「こんなこと、百年掛かっても私には思いつけない!」

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最近ご覧になって、印象深かったものはありますか?
吉永 
今年に入ってから良い芝居は多いんですよね。千年女優noteとか。
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あれは素晴らしかったですね。あ、最近というか昨日なんですけど、東京から来た柿喰う客の「恋人としては無理」noteはいかがでしたか? 非常に稽古量を感じさせる完成度の高い作品だと感じましたが。
吉永 
勢いがありましたね。全体的に演技というよりは、振り付けに近かったように思います。私が行った回のアフタートークでは、フランスで初演した時に現地の観客から「君たちはドラッグをキメてから舞台に立っているのか?」みたいな質問をされたという話をしていました(笑う)。
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あはは。
吉永 
あのテンションの入れ方はやっぱり異常だし、何より私には一生掛かっても出来ないものを見せて貰えました。
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というと。
吉永 
芝居を観る上で、「ああ、これには絶対勝てない」というものが好きなんです。そういうのにもっと遭いたくって芝居を見続けているんです。例えば観ている時に「ここもっとこうしたらいいんじゃないかな」と思わせて貰いたくないですね。「こんなこと、百年掛かっても私には思いつけない!」とビビらせてくれないと満足できない。
note千年女優
同名のオリジナルアニメをピースピットの脚本・演出家である末満健一氏が演出。出演はTAKE IT EASY!。公演時期:2009年1月16~18日。会場:HEP HALL。
note柿喰う客
東京の非常に勢いのある若手劇団。このインタビュー実施前日に大阪・精華小劇場で公演「恋人としては無理」(公演時期:2009年3月25日~29日)を行った。

タグ: ピースピット 自分は何で演劇を

一番恐しいケンカの仕方

吉永 
昔何かで書いたんですけど、私は芝居に共感なんか求めないんですよ。「私はこういうこと考えてるけど、あなたもこう思うでしょ?」という芝居ってあるじゃないですか。そういう芝居が一番受け付けないんです。「俺の世界観はこんなだ、俺はこう思う。で、どう?」みたいな観客の価値観にケンカを売ってくる挑戦的な芝居が大好きなんですね。
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悪い芝居noteとか、まさにそんな感じですね。
吉永 
そうですね。それと、一番恐しいケンカの仕方をしているのが最近の松田正隆さんnoteですね。去年のDICTEEは本当にどうしようかと。
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え、どんなだったんですか?
吉永 
まず、韓国語も日本語も英語もバラバラに細断されててぶちまけた、みたいな。物語自体も、こっちに着地しようとしたらさっと流れを変えるという演出でした。爽快でしたね。
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他にケンカを売っているところと言えば。
吉永 
ヨーロッパ企画noteもソフトに・・・。
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あ、吉永さんの写真日記に一番多く名前が登場しますよね。ヨロ企。
吉永 
好きなんでね(笑う)。彼らはコメディでやってますけど、実は「これで笑えますか?」ってニコニコしながら言ってるんですよ。ゆったりと、でも確実に正攻法でケンカを売ってるんです。
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なるほど・・・。お話を伺っていると、最近確かに、そういう挑戦的な作風の作品が多くなってきたような気がしますね。これはどういうトレンドなんでしょうか?
吉永 
多分ね、観客の数が少なくなったのが一つの原因なんじゃないかな。特に関西は一定数を保っているか下落方向にあるみたいで。だから逆に開き直って、自分たちの好きな表現に走り始めたんじゃないかな。こういう傾向がうまいこと続いてくれたらいいですね。関西の小劇場、色々言われてますけど、これは一つの可能性が生まれてきているんじゃないかなと思います。
note悪い芝居
2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
note松田正隆
マレビトの会を主宰する劇作家。
noteヨーロッパ企画
京都の劇団。現代的なセンスの会話劇を得意とする。見ごたえのある作品性。

ああー、インタレスティング!

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さて、京都の演劇シーンについてすこし伺いたいと思います。関西の中の京都の小劇場は、吉永さんにはどのように映りますか?
吉永 
まず土地柄として、アーティストへの理解があるんですよ。簡単に比較してしまうのはどうかと思うけど、やっぱり大阪は商売の町じゃないですか。だからわかりやすい笑いや感動を求める人が多いんじゃないかと思います。一方、京都の人はわかり易い価値は余り求めていないと思う。
__ 
理解ですか。京都の、例えばカフェなんかそういう事例が多いんじゃないかなと。新しくカフェを作り始めていたら、いつの間にか近隣の人達がお店作りに参加してたり、ノリが良い。
吉永 
モノを作ることへの理解が、根本的にあるんですね。だから京都は、本気でモノを作りたい人にとっては幸せな場所だと思います。
__ 
その代り、作り手側の甘えは許されないのかな、と思いますが。
吉永 
そうですね。観る人の目は厳しいと思います。
__ 
都市全体にそういう考え方が浸透しているとすると、作品にはどのような傾向が生まれるでしょうか?
吉永 
「楽しい」より、「面白い」の方が重視されるようになると思います。英語で言うとentertainとinterestingの違いですね。もちろん全部が全部とは言わないですけれども。
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エンターテインよりインタレストの方ですか。ああ、昔NEXTnoteの都木さんに「作品は最低でもエンターテイメントでなければならない」と言われて、凄く納得した覚えがあるんですけどね。前衛劇でも何でも。
吉永 
それはインタレストという意味だったのかもしれないですね。作り手にとって、エンターテインというのは時に足かせになりかねない。そういう強迫観念は要らなくて。そればかりだと、さっき私が言った共感を求める態度に終始してしまう気がする。いいんですよ、ケンカ売って。
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それを吉永さんが買うと。
吉永 
で、爽快なケンカが終わって劇場を出る時に「あーインタレスティングだった」って。それが一番理想かな。
noteNEXT
京都を中心に活動するリアリズム系現代演劇ユニット。

