問題

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田嶋さんはもう京都に来られて長い訳ですけれども、どうですか、京都の文化的な環境について。私はかなり恵まれているんじゃないかと思うんですけど。
田嶋
うん、凄く、恵まれているって思いますね。首都圏でやっていると、劇団の人同士が自転車で行き来できるってのは滅多にないと思うんですよ。やっぱり、演劇に限って言えば、人が集まらなければ何も進まない所があるので。すぐに集まれるっていうのは東京から来た身からすれば得がたいものだなあと。
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あー。
田嶋
あとは、他の劇団の事が分かりますよね。
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分かっちゃいますよね。
田嶋
それが狭い事の良さだと思います。逆に問題もよく見えるから。
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その、問題というのは。
田嶋
あー。
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・・・・・・。
田嶋
いや、京都だけにある、東京だけにある問題っていうのは実はないんじゃないかと思ってるんですよ。だけど、京都の方がそれが見え易い、という気はします。
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うーん。
田嶋
まあ、東京にいた頃していた仕事とは少し質が違う仕事を京都ではしているということはあるんですけど。京都にいる今の方がいろいろなことが見えてくる気が。

芸術

田嶋
まあ、問題としては、日本はまだまだディレクター制度が定着していないということでしょうか。芸術センターnoteもそうなんですけど。
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ディレクター制度とは何でしょうか?
田嶋
芸術監督制度ですね。作品にははっきりと良し悪しがあって。それは凄くシビアにあると思うんですよ。でもそれは相対化出来る物ではないから。やっぱり、これは良くてこれは良くないとはっきりいう人が必要だと思うんですよ。
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そういう、二元論ではなく、例えば価格とかを付ける、という訳には行かないんですかね。
田嶋
価格とはちょっと違う気がして。うーん。やっぱりね、どうしても予算が掛かっちゃう作品があると思うんですよ。でもそれが「迫る」作品であるかどうかは、バジェットとは関係がないことで。本来は、総予算をお客さんの数で割った金額がチケットの値段になればそれだけで作品は作れるんだけど、そうなると莫大な金額となる。だから、値段の問題は難しいですね。まあ、白黒はっきり付けるって言っても劇団のカラーや劇場のイメージっていうのが確実にあって、それをお客さんがもっと分かり易く選べるようになった方がいいと思うんですね。
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例えば芸術センターではちょっと前衛的で練り上げられた、芸術性の高い作品をやっていると。一方アトコンnoteではエンターテイメント性を強く主張した作品をやっているとか。
田嶋
まあ、そういう風に言われると今でも多少はあるのかもしれないですね。ただ、逆に方向性の転換が難しくなってしまうかもしれない。でもディレクター制度があれば、このディレクターだからこういう作品なんだ、とか、別の人だったらこういう芝居なんだなあ、とかそういう予見が出来るんだろうけども、今は誰がどういう責任を持ってディレクションしているのかが分かりにくい。
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もし、ディレクター制度が出来て、恒常的に機能するようになったとしたら、お客さんはその広報する意見を参考に出来ると。
田嶋
それはあると思います。
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日本では発達していないと仰いましたけど、それは欧米では発達している?
田嶋
そうですね。ディレクターがいるかいないかでは、質の高いものと、そうではないもの、面白いものと、面白くないもの。今はそれが全部同じ土壌で何とかなっているってのが、うーん。もうちょっと、プロとそうでないものをハッキリさせた方がいいんじゃないかと。
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うーん。
田嶋
何ていうのかな。普段サラリーマンやっている人がボーナスをつぎこんで芝居を一本打つっていうのは可能な訳ですよ。で、それが面白ければ観客にとってはとりあえずその人がサラリーマンであるかどうかはどうでもいいんですよ。
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そうですね。
田嶋
でもそれが面白くなかった場合でも、その人は毎期のボーナスを使って芝居が出来る訳で。その辺の淘汰の仕組みの無さが、・・・淘汰の仕組みとかいうと偉そうに聞こえちゃうかもしれないけど。でもやっぱりね、いいものを提供し続けていかないと、本当に演劇を好きなお客さんなんて一握りなんで、増えないと思うんですよ外に行って何故私が演劇が好きなのかとか、そういう事を人に話したとしても説得力がないんですよね。
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うーん。
田嶋
一方で、もちろん傑作を作るのは難しいと思うんですよ。
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そうですね。
田嶋
すっごく難しいし、多分一生見てても本当に凄い作品なんて2~3本だと思う。でもね、そこまで行かなくてもちょっと体温が上がったり、どこまでも歩いて帰れそうな作品ってある訳で。
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凄い喩えですね。
田嶋
そういう作品が増えるのがいい事だと思う。その仕組みを作るのは・・・。
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そのためにディレクター制があると。
田嶋
やっぱり、評価の仕組みが全然ないからなあ。
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アンケートが書かれて、それが劇団に吸い込まれるだけですからね。
田嶋
(笑う)
note京都芸術センター
京都市の中心部にある芸術振興の拠点施設。元明倫小学校であった建物を再利用するかたちで設立された。ここの上演スペースでも毎週のように公演が行われている。
noteアートコンプレックス1928
三条御幸町の多目的ホール。ダンス、演劇公演、ショーやワークショップ、展覧会等を開催する。

