがあって・・・。実はその以前から、演奏する曲を趣味で作っていたんですけど、演劇部に入ってから歌に乗せる詩の方を作るようになりました。今は作れないですけど・・・。
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演劇部に入って、良かった事はありますか?
杉本 
子供の頃は演劇が苦手だったんです。劇々しく台詞を喋るというのが苦手で。でも友達が演劇に連れて行ってくれて。樋口さんの本と出会うことができて。こういう作品ができるんだったら行ってみても楽しいかも。と思ったんです。

悪ふざけの本領

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「blue/amber」の上演について。この間見た「水平と婉曲」は、非常にアバンギャルドな演出で面白かったです。格好良かったです。詩も同様に挑戦的でした。驚きに満ちていました。
杉本 
ありがとうございます。
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メタフィクション的なセリフの応酬、セリフの繰り返し、セリフの削除、レコーダーの濫用、それから役者がセリフを忘れたり、照明が突如消えたり。芝居ハプニングの見本市でしたね。それがだんだん、人物達が意気投合して冒険を始める。なんだかお客さんと一緒に冒険していくような、ドラクエみたいな感じ。そういえば4人が行進するシーンで、いきなり一人小さくなる演技がありましたね。あれはどういう経緯で作られたんですか?
杉本 
私はドラクエはやったことがないのでわからないんですが、あのバグは、さんが休憩中にそういうふうな動きをしていたのが滑稽だなと思って、ちょっとやってみました。
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他に面白かっただけでやってみたんですね。
杉本 
そうですね。
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そういうのが多いんですか。
杉本 
そういうのが多いですね。もちろん取捨選択はして行くんですけど。人間座は中二階があったり、劇場の趣を変えたりが出来て。そういう自由度から最後のシーンができたりして。
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人間座ダンジョンですね。
杉本 
最初はジャングルみたいにしたいという話も出てたんですけど。

生きて

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次の「blue/amber」では、どのような上演を目指していますか?
杉本 
まず、一応私は劇作家なのですが、俳優さん個人が、今までどう生きてきたかというのを聞くところから執筆を始めていまして。俳優さん一人一人の魅力が伝わる上演にできればいいな、と思っています。スポーツをやっている人だったらそれを見せてもらったりだとか、働いている人なら普段の仕事の様子とか。そういう作業から、役者さんの癖とかがつかめてきます。演技指導という意味では、稽古の序盤の方は台詞の音の調子とかしか聞いてなくて。抑揚をつけてゲキゲキしく言わないとか、語尾が消えてしまわないように、とか。全体的なミザンスにはこだわる方なんですけど。
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なるほど。役者をかっこよく思わせようというのはどこから来るんですか?
杉本 
中学の頃、あることがあって。それをきっかけに身近な人と突然会えなくなるみたいなことがあるかもしれないな、というのが今もあって。とにかく居てほしいというのがあるんです。例えば舞台に立つということがあるんだとしたら、その人が指針を持って生きてたりとかするのなら、それが見えるような演出をしたいと思っていて。
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なるほど。
杉本 
「居座りの日」と「月並みに告ぐ」を作った時期に震災があったんです。私自身は被害はなかったんですけど、誰かがいなくなってしまう、という事が・・・ちょっとうまく言えないんですけど。
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それを表現せずにはいられない。
杉本 
「居座りの日」というタイトルを持つ作品については、中学の頃の事を書かないといけないと思っていました。自分が死ぬまでには必ず。ただ、去年の2月のウイングフィールドでの上演ではその執着が剥がれていくようなそういう感覚があって。それは私にとって良いことなのかどうかわからないですが・・・。

道理とロックについて

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「水平と婉曲」は、詩の朗読とか閉鎖的な空間での演出と、色々な要素があって、それぞれひとつずつの道理はわからないけれどとても楽しめる。それが一旦のゴール、としても良いのかなという気がしていて。
杉本 
はい、一旦のゴール。
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アバンギャルドな演出作品は、時としてそれを「単純に楽しんで良いものかどうか」分からなくなってしまう場合もあると思うんですよね。改めて伺いたいのですが、杉本さんは、作品を見て楽しんでもらいたいと思いますか?
杉本 
思いますね。上演を重ねるたびに、中学校の頃にあった事件の記憶が薄れていくところがあって。それが大きいような気がしています。それを笑い飛ばせてしまっているような。例えば私、稽古場でいつも爆笑しながら過ごしているんですけど。「次はウチ、コントやります」って周りに言ってたりします。悪意というか、悪ふざけというのは存分にやらかしたいと思っています。
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最上級の笑うだけを見てみたいですね。体重が乗った悪ふざけ。
杉本 
そうですね、もちろん。
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ロックンロールがあればいいですよね。杉本さんはロックンロールについてはどう思いますか?
杉本 
私、なんか生き方がロックだと言われるんですけど、あんまりそういう自覚はない、後、「ロール」ってどういう意味なんだろう、と思ってます。
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ロールは続けること、ですね。ロックは既存の価値観を壊す、みたいな。「水平と婉曲」で、役者がセリフを忘れる、という演技があったじゃないですか。あれはロックでしたね。
杉本 
あれも悪ふざけで、稽古の最終日ぐらいにできたシーンです。
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8割はわかっていたと思います。突然照明が消えたりとか、面白かったですよ。