タグ: 新しいエンターテイメント

「今回どうだった?」「つまんなかった」

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さて。吉永さんは、お芝居を作る側に立ったりはしないんですか?
吉永 
昔、ある演出家さんにこう言われた事があって。「あなたの役割は、一番よい観客である事だと思う」って。
__ 
というのは。
吉永 
私年末に、石原正一さんnoteです」って答えたんですね。
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内閣と言えば大阪で公演がありましたが。
吉永 
その公演に、イベントでの私の発言を聞いて来たお客さんが来たそうなんですよ。そういう時こそ、生きてて良かったと思います。私の仕事は演劇人に取材して良い記事を作ってナンボなんですよ。その記事を読んだお客さんに劇場に足を運んでもらって初めて私の仕事は完了するんです。その上で面白いと思ってもらうのが究極の目標ですね。だから、どちらかというと、表現者側よりは客席にいたいですね。一番良い観客として色んなお芝居を観聞きして、他のお客さんに伝える。
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今のご自身はどうですか?
吉永 
やってる側にしたら一番厄介な観客だと思う(笑う)。好き嫌いあるし、見たいと思うものしか見ないし。ハッキリ言うし。
__ 
あ、ハッキリ言うんですか。
吉永 
はい。付きあいでは見ないんですよ。「今回どうだった?」「つまんなかった」って言っちゃうし(笑う)。やっぱり作品をストイックに観て、その上で自分の感想はちゃんと持ちたいですね。
note石原正一さん
劇作家・演出家・俳優。主に大阪で活動。石原正一ショー
note笑の内閣
2005年、元劇団紫高間響が代表をつとめるプロデュース団体として結成、後に劇団として旗揚げ。プロレスを演劇に組み込んだ作品を作り続ける。派手なプロレス演出の完成度は高く、しかも笑いを取るための努力を惜しまない。
note男肉duSoleil
代表・池浦さだ夢を中心にしたパフォーマンスユニット。肉体を派手に使った、一歩間違うと意味不明なまでの過激な表現。

質問 犬飼 勝哉さんから 吉永 美和子さんへ

Q & A
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前回インタビューさせて頂きました、わっしょいハウスnoteの犬飼さんから質問です。1.「ご自分のお仕事で、やった事のない人には絶対分からない、大変なことはなんですか?」
吉永 
うーん。何だろうなあ。取材させてもらった人の意外な一面を見てしまうかな(笑う)。こんな人だったのか!というのもあり、こんないい人だったのかというのもあり。
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ありがとうございます。2.「お芝居を見ているあなたの、一番の不安とは何ですか」
吉永 
自分の感性ですね。一般的な人と全く同じじゃダメなんですよね。微妙に進んだ場所にいなければいけないけど、かと言って離れすぎてもいけない。
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逆に、不満はありますか?
吉永 
そりゃつまんない芝居見た時ですね。チラシを投げつけたくなるくらい。

noteわっしょいハウス
京都を中心に活動する演劇ユニット。

タグ: 意外にも・・・

ケンカ・ケツを蹴り上げる

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吉永さんは、今後どんな感じで攻めていかれますか。
吉永 
「ケンカはいつでも買います」という態度でいきます。対劇団・観客だけじゃなくて、対演劇社会、対メディア、対東京とか。
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攻撃的ですね。
吉永 
例えば「演劇って面白いの?」って聞かれた時に、いつでも、しっかり責任を持って受け答え出来るように理論武装して準備したりね。
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ロックですね。
吉永 
私、ローリング・ストーンズが好きなんですよ。彼らの音楽を聴いて「自分も含めて、世界の全てに対してケツを蹴り上げ続けろ」というオピニオンを得て、それに従って今までずっと生きてます。生きてる限りは、ケンカを買い続けて行きたいですね。誰も、私が大人しく引っ込んでる姿を想像できないだろうし。
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分かりました。今後も、そんな吉永さんを見続けて行きたいと思います。
吉永 
ありがとうございます。

タグ: 今後の攻め方

J-PERIOD 立鼓形茶筒

yoshinaga_m_present

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本日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
吉永 
これ、楽しみだったんですよ。
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期待外れでないと良いんですが。どうぞ。
吉永 
何か、プレゼントを貰う機会ってあまりないんですよね。選んでいる時が楽しいんですよね(開ける)。おお、渋いものが。
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茶入れみたいですね。小物入れなどとしても良いみたいですし。
吉永 
わーい。ありがとうございます。

タグ: プレゼント(容器系)

(インタビュー終了)