タグ: 新しいエンターテイメント

宣伝

田嶋
私、地点noteという劇団の制作をしているんですけど、昨日のミーティングで「チラシを作るのをやめよう」っていう事になったんです。
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おお。
田嶋
挟み込みをやめようって事になったんですね。で、代わりにポスターとポストカードを作る事にしたんですけど、結局、ポスターを貼ったり、カードを配布したりというのはパフォーマンスになるわけじゃないですか。挟み込みは小劇場の世界で漫然とやっているだけではないかと。もっと、広報とか宣伝を考えた時にキチンと、自分のやりたいことの理念に叶ったやり方を考えるべきじゃないかと。
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その為に、こういう事を言ったらアレですが、実験的に辞めてみたと。
田嶋
挟み込みをまたやるということはないと思うんです。
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ああー、なるほど。効果がないから、というわけではなく。
田嶋
ポスター・ポストカードに関しては、方法は考えるかもしれない。
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すると、芝居を見に来た人には情報が伝わらなくなってしまうのでは。
田嶋
それは、ポスター・ポストカードじゃ無理ですかね。
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あー。いや、小屋を出た後に、ポスターが大きく貼ってあれば伝えられると思います。
田嶋
あと、京都の規模だと劇団員から手渡しで渡せるんじゃないかと。それは橋本さんが言ってたんですけど。
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出来るでしょうね。
田嶋
実験といえば実験ですけど、ポスターとポストカードだったら演劇を見たことの無い人にも行き渡るんじゃないかと。でも、見に行こうってなるのは、そういうデータだけじゃないと思うんですよ。一番いいのは、口コミだと思うんですよ。
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口コミ。はい。
田嶋
やっぱり自分の信頼している人が「これは面白い」と薦めてくれることだと思うんですよ。それは、圧倒的な力を持ちますよね。
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そうですね。
田嶋
まあ、劇団が作る宣伝ってのはやはり自薦なので。
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どうしてもそうなりますよね。
田嶋
演劇って、宣伝についてはまだやってない事があると感じていて。私自身、ホントにあの手この手を試してみたいんですよね。
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はい。
田嶋
まずお客さんが来ないと始まらないからねー。
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そうですね。
note地点
代表・演出、三浦基による特異な表現による硬質な劇空間が特徴。洗練された俳優陣、高度な舞台美術、分断されて文節どころか音節ごとに再構成されたテキストなど、強い印象を残す。

グラス

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今日はプレゼントがあります。
田嶋
ありがとうございます。過去のを読んだら、沢山プレゼントをされていて。気を遣わせて悪いなと。
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いえいえ。プレゼントをするのは好きなんで。
田嶋
そういう人、いますね。
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どうぞ。
田嶋
ありがとうございます。私実は、明日が誕生日なんですよね。
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やった。大当たりだ。
田嶋
うれしー。プレゼントって、あんまり貰わなくなっちゃいましたよね。
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そうですね。大人になると。
田嶋
(開ける)あ・・・これは、お酒を入れて飲みたい感じの。キレイ。これなんか、不思議ですね。カクテルとか入れたいですね。
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普段使いにして頂ければ。

(インタビュー終了)