レトリックと私と

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ご自身の、詩を作るときのスタイルを説明するとしたら?
杉本 
最近思うのは、あんまり、わざわざ戯曲にして伝えたいという意欲が少なくて。もしかしたら元々なのかな。でも文章を作る楽しさの中で最大なのは、レトリックが上手く行った時。言葉の連なりから想起される表現、その幅を利かせられたりとか、そういうのがうまくいくと単純に嬉しい。そういうことにしかあまり興味がないような気がしていて。twitterとかはやるんですけど。日常で思ったこととかを投稿するだけなんだけど、結局それを書くときも、どこか詩に近づけて、もしくは詩として書いている。練習と言うか訓練というか。そうなっていると思います。
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レトリックは楽しいですからね。わかります。もしかしてそれは他人の反応はどうでもよかったりしますか?
杉本 
どうでもよくは思いますけど、面白いと言ってくれる人がいたら単純に嬉しいです。戯曲は何もない状態から役者さんを元に書くんですけど、役者さんそれぞれに合わせた登場人物を付けたりするんですよね。

解答を求めないで

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役者に対して求めることは何ですか?
杉本 
すぐに回答を求めてこないことですね。結構それは重要です。意外とそれは体力のいることで。で、その、私自身は一応、何通りかの解釈もできるように作品を書いてるので、「たった一つの正解は無い」という事が分かった上で稽古場にいるけれども。実は役者さんから、全く未知の新しい答えが出てくることを期待していて。で実際役者さんの提示の方が面白いことが多い。
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役者と一緒に作るという感じですね。役者にとって、どうしても、縁起はひとつの結果にまとまって行きますから、そういう責任を持つ以上、正解を志すのは当然だと思うんですけれども。正解を聞きに行くというのは・・・。まあ、指示されて作る演技もあるとは思いますが。
杉本 
あると思います。
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ただ、完全に演技指導によって作られる作品なんてものもあるのかもしれませんね。

停滞

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演技を作るにあたって、非常に幅広い選択肢の中からひとつを選び取らなくてはならない。というか、そもそも、その幅が選べる場所に行かなくてはならない、幅を見渡すことのできる目を持たなくてはいけない。そして選ぶ。いくつかの段階があるわけですけれども、そこに厳しさがある。詩を元にした作品の場合、それはどのようなスキームとなるのでしょうか。
杉本 
停滞することが多い、けれどもやり続けるしかなくって。よく稽古場でおしゃべりするんですけど、そういうところからも、その人が何を考えてそこにいるのか、作品との共通自己を見つけ出したりとか。けれども一番重要なのが、俳優同士の関係性で。戯曲自体は既にあるんですけど、それを作る上で彼らがどういった関係を形作っているのか。もしか全くお互いに興味を示さず作っていくのか。そういうところを私は結構見てると思います。
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見た上でどうするか、というと?
杉本 
関係性については、どこの役に当てはめるか、に反映されて。役者さんの演技作りを見ていると、結構、台詞に引っ張られちゃう人が多くいるんですけど。けどやっぱり私はちょっとそうはなって欲しくないというところがあって。かつ、セリフの言葉の意味を一つに収斂させたくないんですね。そうならない動きとかポーズとかを引っ張り上げたい。今私も人生の路頭に迷ってるんですけど、皆さんいろんな選択肢があると思うんですけど、全部言われる人もいるんですけど、どうしてもひとつを選ばなくてならない。そういう立場に立って見ると、俳優さん大変だろうなと思います。
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どうしても一つに選ばなくてはならないですからね。言葉の意味に表裏や幅があるのとは裏腹に。

質問 近藤 千紘さんから 杉本 奈月さんへ

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前回インタビューさせていただいた近藤千紘さんから質問を頂いて来ております。「どうしてもやめられない癖はありますか?」
杉本 
うーん・・・喋っているときに、考え込んでしまう時間が長くなる、そういう癖があります。

見に来てほしい、批評してほしい

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今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
杉本 
座組みの人に「今度はコントやります」と言っているのと同じで、結構悪ふざけとかをやるのが好きなカンパニーですよ、というのを知ってもらえたら。飽きたら終わりなんですけど。あと、そうですね、私を含め、同世代の人に見に来てもらって批評しあえたらなあと思ってます。
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見てほしいと。それはなぜ?
杉本 
自分に出自がない、というのがだいぶコンプレックスになっていて。学ばせてもらえる場所というのが少なくて。だからdracomとか缶の階とかで演出助手につかせてもらって。意見とかアドバイスを、もっともらえたらなあと思ってます。そういう話がしたいです。

コーヒー

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
杉本 
ありがとうございます。コーヒー好きなので、飲みます。
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ハウスブレンドだそうです。よろしければ。
(インタビュー終了)